恋愛の意思決定を数学モデルで考察しよう
「今付き合っている恋人と結婚すべきか別れるべきか 」という問題は、真剣に恋愛をしている方々にとっては深刻な問題の一つです。1か月後、1年後の恋人との関係性はどうなるかは予想できないし、どのタイミングで決めるのが合理的な選択なのだろうと悩みは尽きません。
そこで「現在の恋人と付き合い続けるか、結婚するか、別れるか」という意思決定について、確率微分方程式を用いた数学モデルで考察してみようと思います。
数学的な部分に特に関心が無い方でも、物語の設定や考察の部分を読んでいただくだけで十分楽しめるかと思いますので、ぜひご一読ください。
なお本記事の執筆にあたっては、以下の記事を参考にさせていただきました。大変興味深い記事となっておりますので、こちらもぜひご覧ください。
https://zenn.dev/joanofarc/articles/4adbd05e502dc2
物語の設定
山田さん(仮名)は現在ある恋人と付き合っています。
カップルとしての関係性は揺らぎやすいものです。恋人との関係が良好な時は楽しいですが、ときにはけんかをして恋人との関係が悪化することもあります。この世界では、ある時点 t t t における恋人との関係性は関係値 θ t \theta_t θ t として数値化できる とします。
山田さんには、二つの選択肢があります。一つ目は、今付き合っている恋人と結婚すること です。この世界では、結婚をすることで安定した関係性を築けるものとします。すなわち、恋人として付き合っている時には将来の関係値は予測できないものでしたが、結婚をするとその時点での関係値が一生続く とします。
もう一つの選択肢は、今付き合っている恋人と別れること です。関係値が低い恋人と付き合い続けるくらいならば、いっそ別れてしまって独身としての人生を謳歌した方が幸せかもしれません。独身でいる場合には、関係値 b b b に相当する幸福が得られる とします。なお一度別れてしまうと、その後は恋人と付き合うことなく一生独身であるとします。
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ここで定めた物語の設定は、もちろん100%現実に即しているわけではありません。
例えば以下のような指摘が考えられるでしょう。
現実には関係性を数値化することなんてできない
結婚した後に関係性が悪化して離婚するケースもあるだろう
別れた後に復縁する、あるいは別の恋人を探すことも可能ではないか
もちろんこれらはいずれももっともな批判ではありますが、あまりにも複雑な現実をそのままモデル化することは不可能 だということをご理解いただきたいです。
大切なのは、我々が分析したい特性がきちんと捉えられているかという点です。このように細部を捨象し意図的に単純化したモデルはトイモデル(toy model) と呼ばれています。現実のメカニズムを明らかにするうえでの出発点としては、意義のあるものと言えるでしょう。
数学モデルの構築
それでは上で述べた設定を基に、数学的に定式化をしていきましょう。なお、モデルの構築手順に関しては一通り説明していきますが、詳細な導出に関しては一旦割愛させていただきます(記事の反響があれば追記しようと思います)。
なお本記事では、リアルオプション理論 を恋愛現象にあてはめてモデルを構築していきます。リアルオプション理論とは、簡単に言うと「株価や為替の変動など不確実な現象を扱う数学的な枠組みを、金融以外の様々な分野での意思決定にも活用しよう!」という、経済学(特に金融工学)における考え方の一つです。本記事を通じて、少しでも当該分野に関心を持っていただければ幸いです。
恋人との関係性の変化
恋人との関係値 θ t \theta_t θ t は
d θ t = μ θ t d t + σ θ t d z t , θ 0 = θ
d\theta_t = \mu \theta_t dt + \sigma \theta_t dz_t,\quad \theta_0 = \theta
d θ t = μ θ t d t + σ θ t d z t , θ 0 = θ
に従うとします。これは幾何ブラウン運動と呼ばれる確率過程(確率微分方程式)の一種です。第1項は時間的な変化を表し、第2項は予測できない変化を表します。株価の変動などを表す際によく用いられるものです。
なお、以下では μ < 0 \mu<0 μ < 0 として考えていきます。すなわち、平均的に見ると関係値 θ t \theta_t θ t は減少傾向にあり、関係性が悪化していくようなケースを考えます。
恋人と付き合い続けることの価値
この世界では、この恋人との関係値がそのまま幸福度を表すと仮定します。山田さんは将来にわたって得られる幸福度を比較し、恋人とこのまま付き合い続けるか、今結婚するか、それとも別れるかを考えるものとします。
