自作キーボードにCHERRY MX Ultra Low Profileを使う
(20240908)お詫び
本記事は現在はマクロキーボードの自キ作成にのみ対応しています。
時間ができたため大き目のキーボードに挑戦してみたのですが、ホットプレートでのリフローだと基板上の部品が一部浮いてしまい、上手く接合できませんでした。
失敗しないための方法や失敗した後の修正については現在模索中です。
普通サイズのキーボードを作る人は、変にケチらず、本記事のようにホットプレートを使うのではなく、より均一に加熱できるトースターオーブンでリフローをした方が良いかもしれません。
ここから本文
Cherry MX Ultralow Profileを自作キーボードで使いたい方向けの日本語情報です。
通常の自作キーボードを完成させたことがある人向けの記事です。
英語が出来る人はこちらもご参照ください。僕はこれを元にキーボード作りました。
僕の記事は参考程度で基本は自己責任でお願いします。
もし間違いがあった場合はご指摘お願いします。
初投稿のため読みにくい部分もあるかと思います、
こうすれば読みやすいよというようなご指摘もお待ちしています。
順次、更新したり、写真が取れたら張ったりします。
なおこの記事は個人向けのためキーボード販売をしたい方は、
フットプリントのライセンス等に注意してください。
1.そもそもCherry MX Ultralow Profileって?
AlienwareのゲーミングノートPCや超薄型キーボードで使われているメカニカルスイッチです。
Cherry MX LowProfileとは別物です
略してULPと呼ばれる事もあるみたいです。
クリッキーとタクタイルの二種類があります。
市販される時は単にUltralow Profileのクリッキー、タクタイルと記載されますが、
部品単位での販売時は以下のような型番で記載されます。
- クリッキー=MX6C-K3NB(KはKlickの意味、ドイツ語だとクリックはCじゃなくてK?)
- タクタイル=MX6C-T3NB(TはTaktilの意味、ドイツ語だとこちらも綴りが違う)
本スイッチはパンタグラフ、Sunset Tactile、Lofree Ghost、GateronLP等が好きな方には合うかもしれません。
僕はbit ferrousのパンタグラフキーボードや例に挙げたスイッチのファンです。
2.ULPキーの良いところ・悪いところ
良いところ
- 他のロープロファイルスイッチより薄い
- ロープロファイルスイッチの中では打鍵が気持ちいい
- 未改造でもキーストロークやアクチュエーションポイントが浅い
悪いところ
- 押下圧が60gと重め(浅いので数値から受ける印象ほど重くはない)
- 打鍵時の音がやや大きい(設計次第で軽減できるかも?)
- 自作するには難易度が高め
- 手はんだが難しい、非推奨。基本自宅リフロー環境が必要。
3.比較画像
僕がおためしで作ってきたミニキーボードで厚さを比較しました。
キーキャップ込みでも薄いです。
横(左からchoc v1, ultralow profile,Lofree ghost、NuPhy Cowberry)
上
撮影状況が悪いですが一回り以上薄い事がわかるかと思います。
(撮影に使える平な空間を見つけられず...あとchoc v1のミニキーボードは他と設計が違い高さがあってません、ご了承ください)
GhostとCowberryのキーキャップはXVX Skyline R2、Sunsetのはchocfoxです、多分...
ULPは自作です。
4.ULPキーを使った既製品等
都内だと時々Corsair K100 AIRはお試しできるので探してみてください。
- CHERRY KW X ULP
- Corsair K100 AIR
- Alienware m18 R2(オプションにより変更、標準ではない模様)
- MISTEL AIRONE
- MPress Nano(レバーレスコントローラ、品切れ)
5.どこでスイッチを購入できるか?
スイッチの購入先(ネット通販)です。
投稿時点で国内の取り扱いはありません。
僕が購入した際はreichelt一択でした。(おそらく今も?)
