『RPGツクールMZ』の[ファイル]メニューのヘルプ
はじめに
『RPGツクールMZ』の機能のうち、メインメニューの[ファイル]に含まれる機能について解説します。
メインメニュー全体の解説は 『RPGツクールMZ』メインメニューのヘルプをご覧ください。
ショートカットキー
著者がMacユーザなので、基本的にMacでの画面や操作方法で記述しています。
Windowsユーザのかたは、ご自分の環境に合わせて読み替えてください。
記号 | Mac | Win |
---|---|---|
⌘ | command | Ctrl |
⇧ | shift | Sft |
⌥ | option | Alt |
⌃ | control | なし |
[⌃]はコンテキストメニュー(いわゆる右クリックメニュー)を表すのに使っています。
用語
プロジェクト…『RPGツクールMZ』で作るゲームに使われるファイル(画像・音声・その他データ)をひとまとめにしたフォルダです。
Steam… 主にゲームソフトのダウンロード販売を行うValve Corporation開発のプラットフォームです。『RPGツクールMZ』本体や各種素材が買えます。Mac版はSteamでしか買えません。
ワークショップ… Steamのサービスのひとつで、利用者が作ったゲームや素材を共有できます。
ペイン… ウィンドウを区切った領域のことです。通常はペインと呼ばずに中に含まれるものによってリストやパレット、ビューと呼ばれます。
コアスクリプト…『RPGツクールMZ』で作ったゲームを動かすための中心となるプログラムです。プラグインは含みません。
プラグイン… ゲームの機能を拡張するプログラムです。付属しているもの、ユーザが公開しているものがあります。自作もできます。
収録素材… 『RPGツクールMZ』本体に含まれる素材のことです。RTPと呼んだりします。RTPは『RPGツクールMZ』においては正しい用語ではありませんが、古参のツクールユーザの間ではよく使われます。
メインメニュー
メインメニュー(Windowsでは多少異なります)
ファイルメニュー
プロジェクトの新規作成
ゲームに必要なファイルのセットを指定したフォルダに用意します。
豆知識
ツールバーのボタン
仕様頻度が低いのに、ツールバーの左端に[プロジェクトの新規作成]ボタンが用意されています。機能はメニューと同じです。
初心者を手厚くフォローしたいなら[チュートリアル]と[ヘルプ]ボタンを置く方が、ずっと良い気がします。
そもそも個人の嗜好が大きい部分なので、ツールに表示するボタンのカスタマイズ機能を用意して欲しいところではあります。
[新規プロジェクト]ダイアログ
- [名前] …… プロジェクトのフォルダの名前です。
- [ゲームタイトル] …… ゲームのタイトルです。タイトル画面で表示されます。
- [場所] …… これからプロジェクトが作成されるフォルダのパスです。
- [選択…] …… [場所]に入るフォルダのパスを指定するダイアログが出ます。
各項目は後で変更できるので、とりあえずそのまま[OK]ボタンを押しても構いません。
豆知識
現在編集中のプロジェクトの[場所]はメインメニューの[ゲーム]-[フォルダを開く]で開いて確認できます。
[名前]はフォルダ名なので、RPGツクールMZを起動していない時にFinder上(Windowsだとエクスプローラーらしいです)で通常のフォルダと同様に変更して構いません。
[ゲームタイトル]は[データベース]-[システム1]の項目[ゲームタイトル]に当たる文字列です。
参考:『RPGツクールMZ』[データベース]-[システム1]のヘルプ
[プロジェクトの新規作成]は具体的には『RPGツクールMZ』のアプリケーションに含まれているプロジェクトファイル(音声・画像などの素材)を指定した場所(フォルダ)にコピーして名前を付け替え、game.rmmzproject
とpackage.json
ファイルを追加します。
(Windowsだとファイル名が違う気がします)
豆知識
コピー元のプロジェクトはアプリケーションRPGツクールMZ.app
を[コンテクストメニュー]-[パッケージの内容を表示]を選択して開いたフォルダをたどったRPGMZ.app/Contents/Resources/newdata/
にあります。
このファイルはアップデートによって書き換えられるので、このファイルを直接書き換えて初期状態を変更してもアップデートで標準のファイルに戻されるので注意してください。
(Windowsでどうなっているのかは知りません)
game.rmmzproject
はプロジェクトをRPGツクールMZで開くためのファイルです。中身はバージョンを示す文字(例えば"RPGMZ 1.8.0")が書いてあるだけのテキストファイルです。
RPGツクールMVのプロジェクトにこのファイルをコピーして開けば、プラグインを除くMV→MZの移植作業は完了します。
package.json
