点識別可能性と可換図式
この記事では,点識別可能性について,可換図式を使って分かりやすく定義します.
点識別可能とは
点識別可能性の説明
計量経済学には点識別という概念があります.ざっくりいうと,観測可能な変数の分布が分かったとしても,知りたいtarget parameterを一意に特定できない場合,そのtarget parameterは点識別不可能といいます.
詳しくは以下を参照ください.
計量経済学における識別問題について
The Identification zoo
点識別可能性の定義
上記の2つのページの定義は(表面上)若干違うのですが,このページではIdentification zooの定義に従います.
- モデルの集合
M - DGPとして想定している分布の集合.
- 観測可能な分布について
- モデルから観測可能な分布への写像
\Pi: M \to \Pi(M) - モデルが定まれば一意に定まる分布.
- 観測可能な分布の集合
\Phi = \Pi(M)
- モデルから観測可能な分布への写像
- target parameterについて
- モデルからtarget parameterへの写像
\Delta: M \to \Delta(M) - モデルが定まれば一意に定まる値.この値を求めることが目標.
- target parameterの集合
\Theta = \Delta(M)
- モデルからtarget parameterへの写像
- structure
についてs(\phi, \theta) s(\phi, \theta) = \{m \in M: \Pi(m) = \phi, \Delta(m) = \theta \} - つまり,実験者からは
として観測され,なおかつ,target parameterが\phi となる母集団の分布の集合.\theta
-
と\theta が観測同値\theta ' \Leftrightarrow とs(\phi, \theta) がともに空ではないようなs(\phi, \theta ') が存在する.\phi - target parameter
が識別可能\theta \Leftrightarrow と\theta が観測同値であれば,\theta ' である\theta = \theta ' - 要は,実験者からは
として観測されるような母集団分布に対しては,同じtarget parameterの値になりますよ,ということ\phi
- 要は,実験者からは
点識別と可換図式について
点識別の図示
図示の証明
上記の図を言葉で表現すると以下のようになります.
\Rightarrow について
背理法を用いる.つまり,ある
この仮定のもとで,
-
だが,\Delta(m) = \theta \neq \theta ' = \Delta(m') -
なので矛盾.\theta = \Delta(m) = T(\Pi(m)) = T(\phi) = T(\Pi(m')) = \Delta(m') \theta '
\Leftarrow について
今,ある
Discussion