CTOとして会社に置くと決めた、ありがたい技術書5選
技術本を紹介したい!
Recustomer株式会社でCTOをしている、眞鍋と申します。
まだCTOとしては日が浅いのですが、
先日、Startup CTO of the Year 2025 でオーディエンス賞をいただくなど、
少しずつCTOらしい活動が増えてきました。
どんな会社にしていきたいかや、どんなエンジニア組織を作っていきたいかというお話は、
いろいろな登壇やエントランスブックなどでお話してきました。
一方、一人のエンジニアとして好きな本のお話はしたことがなく、
「エンジニアの皆さんに是非読んでほしい」
という気持ちも込めて、会社に置いている本を紹介してみようかなと思います。
注意
ここで紹介する本というのは、5~10年前くらいに非常にお世話になった本を中心にし、
あまり本屋さんやブログ等で見かけなくなった本を中心に紹介しようと思っています。
あと、日本語で書かれている本にして、ちゃんと有名な本に絞っています!
1. コンピュータの構成と設計 第6版

通称パタヘネ。
私はこの本が好きすぎて、新しい版が出るたびに買っています。
唯一持っていないのは第1版だけで、第2, 3, 4, 5, 6版を上下すべて揃えているほどです。
コンピュータの基本構造というものは大きくは変わりません。
しかし、「その時代にコンピュータが何を求められていたか」 によって、強調されるテーマは違ってきます。
ある版では GPGPU の章が突然充実し、
クラウドが一般化してきたタイミングでは 仮想化・分散処理の話が増強。
このようにアーキテクチャ戦争の歴史が、版を追うごとに更新されます。
教科書でありながら、
時代ごとの差分から「コンピューティング世界の潮目」を読み取れる、数少ない本なのです。
私は、エンジニアが良いビジネスを作るためには、
技術の歴史を知り、その上に立脚することが不可欠 だと考えています。
その意味でも、パタヘネは何度読み返しても新しい気付きがある名著です。
2. プログラミングコンテストチャレンジブック [第2版] ~問題解決のアルゴリズム活用力とコーディングテクニックを鍛える~

通称蟻本。
私は、以前Preferred NetworksやMujinという会社に在籍していたのですが、
その当時の入社試験には競技プログラミングが求められました。
試験対策として、この本を 想定解法を隠しながら、
1問ずつ“なぜその解法なのか”を説明できるレベル までやり込みました。
本を読んでコードを写すのではなく、
頭の中で解法の引き出しを作る訓練をしていた感覚があります。
実際にはAtCoderのような実際の競技プログラミングはしたことがないのですが、
アルゴリズムの基礎はこの本一冊で学ぶことができ、
アルゴリズムを体系的に学べた入門書として最高だ と
自信をもってオススメします!
3. はじめて読む486

名著中の名著。
最近では「486って何ですか?」という若いエンジニアの方に出会うことも多くなりましたが、
Intel CPU の歴史においては 極めて重要な節目となったアーキテクチャ です。
486の魅力は、機能が複雑化しすぎる前の、
コンピュータの原理がむき出しだった時代の姿をそのまま学べる 点にあります。
- OS がどのようにメモリ保護を実現するか
- 割り込み処理はどう動くのか
- MMU がどんな仕組みなのか
こうした OS × CPU の連携が、難解な CPU マニュアルではなく “普通の本” で理解できる。
ここがとても貴重です。
とても余談になりますが、x86系ではなくIA-64の本がありまして、
IA-64 プロセッサでどのように 除算や三角関数などを実装するかなどが書かれている本で、
こういう演算の原理を知れる本もあったりします。
世の中には原理を知るための本がいろいろあって面白いですよね。
4. プロフェショナルBSD 改訂版

弊社では全員が Mac を使用していますが、そのルーツのひとつが BSD です
(正確には Mach カーネル や I/O Kit などの複数の思想が混じり合っていますが)。
そのため、弊社が使っているこのMacというもの自体に興味をもてるよう、
BSDの雑談としてよく飛び交っています。
BSD は、広く普及した最初期の TCP/IP 実装を含んでいて、
ネットワーク技術者の「原典」と呼べる存在だと思うのですが、
弊社はなぜかネットワーク屋さんも多くいる会社のため、
Unix OSとネットワークの地層を正しく理解する という意味で、この本をよく紹介しています。
5. 型システム入門 プログラミング言語と型の理論

通称TAPL本。
型ってとてもいいですよね!


というスライドがあるくらい、社内では 型にうるさい会社 になっています。
Recustomerでは、堅牢なプロダクト開発のために型システムへの理解を非常に重視しています。
その内部実装を知ることによって、
より型に愛し愛されるコードが書けると信じています。
そのため、TAPLっていい本ですよねと勧めています。
型システムの内部実装を知ることで、
- なぜこの型エラーが起きるのか
- なぜこの推論結果になるのか
- 型チェッカーは何を見ているのか
といった 型の気持ちがわかるエンジニア になれるのが TAPL の良さです。
余談になりますが、
多くの方が知るスタートアップアクセラレーター「Y Combinator」。
その名前の元ネタである 不動点コンビネータ(Yコンビネータや Zコンビネータ など) の話題で雑談が盛り上がった経験がある方も多いはず。
TAPL はこうした計算モデルの基礎まで扱っており、最初の方だけ読んでも十分楽しい本です。
番外編. 寿司 虚空編
タイトルは寿司ですが、内容は寿司では全然ありません。
コンピュータサイエンスで学ぶ「アッカーマン関数」のように、
常識では想像できないレベルで巨大な数が登場する世界があります。
この本は、まさに “計算量の暴力” を漫画として体験する作品 です。
おそらく多くの人が一度は見たであろう、
あの300万再生されている「おねえさんの計算量爆発」に出てくる数ですら霞んでしまうほど。
計算量・巨大数のロマンに触れたい人は、ぜひ一度手に取ってみてください。
最後に
いかがでしたでしょうか。
Recustomerという会社で流行っている事柄の一端を紹介させていただきましたが、
興味持っていただけましたでしょうか。
是非、弊社のことをもっと知りたい方は
カジュアル面談よろしくお願いいたします!
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