はゲーム起動時に必要なタイトルや画面解像度などの情報が入ったファイルです。拡張子の通りJSONファイルです。
例:
{
"name": "rmmz-game",
"main": "index.html",
"chromium-args": "--force-color-profile=srgb",
"window": {
"title": "三頭身アドベンチャー",
"width": 816,
"height": 624,
"position": "center",
"icon": "icon/icon.png"
}
}
プロジェクトを開く
プロジェクトファイル
プロジェクトフォルダではなく、そこに含まれるプロジェクトファイル(上に図示)を指定して開きます。
豆知識
<Bad!> macOS では[プロジェクトの新規作成…] や [プロジェクトを開く…] で、複数のプロジェクトを開くことができません。
以前は裏技的にターミナルから開くことで2つのプロジェクトを開けましたが、それもできなくなりました。
<Bad!> macOS では『RPGツクールMZ』のバージョンによってはFinderからプロジェクトファイルを開くことができず『RPGツクールMZ』が起動しない、起動しても前に開いていたファイルが開くなど、不具合が続いています。
『RPGツクールMZ』アプリケーションアイコンにファイルをドロップしてもダメです。
しょうがないので、この[プロジェクトを開く]メニューを使って開くしかありません。
プロジェクトを閉じる
プロジェクトを閉じます。変更を保存していない場合は、保存確認ダイアログが表示されます。
Windowsでは全てのプロジェクトを閉じるとアプリケーションが終了するらしいです。
<Bad!> macOS ではウィンドウがすべて閉じられても、アプリケーション自体は終了しないのが通常の挙動ですが、[プロジェクトを閉じる…]を実行するとアプリケーション自体が終了してしまいます。
また、前述のように複数のプロジェクトを開けないので実質的に[RPGツクールMZを終了]と同じ機能になっています。
Steamワークショップについて
[ワークショップから開く…]と[ワークショップにアップロード…]は『RPGツクールMV』の [Steam管理] にあたるもので、Steam版のみに含まれます。
<Bad!> [ワークショップから開く…]と[ワークショップにアップロード…]の使い方はヘルプに記載がありません!公式サイトなども含めて一切説明されてないようです。
なのでここからの説明はかなりの部分が憶測で書かれています。悪しからず。
Steamの[ライブラリ]-[RPGツクールMZ]のページにある[ワークショップ]タブを選択する(他にも到達ルートはあります)と、どのようなものが共有できるかわかります。
『RPGツクールMZ』のワークショップには制作したゲームほか、素材(画像・プラグイン)などがプロジェクトの形で共有されています。
ワークショップから開く
<New!> Steamでサブスクライブしたファイルを開きます。(※Steam版のみの機能です)
<Bad!> サブスクライブでは意味がわかりません。注文が意味的には近いかもしれません。[サブスクライブ]ボタンを押すと[購読中]に変わるのも意味不明です。
サンプルゲームは公式のDOWNLOAD | RPGツクールMZページからダウンロードするか、Steamの『RPGツクールMZ』のストアページの「サンプルゲーム」の部分に並んでいるものからインストールできます。
しかし実行形式としてインストールされるのでプロジェクトの中身を見ようとすると結構面倒臭い事になります。
そこで、Steamの『RPGツクールMZ』ワークショップのページに行き、サンプルゲームのタイトルで検索して出てきたページで[サブスクライブ]ボタンを押します。
次に『RPGツクールMZ』のメインメニューから[ファイル]-[ワークショップから開く]を選択します。
[ワークショップから開く]ダイアログ
そこに[サブスクライブ]した項目があるので、[開く]ボタンを押すとプロジェクトを開けます。
……これはこれで結構面倒臭いのですが、正式な手順のようです。
他のワークショップの項目も同様に[サブスクライブ]して『RPGツクールMZ』の[ワークショップから開く]事でプロジェクトとして開けます。
私もこの記事を書くにあたって登録したので Steam版『RPGツクールMZ』ユーザの方は試してみてください。
収録素材の歩行グラフィックを三頭身化したもののサンプルプロジェクトです。豆知識
ダウンロードしたプロジェクトが保存されている場所は[ゲーム]-[フォルダを開く]で確認できます。
使いやすい場所に移動してフォルダ名を変えて使うと良いでしょう。
なおSteamで[サブスクライブ]をやめたプロジェクトは[ワークショップから開く]ダイアログからは消えますがフォルダ自体は残っているので、必要ないならば削除しておきましょう。
ただ、フォルダ名が数字だけなのでどのフォルダがどのプロジェクトかわかりにくいのが難点です。
