Type Challengesに挑戦できるmosya<TC>をわずか4日でリリースできた理由
今回、mosya<TC>というType Challengesをブラウザーのエディターから挑戦して採点できるサービスをリリースしました。
Type ChallengesはTypeScriptの型に関する問題を解くためのGitHub上のプロジェクトで、MITでライセンスされているので、誰でも自由に利用することができます。
これを解くことで、かなりの型力が身につくので、以前から昼休みによく友人と解いていました。
今回、このことを思い出しType Challengesに挑戦しやすくするためにブラウザー上でエディターを提供し、問題を解いた後にすぐ採点できるサービスを作りました。
使い方を動画にしてみたのでぜひご覧ください
このように気軽にType Challengesに挑戦できるのがサービスの特徴です。
また、受講履歴を残したり、書いたコードをTwitterでシェアすることができます。
反響もよく4日でリリースしたサービスの割にたくさんの方に利用していただけています。
おかげ様でTwitterでのいいねも過去のサービスリリースの中で最高のいいね数を獲得しました。
4日でリリースできた理由
4日でリリースできたというのは決して誇張ではなく、本当に4日で思いついてからリリースができました。
その理由は以下の2点が大きいと思います。
- 既存のサービス mosya をベースにしている
- Chat GPTの Code Interpreterを利用している
- 以前開発したOSSを利用
既存のサービスをベースにしている
今月の4/30にリリースしたばかりのmosyaというサービスをベースにしています。
mosyaはブラウザー上でHTML,CSS,JavaScript,PHPを学習するためのサービスで、見本のサイトを模写することでHTML,CSSを学習できます。
エディターはこの時点で完成されており、Type Challengesの問題を解くために必要な機能はほぼ実装されていました。
また、現在、mosya React という別サービスを開発していて、そこで型のテストを行う機能を実装していたので、それを流用することで、Type Challengesの問題を解くための機能を実装することができました。
このように新しくサービスを一から作るのではなく、既存のサービスをベースにして新しいサービスを作るのはかなり効率的だと今回の開発で感じました。
というのも以下の機能を実装する必要がないからです。
- ログイン機能
- ユーザー受講状況の管理
- エディターの開発
- 採点の仕組み
- インフラの構築
これらの機能は既存のサービスで実装されているので、新しく開発する必要がありません。
mosyaについての開発記録は以前記事にしていますのでこちらの記事をぜひご覧ください。
ChatGPTの Code Interpreterを利用している
現在レッスン用の教材データは、問題文用のCHALLENGE.mdやテスト用のtype-test.js、答え用のanswer.ts、最初の状態のスクリプトであるdraft.tsなどのファイルを作成して管理しています。
これらのデータをちまちま手動で作成するのはかなりの手間なので、つい最近、リリースされたChatGPTのCode Interpreterを利用して、一気に問題を量産しました。
ChatGPT Code Interpreterとは、ユーザーのプロンプトから必要に応じてJupyter Notebookを実行して結果を返してくれる仕組みです。
今回、この仕組みを利用して、Type Challengesの問題を解くためのコードを生成しました。
そのために、Type Challengesのレポジトリをzip化して、ChatGPTに渡しました。
その上で私が命令した内容の一部は以下です。
「最終的に生成したコードをzipで渡してくれ」とChatGPTに伝えると、そのコードをzipで返してくれました。
もらったコードの手直しは多少必要でしたが、これを利用することで、一気に問題を量産することができ、だいぶ時間短縮につながりました。
以前開発したOSSを利用
ブラウザーでのTypeScriptの型チェックにこだわりました。というのもサーバーサイドで型チェックを動かすとレスポンスに時間がかかるのでなるべく早く結果を返すようにフロントエンドで型チェックのテストを動かすようにしています。
その上で、Jest風に型のテストが書けるツールをOSSとして以前開発していました。
これは今開発中のmosya Reactのために開発したもので、今回のmosya<TC>でも利用しています。
これを使うと以下のような感じで型のテストを書くことができます。
import { TypeTester } from "browser-type-tester";
const code = `
type Concat<T extends any[], U extends any[]> = [...T, ...U];
type Result = Concat<[1], [2]>; // expected to be [1, 2]
`;
const typeTest = new TypeTester({ code });
typeTest.it("Concat<A, B>型が正しい", () => {
typeTest.expect("Concat<['a', 'b'], ['c', 'd']>").toBe("['a', 'b', 'c', 'd']");
});
typeTest.it("Concat<A, B>はanyを返さない", () => {
typeTest.expect("Concat<['a', 'b'], ['c', 'd']>").not.toBeAny();
});
const results = await typeTest.run();
