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dely 3 Days エンジニアインターン体験記

に公開

みなさんこんにちは!みーやと申します。

この度、2025 年 9 月に dely 株式会社(以下 dely)にて 3 Days エンジニアインターン(以下インターン)に参加させていただきました。
この記事では、インターン参加のきっかけからインターンの内容と開発エピソード、参加して感じたことまで、幅広く深くご紹介します。エンジニアとしてのキャリアに興味がある学生、 dely のインターンに参加してみたい学生にぜひ読んでいただければと思います。

チームメンバーとの写真

おことわり

  • dely は、2025 年 10 月より社名をクラシル株式会社に変更すると発表しています[1]。この記事では、インターンへの参加と記事の執筆のタイミングから、社名を dely と記載しています。
  • インターンの内容について触れていますが、次回以降内容が変更となることもあります。私はただの参加学生ですのでご了承ください。
  • インターン中の開発エピソードを重点的に扱っており、高い技術的知見や専門的内容は多く掲載していません。

自己紹介

みーや(Miyata Yusaku)
高専から3年次編入した、九州大学の情報系大学院生です。Web アプリケーション、とくにフロントエンド(TypeScript, React, Next.js)を扱っています。
学部時代の長期インターンとしては、東大スタートアップでのオークションサイト、人材系企業での質問箱サービス、コンサルティングファームでの教育系プロダクトなどの開発を行ってきました。
大学院の長期インターンとしては、株式会社マネーフォワード、株式会社 LayerX 、株式会社 PKSHA Technology などで活動してきました。
福岡未踏への参加経験もあり、プログラミングサークルのメンターなども担当しています。

ポートフォリオ:https://pkmiya.net/
X:https://x.com/pkmiya__

参加のきっかけ

はじめは就活サイト経由で dely と本インターンのことを知りました。実際、dely の開発するクラシルアプリは、私が普段自炊をしていてよく使っており、デザインシステムやアプリの体験をかなり気に入っていました。そこで、ビジネスやエンジニアの視点から会社やプロダクトのことを知りたいと思い応募しました。また、私の知り合いに内定者の方がいて、事業や業務、会社の雰囲気などをなんとなくイメージできていたことも一つの理由でした。

インターン内容

それでは、インターンの開催形式や、実際に私たちが行った内容をご紹介します。

概要

まず、dely についてご紹介します。dely は、レシピ動画プラットフォーム「クラシル」、ライフスタイルメディア「TRILL」などを運営する企業です[2]

続いて、インターンの概要をご紹介します。今回のインターンは短期間で企画から開発、プレゼンまでを一気通貫で体験できるものでした。以下に形式を記載します。

項目 内容
期日 3 日間
場所 対面(dely 本社オフィス、田町)
職種 Web アプリケーションエンジニア向け
形式 ハッカソン形式・チーム戦
テーマ 「快適に楽しく料理ができる UI/UX を企画し、実際に使えるプロダクトの開発」
利用技術 Next.js, Ruby on Rails をベースに

そのほかの内容は、CTO の大竹さんが 2024 年向けに X でポストされている投稿[3]が参考になると思います。

実施内容

上記で述べた通り、3 日間でアイデア出し、外部設計、内部設計、実装、プレゼンまでを行いました。なおメンターとしてエンジニアの社員の方に 1 名ずつ各チームをサポートいただきました。
私たち(チーム 4 人)の開発における流れや発表した内容をベースに、インターン当時の様子を紹介します。

Day 1: アイデア出し・発表

1 日目は、オリエンテーションとアイデア出しです。午前中にアイスブレイク、午後前半にアイデア出し、午後後半にアイデア発表を行いました。

私たちのチームでは、身の回りの困りごとやストレスから考え始め、次のようなアイデアを考案し発表しました。

項目 内容
ペルソナ 一人暮らしの自炊大学生
課題 食材を完全に使い切ることが難しい
要望 食材のムダをなくしたい
アイデア 1 週間の献立を決めると、必要な材料を計算して買い物リストを表示してくれるシステム

アイデア発表では、チームごとに発表を行い、他チームのメンターからフィードバックを受けました。
アイデア発表のときのホワイトボード)

私たちのチームでは、以下のようなフィードバックをいただきました。

  • ペインやペルソナの解像度は高い
  • システムには極めて高い信頼性が必要だが、それを満たすハードルが高いのではないか(3 日間で実現できるか)
  • 機能設計が「ユーザが想定通りに行動すること」を前提にしているが、実際の料理行動はそうならないことが多いのではないか

続けて、アイデア発表が終わると、順次設計・開発に移ります。
私たちのチームでは、アイデアの練り直しが必要だと判断し、1 日目の残りの時間を費やしました。結果として、方向転換(ピボット)を行い、以下のようなアイデアに決定しました。

