キーボードの世界
はじめに
普段何気なく使っているキーボードですが、実は「物理キー配列」にはさまざまな種類があります。
この記事では 国際規格の違いとキー配列方式を整理してみました。
現在 Keyball39 を愛用しているが、基盤から自作することにも挑戦したいと思い調べてみたところ、意外と種類が多くて面白かったので、その内容をまとめています。
国際規格による違い
歴史
1. タイプライター時代(1870年代〜)
現在のQWERTY配列はタイプライターの時代に生まれました。キーが詰まりにくいように文字の並びが工夫され、それがそのままコンピュータにも引き継がれています。
この時代は国ごとに独自配列が存在し、ドイツ語の「QWERTZ」、フランス語の「AZERTY」など多様でした。
参考:wikipedia QWERTY配列
2. コンピュータ初期(1960〜70年代)
IBMをはじめとするメーカーが独自に配列を実装しました。
ただしまだ「規格」として統一されていたわけではなく、各社の実装や国ごとにバラバラでした。
3. 国際規格化(1980年代)
多様な配列を整理するために、各地域・用途に応じて国際規格が定められました。
-
ANSI(American National Standards Institute)
アメリカ国内向け規格。シンプルで流通量も多く、現在「US配列」として世界的に広く普及。 -
ISO(International Organization for Standardization)
ヨーロッパ向け規格。逆L字型のEnterや短い左Shiftなどが特徴で、多言語対応を意識。 -
JIS(Japanese Industrial Standards)
日本独自規格。無変換/変換/かなキーなど、日本語入力に特化したキーを追加。
ANSI配列
アメリカで策定された配列で、グローバルスタンダードにもなっています。
Enterキーは横長、左Shiftキーが大きいのが特徴です。

ISO配列
国際標準化機構(ISO)が定めた配列で、ヨーロッパで主流となっています。
Enterキーが逆L字型、左ShiftキーがANSIより短く、隣にキーが追加されているのが特徴です。

JIS配列
日本独自の規格で、日本語入力に特化したキーが配置されています。
「無変換」「変換」キーや「かな」キーが搭載されており、Enterキーも縦長で大きいのが特徴です。

画像:keyboard-layout-editor にて作成
キー配列の種類(文字の配列)
歴史
1870年代、タイプライターが普及する中で、キーの物理的な干渉(タイプバーの詰まり)を避けるための改良が数多く行われました。初期型は楽器の鍵盤のような配列でしたが、ボタン式に進化し、試行錯誤の末に現在も標準的に用いられている QWERTY配列 が誕生しました。
この配列は「効率性」よりも「機械的な制約回避」を優先して設計されたものであり、そのため入力効率という観点では必ずしも最適ではありません。
20世紀に入ると、入力速度の向上やタイピストの疲労軽減を目的に、アルファベットの頻度分析やバイグラム(文字の連続ペア)統計に基づいた改良が試みられるようになりました。その代表例が1930年代に登場した Dvorak配列 です。母音を左手に、頻出子音を右手に配置するなど、科学的根拠に基づいて設計され、理論的にはQWERTYよりも効率的とされました。
しかしDvorakは、QWERTYからの乖離が大きすぎたために学習コストが高く、結果的に標準化に失敗しました。この反省を踏まえ、21世紀以降は「QWERTYの操作感をなるべく残しつつ効率を改善する」というアプローチが主流になります。その代表例が2006年に登場した Colemak です。ColemakはQWERTYとの互換性を重視しながらも、効率面での改善を実現したため、現代のオルタナティブ配列として広く支持を集めています。
さらに、その後は 「効率だけでなく快適性や移行コストも考慮した派生配列」 が次々に生まれました。
Workman(2010年代)
Colemakを改良し、特に「横方向の指移動の削減」に注目した配列。長時間タイピングによる疲労軽減を狙った設計で、エルゴノミクス志向のユーザーに支持されている。
Norman
QWERTYを大きく崩さず、頻度の高いキーを効率化する「現実的な改良版」。
少数の変更で済むため、学習コストが低く「日常用途で使いやすい」ことを重視。
Minimak
「最小限の変更で効率を改善する」ことをコンセプトにした配列。
数個のキーだけ動かせば良いため、学習障壁が極めて低い。
MTGAP
アルゴリズムによる探索で設計された最適化配列。
頻出文字やバイグラム、指ごとの負荷を定量的に評価し、人間の直感ではなく計算に基づいて配置を決定している。
19タイプライターのキー詰まりを回避するための設計
以下では代表的な配列について特徴をまとめる
QWERTY

Dvorak

Colemak

Workman

Norman

Minimak

MTGAP

配列ごとの比較
| 配列 | 特徴 | 効率性 | 学習コスト | 互換性 |
|---|---|---|---|---|
| QWERTY | 歴史的標準。制約回避優先 | △ | ◎ | ◎ |
| Dvorak | 科学的根拠に基づく設計 | ◎ | × | × |
| Colemak | QWERTY互換を残し効率改善 | ○ | ○ | ○ |
| Workman | 横移動を減らし疲労軽減 | ○ | ○ | △ |
| Norman | 少数変更で実用改善 | △ | ◎ | ○ |
| Minimak | 最小限変更で効率改善 | △ | ◎ | ○ |
| MTGAP | アルゴリズム最適化 | ◎ | △ | × |
キー配列方式(物理キーの配列)
スタガード(Staggered)

オーソリニア(Ortholinear)

カラムスタガード(Column Staggered / Columnar)

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