【DATA SUMMIT登壇資料】「あの人しかわからないをなくす」TROCCOで属人化した売上データ運用を完全自動化した話
シロクについて
シロクは「N organic」や「FAS」などの化粧品ブランドを展開しています。各ブランドの成長に伴い、データに基づく意思決定の重要性が増しており、顧客体験の向上とマーケティング効果の最大化のために、日々多様なデータが活用されています。
DATA SUMMITに登壇しました。
primeNumber様主催の DATA SUMMIT 2025(11/26) にて、「“店舗売上やECサイトのデータは、あの人しかわからない”をなくす──属人運用を完全自動化し、社内のデータ活用が進んだ話」というテーマで LT 登壇しました。
この記事では、登壇でお話しした内容をもとに、「データ運用の課題」や「どこを仕組み・自動化したのか」「事業的な効果」を、実際のユースケース単位で整理して書いています。同じ悩みを抱えている方の参考になれば嬉しいです。
1. POSデータの活用事例(Google Drive)
小売におけるPOSデータは、売上分析や施策検証において重要なデータである一方、運用面では属人化が進みやすいという課題を抱えていました。当時の運用は以下のような状態でした。
- データは小売ごとに、Rawデータが個別メールで送付されてくる。
- フォーマットやカラム構成が小売ごとに異なる。
- 共有タイミングが不定期であり、いつデータが届くか予測できない。

という仕組みになっていることから、手動作業による工数逼迫、データ品質が安定しないという課題を抱えていました。
Google Driveコネクターの活用
こうした課題に対して、TROCCOが提供するGoogle Driveコネクターを軸に、Google Apps Script(GAS)と組み合わせた自動化フローを構築しました。
TROCCOにはGoogle Drive上のファイルを定期的に取得できるコネクターが用意されており、
これを活用することで「メールで届くPOSデータ」をデータ基盤に自然に取り込めます。
構築したフローは以下の通りです。
- POSデータが Gmail に届いたタイミングで、GASを用いてGoogle Driveに自動転送。
- Google Driveの特定フォルダを、TROCCOが定期的に取得。
- TROCCO経由でPOSのRaw データをS3に保存。
- Snowflake にロードし、Lightdashで可視化・分析。

メール起点という属人的なオペレーションを、「Google Drive をハブとしたデータパイプライン」に置き換えています。
導入効果
この仕組みによって、以下のような効果が得られました。
- 手動作業がほぼゼロになり、処理工数は半日 → 数分レベルまで削減。
- データ欠損や差分を検知できるようになり、POSデータの品質が大きく向上。
- 商談資料や定例レポートへ即時に反映がされ、オフライン受注を含む売上貢献の可視化が可能に。
単なる業務効率化にとどまらず、オフラインデータを意思決定に使える状態にしました。
2. 楽天市場の活用事例(RMS × HTTPS)
楽天市場のデータは、RMS(Rakuten Merchant Server)を通じて確認・分析できます。
一方で、RMSは権限を持つ一部のメンバーしかアクセスできないため、「分析が特定の担当者に集中する」「他データを横断的に分析しづらい」といった課題がありました。

RMS API × HTTSコネクターの活用
RMSには公式APIが提供されており、TROCCOのHTTPSコネクターを利用することで、楽天市場にデータを分析基盤へ直接連携できるようになります。この仕組みを用い、誰もが使える形でSnowflake に集約することを試みました。
構築したフローは以下の通りです。
- RMS API から注文・商品データを取得。
- TROCCO 経由でS3 → Snowflake に保存。
- Lightdash で他データと統合し、分析・可視化。

RMSの画面や権限制御に依存せず、楽天市場のデータをデータ基盤の一部として扱える構成にしています。
導入効果
この仕組みにより、以下のような効果が得られました。
- 売上・CVにとどまらず、商品単位まで踏み込んだ分析が可能。
- RMSの管理者権限を持たないメンバーでも、楽天市場を自由に分析できる状態を実現。
- 分析が特定の担当者に依存せず、データ活用の民主化。
楽天市場のデータを「見るためのもの」から、意思決定に使えるデータ資産にできました。
なお、RMS API を用いた具体的な実装方法については、primeNumber様の公式Blogにて事例として詳しく紹介されています。より詳細に知りたい方は、ぜひ以下をご参照ください。
3. 直営店の活用事例(スマレジ)
シロクでは全国に直営店を展開しています。一方で、各店舗の売上管理や分析はDivisionごとに委ねられており、「各チームで見ている指標が統一されていない」「店舗データが部門ごとで、横断的に活用できない」といったデータのサイロ化が課題となっていました。

スマレジコネクターの活用
シロクでは、直営店のPOS管理システムとしてスマレジを利用しています。2024年5月には、TROCCOにてスマレジコネクターが正式リリースされました。
今回、このスマレジコネクターを活用することで、直営店の売上データをTROCCO経由で柔軟に取得し、DWHへ連携できるようになりました。
構築したデータフローは以下の通りです。
- スマレジ → TROCCO → Snowflake。
- スマレジ固有のカスタム項目は dbt を用いて整形・モデル化。
- Snowflake × Lightdash により可視化・分析を実施。

具体的な実装方法や、実際の活用事例については、ZennのBlogでも事例として公開しています。より詳細を知りたい方は、以下の記事をご覧いただけますと幸いです。
まとめ
POSデータ(Google Drive)、ECデータ(楽天市場)、直営店データ(スマレジ)といった異なるチャネル・運用背景を持つデータを、いかに属人化させずに扱うかをユースケース単位で紹介しました。共通して意識していたのは、
- 人が頑張らなくても回る仕組みにすること。
- データ取得・加工・可視化を一貫して自動化すること。
- 「誰が見ても・いつ見ても」同じ状態のデータを提供すること。
です。同じように、「データ運用が人に依存している」「部門やチャネルごとにデータが分断されている」といった課題を抱えている方にとって、本記事が何か一つでもヒントになれば幸いです。
謝辞
本内容は、DATA SUMMIT にてお話しさせていただいた内容をもとにしています。
このような貴重な登壇の機会をご提供いただいた primeNumber社の皆様、ならびにイベント運営に携わられたすべての関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。素晴らしい場でお話しできたことに、改めて感謝いたします。
「N organic」、「FAS」等の化粧品ブランドを展開している株式会社シロクのエンジニアブログです。 ECサイトを中心とした自社サービスの開発・運用を行っています。 sirok.jp/norganic
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