ワークショップにアップロード
<New!> Steamのワークショップにプロジェクトをアップロードします。(※Steam版のみの機能です)
[ワークショップにアップロード]ダイアログ
ワークショップにアップロードするには、SteamのWebサイトで行う手順(以下、行頭にSteamと記述)と『RPGツクールMZ』で行う手順(以下、行頭にMZと記述)があります。
設定はSteamアプリケーションでも行えますが、アップロード後にMZからブラウザで公開先URLを開くので、SteamのWebサイトで行うことを前提に書きます。
- Steam:『RPGツクールMZ』と同じSteamアカウントでログイン。
- MZ:[ファイル]-[ワークショップにアップロード]メニューを選ぶ。
- MZ:[タグ]にあるカテゴリ・ゲームジャンル(リソースタイプ)・フレーバーを設定。
- MZ:[プレビュー画像]の市松模様の領域をダブルクリックして画像を指定。
- MZ:[説明]にプロジェクトの説明を書く。
- MZ:[提出]ボタンを押すとアップロードが開始される。
- Steam:ブラウザでワークショップのプロジェクト公開ページが開く。
- Steam:[オーナーコントロール]-[タイトル & 説明の編集]を選択。
- Steam:[言語]が[英語]としてアップロードされている(多分バグ)
- Steam:[説明]の部分に書いた文をカット。
- Steam:[言語]を[日本語]に切り替える。
- Steam:[説明]の部分に、先ほどカットした文をペースト。
- Steam:[説明]と同様に[タイトル]も[英語]から[日本語]にカット&ペースト。
- Steam:余裕があれば[英語]など他の言語にも[タイトル]と[説明]を書く。
- Steam:[セーブ]ボタンを押す。
- Steam:複数のサンプル画像や動画を登録する場合[画像 & 動画の追加 / 編集]。
- Steam:成人向けであったりする場合[コンテンツ記述子]を変更。
- Steam:[オーナーコントロール]-[公開設定変更]を[公開]に変更。
- Steam:自動でウイルスチェックなどを行うため、公開までしばらく時間がかかる。
- Steam:多分30分ぐらいで公開完了。
以上で他のワークショップに登録されているプロジェクトと同様に[サブスクライブ]を行なって、[ワークショップから開く]ことができるようになります。
<Bad!> [言語]に関しては、日本語のタイトルおよび説明が設定されていても英語で表示されたり、Steamの扱いが今ひとつ不安定です。
日本語でしか登録しないのなら、いっそ[英語]の設定欄に日本語が入力されている状態の方がいいかもしれません。
プロジェクトに保存されるファイル
『RPGツクールMZ』側でワークショップの設定を行うと、プロジェクト内に workshop.json
という設定ファイルと workshop.png
というサムネイル画像ファイルが作られます。
以下は workshop.json
の中身です。(改行と行頭に空白を入れて整えています)
{
"category":1,
"genre":4,
"flavor":0,
"description":"収録素材の頭身を上げたキャラクター(+α)のサンプルプロジェクトです。\n収録素材のアーカイブは https://tobishima.itch.io/tf-tallspritemz で公開しています。\nアップデートはitch.ioを優先するので、キャラクターを利用する際は、そちらからダウンロードしてお使いください。\n"
}
次回からは、この情報が[ワークショップにアップロード]ダイアログに入力された状態で開きます。
カテゴリやジャンルに関しては特に指針はないようです。
ワークショップではタグ別に選択できるので、どのようなプロジェクトがアップロードされているか確認して、近そうなタグを選べばいいかと思います。
サムネイルのサイズは特に指定はないようですが、現在Steamワークショップの一覧では正方形でレイアウトされているので、正方形が無難かもしれません。
画像ファイルのフォーマットもPNG以外は試していませんが、PNGが無難でしょう。
必要最低限のプロジェクトにする
ワークショップで公開する際、不要なファイルを削除しておいた方がいいでしょう。
その方法について詳しくは、『RPGツクールMZ』のプロジェクトをダイエットするをご覧ください。
デプロイメント
プロジェクトを『RPGツクールMZ』本体なしで実行できる形式に出力します。
[デプロイメント]ダイアログ
- [プラットフォーム] …… 出力方法を選択します。
- [オプション] …… 出力の設定です。
- [暗号化] …… 暗号化して素材を保護します。
- [出力場所] …… これからプロジェクトが作成されるフォルダのパスです。
- [選択…] …… [出力場所]に入るフォルダのパスを指定するダイアログが出ます。
プラットフォーム
出力方法を選択します。