まず、恋人と付き合うことで得られる幸福度を考えます。その価値は、現在の関係値 θ \theta θ の関数として計算できます。
カップルとして恋人と付き合っている時に享受できる純粋な生涯幸福度は
V 0 ( θ ) = E [ ∫ 0 ∞ e − δ t θ t d t ]
V_0(\theta) = \mathbb{E}\left[\int_0^\infty e^{-\delta t}\theta_t dt\right]
V 0 ( θ ) = E [ ∫ 0 ∞ e − δ t θ t d t ]
で計算できます。ここで δ > 0 \delta>0 δ > 0 は主観的な時間選好率 (subjective time preference)と呼ばれるもので、δ \delta δ が高いほど将来よりも現在の幸福を重視する傾向が強いことになります。
ここで伊藤の公式 (伊藤の補題、Itô's lemma)と呼ばれるものを使うと
θ t = θ e ( μ − 1 2 σ 2 ) d t + σ z t
\theta_t = \theta e^{(\mu - \frac12 \sigma^2)dt + \sigma z_t}
θ t = θ e ( μ − 2 1 σ 2 ) d t + σ z t
とできることがわかります。これより
V 0 ( θ ) = E [ ∫ 0 ∞ e − δ t θ e ( μ − 1 2 σ 2 ) d t + σ z t d t ] = θ ∫ 0 ∞ e ( μ − δ − 1 2 σ 2 ) t E [ e σ z t ] d t
V_0(\theta) = \mathbb{E}\left[\int_0^\infty e^{-\delta t}\theta e^{(\mu - \frac12 \sigma^2)dt + \sigma z_t} dt\right]
= \theta \int_0^\infty e^{(\mu -\delta - \frac12 \sigma^2)t}\mathbb{E}\left[e^{\sigma z_t} \right]dt
V 0 ( θ ) = E [ ∫ 0 ∞ e − δ t θ e ( μ − 2 1 σ 2 ) d t + σ z t d t ] = θ ∫ 0 ∞ e ( μ − δ − 2 1 σ 2 ) t E [ e σ z t ] d t
となります。ここで
E [ e σ z t ] = e 1 2 σ 2 t
\mathbb{E}\left[e^{\sigma z_t} \right] = e^{\frac12\sigma^2t}
E [ e σ z t ] = e 2 1 σ 2 t
となるので、最終的に
V 0 ( θ ) = θ ∫ 0 ∞ e − ( δ − μ ) t d t = θ [ − 1 δ − μ e − ( δ − μ ) t ] 0 ∞ = θ δ − μ
V_0(\theta)
= \theta \int_0^\infty e^{-(\delta - \mu)t}dt
=\theta \left[-\frac{1}{\delta - \mu}e^{-(\delta - \mu)t}\right]_0^\infty
=\frac{\theta}{\delta - \mu}
V 0 ( θ ) = θ ∫ 0 ∞ e − ( δ − μ ) t d t = θ [ − δ − μ 1 e − ( δ − μ ) t ] 0 ∞ = δ − μ θ
を得ます。これが、結婚したり別れたりするといった選択肢を考慮しない場合の生涯幸福度となります。
結婚・お別れができる状態で恋人と付き合い続けることの価値
次に、結婚やお別れの選択肢がある場合を考えましょう。この場合の価値関数は、
V 1 ( θ ) = V 0 ( θ ) + C 1 θ β 1 + C 2 θ β 2
V_1(\theta) = V_0(\theta) + C_1\theta^{\beta_1} + C_2\theta^{\beta_2}
V 1 ( θ ) = V 0 ( θ ) + C 1 θ β 1 + C 2 θ β 2
となります。ただし
β 1 = − ( μ − 1 2 σ 2 ) + ( μ − 1 2 σ 2 ) 2 + 2 σ 2 δ σ 2 > 1
\beta_1=\frac{-\left(\mu-\frac{1}{2}\sigma^2\right)+\sqrt{\left(\mu-\frac{1}{2}\sigma^2\right)^2+2\sigma^2\delta}}{\sigma^2}>1
β 1 = σ 2 − ( μ − 2 1 σ 2 ) + ( μ − 2 1 σ 2 ) 2 + 2 σ 2 δ > 1
