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TeXmacsを使ってみる

に公開

TeXmacsとは

GNU TeXmacsはGNUプロジェクトで開発されている科学技術に特化したワープロまたは組版の自由ソフトウェアである。TeXmacsはその機能にTeXとGNU Emacsの長所を取り入れており、ソースコードはどちらからも独立して書かれているが、TeXのフォントを利用する[4]。TeXmacsはJoris van der Hoevenが開発、メンテナンスを行っている。TeXmacsを使うことで、WYSIWYGなGUIで構造化された文書を作成できる。また文書スタイルを新しく定義することもできる。TeXmacsは高品質な組版アルゴリズムとTeXフォントにより、商用に耐えうる品質の文書を生成することができる。

引用元:GNU TeXmacs - Wikipedia

要するに,WordやPowerPointみたいな使用感でLaTeXさながらの文書を作成できるツールです.

https://www.texmacs.org/

特に数式の扱いに強く,GUIなのにスムーズかつ楽に書くことができ,しかも綺麗に表示できます.

名前にTeXと入っていますが,TeXmacsは文書をXML形式で扱っており,PDF出力はもちろん,LaTeX形式やHTML形式への出力も (一応) 可能です.

インストール方法

いくつか方法があります.

バイナリをダウンロードしてインストールする

公式サイトからバイナリをダウンロードしてインストールします.wingetやaptを使ってリポジトリからインストールすることもできますが,バージョンが古い可能性があります.

最新のビルドが公開されました(2025/11/11時点).
Windows版の数式バグが修正されています.こちらを使用することをおすすめします.

https://www.texmacs.org/builds/

Windows版TeXmacsはおすすめしません.代わりにWSLか,Mogan STEMというTeXmacsの改良版を使うことを推奨します.

https://mogan.app/

WSL (Fedora) にインストールする

バイナリをダウンロードしてインストールするのではなく,最新のリポジトリを追加してインストールします.最新のリポジトリなので,開発中のTeXmacsがインストールされます (おそらく).

前提として,WSLのFedora Linux 42ディストリビューションのGUIで日本語入力ができるようにしておきます.

https://zenn.dev/ngoat_gg/articles/7af072dfcafcf6

リポジトリを追加してインストール (Fedoraのバージョンが異なっていますが目を瞑ります)

sudo dnf config-manager addrepo --from-repofile=https://download.opensuse.org/repositories/home:jmnotin:TeXmacs/Fedora_38/home:jmnotin:TeXmacs.repo
sudo dnf install TeXmacs

インストールが完了したら,texmacsでTeXmacsを起動できます.

アップデートは次のコマンドで行えます.

sudo dnf upgrade --refresh

その他

Linux系なら以下にバイナリやリポジトリがたくさんあるので,いい感じのを選んでインストールしましょう.

https://software.opensuse.org/package/TeXmacs?locale=ja

https://build.opensuse.org/project/show/home:jmnotin:TeXmacs

https://download.opensuse.org/repositories/home:/jmnotin:/TeXmacs/

私が作成したWSL環境をエクスポートしたものですが,TeXmacsインストール済みのWSLディストリビューションを使うこともできます.

https://github.com/Goat-JP/texmacs-env

日本語対応

初回起動時にはWelcome toページがでてきます.それを閉じて早速書いていこうとするわけですが,日本語がうまく表示されないと思います.

(TeXmacsが参照するところに) いい感じの日本語フォントがインストールされていないのが原因です.TeXmacsは~/.TeXmacs/fonts/(Windowsの場合は%appdata%\TeXmacs\fonts\) にあるフォントを優先的に参照するので,ここに日本語フォントを入れます.公式のフォントはIPAフォントになっていますが,個人的な好みで原ノ味フォントを使います.原ノ味はOpenTypeですが,truetypeディレクトリに入れればよいはずです.

mkdir -p ~/.TeXmacs/fonts/truetype
cd ~/.TeXmacs/fonts/truetype/
curl -OL https://mirrors.ctan.org/fonts/haranoaji.zip
unzip haranoaji.zip
rm haranoaji.zip

フォントをインストールしたらフォントキャッシュを消去してTeXmacsを起動します.

texmacs --delete-font-cache

デフォルトの設定で問題なく打てるようになっていると思います.しかし「の」がおかしくなるかもしれません.その場合はフォントを設定します.プリアンブル (文書→部分→Show preamble) か文書の先頭に以下を書きます.

<assign|font|cjk=Harano Aji Mincho,roman>

または

<assign|font|roman,Harano Aji Mincho>

これで大丈夫なはずです.


原ノ味を使っていて「積分」の間に謎の空白が入る場合は,おとなしくIPAフォントを使うか,FontForgeでアウトラインを3次元から2次元に落とせば治ります (フォントファイルの容量がかなり増えますが,PDF埋め込み時のサイズはおそらく少し増える程度です).以下のスクリプトでまとめて変換できます.

https://github.com/Goat-JP/texmacs-env/blob/main/cubic2quadratic.pe

修正済みの原ノ味フォントはここに置いています.

書いてみた

https://ja.wikipedia.org/wiki/線積分

線積分のWikipediaの内容をTeXmacsに写してみました.適当に図も書いてみました.内容の正しさは保証しません.

まあまあ綺麗なんじゃないでしょうか.ソースはここに置いてます.

ショートカットキー

いろんなショートカットキーが用意されています.よく使いそうなものを私が知っている範囲で載せておきます.

  • 文書

    • Esc Alt+P: プリアンブルを表示
    • Esc Alt+S: ソース木を編集
    • Ctrl+Space: いい感じに選択
    • Shiftを押しながら矢印キー: 矢印キーで選択
    • Altを押しながらマウスホイール: 横スクロール
  • 数式

    • Alt+$: 数式ブロック
    • Shift+F5 Shift+S: \sum
    • Shift+F5 Shift+I: \int
    • _: 下付き文字
    • ^: 上付き文字
    • @ @: \infty
    • - >: \rightarrow
    • D Tab Tab: \mathrm{d}
    • Alt+F: 分数
    • F6: 太字
    • Esc Ctrl+Up: 括弧を大きくする
    • Esc Ctrl+Down: 括弧を小さくする
    • Esc Ctrl+Backspace: 括弧の大きさをデフォルトサイズにする
  • ドローイング

    • オブジェクトがハイライトされている状態でCTRL+PageUp: オブジェクトを前面に移動
    • オブジェクトがハイライトされている状態でCTRL+PageDown: オブジェクトを背面に移動

まとめ

Typstが最強だと思っていたのですが,TeXmacs,かなり強いかもしれません.TeXmacsはスライドも作れます.WYSIWYG+数式+スライドを達成しているので,数式込みのスライド作成において現時点で最強のツールはTeXmacsなのかもしれません.

他にもいろいろな機能がありますが,それらを使いこなすのはかなり大変でしょう.TeXmacsのコミュニティは非常に小さいため,ドキュメントが少なく,バグもそれなりにあります.

参考文献

Discussion