店舗 | スイッチタイプ | URL | 備考 |
---|---|---|---|
Reichelt | クリッキー | リンク | 日本から直接購入可能 |
Reichelt | タクタイル | リンク | 日本から直接購入可能 |
1688 | クリッキー | リンク | 輸入代行業者経由だが安い、去年利用しようとしたらページは削除し忘れで実際は在庫ないと言われた |
mouser | クリッキー | リンク | ずっと在庫切れ 、復活しないかも |
mouser | タクタイル | リンク | ずっと在庫切れ 、復活しないかも |
6.購入の流れ
2023年12月当たりに僕がULPを購入した時のメモです。
ある程度の数(クリッキーとタクタイル150ずつ)購入しました。
少数購入の方は差異があるかも、サイトの更新等で細かい部分は変わっているかもしれませんが、参考までにどうぞ。
Reichelt編
①Reicheltのページにアクセス
②左上のCountryをクリック
③設定を変更
Please select your country:=Japan
Please check your customer type and language:=Private Customor / English
④数量を入力
投稿時点では大量購入による割引あり。
⑤普通のショッピングサイトみたいにadd to cart、カートクリックして遷移先画面でcheckout
⑥住所等を入力
住所はローマ字で入力する事になります。
人によっては入らない可能性があるので県(=ken)等は省略した方がいいかもしれません。
⑦メール待機
Reicheltはドイツの企業であるためか、発送に当たって最適なルートの選定が発生するようです。
送料等が確定しないため支払い情報の入力はまだスキップです。
⑧メールの支払い用URLで支払い
メールのリンクをクリックして支払い用URLで情報入力してください。
ここからは英語でのやり取りになると思いますが、もしドイツ語できたらごめんなさい。
ドイツは英語も喋れる国ですし、多分、お願いすれば英語で対応してくれるはず。
※支払い方法についての注意事項
支払い方法はPayPalとAmazon Payの二択ですが、Amazon PayはAmazon.co.jpではなく、Amazon.comのものになります。
また140€以上の購入の場合はAmazon Payは使用できません。
(にも拘わらず選択は出来てしまう)
⑨その他のメールに返信
僕の場合はInvoice用の住所の再確認メールが来ました。
住所と氏名を改めてメールしました。
ちなみに日本の人名に慣れていないのか、この後送られてきたinvoiceで、僕は名前を間違われていたので訂正しました。
⑩届くのを待つ
一定以上の金額分購入する場合、配達員に対して関税の支払いが発生するので、手元にお金を用意しておいてください。
※僕は不良品等の購入後のトラブルはなかったので、そこらへんは力になれません、ごめんなさい。
1688編
日本から直接購入はできず、輸入代行業者経由になり、やり方は業者次第です。
「5.どこでスイッチを購入できるか?」で記載した通り、僕はここから購入していないので、あまりアテにしないでください。
なおこちらは単価はreicheltと比べ安いですが、最低購入数が450個(=450条起批)となっていますので、ご注意ください。
また先の表で記載した通り、もう販売していないページの可能性もあります。
①中国輸入代行業者の選定
僕は株式会社ひなかさんか、rakumartさんを利用するつもりでした。
日本語でやり取りできるかとか、手数料とかでよさげなところを見つけてください。
②1688のURLを輸入代行業者に伝える
だいたい「業者にメールで伝える」または「業者のホームページに入力して発注ページに行く」の二択?
メールの場合はフォーマットが指定されている事がありますので、業者サイトの注意事項をしっかり読んでください。
③業者の見積金額をみて納得がいったら代行依頼(ここから先は知らない)
Mouser編
対して難しくないので省略します
こちらは最低購入数が1000、最小倍数が1000なので、在庫復活したとしても個人は使いにくいかと思います
7.データシートの請求
必要な人は行ってください。
このスイッチは寸法が書かれたデータシートはなぜか非公開です。
そのためオリジナルのフットプリント作成やキーキャップが必要な場合、データシートを請求する必要があります。
CHERRY MXの公式ページのContactで問い合わせてください。
なお返信が来ない可能性があります...
私はCHERRY MXからもらいましたが、Reicheltは対応してくれるかも?
