Closed7
村中直人『<叱る依存>がとまらない』を読む
読む対象
- 〈叱る依存〉がとまらない | 村中直人 |本 | 通販 | Amazon
なぜ読むのか
- 私が「叱る依存」の疑いがあり、判定するため
- 私の行動に一貫した非合理性がある
- 仕事で、他者の存在が成果のボトルネックになる場面で、私が被害者感情を抱き(妨害されている, 邪魔されている etc.)、当該の他者が聞く耳を持たない/学習に積極的でないことがわかっている状況でも、なお直接的にフィードバックしようとする傾向がある
- かつ、上記の状況下で、当該の他者の業務に誰も(上司/人事)介入しないことにストレスを感じ、それも併せて糾弾する傾向が強い
- 個人としての利害関係(嫌われる, 干される etc.)を抜きにして相手を公然と糾弾する傾向がある
- 仕事で、他者の存在が成果のボトルネックになる場面で、私が被害者感情を抱き(妨害されている, 邪魔されている etc.)、当該の他者が聞く耳を持たない/学習に積極的でないことがわかっている状況でも、なお直接的にフィードバックしようとする傾向がある
- 私の行動に一貫した非合理性がある
- もし私が「叱る依存」だった場合、その症状がチームワーク/コラボレーションのボトルネックになっている可能性が高く、「叱る依存」から脱却したいため
- 成果を阻害している
- 協働の有機性を下げている
- 心理的安全性を下げている
- チームの安定性を下げている
- 他者の学習を阻害している
- 叱る、の代替案を知るため
- マイクロマネジメント or 叱る しか選択肢を知らない
- 叱る、の代替案を知っている状況で(※読む前なのでまだ知らない)なお、叱る行為に短絡的に頼ってしまう可能性を考慮し、代替案へのスイッチをうまく起こす環境の整備方法を知るため
一般化して、読むことをおすすめしたい読者
- 同僚/上司/部下 のパフォーマンスと、その改善の無さに強い不満があり、仕事がストレス
- 他者というuncontrollableなものとの関わり方を考えあぐねている
- 他者の成長に寄与したいが、自分がむしろ他者の成長を阻害している可能性に悩んでいる
示唆
-
「苦しまないと人は変化しない/成長しない/学ばない」という誤った信念が社会に浸透している
- 人々が「叱る」の善悪について論じるのは、皆が一様に「厳しさ」に一定の価値を見出しているため
- が、実際はそもそも、期待ほどの価値はない
-
「上手な叱り方」は存在しない
- 「叱る」行為は苦痛を伴い、恐怖を喚起する = 扁桃体/防御システムを刺激する が、これは前頭前野の活動を低下させる
- 受け手にとっては、叱られている = 怒られている = 罰されている
- 学習が促進される = 報酬系(前頭前野を含む)が活性化する だが、これは主体的に/自発的に報酬(成長/学び)をwantした時にしか発動しない
- 「叱る」行為は苦痛を伴い、恐怖を喚起する = 扁桃体/防御システムを刺激する が、これは前頭前野の活動を低下させる
- それでも人々が「叱る」をやめられないのはなぜか?
-
- 「叱る」ことで報酬を感じることができてしまうため
- 相手の行動が一時的に変容するので、叱る側の自己効力感が向上する
- 処罰感情を充足させられる
-
- 「叱る」ことには即効性があるため
- 即時性の必要な危機介入や、相手の行動の抑止、という観点では有効
- 「厳しさ」を伴わない、ポジティブなコーチング/支援には即効性がなく、継続が困難
-
-
「叱る」代わりにどうすれば良いのか?
