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なぜエンジニアが認知症フレンドリーテックについて知るべきなのか

2022/06/23に公開

煽るようなタイトルですいません。
近い将来ほとんどのエンジニアにとって認知症についての知識は避けて通れないものになると確信しているためこの記事を書いています。

最大の理由は、「日本社会全体の高齢化に伴って、顧客の多くも認知症となるから」です。

実は1ヶ月ほど前にも認知症フレンドリーテックに関する記事をZennに書きました。

https://zenn.dev/tarocl/articles/ddce051465a24c

ここから発展して、アイデアソンを開催することになったことも、あらためて記事を書くことにした理由です。

https://dementia-friendly-tech.connpass.com/event/250053/

認知症の人は増え続ける

現在、日本には認知症の人が約600万人いると推計されています。
これは、小学生と同じ人数です。
すでに、多くの人がいることに驚かれるかもしれませんが、さらに今後も増え続けることがわかっています。

久山町研究という世界的に注目される疫学研究によると、認知症の人は2060年まで増え続け最大1000万人を超えるという推計となっています。
この時の日本の総人口の推計が8000万人で、実に人口の8人に1人が認知症となります。

なぜ認知症の人が増え続けるのか

認知症発症の最大のリスク因子は歳をとることです。
65歳を超えると5歳刻みで認知症の人の割合が倍となり、90歳を超えると認知症もしくは認知症予備軍の人の方が多数派になります。

今後認知症の人が増え続けると聞いて、「そのうち薬が解決してくれるんじゃないの?」と思われた方もいると思いますが、認知症にならないためには歳を取らないようにしないといけない。
それにはかなり高度な技術を必要とするため、2060年までに実装できるかわかりません。

実際、市販されている抗認知症薬の効果が限定的なだけでなく、期待された新薬も期待はずれで開発から多くの製薬企業が撤退しています。

あなたの顧客は認知症になる

この記事を読まれているエンジニアの皆さんは、さまざまな産業をテクノロジーの面から支えてらっしゃると思います。
しかし、日本の人口が減少していることもあり顧客の減少が課題となっている産業は少なくありません。

実は病院でも、私が医師になった20年前は認知症があると入院を断られるのが当たり前でした。
しかし今、認知症だからといって入院を断る病院はありません。
認知症だからと断っていては患者の獲得が困難なためです。

高齢者を主な顧客とする医療業界が既にそうしてきたように、他の業界においても認知症の人への対応が今後重要になると考えています。

例えば金融業界では、金融ジェロントロジーとして高齢化が金融に与える影響についての検討が始められています。

https://www.dir.co.jp/report/research/introduction/financial/intro-fcgerontology/index.html

家族も、そして自分も認知症になる

ここまで読んで、
「そうはいっても自分はバックエンドの担当だし関係がないな」
「自分達のサービスは若者向けだから影響はなさそうだ」

と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、皆さんのご両親や祖父母も長生きすると認知症となります。
そして冒頭にもお伝えした2060年に認知症の人が1000万人を超えることについて、これは私を含めた皆さんが認知症の状態となっている可能性が高いとも言えます。

つまり、三人称での顧客、二人称での家族、そして一人称での自分自身のみんなが認知症になるという前提が必要なのです。

残念な未来だと思った? だからこそ、認知症フレンドリーテックで未来を明るくする!!

ここまで読まれて 「みんなが認知症になるなんて残念な未来だ」 と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
だからこそ、認知症フレンドリーテックが重要なのです。

認知症フレンドリーテックとは、認知症当事者が安心して生活し力を発揮するためにテクノロジーを活用するものです。

そのままのサービスでは認知症や認知機能が低下した高齢者では使いづらいものを、認知症フレンドリーにアップデートすることで認知症になっても使うことができる。
これこそが、今多くの産業やサービスにおいて求められていることだと考えています。

認知症フレンドリーテックの例として、たとえばKAERUという買い物アプリがあります。

https://kaeru-inc.co.jp/message

認知症になると、多くの人が財布を取り上げられ自由に買い物ができなくなる。
これをテクノロジーの力で解決しよう
というものです。

買い物だけでなく、免許を返納し公共交通機関で移動しようにも迷子になりやすい、料理をするにも複数のことを同時並行でやるのが難しい、もの忘れのため約束を忘れてしまい人と会うのが億劫になる、 など認知症の人はさまざまな体験をされています。

認知症の人が体験している世界について、これまで十分な検討が行われず「できなくなれば周囲の人が代行したらいい」と考えられてきましたが、役割や目的を奪われると認知症の進行が加速することがわかっていますし、認知症の人が多数派となる社会が訪れることがわかっている以上、認知症でない人が認知症の人を支えるというモデルが破綻することは明らかです。

このため最近は、認知症当事者の方の情報発信が活発になっていますし、「認知症世界の歩き方」という本もベストセラーとなり注目されています。

https://issueplusdesign.jp/dementia_world/about/

認知症フレンドリーテックのイベント開催

認知症フレンドリーテックを身近に感じていただけたでしょうか?
認知症フレンドリーについて活動している人たちとエンジニアの方々をつなぐことで認知症フレンドリーテックが盛り上がっていけばと考え、まずはイベントを企画しました。

これが冒頭でも紹介した認知症フレンドリーテック第一回アイデアソンです。

https://dementia-friendly-tech.connpass.com/event/250053/

また、まだconnpassページは公開できていませんが、9月24、25の土日に認知症フレンドリーテック第一回ハッカソンを福岡市のエンジニアカフェで開催する予定としています。

認知症フレンドリーテックでの起業も増える!!

これから、認知症フレンドリーテックの分野から起業する方もたくさん出てくるだろうと期待しています。
また、日本は他国と比較して社会の高齢化が進んでいますが、他の先進国もこれからどんどん高齢化が進み認知症の人も増加していきます。
世界に向けたサービス開発という視点でも、認知症フレンドリーテックは熱い領域です。

エンジニアの皆さんのお力で、認知症の人が多数派となる社会を明るいものにしていきましょう!!

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