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なぜ「勉強」を続けることは難しいのか?

2024/10/10に公開

はじめに

エンジニアとして働くようになって、何かしらの資格取得のために勉強することが多くなりました。

大抵の場合は、ある程度の計画を立てて進めることが多いと思いますが、計画通りに勉強が進まず、途中でやめてしまった、という経験はありませんか?(私はたくさんあります)

ちなみに、勉強は積み立て投資のような「複利」だと考えています。大人になっても勉強を続けている人は、学生時代とは比べものにならないほど多くの知識や経験を得ることができると思っています。

しかし、やはり勉強を続けることは簡単ではありません。

本ブログは、主に社会人の試験勉強について、『なぜ「勉強」を続けることは難しいのか?』ということを考察します。

そして、勉強を継続していくために有効な具体策を提案することを目指します。

適切な学習計画?

一般に試験勉強においては、アウトプットを意識して、学んだことを知識として定着することが重視されます。

つまり、教科書や参考書を読むだけでなく、なるべく多くの過去問や模擬問題に取り組むほど合格する確率が上がる、という方法です。

これに従うと、過去問を中心とした進め方が良さそうに思われます。

そこで勉強を開始する前に、学習計画として「過去問を毎日 10 問ずつ解く」という目標を立てたとしましょう。

例えば、試験まで約 60 日間あるとして、毎日 10 問ずつ過去問を解いていけば、全部で 600 問になります。
つまり、1回の試験が 60 問程度であれば、およそ 10 回分の過去問を解いたことになるので、毎日継続できれば、合格が見込めそうな雰囲気です。

一見すると無理なく続けられそうに見えますが、しかし実際のところ、この計画には不備があり破綻する可能性も十分あり得るのです。

学習初期は経験値が低い

実はこの「過去問を毎日 10 問ずつ解く」という学習計画には、適切な学習ペースを維持できるかどうか、という点が考慮されていません。
(私はとある試験勉強で同様の計画を立てましたが、開始 1 週間で挫折しました..)

つまり、学習の初期段階では、自身の圧倒的な知識不足に向き合わねばならず、問題形式や解き方(問題文のどこに注目すべきか等)にも、ほとんど慣れていません。問題文の意図が分からなかったり、解説を読んでも理解するのに苦労することが多いのです。

知っていることがあまりにも少ない状態から、1 問ずつ正確に理解して解き切るには、多くの時間がかかるため、一生懸命取り組んだはずなのに想定よりも進捗が悪い、ということが起こります。
自分が立てた目標を達成できなければ、モチベーションの維持も難しくなってしまいます。

この計画の問題点は、学習過程における経験値の獲得が織り込まれていないことです。

単に、全日程の学習量を全日数で割ったものを 1 日の目標とするのではなく、学習経過によって期待される経験値の重み付けを意識した計画が必要です。

最大のハードルは継続できるかどうか

「継続性」は学習初期の1番のハードルです。
最初は張り切って勉強しても、ある程度継続しなければ一定の結果は得られません。

ちなみに、MOOCs の修了率も一般に 10% 程度と言われており、学習を続けることの困難さが伺えます。
(※ MOOCs とは、オンラインで誰でも受講できる無料講座のことです。)

また、毎日の歯磨きのように勉強そのものを習慣化する、という方法も考えられますが、新しい習慣を身につけるには、平均して66日かかると言われています(日数は個人差が大きいです)。

ちなみに、パーソル総合研究所の調査によると、日本の「ゼロ勉強社会人」(勉強習慣のない社会人)の割合は52.6%に上ると報告されていて、やはり勉強の習慣化は容易ではないことが分かります。

強制的? or 自発的?