8.フットプリント
自作が面倒な人向け
こちらからKicadのフットプリントが入手できます。
フットプリント | 説明 | 備考 |
---|---|---|
Cherry_ULP_SMD.kicad_mod | SMD版 | データシート通りの基本形、自分はこれで作った、手はんだは不可能 |
Cherry_ULP_SMD_Double_Sided.kicad_mod | SMD両面 | 使った事ない、左右分離型作る人向け? |
Cherry_ULP_TH.kicad_mod | TH版 | これを使えば手はんだできるらしい、自分は上手くはんだ付けできなかった。そもそもSMD専用で設計されたスイッチでありかなり無茶しているように見える。 |
Cherry_ULP_TH_Double_Sided.kicad_mod | TH両面 | 使った事ない、左右分離型作る人向け? |
Cherry_ULP_SMD_SK6812_1511.kicad_mod | SMD版 | LED付けたい人向け?自分はLEDが好みでないので使った事がない |
ちなみに3番のパッドはスイッチの固定用のようで電気回路的な意味はないです。
こんな風になります。3番からは配線出てません。
9.キーキャップの3Dデータ
自作が面倒な人向け
-
marcosterさんのMaskキーボードより
ダウンロード不可で閲覧のみ
https://cad.onshape.com/documents/9ab30f08aaddabe673837750/w/5f84fbc955dc64d72d16e60e/e/7ac653a379179e4fef7f5892?renderMode=0&uiState=63a04dcb0efa6934aa0d036d -
Cairn Devicesさんのcairn mesa key
(cairn-mesa-key/mechanics/CAD参照、各自愛用の3DCADで見れるファイルを)
https://gitlab.cairn-devices.eu/cairntech/cairn-mesa-key -
僕のキーキャップ
(そのうちGithubに公開予定、クオリティ低くて改善予定なのでまだ出したくない)
寸法について注意事項
データシート通り作る場合は下記の部分の長さが12.6mmになります。
僕以外のキーキャップはそのように作られています。
ただJLC3DPに発注したところ、12.6mmではゆるゆるでボタンがはまりませんでした。
12.4mmに狭める事で解決しました。(何かを間違えている?)
余裕をもって複数の寸法で発注した方がいいかも。
]
発注先
僕はJLC3DPを利用しました。
今度はWeNext使ってみようかと思ってます、ポリカが選べる、この素材のキーキャップに興味があるため。
お金があればDMM makeとかも試したいのですが...
先駆者の海外勢は自前の3Dプリンタで作っているようでした。
完成品の割れ
キーキャップの3Dプリントの宿命?として、細かい部分はデザインルールを守れないです。
そのためキーキャップが引っかかる部分(普通のmx互換スイッチやchocはプラグ?形式ですが、ulpは四隅を引っかける形になります)が割れて引っかからないたものもいくつか届きました。
余裕をもって複数発注した方がいいかもしれません。
10.自宅リフローについて
こちらを参考に実行しました。
ただ僕はオーブンではなくホットプレートでやりました。
スイッチをホットプレートリフローではんだ付け。
必要なもの
名前 | 説明 | URL |
---|---|---|
リフロー炉もしくは代用品 | 僕はホットプレート使いました。本来の用途とかけ離れているので名言は避けます。商品レビューで調理ではなくリフロー用途での評価が記載されている事があり、それがヒントになります。 | - |
ステンシル | JLCPCBで基板とセットで頼みました。注1参照 | - |
K型熱電対 | 割と熱の管理は適当でも上手くいくようですが僕は可能な範囲で温度プロファイル守りたくて買いました。 | リンク |
冷却用の送風できるもの | 僕は量販店で購入しました、サーキュレーターですが機能しました、ただ作業日は冬だったので、夏はダメかも? | リンク |
ポリイミドテープ | 熱電対の固定に使いました | リンク |
はんだペースト | 低温のはんだペースト使いました | リンク |
不要な基板 | これを欠かすとキレイなはんだペースト印刷できなかった。僕は過去の成果物を流用。使えるものがない人は余った4枚を使うといいかも? | - |
テスター | これがないと動かなかった時の原因箇所がスイッチとMCUのどっちかわからない | リンク |