β 2 = − ( μ − 1 2 σ 2 ) − ( μ − 1 2 σ 2 ) 2 + 2 σ 2 δ σ 2 < 0
\beta_2=\frac{-\left(\mu-\frac{1}{2}\sigma^2\right)-\sqrt{\left(\mu-\frac{1}{2}\sigma^2\right)^2+2\sigma^2\delta}}{\sigma^2}<0
β 2 = σ 2 − ( μ − 2 1 σ 2 ) − ( μ − 2 1 σ 2 ) 2 + 2 σ 2 δ < 0
です。またC 1 , C 2 > 0 C_1,\,C_2>0 C 1 , C 2 > 0 ですが、この時点では値を定めることができません。
C 1 θ β 1 > 0 C_1\theta^{\beta_1}>0 C 1 θ β 1 > 0 は θ \theta θ が大きくなったときに値が大きくなります。これは、恋人との結婚が選択できることの価値に由来するものと捉えることができます。恋人と付き合い続けるしかない場合と比べ、その気になれば結婚もできるという状況の方が、満足度が高いわけです。
一方、C 2 θ β 2 > 0 C_2\theta^{\beta_2}>0 C 2 θ β 2 > 0 は、θ \theta θ が小さくなったときに値が大きくなる項です。こちらは、恋人を振ることができるという権利に対応する価値と見ることができます。
リアルオプション理論ではこのように、将来の不確実性があるときには、より柔軟な選択ができる方が価値が高い と考えます。
なお、V 1 ( θ ) V_1(\theta) V 1 ( θ ) はベルマン方程式 と呼ばれる微分方程式の解として表されます。ここでは導出に関しては省かせていただきます(記事の反響があれば書こうと思います)。
恋人と結婚・お別れすることの価値
次に、結婚をした場合に山田さんが享受できる価値を考えましょう。結婚した時点から将来にわたって山田さんが得られる幸福度は
V 2 ( θ ) = E [ ∫ 0 ∞ e − δ t θ d t ] = θ δ
V_2(\theta) = \mathbb{E}\left[\int_0^\infty e^{-\delta t}\theta dt\right] = \frac{\theta}{\delta}
V 2 ( θ ) = E [ ∫ 0 ∞ e − δ t θ d t ] = δ θ
となります。
最後に、別れた場合の価値を考えましょう。別れた時点から将来にわたって山田さんが享受する価値は
V 3 ( θ ) = E [ ∫ 0 ∞ e − δ t b d t ] = b δ
V_3(\theta) = \mathbb{E}\left[\int_0^\infty e^{-\delta t}bdt\right] = \frac{b}{\delta}
V 3 ( θ ) = E [ ∫ 0 ∞ e − δ t b d t ] = δ b
となり、θ \theta θ には依存しません。
結婚・お別れするタイミングの計算
山田さんは上で導出した生涯幸福度を比較することで、いつ恋人と結婚あるいはお別れするべきかを合理的に判断します。
関係値がある値 θ ‾ \overline{\theta} θ まで上昇したとき、山田さんは結婚を決意するとします。以下では、この θ ‾ \overline{\theta} θ を結婚閾値 と呼びます。
同様に、関係値が θ ‾ \underline{\theta} θ まで下がったときに、山田さんは恋人と別れるとします(以下、離別閾値 )。
山田さんの意思決定
山田さんの意思決定を分析するには、結婚閾値と離別閾値を計算する必要があります。またこれに伴って、価値関数で登場した未知の定数 C 1 , C 2 C_1,\,C_2 C 1 , C 2 も計算する必要があります。これら4つの値を定めるには、何らかの条件式が必要です。
関係が切り替わる瞬間を考えると、まずその前後での価値は一致していなければなりません。この条件は価値対等条件 (value-matching condition)と呼ばれます。
例えば結婚閾値では、結婚直前の価値関数 V 1 V_1 V 1 と、結婚直後の価値関数 V 2 V_2 V 2 の値が一致していなければなりません。すなわち、
V 1 ( θ ‾ ) = V 2 ( θ ‾ )
V_1(\overline{\theta}) = V_2(\overline{\theta})
V 1 ( θ ) = V 2 ( θ )
が成り立ちます。
またこの切り替えは山田さん自身の意思決定で行われたものです。この場合には、価値関数が滑らかにつながっている、すなわち一階微分の値が一致していなければなりません。これは滑らかな張り合わせ条件 (smooth-pasting condition)と呼ばれます。
