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統計検定データサイエンスエキスパートの合格体験談(試験内容・勉強法・参考書など)

2024/03/23に公開

統計検定データサイエンスエキスパートの合格体験記

このたび、統計検定データサイエンスエキスパートに合格しました。この試験はつい最近開始された試験ということもあり情報が少ないため、振り返りもかねて記事という形で体験談を残しておきます。

本記事では、統計検定データサイエンスエキスパートの試験内容や私の勉強法、役に立った参考書についてまとめました。これから統計検定データサイエンスエキスパートの受験を考えている方々にとって、少しでもお役に立てば幸いです。

なお、2023年に受験した統計検定1級についても以下の記事でまとめておりますので、興味のある方はこちらもぜひご覧ください。

https://zenn.dev/teke/articles/ae0531e88588c1

筆者について

受験時に筆者は大学院修士課程に所属しており、経済学(主に金融工学)を専攻しています。基本的な数学の計算に関しては比較的慣れている方だと思いますが、特に統計学やデータサイエンスを重点的に勉強してきたというわけではありません。

統計検定データサイエンスエキスパートを受験する時点で、以下の試験には合格していました。

【統計検定】

  • 統計検定1級
  • 統計検定準1級
  • 統計検定2級
  • 統計検定データサイエンス発展

【その他(IT関連)】

  • 応用情報技術者試験
  • 基本情報技術者試験

今回の統計検定データサイエンスエキスパートに関しては、2回目の試験で合格となりました。

合格基準は100点満点中60点以上ですが、1回目の受験では惜しくも58点で不合格、その約2か月後に再度受験し72点で合格しました。

統計検定データサイエンスエキスパートとは

統計検定 データサイエンスエキスパートは、昨今のデータサイエンスの重要性の高まりを受けて、統計検定において新設された試験区分です。統計検定そのものは、統計質保証推進協会により2011年に誕生しました。資格試験としては歴史が浅めですが、統計・データサイエンス関連の資格の中では古参と言える試験です。

「統計検定 データサイエンスエキスパート」は、統計検定におけるデータサイエンス関連の試験の中で最も新しい試験です(2024年3月時点)。

2021年7月13日に開始された「統計検定 データサイエンス基礎」、同年9月28日に開始された「統計検定 データサイエンス発展」に対して、さらに上位資格として2023年5月10日から開始された試験です。

試験時間は90分で、問題数は40問程度となっています。出題形式に関しては(私が受験した時点では)公式で公開されている以下のサンプル問題のような形でした。大問が9つ程度あり、1つの大問あたり4つ程度の小問がある、といったイメージで良いかと思います。

大問の構成に関しては、小問がその前の小問と関連を持つケースもあれば、各小問が完全に独立しているケースもあります。

回答形式は、サンプル問題にある通り多肢選択問題がメインです。そのほかに、数値入力問題も一部含まれることがあります。

統計検定データサイエンスエキスパートの難易度と合格率

統計検定データサイエンスエキスパートの試験内容は、以下の出題範囲表を見ていただければわかる通りとにかく試験範囲が膨大です。

参考(pdf):統計検定データサイエンスエキスパート出題範囲表

大項目の「統計基礎」や「数学基礎」の部分に関しては、おおむね従来の統計検定2級や準1級などでも出題される単語が並んでいます。しかし、「計算基礎」や「モデリング・AIと評価」に関しては、純粋な統計学の勉強だけではカバーしきれないようなデータサイエンス寄りの内容が一定数見られます。

またそれぞれの内容に関して、表面的な理解のみで解ける問題は少なく、ある程度高いレベルが求められます

一般的なデータサイエンスに関する手法の知識については、(比較的その内容がデータサイエンス寄りと言われている)統計検定準1級並みかそれ以上に求められます。イメージとしては、2021年6月の統計検定準1級(PBT試験)などを見てみると良いかと思います。(ただし、現在運用されている統計検定準1級のCBT試験については、もう少し数理的な内容がメインになっているように感じます。)

参考:過去問題|統計検定:Japan Statistical Society Certificate

一方で数理的な技能に関しては、問題によっては統計検定1級の小問を一つ解く程度の計算が要求されることもありました。統計検定1級のように計算の途中経過を記す記述式ではないため、必ずしも完璧な導出ができていないと正解できないわけではありません。しかしその場合でも、選択肢に載っている数式の気持ち(望ましい性質から逆算するとおそらくこうなっているだろう、といった直感)がわからないと、答えを絞り込むことはほぼ不可能かと思います。