継続的な勉強を「強制」するやり方について考えてみます。

最初に試験日を確定することで強制的に勉強に追い込む、会社の人や家族に宣言することで、途中でやめにくくする、などがあります(私もよくやります)。

また、最近だとタイムロッキングコンテナという商品も人気のようです。強制的にスマホやゲームを使えなくする、というのも工夫の一つですね。

ただ私としては、自身を勉強へ「追い込む」やり方だけでは、やはり継続させるのは難しいように思います。

なぜなら、外部から強制されている状態は、「早く終わってほしい」という気持ちでいっぱいであり、とにかく目の前の勉強を最短で「終わらせる」ように意識が向きがちです。

そうなると、勉強の過程で生じる、自分の中の良い変化に気づきにくくなります。

勉強を続けていると、学んだことから新しいアイデアが思い起こされた経験はありませんか?
これは、新しい情報が自分が持っている知識や経験と結びついたりすることで生じる偶然の産物のようなものです。

それは目標とはあまり関係のない、いわば「ノイズ」のようなものですが、知的好奇心を刺激するようなものも含まれています。
そして、この「ノイズ」の発生に気がつくには、自発的な姿勢とリラックスした気持ちが必要だと思っています。

自発的ならフロー状態が期待される

強制的に自分を追い込むのではなく、自発的な意志で勉強に取り組むことで、適度に集中とリラックスが共存した状態になることが期待されます。これを「フロー状態」と呼んだりします。この状態になると、勉強が苦しいものではなくなります。

フロー状態について、興味のある方はご覧ください。
https://experience.dropbox.com/ja-jp/resources/flow-state
https://www.nike.com/jp/a/tips-for-finding-your-flow-state

ここで注目したいのは、フローはモチベーションとも相関があると言われていることです。

後述しますが、勉強を継続できるかどうかはモチベーションに依るところも大きいと感じていて、勉強して得た経験値(例: 学んだ知識で問題が解けた、日常生活の考え方が変わった、等)が次の勉強に即座に活かされるような状況、つまり

「勉強(原因) → 経験値獲得(結果) → 獲得した経験値を生かしてさらに勉強(原因) → さらに経験値獲得(結果) → ・・・」

といった具合に、勉強とその成果が連鎖的に続く状況になれば、モチベーションを維持しやすくなるのではないかと考えています。

いずれにせよ、過度に自分を追い込むやり方を重視しすぎるのは、勉強があまり長続きしないように思われます。

「ノイズ」を楽しんでみる

上で述べたように、継続的な勉強に過剰な外圧は必要なく、すでに義務教育を終えて働いている社会人であればなおさらです。

ここで、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の著者である三宅香帆さんの考えを紹介します。
勉強においても重要な示唆に富んでいると思われます。

自分の欲しい情報だけを素早く得られる、それがインターネットの一番良いところです。逆に本は、自分の欲しい情報の周辺にある知識や背景、文脈を一緒に教えてくれる。その分、読むのに時間はかかるんですよ。でも、自分が知ろうとしていた情報じゃない「ノイズ」も含めた知識を得られるところが、本の豊かさだと思っています。
https://www.asahi.com/articles/ASS6D1PW6S6DULLI005M.html

つまり、勉強においても、この「ノイズ」を楽しめるかどうかがモチベーションの鍵を握っていると思います。

ゲーム的な要素によって勉強を楽しむ、という方法もありますが、ここで述べたいことは、知的な成長を味わうことの楽しさです。

例えば、資格を受けようと決意した当初の目的を考えてみてください。
本来、資格試験の合格を目指して勉強を継続する中で、知的に成長することが目的だったはず。

そして、勉強を続ける過程で偶然得られた「ノイズ」・・・「自分の欲しい情報の周辺にある知識や背景・文脈」を味わってみることをおすすめしたいです。

それでも勉強が苦痛なら

本稿では、勉強が継続できなくなる要因として、学習初期の経験値の低さやモチベーションについて検討してきました。
そして、自発的な勉強によってフロー状態になることや「ノイズ」を楽しむといったように、継続的な勉強に有効なマインドセットについても考えてみました。

この時点ですでに意識を変えられる場合もありますが、それでも勉強が苦痛でたまらなくなった時に備えて、勉強を無理なく継続するための具体策を提案したいと思います。(次回に続く)

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