Certified ScrumMaster(CSM)受講体験記
認定スクラムマスター(Certified ScrumMaster)について
スクラムマスターに必要な知識を保有していることを証明するための資格。
Scrum Alliance®が提供。
認定をもらうための流れは以下通り。
- 認定スクラムトレーナーが実施するトレーニングに参加
- トレーニング修了後、Scrum Alliance®が提供する認定資格試験を受験
有効期間は二年間、受講費用は受講するトレーニングにもよりますが、16万から33万程度。
有名な運営どころは二つありますので、詳細はこちらから確認できる。
私が受講したのは、アジャイルビジネスインスティチュートが実施する研修ですので、そちらの研修の内容について、紹介する。
CSMトレーニングについて
研修概要
研修の概要は以下の通り。
- 実施期間 : 二日間(10:00 ~ 16:00、休憩一時間)
- 実施言語 : 日本語(講師は英語話者、通訳あり)
- 実施場所 : Zoom
- 使用ツール : Miro
- 参加者数 : 50人ほど
- 運営体制 : 講師(Joe justice),日本人の通訳、日本人のファシリテーター
講師紹介
講師を務めるJoe justiceさんは、テスラを代表とする数多くの会社でスクラムに関する指導を行なってきたそう。研修の中でも、数多くテスラではどのようなことが行われているかを、紹介してくれる。
日本語が赤ちゃんレベルと本人はおっしゃっていたが、通訳の方が言葉は全て訳してくださるので、参加者は英語がわからなくても大丈夫です。英語もわかりやすく話してくださるので、多少のリスニング能力がある方であればほぼ英語でも理解できる。
事前学習
研修の前に、一本の動画を見るように案内されます。スクラムの基本的な用語を理解している方は見ずとも良いですが、スクラムについて一切知らないという方は、見ることをおすすめする。
内容としては、
- スクラムの責任(プロダクトオーナー、開発者、スクラムマスター)
- イベント(スプリント、スプリントプランニング、デイリースクラム、スプリントレビュー、レトロスペクティブ)
- 作成物(プロダクトバックログ、スプリントバックログ、インクリメント)
の概要に関しての説明動画になる。
研修の進め方
基本的には、Miroを使用して、研修が進行する。Miroボードには英語と日本語両方の説明が書いてある。
説明を受けたのち、五人から六人ほどのグループに分かれてグループディスカッションやワークを行う。
このグループは二日間共通。英語の方が得意な人たちは、一番最初に英語話者で固まるようにグループを組んでくれる。
初日午前
最初はスクラムについての基本的な説明やそれぞれが持つ責任の説明、グループでの自己紹介を兼ねたディスカッションなどを行う。
そのディスカッション内で、自分達のチームのスクラムチーム名、プロダクトオーナーを一人、スクラムマスターを一人決める。それ以外の人は開発者となる。この役割は半日ごとにローテーションして行く。
その後はウォーターフォールとアジャイルの違いやクロスファンクショナルなチームについての説明が入る。
こちらの記事や、こちらの動画を研修内で見たりなどする。
アクティビティ1.スクラムの責任
プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発者がどのような責任を持っているかを、Miroを使用して、それぞれチームで話合う。
例えば、プロダクトビジョンの作成
という付箋を、プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発者のどの責任に当たるかを、話合いながら決めて行く。
その後全員のズームに戻り、答え合わせをする。
それぞれの責任について理解を深めることを目的とした、アクティビティ。
他にも以下のようなポストイットがあった。
- コーチとしての役割
- 障害を取り除く
- スプリントバックログの計画・管理 etc....
初日午後
初めに、チームでチェックインを行います。チーム内で「お昼はどうでしたか?」などの質問をスクラムマスターを中心に話合う。
その後、以下のリンク等を紹介され、チームの心理的安全性についての説明がある。
午後の研修では、スクラムのそれぞれのイベントについての説明と、それらを理解するためのアクティビティが行われる。
以下の記事が提供される。スプリントレビューに関しては、下記のYoutubeを見て、理解を深める。
リファインメント
デイリースクラム
レトロスペクティブ
アクティビティ2.スクラムイベントについて
それぞれのアクティビティがどのように回っていくのか、プロダクトバックログやスプリントバックログがいつ使われるのかを理解するために、スプリントの流れをMiroで作成する。
プランニング、デイリースクラム、プロダクトバックログなどのImageがMiroに用意されており、それらを好きに並べ変えたり、図を作成したりして、スプリントの流れを自分達のチームで作成する。
アクティビティ3.エスティメーション
タスクのサイズを見積もることについての説明があった後、グループ内でサンプルプロジェクトのタスク見積もりを行う。例えば、小さなひとつの機能の開発
というタスクに対して、グループメンバー一人一人がフィボナッチ数列を使用してポイントを見積もり、それらを平均した値をチームのエスティメイションとする。
この研修では、話合いでポイントを決めるのではなく、メンバーの平均値を取ることが推奨されていた。
その理由としては、講師の経験から、マイクロソフトなどのプロジェクトでも100%正確なエスティメーションはできなかったので、シンプルに平均をとる方が時間の節約になるとのこと。
参考に、以下のよう動画も見たりする。
宿題
以上で一日目の研修は終わりですが、一応宿題がでる。
「アジャイルなチームはビジネスにどのような影響を与えるか」という課題について、一人100字程度で書いて、Miroボードに貼り付けておくようにする。これは、二日目の研修で使用する。
二日目午前
モブワークについて
最初はモブを使用したタスクの有用性について説明、テスラでは常にモブを使用して業務を行なっていることなどが示される。
参考動画として以下の動画を見たりもする。
- チームが持つ問題を軽減できる
- チームの知識を共有することができる
- スピードの向上が見られる
- フィードバックが迅速
などなど様々な利点があることが説明される。
アクティビティ4:モブワーク
モブの利点、欠点を知るためのアクティビティ。
宿題で出されたお題である「アジャイルなチームはビジネスにどのような影響を与えるか」の回答を使用して、アジャイルを導入するために、上司にどのように提言するかを考えるアクティビティをグループ内で行う。
モブの練習のため、ナビゲーター、ドライバーを決め、3分ごとに役割が回っていくようにしながらディスカッションを行い、提言方法をMiroにまとめ、このアクティビティは終了。
アクティビティ5:テスト練習
スクラム試験の問題が10問ほどピックアップされており、それに対する適切な答えをグループでディスカッションし、答え合わせを行う。どうしてその答えになるのかなども、講師の方々から丁寧に説明される。
問題の例としては、以下のようなものがあった。
- スクラム三つの成果物は?
