君は他国のキーボードが「Y」の位置すら違うことを知っているのか?
TL;DR
多言語対応プロダクトを作る会社は、多言語を文化レベルで理解しているよっていうお話
皆さんは他の国のキーボードを知っていますか?

例えば、QWERTY ではなく QWERTZ が標準 となっている国があるのをご存じでしょうか?
「QWERTZ」……つまり、 本来 Y があるはずの位置に Z が鎮座している キーボードがあるのです。 そして、その配列こそが その国では標準 なのです。
この記事では、そんな世界の面白いキーボード事情と、そこに隠れた文化の違いについて紹介します。ぜひ最後までお付き合いください。
多言語対応をしているプロダクトを届けているRecustomer
弊社 Recustomer は、シリーズAフェーズながら、既に日本語だけでなく 多言語対応 を実現しています。
私はこの会社で CTO を務めていますが、これまでのキャリアでは、多様な環境で働いてきました。
特に前職の Preferred Networks や Mujin といった企業では、外国籍メンバーのマネジメントを担当する機会が多く、自然と「国による違い」や「それぞれの文化」に興味を持つようになりました。
本当に色々な国の方々と出会い、彼らに感化されて、私自身も海外旅行へ頻繁に行くようになりました。
海外旅行で「現地のキーボード」を買う趣味
Recustomer はエンジニア組織として、 全社的にUSキーボード配列を標準採用 しています。

普段の業務ではUS配列で統一されているからこそ、逆に 「US配列とは異なる配列」 への興味が尽きません。
そのため、独自のキーボード配列を使っている国へ旅行に行くときは、必ず現地のキーボードを買うようにしています。
それでは、私の愛すべきキーボードコレクションを紹介させてください。
1. ドイツ語キーボード (ドイツ・オーストリア)

冒頭でも触れましたが、これが QWERTZ配列 になります。
最大の特徴は、Y と Z が入れ替わっていること。 ドイツ語では Z を頻繁に使う一方で、Y は外来語くらいでしか使わないため、押しやすい位置に Z が配置されています。
そのため、ドイツ語キーボードをつないで「Ctrl + Z」を押すときには注意してください!
また、ウムラウト(Ä, Ö, Ü)にキーを占領されているため、
[ ] {} といったプログラミングに必須の記号は AltGr(右Alt)との同時押しが必要な場所に追いやられています。
そして、エンジニアを最も苦しめるのが 「記号の隠れ場所」 です。
例えば、メールアドレスを打とうとして @ を探すと、どこにも見当たりません。
正解は 「AltGr + Q」 になります。
まさか Q の位置にアットマークが隠れているとは思いませんよね。
さらに、プログラミングに必須の角括弧 [ ] や波括弧 {} は、数字キーの 7 8 9 0 に割り当てられており、これも AltGr との同時押し が必須。
配列宣言やJSONを書くたびに指がつりそうになります。
「ドイツのエンジニアは指の関節が柔らかいのではないか?」 と疑うレベルです。
ヨーロッパ系のキーボードはこのように、ウムラウトがどのようにキーボードを占領しているのかっていう点が面白いです。
そのせいもありまして、< や > という文字が 左シフトの横にあり、左シフトが短くなっています。
コーディング難易度はS級です。
ドイツ語キーボードでのプログラミングはおすすめしません。
2. スペイン語キーボード

スペイン語圏に欠かせないのが、Ñ (エニェ) キーです。 「L」の隣という特等席に鎮座しており、この文字への愛を感じます。
また、スペイン語特有の 逆クエスチョンマーク ¿ や 逆ビックリマーク ¡ も配置されています。
ドイツ語と同様、アクセント記号付きの文字を打つための専用キーや、AltGr を駆使しないと打てない記号(@ や # など)が多いです。
例えば @ マークは数字の 2 キーの右下にあり、AltGr + 2 で入力します(US配列の Shift + 2 と場所は同じですが、押すキーが違います)。
このあたりが、ヨーロッパ言語キーボードの難しさになります。
3. ノルウェー語キーボード