項目 内容
ペルソナ 料理をする方全般
課題 スマホの操作のために手を洗いたくない
要望 毎回何度も手を洗うことなく料理したい
アイデア 音声操作による料理アシスタント(動画の操作、タイマーの設定、レシピや切り方の確認等(以下、諸機能)ができるシステム)

Day 2: 設計・開発

Day 2 では、Day 1 で決めたアイデアの仕様を設計し、動作するシステムの実装に取り組みました。具体的には、要件定義、内部設計、UI 設計、アーキテクチャ設計、コーディングなどを行いました。

私たちのチームでは、以下のような流れで設計を進めました。
まず、ユーザの音声から諸機能を動作させるには、以下のようなしくみに分解できると考えました。

  • [1] 音声から文字を認識するしくみ

    • [1-1] 認識させるべきはどの音声なのかを判断するしくみ(発話・終話の検知)
    • [1-2] 接続を断つことなく、常に音声入力を受け付け、結果を返し続けるしくみ
  • [2] 文字から任意の機能を操作するしくみ

    • [2-1] 文字を任意の機能の呼び出し(例:関数の実行)に変換する仕組み
    • [2-2]上記関数を実行する仕組み

結果として Day 2 のほとんどをシステムの設計に費やしました。この日が一番大変で、ひらすら設計や技術の調査・検証のサイクルをみんなで回していたと記憶しています(だからこそ学びになりました!)。

たとえば、私たちがシステム設計で苦労したのは次のような点です。

  • 事実: ハッカソン開始時点で、Next.js ベースの Web アプリと Ruby on Rails ベースの API サーバーが用意されていました。
  • 判断: 入力と出力の柔軟性の観点から、仕様[1], [2-1]のために生成 AI や生成 AI を利用した音声認識を API 経由で利用しようとを考えました。
  • 壁: 上記要件を満たせる、Rails ですぐに動作可能な上記技術が見つからなかったり、考えたアーキテクチャが複雑でハッカソンとしては実装が難しかったりしたことが何度かありました。

結果として、次の画像のようなシステム設計に落ち着きました。
私たちのアイデアのシステム構成

各技術について簡潔にご紹介します。
まず、Realtime API は、OpenAI が提供する、リアルタイムな音声の入出力ができる API で、先月(2025 年 8 月)に正式版がリリースされました[4]
また、Gemini API は、Google が提供する、生成 AI である Gemini を利用することができる API です[5]。利用しているみなさんも多いかと思います。
仕様[1]が Realtime API, 仕様[2-1]が Gemini API, 仕様[2]が Next.js アプリに該当します。

Day 3: 発表準備・発表

Day 3 では、プレゼン発表とそれに向けた準備を行いました。

私たちのチームでは、アプリがまだ完成しておらずデモが動く状態ではなかったので、作業高速化のため以下のように分担しました:音声認識担当、クエリ生成担当、UI・クエリ実行担当、プレゼン資料担当。
私はプレゼン資料を担当しました。このとき、Marp という Markdown からプレゼン用スライドを生成できるライブラリを利用しました[6]。Marp ではテーマを CSS/SCSS で記述できるので、内容の執筆に全リソースを割くことができました。これにより、おしゃれなプレゼンにしつつもデザインコストを最大限省くことができました。

私たちのプレゼン資料の中身の一部

Marp の使い方については、たとえばこの方の記事が参考になると思います。

https://zenn.dev/cota_hu/books/marp-beginner-advanced

プレゼン発表では、チームごとに、デモを含む発表と、それをもとに質疑応答とフィードバックが行われました。
インターンの最後では、ユーザ視点や技術的完成度などの評価基準ごとに採点してランキングが発表されました!私たちのチームは惜しくも 1 位にはなれませんでしたが、Day 1, Day 2 における仮説検証への粘りを高く評価いただきました。

インターンを振り返って

さて、インターンのエピソードが大変長くなってしまいましたが、ここからはインターンを振り返って、得た学びやいただいたフィードバックをご紹介します。

得た学び

一人のプロのエンジニアとしての動き方や思考フローに関する学びを得ました。

まず、上流フェーズならではの、違和感を言語化(正しく認識し、状況に応じた改善策を提示)する難しさを学びました。ユーザの課題や要望を深掘りすること、それを適切な仕様や設計に落とし込むことは、容易にはいかないが真の価値提供のためには欠かせないのだと、この記事を執筆していても痛感しました。この点はまさに、本インターンが企画から行うハッカソンであり、メンターに常にサポートいただけるからこそ体感できたと思います。