- [Windows] …… Windows用の実行形式(exe)で出力します。
- [macOS] …… Mac用の実行形式(app)で出力します。
- [Webブラウザ / Android / iOS] …… Webページ用のHTML形式で出力します。
豆知識
<Bad!> WindowsでMac用に出力した場合、素材のファイル名に日本語(いわゆる2バイト文字)が使われていると動作しません。
<Bad!> Webブラウザ版でも同様のファイル名問題が起きます。
<Bad!> 開発部も日本語ファイル名問題を認識しているようです。なのにエディタで日本語ファイル名のファイルを選べてしまうは問題です。
『RPGツクールMZ』では実行形式の出力にNW.jsという仕組みを使っています。
NW.jsの公式サイト
これはHTMLをローカル(パソコン上)で表示するプログラムで、Webブラウザと同様の仕組みが入っています。比較的ファイルサイズは小さいとは言えブラウザの機能がまるっと入っているため、どうしてもアプリケーションのサイズが大きくなってしまいます。
<Bad!> NW.jsはMacでもWindowsでも、タスクが残り続けてパソコンの処理能力を無駄に消費する問題が起きやすく、動作が重くなった場合にアクティビティモニタ(タスクマネージャ)で終了していないNW.jsのタスクを見つけて終了させる必要があります。
テストプレイもNW.jsで動作するので、テストプレイを繰り返していると、不必要なタスクが残っている場合があるので、「動作が重いな?」と思ったらアクティビティモニタ(タスクマネージャ)でチェックしてみてください。
<Bad!> Mac版では、実際に使われている素材のファイルサイズとは無関係に、異常にファイルサイズの大きな(GB単位の)アプリケーションが出力されることがあります。正常に出力できる環境の方が多いようですが…原因は不明です。
<Bad!> Mac用の実行形式(app)をダウンロードして圧縮ファイルを解凍後、その場で実行しようとしても動作せず、一度別のフォルダに移動するなどしないと実行できないことがあります。
[Webブラウザ / Android / iOS]は以前[ウェブブラウザ]という表記でした。出力内容は特に変わってないと思います…………少々盛りすぎではないでしょうか。
これでは、スマホ用のアプリが出力されるような雰囲気を醸し出しています。
実際はスマホのブラウザでも動くというだけです。FireStickやAppleTV、ゲーム機一般でも動きますよね。ブラウザ入ってますし。動作速度はおいといて。もしかしたらドリームキャストでも動くかも。
オプション
オプションの項目は[未使用ファイルを除外する]だけです。
このオプションをチェックしておくと、デプロイメント時にプロジェクトで使われていないファイルが削除され、ファイルサイズを削減できます。
プラグインで使用しているファイルなど、必要なのに削除される場合があります。
その際、公式プラグインのMaterialBase.jsに必要なファイルを登録することで、削除を回避できます。
<Bad!> 戦闘がないゲームでもアクターで[[SV]戦闘キャラ]を設定していると、サイドビュー画像が削除されないなど、必要ないのに削除されないファイルも多くあります。
暗号化
素材を暗号化して、容易にデータを抜き出して使用できないようにします。
配布・販売されている素材には、規約上「暗号化を必須」としているものもあるので、そのような場合にはチェックを忘れないようにしてください。
暗号化は[画像ファイル]と[音声ファイル]個別に指定できます。
暗号化キーは暗号化の際に利用する文字列です。任意の(テキトーな)文字列を入力しておきます。
最後に
以上でファイルメニューの機能紹介は終了です。
ワークショップのSteam側の作りはツクール側ではどうしようもありませんが、設定の分かりづらさや意図のわからない挙動が見られます。
加えてツクール側でもヘルプがないため『RPGツクールMZ』発売から3年半たった2024年4月現在でも200を少し超えた程度しかプロジェクトが登録されておらず過疎状態です。
機能自体は非常に便利なので、この記事で利用者が増えると良いと思います。
デプロイメントに関しては、Mac版の実行形式の不具合が多すぎて、Macの環境でテストしたかどうか以前に、開発部内にMac環境がないのでは疑惑すら湧いてきます。
また、バージョン1.1.0から1.6.1まで[ゲームアツマールにアップロード]機能が付いていて、ブラウザ用のゲームを公開する場所まで用意されていて、さらに気軽に公開できていたのですが、公開場所のゲームアツマールのサービス終了に伴ってメニューから削除されたのが残念です。
とはいえ、他の開発環境に比べると「ボタン一発でアプリを出力」と言っても過言ではないほどの気軽さがあるのはツクールの美点です。
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