-
- 自分の考える「あるべき姿」を、言語化して相手に共有するコストをかける
- ❌ 自分の理想を所与/自明とし、説明しない
-
- 問題を予防する。特に、事前に、don't doをあらかじめ伝えておく
- ❌ 問題が起こってから「またかよ」と叱る
- 3-a. 相手が未学習の場合、「これを学んでみよう」と相手が決定するのを待つ
- ❌ 「足りないお前はこれを学ぶべき」とテーマ/教材を与える
- 3-b. 相手が誤学習を起こしている場合、適応的な振る舞いの報酬を大きくする
- ❌ 不適切な振る舞いを罰する
-
興味深い概念
防御システム ≠ 学習システム
防御システム
- 扁桃体による、恐怖(苦痛の予測)
- →前頭前野(知性)の活動を低下させる
- Fight or Flight
- 基本的にみんな逃走を選ぶ→一時的に行動を変容するが反省はできない
学習システム
- 報酬系回路による、ドーパミン、期待
叱る = 処罰感情の充足
- 叱ることで相手を罰することができる、それ自体が「叱る」側の強い報酬になっている
- →自分が損をしてでも、相手を罰するために行動してしまう
※利他的処罰
- 利他的処罰と攻撃的処罰があり、前者は共同体のために発達してきたと考えられている
依存の原因: 自己治療仮説
- 人は自らが元々抱える苦痛を和らげるものに依存するのでは?
- 叱る、の場合
- 叱る側、が、現実を受容できていない状況が先にあり
- うまくいかない現実に苛立っている
- 自己評価が低い
- etc.
- そこに登場した「叱られるに値する人」を処罰することで、元々抱えていた苦痛を和らげているのでは?
- 叱る側、が、現実を受容できていない状況が先にあり
未学習 ≠ 誤学習
- 未学習
- 能力/知識の欠落
- どう振る舞うのが適応的か、を知らない
- 能力/知識の欠落
- 誤学習
- 能力/知識、と、状況、のマッチングの失敗
- どう振る舞うべきか知っているのに、不適切な振る舞いをしてしまう
- 能力/知識、と、状況、のマッチングの失敗
「誤学習」している人にどう対処するか?
- 不適切な振る舞いを繰り返す人は、その振る舞いによって報酬を得ていることが多い
- ので、その報酬よりも大きな報酬を、適応的振る舞いによって与えることができることを示すと良い
感想
- 私は他者との適応的な関わり合いについて「未学習」であった
- 苦痛を感じさせるほど学習が捗ると思っていた
- 私は驚くほど「人が学ぶこと」について知らない
- まして組織が学ぶこと、はもっと知らない
- 叱ることには即効性があるので、今後「誤学習」を起こしそうな気がする
- また叱ってしまう気がする
- →適応的な振る舞いに、より大きな報酬を用意しなければいけない
- 適応的振る舞い:
- 自分の考える「あるべき姿」を、言語化して相手に共有するコストをかける
- 問題を予防する。特に、事前に、don't doをあらかじめ伝えておく
- 3-a. 相手が未学習の場合、「これを学んでみよう」と相手が決定するのを待つ
- 3-b. 相手が誤学習を起こしている場合、適応的な振る舞いの報酬を大きくする
- より大きな報酬:
- 試行したらすぐ、甘いものを食べるとか?
- 適応的振る舞い:
- 現実っていうのは基本的にuncontrollableだと思った方が良い
- 他者というのは基本的にはuncontrollableなので
- コントロールできることを頑張りましょう
- フィードバック、は二度としない
- 害だな、と思ったら、関係を断つしかない
- 評価も相手に伝えないほうが良さそう
- 相手を変えようとしてはいけない
- 私は「叱る依存」傾向が高そう
- 仕事の範囲では、強い達成意識があるが、その裏返しとして、邪魔する他者を処罰している
- 自己治療仮説の典型
- 粘り強く、叱らないで相手の学習を支援する、という「報われなさそうな」やり方に辟易としており、すぐ厳しく当たってしまう
- 叱っている時、処罰感情を満たしている気がする
- 「サボっているのに、俺はやっていますという顔をしている奴は罰されるべき」という信念があるっぽい
- 仕事の範囲では、強い達成意識があるが、その裏返しとして、邪魔する他者を処罰している
懸念
- 勉強熱心な人/リーダーやマネジャーroleを引き受ける人、は必然的に権力 = 「あるべき姿を定義する権利」を持つことになるので、よほど注意しないと「叱る」ことになってしまいそう/叱ることから抜け出せなさそう、と思った
- 勉強もろくにしてない、頭も使ってないやつにどうしてこうまでコストをかけて説明してやらないといけないんだ?どうしてこいつのモチベーションが湧くのを待ってやらんといかんのだ?ってなりそう
- なってる
- 勉強もろくにしてない、頭も使ってないやつにどうしてこうまでコストをかけて説明してやらないといけないんだ?どうしてこいつのモチベーションが湧くのを待ってやらんといかんのだ?ってなりそう
- 相手の防御システムを刺激せずに、相手の学習システムをうまく機能させるの、マジでむずそう
- コーチングってやつか……?