また、仮説検証のサイクルを高速で回すことの大切さを学びました。短い期間でプロダクトの完成度を高めるには、質の高い仮説を素早く立て、それが正しいかどうかを素早く検証することが鍵となります。
私たちも実際、上流フェーズにおいては、この課題が存在するか、この機能で課題を解決できるか、課題を解決して嬉しいのか、などの仮説を立て、ひたすら深掘りやメンターとの壁打ちを行いました。
設計・実装フェーズにおいても同様に、この技術でこの機能を実現できるのか(難易度、工数、コスト等)という検証を、多種多様な技術に対して行いました。特に、発話検知(ウェイクワード認識)のライブラリ策定にあたり、 Python のプログラムをビルドしたのはいい思い出です(笑)。

いただいたフィードバック

チームおよび個人としていただいたフィードバックの一部をご紹介します。

まず、アイデア出しの段階や技術検証でひたすらに粘っていた姿勢です。このマインドは dely でもバリューの 1 つ、「GRIT」として重要視されています[2:1]
また、アイデアや技術設計の段階で複数回ピボットを判断・実行していた点です。方向転換自体が正しかったかという点ではなく、サンクコストを恐れなかったという点で意味があったのだと思います。
加えて、分業を意識していた点です。小規模な検証用プロダクトを実装するためにタスクの分解は非常に困難でしたが、だからこそ手戻りがないように、お互いの特性を最大限生かすために、タスクの粒度や依存方向を意識して動いていました。
個人としては、全体を見ていた点や率先して動いていた点を評価いただきました。実際、プレゼンとデモ動作というゴールに向け目標から逆算することや、メンバーの一体感を生むこと、環境をうまく活用することを意識していました。

一方で、チームとして、非同期コミュニケーションに伸び代があるとも教えていただきました。内容(たとえば、Pull Request の Description)を詳細に記述する、仕様に変更があったら共有する、仕様の背景や理由も補足する、などが欠け、情報共有が雑になってしまった点がありました。対面式の短期ハッカソンで常に一緒にいたからこそそれでもチームが成立したという点もありますが、チームの全体を見る立場として気をつけていきたいと感じました。

どんな人におすすめのインターンか

いままでにご紹介した内容をもとに、どのような学生に本インターンがおすすめかを私なりに考えてみました。

  • サポートやフィードバックを受けたい学生。クラシルを最前線で実際に開発しているエンジニアの方に、チームのメンターとして密に関わることができました。また、アイデア発表や最終発表、1on1 等で、他チームのメンターからもフィードバックを受けることができました。
  • エンジニアとして一歩成長したい学生。他の学生との共同開発やメンターからのリアルなフィードバック、また企画からプレゼンという一気通貫のハッカソンだからこそ、一つ上の視座を鍛えることができると思います。

おわりに

今回のインターンを通じて、AI Agent プロダクトの設計・開発の知識を身につけた一方で、ペインの理解や仮説検証といった上流フェーズの大切さと難しさを学ぶことができました。

私は本記事では、おもに上流フェーズで学びがあったと記述していますが、参加した他の学生の中には、技術面(開発手法や技術スタック)が非常に学びになったと話す学生も多くいました。インターンで何を得られるかは、インターンの内容はもちろんそうですが、そのときの自身のスキルや動き方(メンバー構成等)によっても変わってくると思います。

実際、私が今回上流フェーズに重きを置いていたのも、以前参加した他社のインターンで、そのスキルに伸び代があることと、そのスキルが一人前のエンジニアとなるにあたって欠かせないと知ったからです。
強みや伸び代は人それぞれだと思います。私の体験記はあくまで参考として読んでいただき、インターンに参加するモチベーションとしていただければと思います。
今回得た学びを今後のキャリアに活かし、より高いレベルでドメインやシステムを理解し、事業に貢献できるエンジニアを目指していきたいと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました!

番外編(ごはん)

インターン期間中、社員の方やチームメンバーとごはんを食べに行く機会が何度かありました。最後に番外編として、美味しかったごはんをご紹介します。

1. こびんちょ

とり天うどんみたいなのが有名なお店みたいです。こしがあって美味しかったです。

2. いなば和幸

チェーンのとんかつ屋さんです。
とんかつをお店で食べるのは初めてだったんですが、最高の仕上がりでした。

3. BEETLE 酒場

居酒屋ですが、定食もあります。大盛り無料で1000円以下と、この立地にして破格です。
実家のような安心感がありました。

4. たん之助酒場

牛タンのお店です。言わすもがな最高。

5. スタバ

チーム名が「ダークモカチップフラペ...(以下登録商標)」だったので、飲みに行きました😆

脚注
  1. dely プレスリリース ↩︎

  2. dely 株式会社 ↩︎ ↩︎

  3. CTO 大竹さんの X ↩︎

  4. Realtime API ↩︎

  5. Gemini API ↩︎

  6. Marp ↩︎

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