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技術書典13に初参加したら年収が激減した話

2022/10/03に公開

(2022年11月25日追記)
私の本が株式会社インプレス R&Dさんより出版されました。イラストは鍋料理さんの作品です。猫のモデルはなんとうちのコです!

https://www.amazon.co.jp/dp/B0BMPZW444/

感想を書いていただけるととても嬉しいです!
(追記ここまで)

2022年9月25日、技術書典13が終了しました。私は次の本を書いて初参加しました。

https://techbookfest.org/product/rXnEt6L5fTKmjLF1ThktTw?productVariantID=cDi5EmpuPJLDXrS5zfYFHa

また今回、以下の本を購入しました。初参加の興奮でつい買いすぎてしまいましたが、時間をかけて読んでいくつもりです。

技術書典13で購入した本
タイトル 価格 購入先
りあクト! TypeScriptで始めるつらくないReact開発 第4版【① 言語・環境編】 ¥1,380 BOOTH
りあクト! TypeScriptで始めるつらくないReact開発 第4版【② React基礎編】 ¥1,380 BOOTH
りあクト! TypeScriptで始めるつらくないReact開発 第4版【③ React応用編】 ¥1,380 BOOTH
Pythonの2歩目でGUIアプリ制作をやるならTkinter ¥1,000 技術書典オンラインマーケット
サイバーセキュリティお嬢様〜セキュリティの基本のき〜 ¥1,000 技術書典オンラインマーケット
徹底比較研究 OWASP ZAP vs Burp Suite 外観&自動診断編 ¥1,000 技術書典オンラインマーケット
APIを作りながら進むGo中級者への道 ¥2,500 技術書典オンラインマーケット
Go初心者でも作れるスクレイピングツール ¥1,000 技術書典オンラインマーケット
ゼロからわかるgit入門 ¥1,000 技術書典オンラインマーケット
Nanchatte Chemie 新刊落としたエディション ーベンゼン類縁体の分⼦軌道に関する羅列ー ¥500 技術書典オンラインマーケット
薬局をつくろう ~全年齢対応版~ ¥1,500 技術書典オンラインマーケット
たかが文字コード、されど文字コード/ShiftJISerへ贈る鎮魂歌 ¥600 技術書典オンラインマーケット
Testable Firebase ¥2,000 技術書典オンラインマーケット
はじめてのBigQuery データ基盤・データ分析の第一歩 ¥1,000 技術書典オンラインマーケット
やさしい日本語自然言語処理 ¥500 技術書典オンラインマーケット
機械学習レベル0(旅する機械学習シリーズ) ¥800 技術書典オンラインマーケット
最高のおうちオフィスではたらく ~快適なリモートワーク環境の作り方~ ¥1,000 技術書典オンラインマーケット
最高のおうちオフィスではたらく vol. 2 ~快適なリモートワーク環境の作り方~ ¥1,000 技術書典オンラインマーケット
技術季報Vol.13 ¥1,000 技術書典オンラインマーケット
Amazon CloudWatch[本格]入門 ~クラウドネイティブオブザーバビリティストーリー~ ¥1,500 技術書典オンラインマーケット
ぼくのアジャイル100本ノック ¥2,000 BOOTH
シュメールの神話イナンナとエビフを原文から解読して和歌で翻訳できたらかっこいいなって ¥500 技術書典オンラインマーケット
猫トイレ監視システムの作り方1 ¥500 技術書典オンラインマーケット
セキュリティチェックシートの薄い本 ¥1,100 技術書典オンラインマーケット
AWS Amplifyで作るIoTバックエンド ¥1,000 技術書典オンラインマーケット
Nuxt3 + TailwindCSS + AWS CDK でポートフォリオ制作&公開 ¥1,980 技術書典オンラインマーケット
技術書典13記念NFT発行できるかな?(仮) ¥500 技術書典オンラインマーケット
土曜日のRaspberry Pi Pico ¥800 技術書典オンラインマーケット
クイズで学ぶTypeScript型定義入門 ¥1,000 技術書典オンラインマーケット
PythonやJupyterでiPhone/iPad先端機能を簡単・自由にプログラミング!「活用篇」 ¥1,000 技術書典オンラインマーケット
PythonやJupyterでiPhone/iPad先端機能を簡単・自由にプログラミング!「土台篇」 ¥1,000 技術書典オンラインマーケット
技術をつたえるテクニック ~分かりやすい書き方・話し方~ ¥1,000 技術書典オンラインマーケット
ひたすら雑にRustを書く本 ¥500 技術書典オンラインマーケット