注1:ステンシルについてはここを押すと基板にあったものを注文できます(細かい設定はネット検索してみてください)
手順
素人なので厳密には間違えている部分があるかもしれないです。
- スイッチをつけたい基板を用意
- 不要な基板で固定、上にステンシルを張る。(完全にぴったり合わせる)
- はんだペーストを塗る
- 喚起のため窓を開ける
- ホットプレートの上に置く、K型熱電対を基板にポリイミドテープで固定
- はんだペーストのデータシートの温度プロファイル、K型熱電対の情報を参考に、ホットプレートを操作する
私の使ったはんだペーストのデータシートはこちら(CHIPQUIK TS391LT50)
https://www.chipquik.com/datasheets/TS391LT50.pdf - 冷却する時間がきたらサーキュレーター最大にして送風
- ある程度冷えたらホットプレートから引きあげてさらに送風で冷やす。ホットプレートはなかなか冷えないので基板を冷却しきるには、ホットプレートの外に出す必要がある
- テスターを当てながらスイッチ押して、リフローの成功を確かめる
- MCUを普通に手はんだして動作確認
- キーキャップの取り付け
11.キーキャップ自作について(編集中)
(仮の記載)
僕はFreeCADで作成しました。
そのうち画像を張って解説します。
基本的はデータシート通りですが無視してもいい部分や、
オリジナリティを出せる部分があります。
例えば他のスイッチのストロークをOリングで変える事がありますが、ULPはキーキャップに突起を作る事で実現する(多分、極端なのを作ってないためまだ大きく差を感じれてないです)等。
(2024/09/08追記)
3D製のキーキャップはデータシート通りに作ってもはまる、はまらない、はまるがスイッチを押し込むと戻ってこなくなる部分が存在します。
ここの長さに関しては完全に運要素になり、3DPを依頼する業者や素材、造形の方式によって調整する必要があります。
↓ここの縦の長さ
毎回同じ結果になるか不明ですが私の経験だと、
JLCの緑のレジンだと12.6mmだとはまらない、12.4mmがちょうどはまるサイズ。
WeNextの透明レジンだと12.6mmではまる、12.4mmでもはまるが個体によってはスイッチが戻らなくなる。
WeNextのナイロンだと12.4mmでもはまらない。
等。
12.その他気付いた情報を適当に記載
- スイッチプレートはCairn Devicesさんのは1.5mm。また構造的に引っかける方式じゃなくて上から被せるだけになる
- キーキャップは一角ずつ外すようにすると一応取れる。ただスイッチを壊しそうでとても怖かった。基本、基板に取り付け済みのスイッチからキーキャップは取れないと思った方がいいかも。キーキャップを自作する場合はリフロー前のスイッチで試す事を推奨します。
- データシート通り作ったのに、ゆるゆるだった事件があったため、複数の寸法でキーキャップを注文していた。キツすぎたものは無理やりはめたら、スイッチが押し込まれたまま戻ってこなくなり、キャップも外せなくなった → 後日頑張ったら外せた
- 打鍵感について工夫の余地はありそう。僕の自作マクロパッドとMPress Nano(EVOJapanで試遊)はあまり違いを感じなかったですが、Corsair K100 AIRは違って感じました。
- (2024/09/08追記)一度取り付けたキーキャップは外せないと認識し、慎重に作った方が良い。四隅ずつ斜めにひっぱるような感じで簡単に取り外せる時もあるが、個体によってはULPキー自体を破壊しないと取り外せない事もある。(以下は取り外しにスイッチも破壊してしまった例
- (2024/09/08追記)スイッチの下部に薄いフォーム(シリコンやポロン)を敷く事で、打鍵音を減らしたり、打鍵感を柔らかく出来る。Mistel Air One等はPoron?を敷いている。0.5mm前後がスイッチの動作に支障のないラインと自分は認識。(柔らかいフォームの場合はこの限りではない、1mmくらいでもいけそう。自分はまだ実際に試してないので自己責任でやっていただきたいですが、Poron MS-40 0.9mm等)
13.終わりに
あんまりPRとか得意じゃないのですがこのキースイッチが僕は好きです。
国内でも取り扱いされるようになってほしいし、末永く販売してもほしいため、購入者やこのスイッチを認知している人が増えると嬉しいなと思っています。
敷居高めですがよろしくお願いします。
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