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工数の見積りをどう評価するかの話

2024/12/10に公開

工数の見積りについて

皆さんは工数の見積りについて、評価を行っていますか?
「この見積りは精度が良い/悪い」というのを正しく評価できているでしょうか?
見積りの精度を正しく評価するということは、プロジェクトの生産性を評価することにつながり、改善につなげることもできます。
この「正しい評価」というところに今回は焦点をあてて話をしたいと思います。

見積り精度が良い状態

理想的な状態とは何か?

見積りについて評価するにあたり、まずは「見積りの精度がよい理想的な状態」とは何かについて考えたいと思います。

予定工数と実績工数の差から見積りの精度を評価すると考えた場合、皆さんは予定工数と実績工数の差がどうなっていれば理想的な状態と考えるでしょうか?

以下に2つの例をあげます。
1つ目はすべてのタスクにおいて、予定工数と実績工数の差が0である状態のものです。

タスク 予定工数[日] 実績工数[日]
タスクA 5 5
タスクB 3 3
タスクC 2 2
タスクD 6 6

2つ目は、タスクごとにそれぞれ1~2日程度のずれがある状態のものです。

タスク 予定工数[日] 実績工数[日]
タスクA 5 3
タスクB 3 2
タスクC 2 4
タスクD 6 5

多くの人は1つ目の例、「予定工数と実績工数の差が0である状態」が理想的な状態と考えるのではないでしょうか?
一見、すべてのタスクで予定工数と実績工数が完全に一致することが理想的に思えるかもしれません。
しかし、完全一致を理想とすることにはいくつかの弊害が発生すると私は考えています。

完全一致を理想とすることによる弊害

完全一致を理想とすることによる弊害について以下にいくつか挙げていきます。

心理的安全性の低下

完璧な工数見積りをメンバーに期待することは、メンバーに過度なプレッシャーをかけることにつながります。
結果的に、メンバーのストレスや不安を引き起こす可能性があり、心理的安全性の低下につながります。
また、こういった状況になるとメンバーが実際の作業時間を正確に報告しないといった問題も発生する可能性があり、プロジェクト全体がどんどん疲弊していってしまいます。

品質への影響

上記の話と関連しますが、予定通りに作業を完了させることを目的としてしまい、本来行うべきであった品質チェックや改善のための時間が犠牲になる可能性があります。
結果的にプロジェクト全体の品質が低下する可能性もあります。

新しい技術や手法への躊躇

予定通りに作業を完了させたいため、なるべく不確実性の高いタスクは排除しようとする傾向になります。
新しい手法や技術を試すといった不確実性の高いタスクは避け、革新的なことがだんだんとできなくなってしまう可能性があります。

こういった弊害を考慮すると、工数の完全一致を目指すのではなく、より現実的で柔軟なアプローチが必要であると考えます。

現実的な見積り評価

現実なアプローチ

現実的な工数見積り評価のアプローチとして、私は「予定工数と実績工数の差が0を中心とした正規分布になる状態」を理想とする考え方を採用しています。

つまり、全体として工数の差が0に近いタスクが多いけれど、多少のばらつきがあってしかるべきという考え方です。

上記のアプローチのメリット

このようなアプローチをとるメリットはいくつかあります。

心理的安全性の向上

完全一致を理想とすることによる弊害とは逆で、ある程度の誤差を許容する文化を醸成することで、メンバーは率直に見積りを行い正確に実際の工数を報告するようになります。
プロジェクト全体の心理的安全性の向上にもつながっていきます。

開発生産性の定量的な評価

一番のメリットは開発生産性を定量的に評価できることかと思います。正規分布を前提とすることで、様々な統計的手法を評価項目として適用することができるようになります。
なにより、単一プロジェクトに限った話ではなく、組織全体として同じ評価軸で見積り精度を評価できるようになり、組織全体の開発生産性の向上にもつながっていきます。

過去のプロジェクトデータを蓄積し、分布のパターンを分析することで、将来のプロジェクトの見積りをより正確に行えるようになるでしょう。

評価方法について

正規性の評価

改めてですが、

予定工数と実績工数の差が0を中心とした正規分布になる状態

を理想的な状態と定義しています。
つまり、「予定工数と実績工数の差がどれくらい正規分布に近いか」によって見積りの精度の良し悪しを評価することができます。

データの正規性を確認する方法はいくつかあります。
https://bellcurve.jp/statistics/course/12931.html

正規性の検定を行う場合は、「シャピロ=ウィルク検定」を行うのがよいと思います。
ただし、この方法で評価すべきというのは特に定めていません。
それぞれのプロジェクト、組織が評価しやすい形で評価するのが一番かと思います。

また、複数の方法を組み合わせて使用するほうが、工数見積りの精度をより総合的に評価できるようになると思います。
プロジェクト全体の見積りの傾向や分布を評価・分析することで、継続的な見積り精度の改善を行っていきましょう!

まとめ

工数見積りはプロジェクト管理において重要な要素の一部でありますが、完璧な見積りを目指すのではなく、より現実的で効果的なプロジェクト管理を行っていきましょう。

継続的に評価・改善を行うことで、長期的にプロジェクト管理の質を向上させることができると思います。
単一のプロジェクトだけでなく、組織全体で取り組んでみてください。

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