PM1人目1年生が読んだ「プロダクトマネージャーになりたい人のための本」
こんにちは。NE株式会社でプロダクトマネージャーを務めております正訓(まさくに)と申します。プロダクトは「せかいであそぼ。」をコンセプトとして掲げるネクストエンジンです。ECのバックオフィス業務を総合的に管理、軽減化させるためのプロダクトです。よろしくね。
さて、汗ばむ季節となり始めたこの初夏に、アドベントカレンダー的なものを実施するとエンジニアが凄いことを言い始めていたので一枚噛ませていただきました。
何書こうかと逡巡していたのですが弊社VPoEから「プロダクトマネージャーになりたい人のための本が出るじゃん?」と提案がありましたので、ちょうどPM1年目として現在の職務を交えながら感想を述べたいと思います。
「プロダクトマネージャーになりたい人のための本」?
こちらです。
全体を通して、タイトル通り「プロダクトマネージャー」になるための道筋、スキル、マインドセット、そしてなってからのHowToや課題、能力の高め方などが書かれており、PMの手法もさることながら、PMという職業を豊かにするための橋渡しであると感じました。(驚いたのはPM からの 転職にも言及があることでした)
確か本文には出てこなかったと思うのですが、表紙に記載されている Unlock your potential as a PM
という一文が思い返せば本当に本書を表しているな、と感じています。かっこいいですね。
あと余談ですが、油断していたら本書の発売日は一昨日でした。この記事公開日はあらかじめ決められていたので、昨日一生懸命拝読してから書いているホットで記憶に新しいものになります。
各章を咀嚼する
各章を拝読して感銘を受けた部分、感想です。なお引用はすべて プロダクトマネージャーになりたい人のための本 エンジニアからプロジェクトマネージャー・事業企画・経営コンサルタント・デザイナー・現役PMまで
からであり、カッコ内はKindle版のページ番号を指します。
序章
なぜいま、プロダクトマネージャーが必要か
(p20)
現代のプロダクトマネージャーはどんな成果が求められ、または成果を出しているのか、身近な例を用いて、プロダクトマネージャーへの世界的な期待、ニーズの高まりが語られています。一部ではエンジニアに次ぐ不足人材なんですね。
なるほどな、と思ったのは、こちらの書籍は「プロダクトマネージャーの仕事」というよりは「プロダクトマネージャーという人材」にフォーカスしたものなんですね? そりゃそうか。「なりたい人のための本」だもんな。
なので、「プロダクトマネージャーへの推し」もさることながら、「プロダクトマネージャーをする人への推し」がめちゃくちゃ強い。潔く強い。序章を読んでプロダクトマネージャーに従事するための勇気を少しもらえます。
第1章
プロダクトマネージャーの業務と能力を理解する
(p32)
ここではプロダクトマネージャーの業務は「プロダクトを成功に導くこと」とし、そのための業務が「プロダクトをつくり、育てる業務」と「プロダクトチームや関係者をリードする業務」であると言います。
この辺でプロダクトマネージャーの「凄み」が如実に語られ始めます。というか、著者の方々が絶対プロダクトマネージャーを好きすぎるんだと思います。全編とおしてそれが本当に伝わってくる。
この章ではプロダクトマネージャーの業務と能力がさまざまに語られているのですが、「ゴールのないことに対して、Whyを思考し、それを語り、プロジェクトを先導し、成果測定をし、各職種のハブになる」役割だそうです。やることが、多い。
優秀なプロダクトマネージャーは例外なく、優秀なプロジェクトマネージャーでもあります。
(p47)
という一文は、最近「プロジェクト」の中の進め方についてはあまり見れていない、委譲の観点からも見ないようにしている自分の身を引き締めるような言葉でした。
第2章
プロダクトマネージャーのキャリア形成にむけての基礎知識
(p63)
この本のタイトルから察するメインターゲットからすると、この2章が最も読みたい部分なのではないかと感じます。キャリア側面からのプロダクトマネージャーが説明されており、ジュニアやシニアに分けたときの年収や役割までが一般的な情報として語られていました。
さらにこの章では、現時点でのその人のキャリア、職種が、プロダクトマネージャーにフィットしやすいかどうか(≒社内異動、転職でなりやすいかどうか)まで述べられています。エンジニアがやはり社内異動でも転職でも、プロダクトマネージャーになれやすい、などです。
これは定量的なデータ、定性的な体感の情報、観点が盛り込まれており、こんな「プロダクトマネージャー好きすぎるキャリアアドバイザーの方々」が執筆されたからこその噛みごたえのある章だったと感じます。
別のキャリアからプロダクトマネージャーになった方々の「転身現場の状況」という項目がそれぞれにあったのですが、「ドメインスペシャリスト」からプロダクトマネージャーになった方の文章が印象的でした。
会計用語でいう「仕訳」という作業においても、エンジニアは「登録・入力作業」とよんで機能を作ってしまうそうです。一方で、経理経験があるプロダクトマネージャーは「仕訳を切る」とよぶそうです。(中略)この微妙なニュアンスの違いでプロダクトの世界観がまったく変わってくるのです。
(p114-p115)
これは本当に実感します。DDDのユビキタス言語にも通ずることでしょうし、顧客視点のプロダクトにも通ずる大切な観点だなぁと感じました。こういったプロダクトマネージャーで発揮できる強みについても書かれています。でも「ドメインスペシャリストからプロダクトマネージャーへの社内異動、転職はなかなか難しいよねぇー」といった現実も書かれているのがリアル。
第3章
プロダクトマネージャーの転職活動の進め方
(p138)
