エンジニア廃業宣言
はじめに
ポエムです。この記事の文脈におけるエンジニアとはソフトウェアの開発業務に携わる者を意味します。魂が震える記事、通称タマフル2025を読んで感化されてしまったので自分も思うところを書き残します。SF的な妄想成分が強めです。
今この瞬間の未来予想
以下の数値は直感なので根拠はありません。あくまで予想です。
- AIが生成した結果の良し悪しを見極める能力は今後しばらく必要とされ続ける。「しばらく」とは3年から5年程度を想定。
- 人間にとって都合の良い賢さでモデルの進歩が止まることはない。自分の得意とする分野でAIに全く歯が立たない瞬間は訪れる。個人的な時間軸としては数ヶ月から1年程度を想定。
- 文字通り完全自律なAIの登場により人間が介在する余地のない開発パラダイムにシフトする。時間軸としては5年から10年を想定。
AIと対等に渡り合えるエキスパートとして要求される能力の水準が上昇を続けるだろうと想定しています。そのような状況になってもくらいつける超人的エンジニアは神とよばれそうです。今この瞬間もインターネット上で多数の神を観測できますが、彼ら彼女らは今後も神であり続ける可能性が高そうなのでキャリアの参考になりません。
それと同時に、今この瞬間は経営者とよばれる役割がエンジニアだと見なされるようになるのではと予想しています。確率的な振る舞いをする対象を制御する行為は人間を扱うのと似ているからです。
私のような凡人が生き残るには、経営者的な道を選ぶことになりそうです。とはいえ、この道はこの道で険しそうなので、生存できるか全く見通せません。
未来のハードウェア
現時点で一般的なソフトウェアのスタックを低いレイヤーから眺めてみます。
- 人間が設計した半導体チップレット、メモリやストレージの上で
- 人間が設計したISAやハードウェア制御の作法に従って
- 人間が設計したコンパイラやランタイムを利用して
- 人間が作成したミドルウェア、フレームワークやライブラリを組み合わせ
- 人間が策定したプロトコルや技術標準に適合させ
- 人間の要求を満たすアプリケーションを
- AIに生成させる
これが現状かと思います。しかし、いずれこうなるだろうと想定しています。
- AIが設計し動作原理が人間に理解できないハードウェアの上で
- AIは人間の要望を汲み取り咀嚼して
- AIが自らタスクを考えて自律的にタスクを完了させる
人間が介入する余地がなくなります。AIに要望を伝える部分がかろうじてエンジニアリング的な要素かもしれません。今この瞬間はプロンプトエンジニアリングとよばれている行為です。それすらもAIが良きに計らってくれる時代が到来するかもしれませんが。
ChatGPT O1からのツッコミ
- 既に一部の回路設計支援ツールは機械学習の要素を使っており、「人間が満足に理解しきれないほど複雑なプロセスで最適化している」場面は増えています。ただ、「原理的に動作がまったく説明不能」になるほどブラックボックス化しているかというと、少なくとも現状では各構成要素は人間が把握できる粒度で検証されます(誤動作や歩留まりなどの問題から、完全に把握不能な設計は実用化が難しい)。
- 将来的にAI同士の連携が高度化し、部分的に人間の理解を超えた回路生成がされる可能性はありますが、「すべてが人間にとってブラックボックス」となるかはまだ不透明です。記事自体に誤りというよりは、非常に先進的な未来予測と捉えるのが妥当です。
それはごもっとも。AIについて暑くなっているのは人間の方で、AIが自分自身について語らせると冷静ですね。
ヒューマノイド普及までのタイムライン
ところで、今この瞬間のAIは地下牢に幽閉された図書館秘書のようなものです。膨大な知識を蓄えてはいますが、本から得た知識であり現実の世界を知りません。ソフトウェアの世界に閉じ込められていると言えます。
そこで鍵になるのがAIに肉体を持たせるテクノロジーです。自ら現実世界を歩き回り、見て聞いて知識を絶え間なく更新し続けることができれば、人工知能は天然の知能に近づくはずです。
ちょうど参考になりそうな記事を見つけたので紹介します。内容がどの程度あてになるかは未知数ですが、完全な出鱈目でもなさそうです。
10年後には家庭に普及? ヒューマノイドロボットの可能性とは - Impress Watch
ChatGPT O1からのツッコミ
- 「AIが自律的に現実世界の情報を取り込み、学習を深める」というシナリオ自体はロボティクスや強化学習の文脈でよく議論されます。ただし「ヒューマノイド型ロボット」という形状が必須かは別問題です。車輪型やドローン型など、より適した形状のロボットが現実世界を捉えて学習することも大いに考えられます。
たしかに、ここまでの書きぶりでは人型ロボットが最終到達点のような印象を読者に与えるかもしれませんね。ちょっと反省。
消滅しない業務はあるか
ヒューマノイドの普及は人海戦術(ロボット海戦術?)で課題を解決できる時代の到来を意味します。とはいえ確率的な振る舞いをするAIではなく決定的な振る舞いをする従来のソフトウェアが求められる場面は多いはずです。ぱっと思いついたものは以下のようなものでしょうか。
- 決済など商取引に関係する技術
- ネットワーク通信のような低レイヤーの技術
- 認証や署名など安全に関わる技術
しかし、1.については資本主義がいつまで続くのかによって需要が左右されそうです。頭脳労働も肉体労働も人間が不要になれば徐々に失業者が溢れ、従来の社会が継続困難になるはずです。そのとき、資本主義的な価値交換に関連する技術の需要がどれくらい残るのかはよくわかりません。
2.については長く残りそうな気がします。しかし、例えば街を徘徊しているヒューマノイド同士が人間には理解不能な言語で高速な井戸端会議をするようになれば、それは実質パケット交換方式の通信として機能するかもしれません。現在のTCP/IPはアマチュア無線的なポジションになるイメージです。
3.も長く残りそうな予感がします。といっても、暗号スイートそのものを開発する業務ではなく利用者として適切なものを選ぶだけになりそうですが。
今後の生存戦略
気分的にはすでにエンジニアとして廃業しています。しかし、世間がどうなろうと盆栽的な営みとしてのエンジニアリング的行為は続けそうな気がします。AIや超人と能力を競うのはつらいところですが、自分自身の能力を深めたり幅を広げるのは純粋に楽しいので。
そして最近は意識的にエンジニアリングと全く関係のない趣味を増やそうとしています。これまた直感ですが、生産性が低かったり非効率で合理的ではない活動から新しいエンジニアリングのヒントが得られそうな気がしています。
おわりに
十人十色の生存戦略がありそうなので気になります。魂が震えている方がいましたら、記事を書いてください。ぜひ読みたいです。
Discussion