このように、試験内容が広範であるにもかかわらず、一つひとつのトピックについてある程度深い技能が要求されるという点がこの試験が難しいと言われる所以かと思います。それゆえ、出題される問題のバリエーションが豊富であり、試験問題のセットによって出題される内容が大きく異なるケースが多々あると思われます(実際、私が受けた2回の試験の間でも差異がありました)。

2023年の統計検定データサイエンスエキスパートの合格率は30.0% となっており、統計検定準1級の35.3%を下回っています。統計検定のCBT試験の中では、最難関と言って差し支えないでしょう。

参考:受験者数と合格率(CBT方式)|統計検定:Japan Statistical Society Certificate

統計検定データサイエンスエキスパートの勉強法・参考書

この記事を執筆している時点では、統計検定 データサイエンスエキスパートの公式参考書は出版されていません。内容が広範囲にわたるということもあり、参考書という形でまとめるのはかなり難しいのだろうと思います。

なお、統計検定データサイエンス基礎に関しては公式の参考書が出版されています。データサイエンス発展、データサイエンスエキスパートに関しても、今後参考書が出版されることを期待したいですね。

日本統計学会公式認定 統計検定データサイエンス基礎対応 データアナリティクス基礎

以下では、筆者が試験対策に役に立ったと思う参考書やWebサイトを紹介します。

日本統計学会公式認定 統計検定準1級対応 統計学実践ワークブック

統計検定準1級用の公式参考書ですが、統計検定データサイエンスエキスパートとの親和性が非常に高いです。統計学に関する内容をある程度網羅的にカバーする上で、とても役に立つでしょう。また理論の部分で深く突っ込まれた場合の対策に、数式の導出などを丁寧に追ってみても良いかと思います。

ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装

ニューラルネットワークに関して全く知らないという方は、まずこの本を読んでみると良いかと思います。基本的な用語や誤差逆伝播法の計算などを一通り理解しておくと、ニューラルネットワーク関連の内容が出題された場合に解ける問題が増えることでしょう。

過去問道場(基本情報技術者試験・応用情報技術者試験)

https://www.fe-siken.com/fekakomon.php

https://www.ap-siken.com/apkakomon.php

SQLの勉強に使用していました。基本情報技術者試験・応用情報技術者試験の対策サイトですが、「分野を指定して出題」で「データベース」を選択すると、SQL構文に関する多肢選択式の過去問題を解くことができます。データサイエンスエキスパートでは正しいSQLの構文を答える設問が出題されることがありますが、こちらはそれにかなり近いと思います。

ただし上記サイトではSQL構文以外の問題も含まれるため、解きたい問題以外が表示された場合には必要に応じてスキップなどしてください。

おわりに:受験を検討している人へのアドバイス

最後に、これから受験を考えている方々へのアドバイスを3つにまとめてみました。

まんべんなく対策するのはほぼ不可能!得意分野をつくる

先述したように、統計検定データサイエンスエキスパートの試験範囲は膨大であり、かつ試験回によって問題の内容は大きく異なります。そのため、よほどデータサイエンスに精通している方でない限りは、10回受験して10回合格できるような万全な試験準備をすることはほぼ不可能でしょう。

そのため、「この分野であれば確実に得点源にできる」といったような強みを見つけ、それらを重点的に対策していくことが大切だと思います。私の場合であれば、数式をこねくり回して導出できるような理論問題であれば太刀打ちできると考え、試験本番でも特に時間を割いて確実に得点できるよう心掛けました。

未知の分野であっても諦めない

先ほども触れたように、出題される名用の中でよく知らない分野が一つもないというケースは極めてまれです。そのため、試験本番では必ずと言ってよいほど未知の用語や数式にぶつかることになるかと思います。

そういった場合でも、よくよく問題文を読むと、前提知識が無くても解けるよう説明が書かれていたりすることがあります。こうしたヒントを見逃さず、一つでも多くの問題で得点をするという意識を持っておくと良いかと思います。

とにかくまずは受験してみる

上では散々試験の内容や形式について書ける範囲で説明をしましたが、百聞は一見に如かず。まずは1回受験してみることをおすすめします。

統計検定データサイエンスエキスパートはまだまだ受験者が少なく情報が限られているため、完璧な対策は不可能と言えるでしょう。
一度試しに受験をしてみることである程度試験の雰囲気をつかむことができ、その後の対策もより効率的に進められるかと思います。

これと言った試験対策をせずとも、これまでの知識の蓄積で意外とどうにかなってしまったというツヨツヨなお方もちらほら見受けられます。
入念な試験対策ができておらず不安な方も、ある程度の自信がついた時点で受験してみることをおすすめします。


以上、本記事が皆様のお役に立てば幸いです。「いいね」を押していただると励みになりますので、ぜひよろしくお願いいたします!

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