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どの職場にもある「ナラティブの溝」を埋める方法 『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』を読んで

2024/11/17に公開

どの職場にもある「ナラティブの溝」を埋める方法 『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』を読んで

https://publishing.newspicks.com/books/9784910063010

概要

1年前にマネージャーになり、マネージャーとしての役割を果たすためにさまざまな本を読みましたが、その中で最も他の人にもぜひ読んでほしいと思った一冊です。
宇田川元一氏の本書は、「わかりあえなさ」を出発点として、新しい関係性を築くための「対話」の重要性を説いた本です。
「適応課題」「対話」「ナラティブ・アプローチ」という3つのキーワードを軸に、組織内のよくある問題(上司が無能と思われる状況や部署間対立など)を例に挙げ、その解決の道筋を示しています。

本書は、単なる組織論にとどまらず、人に優しくなれる視点を提供していることです。読後には、人間関係や職場でのトラブルへの向き合い方が変わるはずです。
特に印象的だったのは、肺がん患者と看護師のエピソードです。専門家として正しいことを伝えても、伝えられた相手には違和感が残る――こうした状況は仕事でよく直面する問題ですが、本書はその解決に向けた具体的なアプローチを教えてくれます。

組織内の対立やすれ違いを乗り越えるには、相手との「わかりあえなさ」を認めつつ、対話を通じた新たな関係性の構築が鍵となります。
本書はその具体的な方法を示しながら、職場や人間関係での困難を解決する道を教えてくれます。
管理職の方にもエンジニアとしてお客様対応をしている方にも、ぜひ手にとって読んで頂きたい本です。


メモ

以下は本書のキーワードのメモになります。

適応課題

  • 適応課題: 従来の方法では解決できず、新たな関係性やアプローチが必要な問題
    • : 部署間の衝突や価値観の違いによる対立
  • 技術的問題: 既存の方法で対応可能な問題(適応課題とは対照的)
    適応課題に取り組むには「対話」を通じた関係性の再構築が不可欠。

対話

  • 私とそれ」: 相手を道具のように扱う関係性
  • 私とあなた」: 相手をかけがえのない存在とみなす関係性
    対話とは、互いを「あなた」として受け入れ、新しい関係性を築くプロセスを指す。

ナラティブ・アプローチ

  • ナラティブ(物語)とは、個々人が置かれた環境や価値観、文化を反映した解釈の枠組みのこと
  • 対話を通じて、自分のナラティブを広げ、新たな関係性を築くことが重要です
    ナラティブ・アプローチの目的は、相手を自分の都合に合わせて変えるのではなく、自分の視点の限界に気づき、それを改めることで、新たな関係性を築くこと。

ナラティブの溝に橋を架ける4つのプロセス

  1. 準備: 相手との間に「溝」があることを認識する
  2. 観察: 相手の言動や状況を注意深く観察し、その背景を探る
  3. 解釈: 橋を架ける方法を考える
  4. 介入: 実際に行動し、新しい関係性を築く

これらのプロセスを繰り返すことで、対話を通じて溝を埋め、新しい関係を生み出す。
「正しい言葉」で相手を否定する不快感や違和感に向き合い、対話を通じて新たな橋を架けること。

対話を阻む5つの罠

  1. 迎合しすぎてしまう
  2. 相手に自分の意見を押しつける
  3. 馴れ合いになりすぎる
  4. 他のグループから孤立する
  5. 結果が出ず、徒労感に支配される

自分の痛みや苦しみ違和感をなきものとしないことを通じて、他者の痛みや苦しみを理解し、自分と他人の間に繋がりを見出し、連帯していく。

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