ノルウェー語の特殊文字といえば Æ Ø Å の3文字です。
私は Æ をみると、イオンのロゴだ!っていう気持ちになります。

アットマークなどの特殊文字の打ちづらさは、ドイツ語やスペイン語も同様です。
ヨーロッパ言語のエンジニアって本当にどうやってプログラミングしているんだろう…。
4. 繁体字キーボード (台湾)

私が持っている中でも、最も「情報量が多い」 のがこの台湾のキーボードです。
1つのキートップに、以下の4種類の情報が刻印されています。
- アルファベット
- 注音符号(ボポモフォ):発音記号のようなもの
- 倉頡(そうけつ)輸入法のパーツ:漢字の形から入力する用
- 大易輸入法のパーツ:こちらも字形入力用
キーボード全体が文字で埋め尽くされております。
5. ハングルキーボード (韓国)

韓国語(ハングル)のキーボードは、US配列をベースにしつつ、キートップにハングルが印字されています。だいたい USキーボード です。
特徴的なのは、スペースキーの左右にあるキー。 日本語配列の「変換・無変換」のように、「韓/英(ハングル/英語切り替え)」 キーが存在します。
6. タイ語キーボード

タイ語のキーボードは、US配列をベースにしつつ、キートップにタイ文字が印字されています。だいたい USキーボード です。
ただし、特徴としては44種類ととても子音の数が多く、それをこれでもか!と詰め込んでいる感じがよく出ています。
7. JISキーボード (日本)

- 短いスペースキー
- 他国にはない「変換」「無変換」「カタカナひらがな」キー (韓国語には変換がありましたが)
- 独特な形状のEnterキー
とてもユニークですね!
「日本語を入力する」という目的に特化して進化した結果、
US配列とは似て非なる独自の生態系を築いています。
これまで、ヨーロッパ言語キーボードは @ が打つのが面倒だという話をしてきました。
「@(アットマーク)」をShift等何も押さずに1回押すだけで入力できる点 は、
JISキーボードの驚きの特徴です!
他国のキーボードに触れると、
JIS配列がいかに「メールアドレス入力」などを重視しているかが分かります。
つまり、JISキーボードが好きな人はおそらくメールを打つ機会が多い人と思われます。
先程の韓国や台湾、タイ語などのアジア圏のキーボードは、もちろんUSキーボードをベースにしています。
JIS はアジア圏で唯一「US配列をベースにしていない、独自設計されたキーボード」です。
我々Recustomerは日本の会社ではありますが、
他のキーボードと比べても異質な点が多い日本語キーボードは違和感が強いこともあり、
USキーボードを標準としております。
これで他の国に行くときも慣れていて安心ですね!
キーボード配列は 「言語 × 文化 × 歴史」 の結晶
他にも多言語のウンチクはたくさん持っているのですが、
今日ご紹介したのは、エンジニアの皆さんが大好きな キーボード でした。
キーボード配列は“言語の仕様”のハードウェア実装 だと言えます。
そして、プロダクトの多言語対応というのは単なる翻訳ではなく、
「その国の文化、入力方法、生活の当たり前を理解すること」
でもあります。
Recustomer は SaaS の UI テキストを翻訳するだけではなく、
その国の使い方・価値観・文化 まで理解した上でプロダクトを進化させていきます。
キーボード配列が違っても、文化が違っても、
世界中のお客様が自然と“使える”プロダクトを作る。
それが多言語対応の真の面白さだと、私は思っています。
世界に挑戦するRecustomerに是非ご興味お持ちください。
最後に
このアドベントカレンダーが面白かった方は、
同じ人物が書いた別日のアドベントカレンダー記事も是非。
是非、多言語などのことも含め、弊社のことをもっと知りたい方は
カジュアル面談よろしくお願いいたします!
Discussion
ISO 2530-1975の血を引く配置ですね。
この規格は1994年8月に廃止されたようですが。
テレタイプの配列が元のようですし、本当に単価記号としての使い勝手の都合で配置されたのではないかなぁ、という気がします。