Zenn記事のフロントマターを自動チェックするツールを作ってみた
はじめに
Zennでは、Markdownファイルのフロントマター(メタデータ部分)を使って記事や本の情報を管理しています。しかし、記事や本が増えてくると、フロントマターの記述が一貫していないという問題が発生しがちです。必須項目の漏れや順序の不一致などがあると、サイトの品質や保守性に影響します。
私自身、Zennで複数の記事や本を管理するうちに、フロントマターの書き方が記事ごとにバラバラになっていることに気づきました。特にチーム内で執筆を分担する場合など、フォーマットの統一が課題になります。そこで個人的に、Zenn向けのMarkdownファイルを自動でチェックして修正できるツールを作成しました。
今回は、この個人制作ツールである「tool-lint-md」を紹介します。このツールを使えば、一貫性のある記事・本の管理が可能になります。
Zenn公式のMarkdown管理について
先に、Zenn公式のMarkdown管理の仕組みについて簡単に説明します。
Zenn CLI
Zennでは「Zenn CLI」というツールを使って、ローカル環境で記事を執筆・管理することができます。基本的な使い方は以下の通りです:
# Zenn CLIのインストール
npm init --yes
npm install zenn-cli
# プロジェクトの初期化
npx zenn init
# 新しい記事の作成
npx zenn new:article
# プレビュー開始
npx zenn preview
初期化後、以下のようなディレクトリ構造が作成されます:
.
├── articles/ # 記事を格納するディレクトリ
├── books/ # 本を格納するディレクトリ
├── .gitignore
├── package.json
└── README.md
記事ファイルはarticles/
ディレクトリ内に、本はbooks/
ディレクトリ内に配置します。各ファイルのフロントマターには、タイトル、絵文字、タグなどの情報を記述します。
Zenn CLIは基本的な管理機能を提供していますが、フロントマターの一貫性をチェックする機能は含まれていません。ここに私の作成したツールが役立ちます。
ツールの概要
tool-lint-mdは、Zenn向けの記事(articles)および本(books)のフロントマタープロパティを検証・整形するためのツールです。
主な機能は以下の通りです:
- フロントマタープロパティの必須チェック (コンテンツタイプ別)
- プロパティの順序チェック
- slugの形式チェック
- 本のconfig.yamlのチェック
- 章の番号付けとファイル名のチェック
- 自動修正機能 (
--fix
オプション付きで実行時) - カスタム設定ファイルのサポート
- テスト機能 (
--test
オプションで実行可能)
このツールを導入することで、記事や本の品質を一定に保ち、Zennコンテンツ全体の一貫性を維持することができます。
MDとMDXの違い
このツールを理解する前に、MDとMDXの違いを簡単に説明しておきます:
- MD (Markdown): 軽量マークアップ言語で、プレーンテキストに簡単な書式を追加するもの
- MDX: JSXをMarkdownに組み込んだもので、React コンポーネントをMarkdown内で使用可能
このツールはZenn形式のMarkdownファイル専用です。MDXファイルには現在まだ対応していません。
※これから良い感じに対応できるようになるかもしれませんが( ^ω^)・・・
インストール方法
以下のコマンドでリポジトリをクローンし、必要な依存関係をインストールします:
# リポジトリのクローン
git clone https://github.com/telosh/tool-lint-md.git
cd tool-lint-md
# 依存関係のインストール
npm install
あるいは、既存のプロジェクトに組み込む場合は、必要なファイルをコピーして使用することもできます。
使用方法
基本的な使い方
検証のみを行う場合:
npm run lint:zenn
検証と自動修正を行う場合:
npm run lint:zenn:fix
直接実行する場合
ts-nodeを使って直接実行することもできます:
# 検証のみ
npx ts-node scripts/lint-zenn.ts
# 自動修正
npx ts-node scripts/lint-zenn.ts --fix
# テストモードでの実行
npx ts-node scripts/lint-zenn.ts --test
Zennの記事・本のフロントマター
記事(article)のフロントマター
---
title: "記事のタイトル"
emoji: "😸" # アイキャッチとして使われる絵文字(1文字)
type: "tech" # tech: 技術記事 / idea: アイデア記事
topics: ["markdown", "zenn", "npm"] # タグ(1〜5つまで)
published: true # 公開設定(falseで下書き)
published_at: 2023-06-15 # 公開日時(省略可能)
---
本の設定ファイル(config.yaml)
title: "本のタイトル"
summary: "本の紹介文"
topics: ["markdown", "zenn", "npm"] # トピック(5つまで)
published: true # 公開設定(falseで下書き)
price: 0 # 無料の場合は0、有料の場合は500〜5000
chapters:
- chapter1
- chapter2
カスタマイズ設定
zenn-lint.config.json
ファイルを作成することで、リンターの動作をカスタマイズできます。以下は設定例です:
{
"propertyOrder": [
"title",
"emoji",
"type",
"topics",
"published",
"published_at"
],
"requiredProperties": {
"article": ["title", "emoji", "type", "topics", "published"],
"bookChapter": ["title"],
"default": ["title", "published"]
},
"bookConfigRequiredProperties": [
"title",
"summary",
"topics",
"published",
"price",
"chapters"
],
"contentPattern": "articles/**/*.md",
"contentTypePatterns": {
"article": ["articles/"],
"bookChapter": ["books/"]
}
}
設定オプションの説明
オプション | 説明 |
---|---|
propertyOrder | フロントマタープロパティの推奨順序 |
requiredProperties | コンテンツタイプ別の必須プロパティ |
bookConfigRequiredProperties | 本のconfig.yamlの必須プロパティ |
contentPattern | Markdownファイルの検索パターン |
contentTypePatterns | コンテンツタイプを判定するためのパスパターン |
検証内容
このツールは以下の内容を検証します:
- 記事のフロントマターの必須プロパティと順序
- 記事のスラッグ(ファイル名)の有効性
- 本のconfig.yamlの必須プロパティ
- 本のチャプター構成の正しさ
- 本のチャプターのフロントマター
- チャプターのファイル名が数字.スラッグ.md形式に準拠しているか
- 重複したチャプタースラッグがないか
実装のポイント
このツールは主にTypeScriptで実装されています。核となる機能は以下の通りです:
- Markdownファイルの検索と読み込み
- フロントマターの解析
- コンテンツタイプの判定(記事か本のチャプターか)
- プロパティの検証(必須項目と順序)
- 自動修正(必要に応じて)
特に、コンテンツタイプによって必須項目が異なる仕様に対応している点が実用的です。また、本のチャプターの順序や命名規則を自動でチェックできる点も便利です。
まとめ
Zenn向けのMarkdownファイルで記事や本を管理している場合、フロントマターの一貫性は非常に重要です。tool-lint-mdを導入することで、以下のメリットが得られます:
- 記事や本のメタデータ品質の向上
- チーム内での一貫した記事作成
- CIパイプラインに組み込むことで自動的な品質保証
このツールは個人的な制作物として公開していますが、Zennユーザーの皆さんのお役に立てれば幸いです。ぜひ自分のプロジェクトに合わせてカスタマイズし、Zennコンテンツ管理の効率化に役立ててください。
現在、TypeScriptの経験を深める目的で開発・メンテナンスを続けており、機能追加や改善を行っています。不具合や改善点がありましたらGitHubのIssueやこの記事へのコメントでお知らせください。フィードバックをもとに改善していきたいと思います!
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