結婚閾値においては、
V 1 ′ ( θ ‾ ) = V 2 ′ ( θ ‾ )
V_1'(\overline{\theta}) = V_2'(\overline{\theta})
V 1 ′ ( θ ) = V 2 ′ ( θ )
が成り立ちます。
同様に離別閾値について考えるとお別れの直前と直後で価値関数の値が一致しており、かつ一階微分が等しくなければいけません。そのため、
V 1 ( θ ‾ ) = V 3 ( θ ‾ )
V_1(\underline{\theta}) = V_3(\underline{\theta})
V 1 ( θ ) = V 3 ( θ )
V 1 ′ ( θ ‾ ) = V 3 ′ ( θ ‾ )
V_1'(\underline{\theta}) = V_3'(\underline{\theta})
V 1 ′ ( θ ) = V 3 ′ ( θ )
が成り立ちます。2つの閾値 ( θ ‾ , θ ‾ ) (\overline{\theta},\,\underline{\theta}) ( θ , θ ) と2つの未知定数 ( C 1 , C 2 ) (C_1,\, C_2) ( C 1 , C 2 ) は、これら4本の連立方程式を解くことで求まります。
なお、一次の連立方程式等であれば文字を整理してスッキリと解くことができるのですが、今回は θ β 1 \theta^{\beta_1} θ β 1 などの項が入っているため、そのまま解くことはできません。そのため、実際に与えられたパラメータに対して、これらの条件式が成り立つような値の組み合わせを見つけていくといった形で、数値的に解くことになります。
シミュレーション結果と考察
基本ケース
それでは、実際に値を当てはめてシミュレーションを行ってみましょう。
ここまで登場したパラメータとそれぞれの意味を以下に再掲しておきます。
b b b :独身の場合に得られる幸福度
δ \delta δ :主観的な時間選好率(将来の幸せと比べてどの程度現在の幸せを重んじるかを表す)
μ \mu μ :恋人との関係性の平均的な時間変化
σ \sigma σ :恋人との関係性の変化における不確実性
まずは基本的なケースとして、b = 0.4 , δ = 0.01 , μ = − 0.05 , σ = 0.2 b = 0.4,\,\delta = 0.01,\,\mu = -0.05,\,\sigma = 0.2 b = 0.4 , δ = 0.01 , μ = − 0.05 , σ = 0.2 で計算してみましょう。閾値は、以下のようになりました(小数第4位を四捨五入)。
結婚閾値 θ ‾ \overline{\theta} θ
離別閾値 θ ‾ \underline{\theta} θ
0.544 0.544 0.544
0.208 0.208 0.208
関係値が 0.544 0.544 0.544 まで上昇すると、山田さんは結婚に踏み切るという結果になりました。
一方で関係値が 0.208 0.208 0.208 まで下がった時には、恋人と別れて 0.4 0.4 0.4 の満足度で一生独身でいる方が良いと判断することになります。
独身での満足度がより低いケース
次に b b b の値を 0.3 0.3 0.3 に下げたケースを考えます。この場合には、基本ケースよりも山田さんが独身で得られる満足度が低いことになります。他の3つのパラメータは基本ケースと同様です。
この場合の閾値は以下のようになりました。
結婚閾値 θ ‾ \overline{\theta} θ
離別閾値 θ ‾ \underline{\theta} θ
0.408 0.408 0.408
0.156 0.156 0.156
まず結婚閾値に関して、基本ケースでは 0.544 0.544 0.544 でしたが、このケースでは 0.408 0.408 0.408 まで低下していることがわかります。すなわち、山田さんはそれほど関係値が高くない状態でも結婚に踏み切る傾向にある ことがわかります。
また離別閾値も低下しており、基本ケースと比べて、関係値が下がっても山田さんはなかなか恋人と別れたがらない ことがわかります。
これらの結果から、山田さんは誰かと一緒にいたい傾向が強いと言えます。山田さんは生涯独身でいる場合の満足度が低い、すなわち一人だと寂しいと感じるのですから、これらの結果は山田さんの特徴を上手く反映した結果になっているように思えます。
将来よりも現在の幸せをより重視するケース
次に δ \delta δ の値を 0.03 0.03 0.03 に上昇させたケースを考えます(他のパラメータは基本ケースと同様)。山田さんは基本ケースと比べて、将来的に得られる幸せよりも今この瞬間の幸せをより重視しています。