この記事では私が技術書典に初参加した経緯をふりかえってみます。これから技術書典に参加してみようと思っている方の参考になれば幸いです。

3月、技術書典参加を決意する

技術書典というイベントが存在し、池袋で開催されていることは数年前からなんとなく知っていました。私は鹿児島在住のため「東京圏に住んでる人はいいなあ」と憧れつつも、参加は諦めていました。ところがある日Connpassを眺めていたらたまたま以下のイベントを見つけ、技術書典12がオンライン開催していたことを知りました。

https://techbookfest.connpass.com/event/238360/

技術書典12はすでに終了していましたが、技術書典のYouTubeチャンネルで「はじめてのサークル参加meetup」などを視聴し雰囲気を味わうことができました。技術書典のオンラインマーケットがあることも初めて知り、早速登録しました。そして「これなら鹿児島からでも参加できるかも」と思うようになりました。この時点では次の開催時期が不明だったため、技術書典13には一般参加するつもりでした。技術書典14からサークル参加できたらいいなと考えて、本の構想を練り始めたのは3月末ごろでした。

4月、ブログを書きつつ本の構想を練る

まず、技術同人誌の書き方に関する本を読み漁りました。以下の本は大変参考になりました。

技術書をかこう! ~はじめてのRe:VIEW~ 改訂版【C92新刊】

技術同人誌を書こう! アウトプットのススメ

プロジェクト思考で行こう!~技術同人誌を作る技術

はじめての技術書ライティング―IT系技術書を書く前に読む本

自分が書く本の内容は割とあっさり決まりました。当時開発していたWebサービスに関する記事をZennで書いていたので、これらをまとめれば本1冊分にはなるだろうと考えました。本の元ネタにした記事はこちらです。

本の元ネタになった記事

並行して執筆環境の検討も始めました。この時点ではRe:VIEWにするかRe:VIEWスターターにするか、Vivliostyleにするか迷っていました。

5月、執筆開始

5月21日に技術書典13の開催日が発表されました。「9月開催なら本の執筆が間に合うかも!」と思い、急いで執筆環境を整え、以下の記事を公開しました。

https://zenn.dev/sikkim/articles/d5e6d851d100d2

PDFだけでなくZenn Booksでも本を出したかったので、Markdownで書いて自動でRe:VIEW形式に変換する方針に落ち着きました。

執筆環境の検討中に文章も少し書いていたので、この時点の進捗は30ページほどでした。本のネタとなるWebサービスは9割方完成していたので、本の執筆も余裕だろうと考えていました。

6月、背水の陣

開発していたWebサービスは6月に一旦完成しました。あとはひたすら執筆に専念すればよいはずでしたが、いまいち執筆速度とクオリティが上がりませんでした。原因は私の副業です。

当時私はソフトウェア開発の副業をしていました。業務内容は契約先のスタートアップ企業の課題解決です。私の担当は、技術調査やちょっとややこしい機能のプロトタイプ作成といった、一筋縄ではいかないタスクが多く、大変でしたがやりがいもありました。

技術同人誌の執筆とソフトウェア開発は、どちらも私にとっては深い集中を必要とする知的作業です。私の中の知的作業のイメージは、深い海の底まで潜っていって、良い文章のかけらやアイデアのひらめきを掴んで上がってくるというものです。それが、技術同人誌の執筆を始めてから、深く潜るのが難しくなってしまいました。

副業に費やす時間は長くても週10時間程度だったので、時間的には余裕があったはずです。しかし実際には、執筆しているときには副業の課題が気にかかり、副業をしているときには執筆中の文章のことが気になって、どちらにも集中できない状況に陥ってしまいました。頭の切り替えをもっと上手くできれば両立できたのでしょうか、私もまだまだ修行が足りません。

