はじめに
母平均の検定に続き、母分散の検定を解説します。
母平均の検定について知りたい方はこちら。
https://zenn.dev/totopironote/articles/bbeb7ec577f235
ちなみに仮説検定は, 帰無仮説 H と対立仮説 K として
片側検定
\begin{align*}
(1) & \ H: \theta = \theta_0, \ K: \theta > \theta_0; &
(1') & \ H: \theta = \theta_0, \ K: \theta < \theta_0; \\
(2) & \ H: \theta \leq \theta_0, \ K: \theta > \theta_0; &
(2') & \ H: \theta \geq \theta_0, \ K: \theta < \theta_0; \\
\end{align*}
と両側検定
(3) \ H: \theta = \theta_0, \ K: \theta \neq \theta_0
があります。
(2),(2’)は(1),(1’)と同様の棄却域を考えれば良いです。(3)は(1)と(1’)を合わせた棄却域を考えれば良いです。
平均\mu ,分散\sigma^2をもつ正規分布からデータが得られるとする。正規分布であることに注意!
母分散の検定は平均\muが既知かどうかの場合分けがありますが、どちらもカイ二乗分布に帰着させればよいので簡単です。
これらの場合について詳しく見ていきます。
母分散の検定
(1)のパターンを見ていく。
H:\sigma^2=\sigma_0^2 , \ K:\sigma^2 > \sigma_0^2
の水準\alphaの問題を考える。平均\mu,分散\sigma^2の分布からのn個のデータをX_1,\dots ,X_nとする。
まず、Hのもとで考える。つまり母分散\sigma^2が\sigma_0^2であると仮定する。
統計量Vを次のように定義する。
\begin{equation}
V = \sum_{i=1}^n\left(\frac{X_i - E(X)}{\sqrt{Var(X)}}\right)^2
\end{equation}
1. 平均\mu が既知のとき
V = \sum_{i=1}^n\left(\frac{X_i - \mu}{\sigma_0} \right)^2
となる。したがってVは自由度nのカイ二乗分布に従う。
\chi_n^2分布の上側100\alpha%点 : \chi_\alpha^2(n)
棄却域
C = (\chi_\alpha^2(n), \infty)
とすれば、
\begin{align*}
v_0 > \chi_\alpha^2(n) \Rightarrow H\text{を棄却}\\
v_0 \leq \chi_\alpha^2(n) \Rightarrow H\text{を受容}
\end{align*}
2. 平均\mu が未知のとき
平均\muが未知なので、代わりに標本平均\bar X = n^{-1}\sum_{i=1}^nX_i を用いる。
V = \sum_{i=1}^n\left(\frac{X_i - \bar X}{\sigma_0} \right)^2
標本平均を用いているのでVは自由度n-1のカイ二乗分布に従う。
\chi_{n-1}^2分布の上側100\alpha%点 : \chi_\alpha^2(n-1)
棄却域
C = (\chi_\alpha^2(n-1), \infty)
とすれば、
\begin{align*}
v > \chi_\alpha^2(n-1) \Rightarrow H\text{を棄却}\\
v \leq \chi_\alpha^2(n-1) \Rightarrow H\text{を受容}
\end{align*}
まとめ
「母分散の検定はカイ二乗分布に帰着させる」とだけ覚えておきましょう。
参考文献
Discussion