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中心極限定理(CLT)の完全証明その2~証明の道筋~

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このシリーズの説明

Abstract

前回「中心極限定理(CLT)の完全証明その1:直感的な説明」に続き、中心極限定理(CLT)の証明の道筋を記す

証明の道筋

証明の道筋としては、まず証明に当たって準備が必要ないくつかの概念(弱収束、緊密性、特性関数など)を導入し、いくつかの補題を導入、そしてそれを使って重要な2つの定理(プロホロフの定理、レヴィの連続性定理)を証明し、最後にそれらを用いてCLTを証明する、という流れをとる。

必要な概念

  • 弱収束
    • 確率測度列についての収束
  • 緊密性
    • 確率測度の族 \Lambda についての条件
    • \Lambda 内のいかなる確率測度 \mu も、その値の取る範囲が無限に広がることはなく、ある範囲に収まっている(そのような閾値が、大きいか小さいかは別として、存在する)とき、\Lambda は「緊密である」という
  • 特性関数
    • \phi_X (t) = E[e^{itX}] を「確率変数Xについての特性関数」という。
    • \phi_X(t)は確率変数 X の分布についての情報を全て持っている(後述の「一意性定理」)
    • CLTの証明に必要. また、\phi_X (t)の形が分かれば、微分演算によって簡単に平均や分散やそれ以上の高次モーメントが計算できて、計算上も便利。

いくつかの補題

  • 一意性定理
    • 特性関数と分布の一対一対応
  • Hellyの補題
    • 後述のプロホロフの定理の証明に必要な補題
  • Portmanteauの定理
    • 弱収束の5つの同値な命題
    • プロホロフの定理の証明に必要

定理の関係

  • プロホロフの定理
    • 主張: 「(前述の)『緊密性』が弱収束の(必要)十分条件になっている」
    • Levyの連続性定理の証明に必要
  • Levyの連続性定理
    • 主張:「特性関数列の各点収束をもって、測度列の弱収束を示すことができる」
    • 中心極限定理の証明に用いる
  • 中心極限定理
    • 主張:「独立同分布な確率変数列の n個の和は、元がどんな分布であっても、その和は n\to \infty で正規分布に法則収束する(その和の極限が従う分布が正規分布である)

次回

次回は、弱収束・緊密性・特性関数を導入する.

Discussion