enPiT筑波大 2023の振り返り
はじめに
この記事は筑波大学のenPiTという授業の最終レポートです。
enPiTという授業は、アジャイル開発を通してチーム開発を学ぶ授業です。
開発したプロダクト
Tsuku Gei https://tsukugei.com/
背景
筑波大学には芸術専門学群生(芸専)が在籍しています。
- 彼らの作品を見る機会が少ない
- ハードルが高い
という課題を解決するために立ち上がったプロダクトです。
EV-P
以下がエレベーターピッチになります。
Tsuku Geiは
芸専の作品を知ってもらう・応援してもらう機会が少ない問題を解決したい
自分が作っている作品を知ってもらいたい芸専の人向けの
ポータルサイトです。
これは芸専専用のポートフォリオサイトを用意することによって、
SNS・メルカリとは違って
より自分の作品のバックグラウンドを知ってもらうことができます。
チームメンバーについて
PO
プロダクトオーナーで、誰よりも動いてくれてた。芸術大好きなサイコパス。闇堕ちしがちなイケメン。
SM
スクラムマスターで、芸専の人脈がすごい。気配りの神。我らの聖母マリア。チームをまとめるの大変そうだった。ごめん&ほんとにありがとう。
haku
人脈の彦摩呂。けどムキムキ。頭のネジ3つくらい飛んでると俺はみてる。
slimalized
鶴の一声の持ち主。斬新な切り口でアイデアを出してくれる。このプロダクトデザインの生みの親であり、デザインセンス◎
makiart
なんでも知ってる歩くGPT。技術でもアイデアでもマジで頼りになる。コンフリクト起こして楽しむオタク。たぶんほんとにサイコパス。
BonyChops
超絶裏方スーパーエンジニア。過労が心配。CI/CDとかセキュリティ(全てを破壊す)とかありがたかった。エンジニアの卵たちを温めてくれた父。
自分の主な役割
アイデア出しと機能追加開発を主に担当しました。PRを振り返ってみたらこんな感じでした。
- レスポンシブ対応(レイアウトやハンバーガー)
- 投稿時のバリデーションチェック
- 通報機能(フロントと通報API)
- ログイン/アウト時のページアクセス関連
アジャイル開発での出来事
テーマの難しさ
- 作品を投稿する芸専・作品を見るユーザの両者からレビューをもらう必要がある
- 課題の核である芸専生はenPiTの授業に居ないので、授業外に現地でレビューをもらう必要がある
- 同様の理由から作品を集めるのが難しい
解決に向けてとった行動
- 11月の芸術祭で特設のNotionサイトをつくることでTsuku Geiを宣伝 + 作品データ収集
- 芸術祭のTeamsグループや芸専のLineグループでTsuku Geiを宣伝 + 作品データ収集
- 実際に芸専の教授のもとに訪問し、インタビューを通して問題点を整理
- 実際に芸専生のもとに訪問し、インタビューを通して問題点を整理
- 授業内のスプリントレビューでは、ユーザ視点でのABテストやサービスの価値を調査
- 大学公式のイベント(卒展やT+など)とのコラボレーションを考えて学群事務と協議
実際に反映されたこと
- 顔の見えないアイコンや本人にだけ見えるイイネ・コメント、ランダム表示など、芸専生の生の声を反映させた独自性
- 作品説明文の下ですぐ見れるコメントや領域ごとの投稿者一覧、作品のダイナミック表示など、enPiT履修生の生の声を反映させたUI/UX
当事者の意見は、当事者ではない意見の100倍価値がある
これはenPitのアジャイル開発を通して一番学んだことです。
いいねやコメントを隠すという体験
例えば芸専生は、「TwitterなどのSNSではいいね数が誰でも見れるので、作風が似ているのに自分に比べて沢山のいいねがついている作品を見てしまうと、少し辛くなってしまう」といった意見がありました。
その意見を反映して、いいね数やコメントを作者のみ見れるようにしました。
すると、授業内のロングレビューでは、他のSNSでは見れるからなんとなく欲しい、見れたらどれぐらい評価されてるかが分かるから欲しいのような一見正しそうな一般的意見を多くもらいました。
しかしその後、ちゃんと芸専側のコンテクストを説明し、あえてこのような実装をしているのだと説明することで「なるほど!」と理解をしてもらえました。
このような経験から、以下のことに気づきました。
- 普段のレビューやロングレビューの意見は、そもそもプロダクトに興味がない人の意見を含むものである
- 本当に困っているユーザ(当事者)の意見を聞き、それをプロダクトに反映させるのが大切
作品を投稿する芸専・作品を見るユーザの両者を持つこのプロダクトだからこそ、このような貴重な学びを得ることができたと思います。
反省点
開発を振り返ってみると、当事者の意見を組み込んだ開発もありましたが、作品を見るユーザ向けのUI/UX改善の方が多かったように感じます。これはひとえに芸専の声を十分に汲み取れなかったことが原因なのですが、何回も芸専生へインタビューを行って、もっともっと尖ったプロダクトにするべきでした。
学んだこと(まとめ)
技術力
Webアプリの技術力は本当に身につきました。Next.js,React,TypeScriptは自分のポートフォリオサイトでやんわり使っていましたが、1ミリも良さが分かってませんでした。マジでHTML書かなくていいことだけしか知りませんでした。開発に携わる前に一度自分でチャットアプリを作ってみたこと、高専出身の二人が先導してくれて色んな知識を惜しみなくギブしてくれたことが、成長の大きな要因だと思います。
心理的安全性
自分は秋学期からTsuku Geiの開発に参加したのですが、とにかくこのチームは心理的安全性が高いと感じました。プロダクトオーナーや技術力のある人が驕るわけでもなく、むしろイジりやすい性格やおちゃらけた発言が相まって本当に何でも言い合える環境だったと思います。これは誰か一人が意識していても難しく、全員が相手に敬意を持って接するという当たり前のようで難しいことを当たり前にできていたからだと思います。ふざけすぎてグダグダになった良くない時もありますが、自分は本当に居心地が良かったです。ありがとうございました。
開発の聖徳太子
チーム開発で一番難しいのは、やはりチーム内での技術力の格差だと思います。難しいタスクや大きいタスクを技術力のある人がやって、比較的簡単なタスクや小さいタスクを残りの人がやるという一般的なチーム開発手法ではなく、このチームでは聖徳太子制を導入しました。技術力のある人があえて作業環境整備やレビューにまわり、残りの人が分からないことをすぐに聞ける状態にすることで、チーム全体の技術力向上とプロダクトのクオリティというトレードオフの要素を両方大切にしました。
最後に
1つのプロダクトを7人チームで約半年開発するという経験は初めてで、大変勉強になりました。基本的に個人開発が多いので、誰かに相談したり話したりしながら開発を進めていくのはとてもとてもとても楽しかったし、刺激的でした。これからこのプロダクトをどうするかは未定ですが、みんなで話し合って決めようと思います。また、チーム開発はこれから何度も体験すると思うので、今回の経験や知識を存分に次に活かしたいです。
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