AIを活用した新しい相互理解ワークをやってみた
AIを活用した新しい相互理解ワークをやってみた
要約
- AIチャットボットをインタビュアーとして活用し、匿名の自己紹介文を生成
- 生成された紹介文を基に「これは誰の紹介文?」を当てるゲーム形式で実施
- 参加者の心理的ハードルを下げつつ、AIツールの活用促進にも繋がる効果的なワークに
はじめに
スマートラウンドでは普段リモートワークが中心ですが、月1回の全員出社日ではそのぶんオフラインでのコミュニケーションを大切にしています。 協働するメンバーを理解しサイロ化を防ぎたいと、出社日にはエンジニア、デザイナー、PdMで任意参加の交流会を行っています。
今まで人狼ゲームやOSTなど様々な取り組みを行ってきましたが、正直なところネタ切れの状態で、毎回の企画に頭を悩ませていました。 そんな中、新メンバーの参加を機に、改めてお互いを知るためのワークを実施したいと考えました。
自分の引き出しの中で検討してみると…
- 他己紹介はお互いをある程度知った上でやるものなので、新メンバーがいる場では不適切
- 「実は…」で始まる自己紹介ワークは好きでよく使うが、新メンバーにとっては「実は」の意味がない
- ドラッカー風エクササイズはプロジェクトキックオフ寄りでワークとしても少し重め
- Moving Motivatorsは1組のカードセットでは人数に制限がある
そこで思いついたのが、匿名の自己紹介文を当てるゲームです。
さらに、匿名性を保ったままインタビューを行うために、LLMチャットボットをインタビュアーとして活用するアイデアが浮かびました。
これなら
- ファシリテーター自身も参加可能
- LLMをあまり使用していないメンバーにとってのAI活用の良い機会に
- ゲーム感覚で楽しみながら相互理解を深められる
という一石三鳥の効果が期待できます。
ワーク「AIインタビューでこれだーれだ☺️」
事前準備
1. 参加者全員がLLMチャットボットを使える環境を整えておく
ChatGPTでもClaudeでもGeminiでも何でも良いですが、今回はAWS Bedrockの
bedrock-claude-chat のLLMチャットボット環境が既に社内展開されているのでこちらを使いました。こちらはAWS公式サンプルリポジトリに含まれており、Bedrockを使ったチャットボットをデプロイ出来る代物です。
SaaS版のようなユーザー数に応じた課金体系ではなく、使用量(トークン数)による課金なので料金は比較的安心で、社内全体にも提供しやすいのでオススメです!今回のような常時は使わないけど、ワークショップなどで一時的に多人数で使う場合も適しています。
また、比較的日本語生成の質が良いと思えるClaudeの、最新モデルClaude 3.5 Sonnet v2を使用できるのはインタビューワーク向きでありがたかったです。
2. インタビュー用のプロンプトを用意する
例えば以下のようなプロンプトを用意します。これは自分でいくつかプロンプトを試しがら、Claude本人にもよりよいプロンプトを提案してもらい、30分ほど調整しました。より面白くて意外な文章が生成できるプロンプトを模索していきたいです。
プロンプトのサンプル
# AIインタビューの紹介文でこれだーれだ?
今から私に意外性を見つけるようなインタビューをしてください。
## 基本ルール
- 質問は1つずつ実施(最大5問まで)
- パス可能(その旨を毎回明示)
- パスの場合は別の質問に変更
- 個人特定につながる情報(名前、職業、所属、年齢、居住地)は避ける
- 回答の情報量が少ない場合、回答者の同意が得られば延長の質問も可
## 質問構成
1. 誰でも答えやすい一般的な質問(1-2問)
- 休日の過ごし方
- 好きな食べ物
など
2. 過去を知る質問(2-3問)
- 失敗談
- 思い出
- 部活動
など
3. 意外性や面白さを引き出す質問(1問程度)
- 特技
- 習慣
- もし◯◯なら〜
など
## 質問例リスト(これ以外も可)
<examples>
- 子供の頃、なりたかった職業は何ですか?
- 今までで一番印象に残っている旅行先はどこですか?その理由も教えてください。
- もし1日だけ誰かと入れ替われるとしたら、誰を選びますか?理由も教えて下さい。
- 最近ハマっているものは何かありますか?
- 意外と知られていない自分の特徴はありますか?
- 人生で大切にしている価値観や、座右の銘のようなものはありますか?
- 人生で印象に残っている場所・出来事を教えてください
</examples>
## 注意点
<caution>
- 個人特定を避けつつ答えやすい質問を心がける
- 興味深い回答には掘り下げ質問も可能
</caution>
## 深掘り質問例
- 「趣味について」→「その趣味を始めたきっかけは?」
- 「思い出について」→「それが今の自分に与えた影響は?」
## 最終アウトプット
<output>
### 紹介文作成条件
- 文字数:200-400字
- 個人特定されにくい内容
- その人らしさが伝わる特徴を含む
- クセのある文体で表現
### 文体バリエーション例(これ以外も可)
- SNSインフルエンサー風
- 格闘技リングアナ風
- 情熱大陸風
- 昭和の特撮ヒーロー番組ナレーション風
- 深夜ラジオDJ風
- RPGのキャラクター紹介風
- スポーツ選手インタビュー風
- ゴシックホラー小説風
- 落語家のまくら風
- フードレポーター風
- 詩的なリリック/ポエム風
</output>
この紹介文は「誰のことか当てるゲーム」に使用します。
3. 生成された紹介文を回収するフォームを作成する
Googleフォームなどで、匿名で紹介文を回収するフォームを作成します。
メールアドレスを「収集しない」を選択し、匿名で回答を収集します。「回答を 1 回に制限する」をオンにすると匿名を維持しつつも、重複回答を防げます。
公開設定で回答者ビューを組織内に公開しておくのもお忘れなく!