console.log(results);
このOSSの開発で苦労したのが、テストのためにTypeScript
をブラウザーで動かすことでした。
まずブラウザーでは、TypeScriptの実行APIである、ts.createProgram
が動作しませんでした。
これはTypeScript
が実際にfs
を使ったNode.js
前提の実装になっているためです。
そこで、compilerHost
というオブジェクトを定義し、それをts.createProgram
にわたすことで、fs
を使わずにTypeScript
を動かすことができました。
以下のようなコードで、実際にそのファイルへのアクセスがあった場合は、fs
を使わずにメモリ上のファイルを返すようにしています。
const compilerHost: ts.CompilerHost = {
getSourceFile: (fileName: string) => {
if (fileName === sourceFileName) {
return ts.createSourceFile(fileName, code, options.target);
}
return undefined;
},
writeFile: () => {},
getCurrentDirectory: () => "",
getDirectories: () => [],
getCanonicalFileName: (fileName: string) => fileName,
useCaseSensitiveFileNames: () => false,
getNewLine: () => "\n",
fileExists: (fileName: string) =>
fileName === sourceFileName
readFile: () => "",
getEnvironmentVariable: () => "",
};
また、TypeScript
の標準ライブラリであるlib.d.ts
をブラウザーで解釈させるために、ライブラリーの型定義ファイルをブラウザーで読み込む必要もありました。
かなり重いファイルなのですが、monaco-editor
の実装を参考にして、以下のリンク先のコードで、lib.d.ts
をブラウザーで解釈させることができました。
そして、最終的にcompilerHost
を以下のように書き直し、lib.d.ts
などの標準ライブラリを読み込むことができました。
const compilerHost: ts.CompilerHost = {
getSourceFile: (fileName: string) => {
if (fileName === sourceFileName) {
return ts.createSourceFile(fileName, code, options.target!);
}
if (libFileMap[fileName]) {
return ts.createSourceFile(
fileName,
libFileMap[fileName],
options.target!
);
}
return undefined;
},
writeFile: () => {},
getCurrentDirectory: () => "",
getDirectories: () => [],
getCanonicalFileName: (fileName: string) => fileName,
useCaseSensitiveFileNames: () => false,
getNewLine: () => "\n",
fileExists: (fileName: string) =>
fileName === sourceFileName || !!libFileMap[fileName],
readFile: () => "",
getDefaultLibFileName: () => libFileName,
getEnvironmentVariable: () => "",
};
これにより例えば以下のようなreference
がある場合には依存する標準ライブラリを順次読み込むことができます。
/// <reference lib="es2015.iterable" />
createProgram
により実行した型のチェックはレポートとして以下のように取得できます。
const program = ts.createProgram(
[libFileName, sourceFileName],
options,
compilerHost
);
const diagnostics = program.emit().diagnostics
もし、diagnostics
の中身が空であれば、テストが通っているとみなします。
今後の課題
mosya<TC>で「なぜその回答になるかわからない」というお声を多くいただいているので解説を掲載したいと思います。
また、ところどころ型のチェックが甘い課題があるので、そこを修正していきたいと思います。
まとめ
今回、サービスを4日でリリースできた理由は、既存のサービスをベースにしていることと、ChatGPTのCode Interpreterを利用していること、以前開発したOSSを利用していることが大きいと思います。
特にサービスを開発する際に以前開発したサービスの上に別サービスを載せることで大きく工数を削減できたのは大きいかなと思います。
また、同じドメイン内にサービスを新しくリリースすることになるので、そのドメインのSEOにも良い影響を与えると思います。
もし、今後サービスをリリースする方がいらっしゃれば、ぜひ既存の仕組みや過去リリースしたサービスを活用してみるというのも検討してみてください。
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