初老を超えたエンジニアの現実2025
MOSHでソフトウェアエンジニアをしている masuyama です。
この記事はMOSHアドベントカレンダー13日目の記事です。
本日はネタ枠なので、気楽に読んでください。
前置き
今年はドラクエ1, 2がリメイクされました。中学生のころ、ドラクエ1を友達の家で、ドラクエ2を駄菓子屋据え置きのファミコン[1]でプレイしたのを思い出します[2]。ドラクエ1の発売年は1986年で、もう39年前になります。当時のROMの容量は512kbit[3]ということですが、今このサイズでプログラムを組めと言われたら頭を抱えるしかありません。
ソフトウェアを取り巻く環境はそのころとは格段に変わり、今もAIなどによって変わり続けています。昨年は身体的なところを取り上げてきましたが、今年はややメンタル寄りの変化とその付き合い方をピックアップしていきたいと思います。
※内容はあくまでも個人の感想です。
ちなみに去年の内容はこちらになります。
実際どうなの?
やる気と新しい刺激
40〜50代になると、急激にやる気を失うことがあるという話をよく聞きます。それはさまざまな原因があると思いますが、場合によっては仕事に影響を与えることもあるのかもしれません。私は今のところ何もありませんが、更年期によるホルモンバランスが原因だと言われると、こればかりはどうしようもありません。
ただ、できるだけ新しい刺激に触れるとそういう状況になりにくいそうです。幸いこの業界では技術は恐ろしいスピードで進化しており、まだまだ新しい刺激が足りなくなるという状況にはなりそうもありません。新しい人は新しいものを持ってきてくれるので、人から学べることも大いにあると感じています。
モチベーション
そもそも昔からモチベーションで仕事をする、というのがちょっとわからなかったので、ここは個人的にはなんとも言えないところです。報酬をもらっているんだからそれがモチベーションでしょ、としか思っていません[4]。
このあたりは個人差が大きいところだとは思いますが、なによりも「自分の機嫌は自分で取る」のが大事かなと思っています。結局のところ、自分とどう付き合うかの話なので、常に自分との対話を心がけたいところです。
集中力の使いどころ
前回も書きましたが、AIが実用的になったおかげで、さらに助かるようになりました。気軽にAIにタスクを投げれば、結果が返ってくるまで集中を保たなくていいですし、エージェント的なものであれば対話ベースなので、そもそも強い集中力はあまりいりません。一番集中力が必要なのは、別の人(AI)が出してきたPRのレビューなのかもしれません。
正直なところ集中力が一番低下したな、と感じるのはゲームをしているときです。長時間のプレイが疲れるようになってきました……
理想との距離感
昔はそれこそ理想的なアーキテクチャ・コードを追い求めることもありましたが、今は理想はその人のバックグラウンドや哲学の違いによって人の数だけあるのだと理解でき、どれも正解だと思えるようになりました。トレードオフを考慮しながら、そのときどきでみんなが楽しく開発できる選択をしたい、と考えています。
ちなみに、良し悪しは別としていろいろな会社でいろいろなコードを見た結果、「なぜか汚くて混乱しているほど事業は成功している」ことが多い気がします。
障害の恐怖
誰しもがそうだと思いますが、障害だけはどれだけ経験しても慣れる気がしません。経験を積んで対応策も増えているとは思うのですが、それでもこの恐怖とは、できるだけ戦いたくないなと思ってしまいます。
「気軽にdeployできるように」なんてことが言われ続けていますが[5]、自分の感覚としてはそもそもdeployなんて今動いているものを覆す行為なんだから気楽にできるわけないだろ、と常に思います(CI/CDの進歩により年々楽に、そして安全になっているのを実感しています)。今出そうとしているものが見えない不具合を含んでいたら? エラーにはならないけどデータを少しずつ壊すコードだったら? deployしたinstanceがハズレだったら? ……と考えると、いつもお客様に心の中で頭を下げながらリリースをしています。たぶんこの「ちゃんと怖がる感じ」自体は、どれだけ経験を重ねてもあまり薄れていません。
AIが障害対応してくれる日もそう遠くないと思っていますが、関係者に連絡したり事後対応をしたりする人間の仕事は、しばらくは残り続けるのも現実です。
休養
昨年も似たようなことは書いた気がしますが、世の中の働き方が変わったこともあり、休養はちゃんと取るようになりました。昔はそれこそどこに行くにもPCを持ち歩き、どこでもコードを修正できるようにしていたのですが、今は休み中はできるだけ連絡も見ないように心がけています。
自分の休養もそうですが、自分が動くことで他人にプレッシャーを与えることがないように気をつけています。
キャリア感
これはわりと昔からなのですが、やはり最前線に立っているほうが自分の性に合っているなと思います。大局を見渡すことも楽しいとは思うのですが、やはり実際のコードを目の前にし、自分の手で価値を作り、それをお客様に直接届ける楽しさには代えがたいものがあります。
こればかりは人によって価値観が違うので参考になるかはわかりませんが、とにかくロールモデルとなるような人を見つけると、イメージはつきやすいのかなと思います。今となっては自分がそのロールモデルにならないといけない立場なのかなと思うので、後に人が続けるように、キャリアの再現性があるように、ということは考えるようにしています。自分ひとりの“武勇伝”で終わらないように、というくらいの気持ちでいます。
おまけ:この年になって出てきた心配ごと
相続税怖いです。
まとめ
ここまで書いてきたのは、初老を超えたエンジニアの、かなり人間くさい話ばかりでした。
AIがコードを書き、テストを書き、ドキュメントを書き、障害対応までしてくれるようになった未来でも、うれしいことに人間に残る仕事はまだまだありそうです。
それは、ステークホルダーへの根回しであり、意味のわからない仕様の背景を理解し、説明することであり、トラブルが起きたときに頭を下げて謝罪することなのかもしれません。
AIに続き、人間の代わりに謝罪してくれるヒューマノイドの登場が待たれますが、それまではもう少しだけ、私のようなエンジニアの出番も残っていそうです。
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駄菓子屋の一角にファミコン(または互換機)が置いてあって、10円〜50円入れると数分だけ遊べるやつです。友達の家に行くよりハードルが低くて、子どものたまり場になっていました。 ↩︎
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当時家にはファミコンがありませんでした(https://www.amazon.co.jp/セガのゲームは世界いちぃぃぃ-SB-comics-サムシング吉松/dp/479731110X) ↩︎
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512kbit = 64KB です。いまのスマホの写真1枚にも満たない容量に、ゲーム本体・音楽・テキストなどが全部詰め込まれていました。 ↩︎
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きれいに言語化されているnoteがこちらになります。(https://note.com/choconejito/n/n1421ff4f2b4e) ↩︎
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昔は本番サーバーに直接ssh/scpして、プログラムorファイル置き換えて再起動、なんていうのもしていました。rsyncでの本番反映も割と最近まで見かけた気がします。 ↩︎
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