チームの自分ごと化を促進する「大臣制度」のススメ
この記事はポート株式会社 サービス開発部 Advent Calendar 2024 の6日目の記事です。
ポート株式会社の加藤@ikasumi_wt です。普段は就活会議のエンジニアリングマネージャーをしつつ、社内で技術広報の推進などもしています。
最近は色々とチームが自律して動けるように、チームメンバーと一緒に試行錯誤していることも多いです。そのため、中ではアジャイルコーチのような振る舞いをすることも多くあります。
6日目の今日は、チームの自己組織化に関する弊社の取り組みについて紹介できたらと思います。
チームの自己組織化は永遠の課題
自己組織化(Self-Organization) は、チームが自律的に目標達成や問題解決のために動ける(機能する)ようになっていくことです。
アジャイル関連でよく出てくるワードで、スクラムガイドでは、2017年のものでは自己組織化、2020年のものでは自己管理型という記載があり、スクラムチーム内で自分たちだけで選択・決定するといった概念となっています。
弊社は全チームがスクラムチームというわけではないですが、自律して動けるようなチームになっていくべきというところはどのチームも変わらなず、追い求めていきたいと思っています。
自己組織化の概念だけ聞くと「それはそうなるべきだ!」となると思うのですが、自己組織化されていないチームを放置しても時間の経過と共に勝手に自己組織化されることはほぼないと思います(されていたとしたら自己組織化されていると思います)
そこで、EMとしてはそういった化学変化が起こりやすくなるようなきっかけづくりや場作りを進めていく触媒になっていく必要があると思っています。
そこで、ここでは今回就活会議の1チーム(以下、SEO ユニット)で行っている「大臣制度」という取り組みについて紹介します。
自分ごと化を推進する「大臣制度」のススメ
大臣制度は、その名の通りチーム内のイベントやミーティングに担当となる大臣を任命する制度です。
外務大臣や総務大臣とか、そういった一般的に連想する大臣から名前を取っています。
SEOユニットでは現在以下の大臣がいます。
- daily担当大臣
- ふりかえり担当大臣
- アサイン会担当大臣(プランニング会大臣)
- 開発者mtg担当大臣
...といっても、これだけでは何をいってるのか全然わからないと思うので、チームの課題感を含めもう少し詳しく説明します。
やりたい・すすめたいけど、お見合い
昨日のフジタさんのアドベントカレンダー でも書いたように、このチームでは夏頃から、プロダクトマネージャーがプロダクトマネジメントや事業により集中できるように(自分たちで担えるものは担っていけるように)チームが変革している最中でした。
一方で、チームメンバーも10名ほどと多く、意思決定や実際の行動に移すまで課題感もたくさんありました。
例えば
- 「結局これは誰が決めるの?」となったり「で、どうするの?」となったりすることが多かった
- チームの意思決定の方法が合議制(みんなで話してみんなで決める)以外の選択肢を持っていなかったため、何かを決めるのに時間と労力がかかる
- 誰かのお困りごとは解決してあげたくなってしまう(KPTでProblemとして出たものは、全部解決するTryをあげたい)
などということもあり、意思決定をするのにみんなの労力がかかっていました。
そこで、PdMともう一人のEM宛に、こんなチャレンジしてもいいんじゃないか?という相談をしました
その後、もう一人のEMとの口頭で壁打ちをした際に、好意的なリアクションをもらったため、実際に取り組んでみようと形にしていきました。
まずは少人数で解決するサイクルを作る、大臣制度
スクラムガイドに書いてある自己組織化チームは、ある意味最終形態です。つまりはシンプルに理想が書かれている状態だと思っています。ただし、人間誰しも理想にいきなりなれるわけではありません。「理解が容易」だけど「習得は困難」なのはここにあるのかなと思っています。
理想はあるものの、そこに向かっての一歩目が大事と思い、以下のような役割定義や座組を作り、チームに提案しました。
(当時は入社2ヶ月目ぐらいだったので、自分からやるよりはスムーズに浸透するかなと思い「頭出しはお願いします!」という形でお願いをしていました)
大臣の職域はシンプルで、主に以下に集約されるかなと思います
- 対象となるミーティングやイベント(以下、管轄範囲)に対しての(チーム内の)最終的な意思決定をすること
- 管轄範囲内の目標やミッションを決めて、責任をもって実行すること
- 必要に応じて、チームに対して働きかけること
こういった形で提案したところ、チームからは以下のようなコメントをもらい、概ね好評だったため、まずはやってみることになりました。
当時の反応(ほぼ原文ママ。一部読みやすさのため修正)
- 一人で振り返り会のファシリをやっていると「これで良いのか?」と不安になったり、よくわからなくことがあった
- 複数人でできると自分の進め方に対して意見ももらえそうなので嬉しい。
- 担当性はとても良さそう。うちのユニットは人数が多く、担当者がいないと全員で手探り状態になりそうなので。
- MTGの責任者はつい偏りがちなので、こういった形で分担できるのは良さそう。
- アサイン会大臣に興味あり♡
大臣は一人でも良いかと思ったのですが、現時点では2-3人体制にしています。これは
- 一人は一人で「一人で決める」という不安や心配もあると思ったこと
- チームでの意思決定であるということ(複数人で意思決定すること)も重要と思っていること
- スキルバランス的に、一人で決めることが難しい・複数人の方がメリットがある領域があること(プランニング会などは、開発者の一存ではなくデザイナーやPO視点もあった方が有益のため)
といった理由で複数名にしています。
2ヶ月近くやってみて
今のところ大きなトラブルはなく、各大臣ごとに自主性を発揮して進められているようです。改善活動自体について、間にEMやPdMが入ることもほぼない(EMはオブザーブしにいったりはしていますし、相談を受けることはあります)状態で、チームとしての改善や意思決定は早くなったように思えます。
2ヶ月ぐらい運用してみての感触を、現場の大臣やチームの皆様からいくつかコメントをもらいました
- 大臣がいることで、会に対して「まあ全体向けに言うほどでもないか...」くらいの意見でも担当者がいると言いやすいかもと思ってます
- 今までよりも「こうした方が良さそう」を一旦大臣が決めてしまえるので、改善しやすくなった気がします
- ふりかえり会を一人でファシリをやっていた時に感じていた不安は解消されました(ふりかえり担当大臣)
- (大臣が2人体制なことで)進行役が複数いるので発言のきっかけを作りやすくなったと思っています(ふりかえり担当大臣)
- ふりかえり会、今では付箋を出すだけじゃなく、チームメンバーが出した付箋に対してもコメントも多く、全体的にも自分ごとで考えられるようになってると感じました!
自分から見ても、大臣の中でコミュニケーションのコミュニケーションが増えていたり
daily大臣(新卒のメンバー)がdailyの効率化のためにbotを作り始めたり、
別の大臣とコラボレーションをして、「ふりかえり会でこういう話題を扱ってほしい」や「プランニングをこういう形で進めれば、認識がそろえやすいかも?」などと色々なところで改善策に取り組んでいる様子が伺えています。
おわりに
今日のアドカレでは「チームの自分ごと化を促進する「大臣制度」のススメ」というテーマで、チームの自己組織化を進める取り組みについて紹介しました。
チームが1つの事柄から自分ごとにすることで、チーム内での意思決定を素早く回す型として使えるかなと思うので、もしそういったお悩みがあればぜひ使ってみてください。おすすめの取り組みです。
明日のアドベントカレンダーはminamiさんの「plopで作る、理想のコンポーネント生成ワークフロー」です!お楽しみに!
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