当日の流れ
- インタビュー用のプロンプトを参加者に共有する
- LLMチャットボットにログインしてもらう
- 参加者自身がプロンプトを貼り付けてインタビュー開始
- 生成された紹介文をGoogleフォームに回答してもらう
- 回収した紹介文をスクリーンに映しながらファシリテーターが読み上げ、誰のことか当てるゲームを行う
- 正解が出たり、ある程度誤答が出たら、本人が名乗り出る
- 解説を交えた自己紹介をする(この辺は柔軟に)
- 次の紹介文へ
- 🙌
AIインタビューの基本ルール
- 質問は1つずつ実施(最大5問まで)
- 個人特定につながる情報は避ける
- パス可能
最大5問というのは、これより多くなると回答が億劫になりそうなのと、時間配分を考慮しての設定です。
個人特定につながる情報は避けるのは、プロンプトでは設定していましたが人間にはあまりきちんと言っていなかったので、その人を特定出来るワードがインタビューに含まれてしまい、即答されてしまう紹介文が発生してしまいました(笑) 必ず人間にも特定されそうなワードは入れないようにしっかり伝えましょう!
パス可能なのは、特定されやすい質問を避けたり、回答しにくい質問を避けたり、答えやすく参加しやすいワークとするためになります。
AIによって生成された紹介文サンプル
昭和特撮ヒーロー番組ナレーション風
その姿を見た者は誰もいない...!
休日のドライブスルーで、マクドナルドのしなしなポテトを愛する謎の人物。
かつて小学生時代はソフトボールの選手として、グラウンドを駆け抜けた青春の日々。
そして大学時代には、カメラを手に映像の世界へと足を踏み入れる!
だが...!油断は禁物!
徹夜明けの深夜の街で救急車を呼ばれるという危険な経験を乗り越え、今を生きる。
その心の奥底には、フィジーの青い海と空に憧れる冒険心が秘められているのだ!
果たして、この謎めいた人物の正体とは...!?
深夜ラジオDJ風
『はいはい、深夜3時27分。今夜もお送りします「真夜中の謎解きタイム」
今宵ご紹介するのは、かなりクセのある依頼人さんなんですよねー。
子供の頃は白衣フェチだったらしくて、科学者に憧れてたっていう(クスッ)
でもね、今はAIの世界にどっぷりハマってるみたいで。
特にAGIって呼ばれる超絶AIにメロメロなんですよ。まあ、言っちゃえばAIオタクってやつですね(笑)
そして、ここだけの話...
「デジタル大臣になって無責任にDXやり逃げしたい」なんて、
めちゃくちゃぶっ飛んだ野望を持ってるんですよ。マジで言ってたから引きました(爆)
...あ、このコーナーはフィクションではありません(ささやき声)』
BGM: しっとりしたジャズ
SNSインフルエンサー風
みなさーん!今日は超クールな推しを紹介しちゃいます✨
休日は推し漫画に没入する本物のオタク魂の持ち主なんです!
でもね、実は理系脳の超しっかり者!?家では全然お酒飲まないストイックライフ送ってるって超意外じゃない?😳
新婚旅行ハワイ組だけど、むだなことには全力スルー術を持つ賢者です!
#推し紹介 #ギャップ萌え #意外な一面
参加者からのフィードバック
実施後の匿名アンケートでは、4段階評価(4が最高)で平均3.75と概ね好評でした。
-
インタビュー形式について
- 「自分の話ってしづらいのですがインタビュー形式だと抵抗なく答えやすい」
- 「AI側からどんどん質問してくれるのが面白かった」
- 「質問に答えてたら勝手に自己紹介を作ってくれるのでハードルが低く緊張もしなくてイイと思いました!」
-
AIの効果について
- 「AIによる紹介文の絶妙な語り口がとてもよかったです!」
- 「AI と対話形式で回答できたことが新鮮でした」
- 「結構予想ができない感じの結果が出てきて面白かった」
- 「AIをはさむことでワクワク感がでる」
-
活用効果について
- 「初対面の方とのワークショップでもアイスブレイクこれでいいのでは?」
- 「AI活用に弾みをつけるものな気もしました」
- 「会話のきっかけになった」
-
改善点
- 「一人ひとりの回答を見て回答者を当てていくと、徐々に絞り込めてしまうので非同期で回答を募り、結果とともに回答者を当てていく方式のほうがワクワク感が最後まで続きそう」
- 「どこまで質問をスキップしていいのかわからず少し躊躇しました」
- 「もう少し質問が多いといいのかも?普通に答えたらちょっとおもしろみがなかったり」
まとめ
活用シーン
- 新メンバー参加時のアイスブレイク
- 年1回程度の定期的なチームビルディング
- オンラインでの交流ワーク
- AIツールの自然な活用機会を作りたい時
改善点はありますが、今後も時々使いたいと思えるワークが作れました。自分の引き出しに持ちネタが増えて嬉しいです。図らずもフルリモートでも出来るワークになったので、今後のリモートワークでも活用していきたいです!
今回は簡単なワークでしたが、スマートラウンドでは2025年「Vertical AI Company」へと進化すべく力を入れていきます!
色々な職種、ポジションで募集していますのでご興味ある方はぜひカジュアル面談に!
Discussion
読み上げはAmazon Pollyを使うのもありかなーと思いました。