- 淡々と事実を説明する、指摘する、だけでも加害行為にはなりうる
- そして、彼彼女の「被害者感覚」は正しい!
- 私から見て「人間未満」レベルに映る他者との関わりをどうしていくか?
- 人間未満 = 同じ失敗を繰り返し、成果をspoilする
- そもそも関わるべきではないんだな
- 適応的振る舞いができない人が問題を起こさないよう予防しましょう、と言うが、それってもう実質マイクロマネジメントでは?そうまでして他人と関わりたくなくね?雇う意味なくね?
- 多分一定は正しくて、やはり問題を起こしにくい人とだけ関わるべき、ではある
- かといって「アホとは関わらない」方針は、幼稚なスーパーマン願望を引き起こしかねない
- そして、完璧ではない自分を蝕む
- どうしよう……オワタ
- うーん、私の「叱る」傾向は、相手の嘘/虚飾と強い関係がありそうだ
- 私が抱いている誤信念の例
- 言行不一致で、都合の良い幻想に浸ってる人間は積極的に処罰して良い
- 「お前、本気でやってるって言うけど、やってないよな?本気でやるか、本気でやってませんって認めて都合の良い自己認知を改めるか、今すぐ決めて」と思うことがよくある
- 「お前、ベストを尽くしたって言ってるけど(略)」
- 「お前、反省したって言ってるけど(略)」
- 「頑張ってるのになんで成果が出てないからってそこまで言われないといけないんですか」と言われて「成果が出てないってことは頑張ってないのと同じでしょ、それどころか、間違ったことを頑張ってたってことなんだから、会社のリソースを無駄遣いしたんでしょ?そりゃ責められて当然でしょ、お前には何も言う権利がない、本を読めば書いてあることをそのままやればいいだけ、無駄な試行錯誤を褒められたいなら他の会社にいけ」と思ったことがある
- 視野を狭めて、自分が有能だという幻想に浸りたい人の後頭部を積極的に殴りたいという気持ちがある
- エンジニアによく思った
- 「お前のやってることの90%は会社のためにも顧客のためにもなってない、自分にできることをやってるだけで気分良いだろうけどそろそろ意味のあることをしてくれ」って思ったことがある
- 言行不一致で、都合の良い幻想に浸ってる人間は積極的に処罰して良い
- 私が抱いている誤信念の例
- 誤った信念
- 倫理に反している相手は糾弾して良い/糾弾しないといけない
- 倫理の構成要素
- 現実から目を背ける/都合の良い幻想に浸るのは禁忌
- ※この「現実」は私にとっては現実だが、彼彼女にとってはそうではない
- むしろ幻想こそが彼彼女の現実である
- そして、それに冷水を浴びせてはいけない
- ※この「現実」は私にとっては現実だが、彼彼女にとってはそうではない
- ベストを尽くす/当たり前にできることは全てやる。そうしないのは禁忌
- ※この「当たり前」は、彼彼女にとって自明ではない
- 梯子を外さない/言ったことに責任を持つ。そうしないのは禁忌
- 現実から目を背ける/都合の良い幻想に浸るのは禁忌
- 倫理の構成要素
- 倫理に反している相手は糾弾して良い/糾弾しないといけない
このスクラップは2023/11/30にクローズされました