質点としての航空機の運動方程式 Part 2: 無限に水平な地面を仮定した場合の運動方程式 - 前書き
この記事シリーズでは、航空機を質点とみなした場合の運動方程式を導出し、なぜそのような方程式になるのか?方程式の各部分の意味はどんなものか?について説明します。
この記事を書こうと思った動機や背景は、こちらの記事に書いてあります。また、この記事シリーズ全体の構成や、各記事へのリンクも、こちらの記事から確認することができます。
質点としての航空機の運動方程式 Part 0 - 航空交通や軌道最適化に用いられる飛行ダイナミクス
この記事シリーズは、私の博士論文の Appendix B: Derivation of the Aircraft EoM を英語から日本語に翻訳し、加筆を加えたものです。元論文はここから読めます。もしご自身の論文等でこの記事を参照される場合は、この博士論文を参照してください。
「無限に水平な地面を仮定した場合の運動方程式」とは
航空機を質点と仮定した場合の運動方程式は、大きく分けて2つの種類があります。1つ目は、無限に水平な地面を仮定した場合の運動方程式、そして2つ目は、地球が楕円体であると仮定した場合の運動方程式です[1]。
第2章では、無限に水平な地面を仮定した場合の運動方程式を導出していきます。導出する運動方程式には、風の影響も含めます。
図 2.1 は、「無限に水平な平面」と地球との関係を図示したものです。地球は一般的に、ほぼ真球に近い楕円体としてモデル化されます。「地面が無限に水平である」という仮定はすなわち、地球の表面(つまりは地面)を、図 2.1 の点G における接平面とみなすということです。これは言い換えると、楕円体としての地球の曲率を無視するということを意味します。この仮定は、航空機の (x, y) 位置が接点Gから離れすぎていない時に有効です。この運動方程式は、2つ目の物に比べてシンプルな形をしていますが、例えば大陸間飛行のように、長距離の飛行を計算しようとする場合は、特に (x, y) 位置の誤差が非常に大きくなり、運動や航空機の位置を記述するという目的に対して精度が悪くなります。

図 2.1: 地球(楕円体)と「無限に水平な地面」との関係。図中の座標系については、Part 2.1 と 2.2 で解説します。
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Part 2.1: 無限に水平な地面を仮定した場合の運動方程式 - 3つの座標系
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2つの種類があるとはいっても、その違いは、航空機の 3次元位置をどのように表すか?が異なるだけです。1つ目の運動方程式は航空機の位置を (x, y, z) 直交座標で表し、2つ目の方程式は (緯度, 経度, 高度) の3座標で表します。力学的な方程式の意味は完全に同じです。 ↩︎
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