悩んだ末に6月末で副業をやめる決意をしました。副業収入は年収の3割近くを占めていたので、やめるのは勇気がいりました。妻がこころよく背中を押してくれたのは本当にありがたかったです。

6月にはサークル参加の申込みも始まりました。技術書典13はオフラインとオンラインの同時開催となりましたが、私はオンライン参加で申し込みました。早めに運営者に申し出れば途中からオフラインに切り替えることも可能ということでした。

7月、執筆完了

副業をやめてからは執筆に集中できるようなりました。会社の同僚がレビューしてくれた指摘箇所を修正し、自分でも何度も見直しながら書き進めていきました。そして7月31日に執筆が完了し、最終的に172ページとなりました。

オフライン参加に切り替えるか迷っていましたが、当時は新型コロナの感染者数が収まりそうになかったので、オンライン参加のままで行くことに決めました。

紙の本はいくらで作れるのか調べようと、日光企画さんの料金表を見たところ、172ページ、50冊という条件では1冊あたり2,000円以上かかることがわかりました。冊数を増やせば1冊あたりの金額は安くなりますが、初参加の私の本が大量に売れるとは思えないので、紙の本を作るのは諦めました。技術書典13では「後から印刷」という制度を使うと印刷費用80%キャッシュバックされるという大盤振る舞いの企画がありましたが、私の本は対象となるページ数の制限を超えてしまったため利用できませんでした。

8月、校正しつつ人生を見つめ直す

8月は校正とドッグフーディングに専念しました。今回の私の本はハンズオン形式になっています。そこで、初めて読む人になったつもりで本に書いてある通りに手を動かし、サンプルコードが正しく動作するのを確認しました。幸い大きな手直しは発生せず、わかりにくい記述を微調整しただけで済みました。

また、Zenn Books版は技術書典の開催日よりかなり早めの8月3日に公開しました。Zenn BooksはPDFと違って修正内容が全読者に対して即座に反映されるので、早めに公開してフィードバックをもらい、PDF版に反映しようと考えました。残念ながらアクセスがほとんどなかったので効果はありませんでいたが、人気のある書き手の方には有効な手法だと思われます。

校正とドッグフーディングが終わったら暇になったので、本を読みました。このとき読んだのは技術書ではなくSFとミステリーとファンタジー小説です。それまでも副業の合間に本は読んでいましたが、副業をやめてから読む本の面白さと濃密さはそれまでとは比べ物にならないほど格別でした。自分では意識していませんでしたが、副業が私にとって思った以上のストレスになっていたことに初めて気が付いた瞬間でした。

ちなみにこのとき読んだ本は以下の通りです。技術とは関係ありませんが、どれも面白いのでおすすめですよ。

  • プロジェクト・ヘイル・メアリー
  • 自由研究には向かない殺人
  • 新しい世界を生きるための14のSF
  • まず牛を球とします。
  • パン焼き魔法のモーナ、街を救う

9月、技術書典開幕

3月に参加を決意してから半年、ついに技術書典が開幕しました。
自分が書いた本を買ってもらうことがこれほど嬉しいとは思いませんでした。SNS等で自分の本に言及してもらうのはさらに嬉しかったので、自分でもなるべく買った本のことはツイートするようにしました。

オンラインマーケットには新刊本のコーナーができていたので、私が個人的に注目している本を紹介したところ、ちょっとだけバズりました。3桁の「いいね』をもらったのは久々です。

https://zenn.dev/sikkim/articles/2d7a2efd491c44

「第5回 刺され!技術書アワード」にも応募しました。おかげで技術書典のYouTubeで本の紹介もしていただけました。

頒布実績

私の本の頒布実績は以下の通りです。

媒体 件数 売上金額
技術書典オンラインマーケット 44冊 66,000円
BOOTH 10冊 15,000円
Zenn 2冊 3,000円
合計 56冊 84,000円

初参加にしては健闘したのではないでしょうか。

ただし、業務委託の副業をやめてしまったので、トータルの年収は数百万のマイナスです。減ってしまった年収をどうするか、まだ解決方法は見えていません。おいおい考えていく予定です。

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