この場合の閾値は以下のようになりました。
結婚閾値 θ ‾ \overline{\theta} θ
離別閾値 θ ‾ \underline{\theta} θ
0.532 0.532 0.532
0.250 0.250 0.250
まず、基本ケースと比べて結婚閾値が低下していることがわかります。関係値が高い状態でも、恋愛をそのまま続けていればさらに関係値が高い状態で結婚できる可能性もあるわけです。しかし、今の幸せをより重視する場合には、ある程度満足していればその段階で結婚に踏み切ってしまう傾向が強い ことがわかります。
また、離別閾値は上昇しています。一旦冷めた関係になってしまったら、再び将来的に関係値が上昇するのを待つことなく、早い段階で別れて独身を楽しむ方が合理的だと考える ことになります。
関係性がより悪化傾向にあるケース
また、 μ \mu μ が − 0.05 -0.05 − 0.05 から − 0.1 -0.1 − 0.1 まで下がった場合を考えましょう。この場合は基本ケースと比べて、長期的な傾向として関係値が下がるスピードが速いことになります。
この場合の結果は以下の通りです。
結婚閾値 θ ‾ \overline{\theta} θ
離別閾値 θ ‾ \underline{\theta} θ
0.476 0.476 0.476
0.247 0.247 0.247
まず結婚閾値が下がっていることから、関係性が悪化する前にさっさと結婚をしてしまった方が良いと考える傾向がより強くなる ことがわかりました。
また離別閾値は上がっており、ある程度関係値が下がってしまったら、さらなる関係性の悪化を避けてより早く別れようとする ことがわかります。
現実においても、特に年齢を重ねた状態での恋愛では、恋愛においてより早く結婚するか別れるかを決める傾向にあるでしょう。年を重ねた場合には1年間の重みが大きく、だらだらと恋愛を続けた場合に関係値が下がっていくスピードが速いためである、と考えると上手く説明できそうです。
関係性がより予測しづらいなケース
最後に、 σ = 0.3 \sigma=0.3 σ = 0.3 とした場合を考えましょう。この場合は関係値における不確実性が大きい、すなわちよりハラハラドキドキするような恋愛をしている状況になります。
閾値を計算すると以下のようになります。
結婚閾値 θ ‾ \overline{\theta} θ
離別閾値 θ ‾ \underline{\theta} θ
0.717 0.717 0.717
0.133 0.133 0.133
まず、結婚閾値は上昇していることがわかります。すなわち、急激に関係性が悪化するリスクはあるものの、もうちょっと恋愛の関係を楽しんでより関係性が良くなってから結婚したいという心理が働く と考えられます。
一方で、離別閾値が下がっていることがわかります。関係値が下がった状態でも、関係性が良かったあのときの関係値が取り戻せるかもしれないという心理が働き、なかなか別れようという踏ん切りがつかない ことがわかります。
このように不安定な関係性の場合には、なかなか結婚もできないし別れるタイミングも見つけられないといった状況になり、いわば恋人に沼る(ぬまる)傾向が強いと言えるでしょう。
まとめ
この物語の主人公である山田さんは、「現在の恋人と付き合い続けるか、結婚するか、別れて一生独身でいるか」の意思決定を以下のルールに基づいて行います:
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山田さんの意思決定
関係値が θ ‾ \underline{\theta} θ から θ ‾ \overline{\theta} θ の間にあるときには恋人と付き合い続ける。
関係値が θ ‾ \overline{\theta} θ まで上昇したら恋人と結婚する。
関係値が θ ‾ \underline{\theta} θ まで低下したら恋人と別れる。
これらの閾値は、与えられたパラメータによって決まります。各パラメータと山田さんの意思決定には以下のような関係があることがわかりました:
b b b が低い=独身での満足度が低い場合には、結婚の決断は早まり、お別れの決断は遅れる。
δ \delta δ が高い=今この瞬間の幸せをより重視する場合には、結婚・お別れの決断が早まる。
μ \mu μ が低い=恋人との関係性がより悪化傾向にある場合には、結婚・お別れの決断が早まる。
σ \sigma σ が高い=恋人との関係性が安定的でない場合には、結婚・お別れの決断が遅れる。
本記事をご覧いただきありがとうございました!
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