この章ではプロダクトマネージャーへ転職するための具体的な軸や考え方、手法が主眼でした。自分は社内異動によるプロダクトマネージャーなので、まだ自分には体験がないことです。
キャリアアドバイザーの著者の方々の本領発揮の部分でしょうか。プロダクトマネージャーに限らず、転職の際に役立つ考え方がまとめられていると感じました。
面接の文脈で語られていたのですが、「エンジニアにタスクを投げる」や「営業がもってきたものを」といった何気ない表現に、普段の「自分のあり方」も滲み出るというところまでが語られています。至言だと思います。
第4章
一人のプロダクトマネージャーとして立ち上がる
(p264)
この章ではプロダクトマネージャーになってからの活動、課題が語られています。
たぶん今の自分のフェーズがこの辺なのだと思います。なので「プロダクトマネージャーになりたての人が最初にぶつかる5つの壁」や「ジュニアプロダクトマネージャーが抱えるキャリアの7つの悩み」がその通りすぎて「うっ」となります。(引用はあえてしません)
自身の経験に近しい職種のメンバーと接点をもつときこそ、わかったつもりにならないことを強く意識していきましょう。
(p271)
一番心に残ってるのはこれでしょうか……。自分で言うとエンジニアのことを分かったつもりで語っていることが確かにあるので反省しました。これはちゃんと理解すること、信頼すること、そして任せることにもつながる考え方だと思います。
ただ、ここの辺りから「プロダクトマネージャーのやり方」に繋がってくるので、「プロダクトマネージャーのなり方」を主眼とする本書からは卒業していくのだと思います。実際に章の厚みも薄くなっていると思います。
第5章
プロダクトマネージャーとしてさらに高みを目指す
(p293)
この章は本書の最後の章として、プロダクトマネージャーの高みを目指す方法が述べられていました。ビジネス能力、技術力、ユーザー体験力を伸ばせ、と書かれているのですが、これはプロダクトマネジメントトライアングルに通じているのだと思います。
そして後半では「プロダクトマネージャーから他職種へ」というようなものまで、プロダクトマネージャーからの道も示されている内容となっています。まだ自分はあまり想像できないですね……。
全体を通して
- プロダクトマネージャー、やはり超人みあるのでがんばろう。
- 基本的に「どれかができなくてもよい」はなさそうだが、楽しい道だ。
-
Unlock your potential as a PM
と表紙に書かれているのもこの辺を意識した激励のようでもあり……いたずら心のようでもある。
- プロダクトマネージャーの源泉は好奇心である。
- ビジネス、技術、顧客、どれに対しても好奇心を持って臨むべし。
- というよりも溢れる好奇心のおかげで、結果的に全面的に強くなっていた、が理想なのだろうと思う。
- 各所にプロダクトマネージャーは「引き出しの多さが大切」と書かれている。
- 実際的なプロダクトマネージャーの業務について
- プロダクトマネージャーになる前から読むことで一歩目がスムーズになりそう。
- 逆にプロダクトマネージャーの導入の手引きという読み方もできたので、プロダクトマネージャーを導入したい組織のマネジメント層にもきっと魅力がある。
- 意外にもビルドトラップ〜というような話題はあまり出てこなかった
- そういう点でやはり他書とも棲み分けが意図されているように感じた。
- キャリアアドバイザーの方々ってこんなにも職種を愛せるものなんだな。
- プロダクトマネージャーへのラブレターのようにも感じる。
- 及川さん、クライス&カンパニーさん、いつもありがとうございます。
自分と重ねて
NE株式会社では5月に初めてプロダクトマネージャーを置くこととなりました。なので自分が入社した3年前にはプロダクトマネージャーの役割は社内に存在せず、各部署が事業の方針に沿って、連携し、サービス運営、プロダクト開発をおこなっていました。
そのころ、よくメンバーから聞くワードが「各部署で進めているものをもっとよく知りたい」というものでした。方針はあったものの、ロードマップが不在だったため、どんなキャンペーンがどんな理由で、どんな開発がどんな目的で、把握することに時間と手間がかかっていました。
なので「プロダクトの指向性を強めたいなぁ」と考え、いろいろと調べ始めて「プロダクトロードマップ」「ビジョンとかテーマとか」「プロダクトマネジメントトライアングルとか」などの言葉に出会ったのが、自分とプロダクトマネジメントの出会いでした。
そしてなんやかんやあって今年の5月から1人目のPMとなったのですが、まだ「これがプロダクトマネジメントかなぁ」という不安と確信をいったりきたりしています。本書はその疑問に答えるというよりは、そういった疑問を持つのが正しいことだとまずは肯定しているように思いました。
なぜなら、本当にプロダクトマネジメントは時代により、企業により、人により千差万別で、幅広く、そしてパワフルだぞと。そういった疑問を燃料にしながら、そのときの最適解を出すものだ、なのでパターン付けは難しいが、一定の傾向はある、と述べているのだと思います。
そういう意味で自分も「プロダクトマネージャーになる傾向」をたどっている一人ということになります。当然未熟者ですので、「プロダクトマネージャーあるあるだなぁ」と、本書で述べられていることを感じられるようになり、プロダクトの成長を目指してアウトカムで語れるようになっていきたいですね。
NE株式会社のエンジニアを中心に更新していくPublicationです。 NEでは、「コマースに熱狂を。」をパーパスに掲げ、ECやその周辺領域の事業に取り組んでいます。 Homepage: ne-inc.jp/
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