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【ゲーム】ノベル部分を含むシナリオにおける時間カンカク

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はじめに

対象

  • ノベル部分を含むゲームのシナリオを書く予定のある方向け。
  • 書かないけれど言語化できないもモヤモヤを理屈で理解したい方向け。

特定のゲームシリーズ

牧場物語・ルーンファクトリー・アトリエシリーズなどなど、農業・酪農・調合などの作業をこなしつつ、進捗に応じてイベントが発生するようなゲームを好んでプレイしております。ゲームとしての中心作業とは別に、条件を満たすとストーリー進行が発生する類のゲームです。

これらのゲームのシナリオにはその性質上、共通する特徴や気を付けなければいけないポイントがあります。ゲーム部分とシナリオ部分で相互に調整が必要な場合もあります。それらを言語化して説明してみる試みです。

今回は中でも時間感覚・時間間隔について触れていきたいと思います。

ノベル部分の定義

ノベル部分の定義については、以下の記事を参照ください。

https://zenn.dev/noranuko13/articles/6727f35ea38c17

加えて補足しておくと。動かしているキャラクターが勝手に動き出し、吹き出しが出てきてシナリオが再生される場合も含みます。3Dのゲームではこちらの方が多いでしょうか。

ゲーム内外における時間カンカク

時間感覚

プレイヤーが感じる時間は大きく2種類に分類されます。

  • 現実時間…プレイヤー自身が実際に体験する時間。
  • ゲーム内時間…シナリオ中でキャラクターが経験する仮想的な時間。

難敵を前にレベル上げや装備変更を行い、何回もやり直すとその分だけ現実時間がかかります。たとえそれがゲーム内時間では一瞬の出来事であってもです。次元を飛び越えて敵キャラクターがプレイヤーの努力を称賛するような粋な演出もあるくらいです。

また逆にノベル部分では、文章一つで数千年や数億年の時が流れることもあります。現実時間ではその一文を読む数秒の出来事です。誰しもがそうですが、生きてきた年月以上の膨大な時間を知覚するのは難しいことです。五億年ボタンと聞いても、ピンとこないのと一緒ですね。

ゲームのシナリオ設計にあたっては、これらの時間感覚がなるべく近いか、そう体験してもらえるような工夫は必要になってくると考えています。またプレイヤーが注ぎ込んだ努力や時間に報いるような報酬を設置できると嬉しいですよね。

時間間隔

ノベル部分も大きく2種類に分類されます。ゲームによっては、どちらかだけのこともあります。

  • メインストーリー…何らかのノルマをクリアすると進展するシナリオ。
  • サブイベント…特定の条件を満たすと開始するイベント。

※書籍や公式サイトを調査しましたが用語が定まっていないため、私が勝手に呼んでるだけです。

これらのノベル部分は、条件さえ満たせばあっさり次の話に進んでしまうが、条件を満たすことができなければ長期間次の話に進まない、トリッキーな性質も持っています。特にサブイベントは複数回に分かれることが多く、次のイベントをいつ発生させるかは重要なポイントです。

サブイベントが必ず別日に発生するように制御されていることもあります。これはそのゲームの持つ「ゆっくりとした時間経過を楽しむ」という性質上、一日のうちにイベントが沢山進むのは時間の進み方がおかしいからですね。

時間カンカクの具体例

緊急性が高い場合はメインストーリーで

サブイベントと緊急性の高いシナリオの相性はかなり悪いと思います。

緊急性が高いというのは、例えば以下のようなシチュエーションです。

  • 誰か・何かを早急に救出する必要がある。
  • 危険な場所から直ちに避難する必要がある。

サブイベントには『ゲーム内時間で、次の話が直ぐに起ころうが、半年あるいは一年後に起ころうが、論理的に成立しなければならない』という見えない縛りが存在します。今回の場合、「助けにいかなければ」からの「助けに来たぜ」がゲーム内時間で数年後ということもあり得るのです。

もしそれが嫌でどうしてもイベントとして外したくない場合は、ゲーム部分で制御を追加実装する必要があります。昔のRPGが分かりやすいかもしれません。

例えばあるイベントのフラグが立っているとき、マップ上でプレイヤーに行ってほしくない地域は選べないようにするとか。メッセージが出てきて「◯◯しなければ…」とかなるやつですね。

あるいは噴火する火山や水没する遺跡からの脱出で、来た道を地形的・物理的に塞ぐようにするとか。歩いて普通に脱出できたらシナリオ進行にも差し支えますから、制作者サイドとして必要な処理だったという方が強いかもしれませんが。

ただ例として上げた通り、これをサブイベントでやるって大変なことです。他のサブイベントとの前後関係や進捗との兼ね合いもありますし、全てに影響するイベントフラグなんてグローバル変数が状態持ってるのと変わらないので、ITエンジニアの私は複雑で面倒だと思います。

好感度やレベルによる体感時間の調整

好感度で時間経過を制御するのは、実に上手い方法だと思います。直ぐにMAXまで上昇することはバグや裏技でも使わない限りないからです。初めて上位の好感度に達したときだけサブイベントを発生させれば良いので、プログラム側の制御もしやすい。

モニターの前のプレイヤーはコントローラーで操作しているだけですが、ゲーム内のキャラクターは忙しい毎日を送っている訳で。ゲーム部分である程度時間をかけて苦労することで、ある程度の時間感覚を共有することができているのではないかと。

この手のゲームで、時間経過と日常の関わりが納得させる的な部分は結構あると思います。

逆にこれをメインストーリーでやろうとすると難しいでしょう。感覚としてはハリウッド映画を見ているようなものに近くなります。制作側が用意した出来事をきっかけに急接近というのは、鑑賞しているのであって体験しているのではないんですね。

そういった趣旨のゲームももちろんありますが、少なくともここで上げている農業シミュレーションにおいては、好感度による恋愛関係の進展がぴったりハマると。

RPGで険しい道中を冒険してきたとか、遠い町から旅してきたなんてのも、時間感覚としてレベル上げで表現しやすい部分ですよね。もっとも最近はタイパ重視の時代なので、あまり長過ぎる行程は好かれないのかもしれませんが。

おわりに

ゲーム部分でどの程度の時間感覚を覚えさせ、メインストーリーやサブイベントの時間間隔をどの程度に設定するか。これが世界観や日常を感じさせる上で非常に重要であるなと感じています。

私は大人で頭で理屈として、これはゲームだからある程度仕方がないと思って見ていますが。子ども相手にはそんな理屈は通用しないですし。個人的には命や怪我の心配があるような緊急性においては、何らかの制御を加えるかシナリオそのものを外す決断は必要かなと考えています。

分業してもよいのですが。最後にはゲームの部分を作った人もシナリオを書いた人も通しでプレイしたり。全てのイベントのテキストを並べて、矛盾や齟齬がないか探すくらいはした方が安心かなと思います。

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