アクティビティ6:スクラムを理解するまとめ
スクラムを総合的に理解するために、自分達でゲームを作成するアクティビティを行う。
1Sprintの時間が18分間程度のように決められており、その時間の中で、リファインメント、スプリントプランニング、デイリースクラム、スプリントレビュー、レトロスペクティブなどのアクティビティをグループで進めていく。
各グループ内でタスクを割り振り、Miro上でできるゲームやツールを作成する。
午後にわたって計2スプリントを行い、その後、各グループの代表者が作成したゲームを全員の前で発表する。
作成された例としては、
- Miro上でできるリバーシ
- Miro上でできるあみだくじツール
などのゲームを作成されていた。
二日目午後
アクティビティ6が終わった後、タスク管理ツールの紹介などが行割れる。
その後、最後のアクティビティに移行する。
アクティビティ7:チーム内での振り返り
これまでのアジャイルで学んだことや、自分自身のスクラムへの疑問や改善点などをグループ内で書き出し、Miro上にあるTODOスペースに置きます。その後、そのTODOに対してグループ内でポイントを割りふり、重要なものからディスカッションを行う。ディスカッションが終わればその改善点をDONEのスペースに移動し、Actionプランがあれば、ActionプランをActionの欄に作成する。
最後にまとめがあり、テスト用のアンケートに答えて、トレーニングは終了。
トレーニングについての感想
良かったところ
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スクラムに触れたことのない人が受けても問題なく進めることができるよう、かなり初歩的なところから丁寧な説明をしていると感じた。逆にいえば、スクラムについてある程度既に知識のある方にとっては既知の情報も多く、つまらないと感じるところもあるかも。しかし、テスラやマイクロソフトなど、講師の経験を下に提供されるTips的な情報が面白いので、個人的には興味深かった。
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アクティビティに関しては、一部いまいちなものもありましたが、概ねチームスクラムへの理解を深めることができるアクティビティが多く、スクラムに慣れている方にとっても新たな発見があると感じる。私自身も、自分のチームにおいて、レトロスペクティブでの話し合いでアクションプランをきちんと出せていなかったりといった、いつの間にが曖昧に行ってしまっているスクラムチームの状況を見直す大変良い機会になった。
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一日の最後に20分間程度FAQの時間があるため、スクラム経験のある方や自チームでスクラムに関する問題を抱えている人は、そこで質問をすることができた。講師の方からの丁寧な回答をもらえるため、とても有意義な質問時間になっていた。
良くなかったところ
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受講人数が一度に50人程度と多いので、グループワークで出された結果についてのそれぞれのフィードバックが少ないと感じる場面が多々あった。
-
テストに関しての情報は多くはないので、全くのスクラム初心者からこのトレーニングだけを受けてすぐに試験を受けた人はテストに落ちる可能性もあると感じた。ある程度試験に関しては、独自に多少練習をしておいた方が良い。
試験について
CSM(認定スクラムマスター)の試験の内容について説明する。
試験の概要
- 試験形式:オンラインでいつでも
- 問題形式:四者択一(複数選択はできません)
- 試験時間:60分
- 問題数 :50問
- 合格基準:37問
- 言語 :英語、日本語も選択可能
90日以内であれば無料で2回まで受験することできる。3回目からは1回の受験につき 25ドルが必要になる。
試験の感想
問題の難易度はPSM1と比べて低い。(PSM1に関してはこちらを参照してくださると嬉しいです)
時間に関しても60分は多すぎるくらいなので、多くの人にとって必要はないと考えらる。
PSM1に合格できるかたであれば問題なく合格できると思うが、一部違う所としては
アジャイルソフトウェア開発宣言やアジャイル宣言の背後にある原則からの問題が出題されるので、
一度こちらを確認しておくことをお勧めする。
まとめ
- スクラムを導入したい人、スクラムに対して経験が浅い人が、スクラムの全体像や役割を理解できる
- 試験に合格することで、スクラムの知識に自信を持って自分の組織に導入することができる
- テスラ等でのスクラム(もはやスクラムを超えた)取り組みについて聞くことができる
- 他社でのスクラムの事例等を聞くことができる
研修費用がとても高いので、自費でというよりは会社の経費で出してもらえるのであれば、受ける価値はある研修と試験だと思う。
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