サロン予約サービス「minimo」でのAI活用の取り組み ~11周年を迎えたサービスにおける事例~
はじめに
こんにちは!サロンスタッフ予約サービス「minimo」でAI推進チームに所属している洗川です。
近年のAI、特に生成AIの進化は目覚ましく、多くの分野でその活用が進んでいます。minimoでも、ユーザーの皆様により良い体験を届け、また開発や運営の生産性を向上させるため、2025年4月よりAI推進チームを立ち上げ、様々な取り組みを加速させています。
本記事では、minimoが現在進行形で行っているAI活用の取り組みを、「サービス価値の向上」と「生産性の向上」、そしてそれらを支える「文化とサポート体制」の3つの軸でご紹介します。
minimoのAI活用
minimoのAI活用は、大きく分けて以下の2つの目的として進めています。
- サービス価値の向上: 機械学習やLLMを用いて、ユーザーごとに合った最良の美容体験を提供するための機能開発
- 生産性の向上: AIツールを開発業務や日常業務に導入し、チーム全体のパフォーマンスを最大化するための環境構築
それでは、具体的な取り組みをそれぞれ見ていきましょう。
【サービス価値の向上】ユーザー体験を高めるAI施策
ユーザーがよりスムーズに、より自分に合ったサロンスタッフを見つけられるよう、AIを活用した機能開発を進めています。
機械学習を用いた検索アルゴリズムの進化
minimoの検索機能は、単に条件に合う掲載者を一覧表示するだけではありません。「最良の美容体験」をお届けするため、お客様からの支持や予約体験の快適さなどを考慮した独自のアルゴリズムで表示順を決定しています。
しかし、お客様の好みは「価格帯」「メニュー傾向」「掲載者様の経験年数」など多岐にわたります。これらの要素を全て考慮した掲載順を手動で運用しようとすると、組み合わせが爆発的に増え、管理が非常に困難になります。
そこでminimoでは、これらの多様な要素を特徴量とする機械学習モデルを導入し、ユーザー一人ひとりの好みや行動傾向を反映した、最適な掲載順を動的に計算できるようにしました。これにより、複雑化するニーズに対応しつつ、お客様一人ひとりにとっての「最高の出会い」を創出しています。
▼検索アルゴリズム改善の取り組みについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
LLMと機械学習による審査・監視業務の自動化
minimoでは、掲載者が安心してサービスをご利用いただけるよう掲載内容の事前審査を行っていますが、一度で承認されないケースが4〜6割にのぼり、運営スタッフの審査負担と掲載開始までのリードタイムが課題となっていました。
この課題を解決するため、スタッフによる本審査の前にLLMが審査を行う「かんたんAIチェック」を導入しました。AIが初期段階で不備を指摘することで、「却下→修正→再提出」というサイクルを掲載者様自身で迅速に回せるようになります。
また、掲載される画像についても、機械学習モデルを用いて不適切なものを自動で検知する画像監視の仕組みを導入しており、健全なプラットフォーム運営に貢献しています。
これらの取り組みにより、運営スタッフはより重要な審査に集中でき、掲載者はよりスピーディに掲載を開始できるという、双方にとってメリットのある仕組みを実現しました。
▼自動審査の取り組みについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
【生産性の向上】開発と業務を加速させるAI施策
サービス開発の裏側でも、AIは強力な武器となっています。minimoでは様々なAIツールを導入し、開発効率と業務効率の向上を図っています。
開発効率化:AIコーディング支援ツールの全面活用
エンジニアの日々の開発業務をサポートするため、複数のAIコーディング支援ツールを導入・検証しています。
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Claude Code / Claude Code Action:
特に事業部エンジニア内で利用率の高いものがClaude Codeのコーディング支援機能です。一部の移行プロジェクトでは、Issueを作成するとまずAI(Claude Code Action)が実装の雛形を作成し、その後人間が微調整するというフローを導入し、効率化を図っています。他にも、PerlからGoへのAPI移行タスクにおいて、8〜9割のコードを自動生成できたケースもあり、開発速度の向上に大きく貢献しています。
加えて具体的な活用例として、インフラの定例でメトリクスを確認する作業を効率化した事例もありますので、ご興味のある方はこちらもご覧ください。
▼インフラ定例でのメトリクス確認にClaude Code Actionを活用した事例はこちら。
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GitHub Copilot:
コード補完や定型コードの生成はもちろん、Pull RequestのレビューにもAIを活用し、レビュアーの負担軽減と品質向上に繋げています。
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各種ツールの導入と使い分け:
Roo Code / Cline、AndroidではGemini Code Assistや、検証段階ではあるもののOpenAI Codexなど、用途に応じて最適なツールを使い分ける文化が根付いています。
業務効率化:日々のタスクをAIで自動化
開発業務以外でも、AIは日々の様々なタスクを効率化してくれています。
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n8nによるワークフロー自動化:
ノーコードツール「n8n」を導入し、定型業務の自動化を進めています。例えば、アプリのレビューが投稿されるSlackチャンネルの内容を毎週自動で要約し、改善提案と共に報告してくれるワークフローは、プロダクト改善の貴重な情報源となっています。
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Notion AIによるナレッジ活用:
議事録の自動作成・要約だけでなく、膨大なドキュメントの中から必要な情報を探し出す「ドキュメント検索」にもNotion AIを活用。情報へのアクセス性を高め、過去の仕様確認などを効率化しています。
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BigQueryのクエリ自動生成:
Notebook LMを使い、複雑なデータ分析クエリの作成を効率化。一部ですが、従来30分かかっていたクエリ作成が1分未満に短縮されるなど、劇的な効果を上げています。
AI活用を支える文化と全社的なサポート体制
minimoのこうした取り組みは、事業部内での文化醸成と、会社全体の強力なサポート体制があってこそ成り立っています。
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全社横断のAIツール群:
minimoでは、事業部で導入しているツールに加え、全社的に契約しているエンタープライズ版のChatGPTやSlackAIなども活用しています。特に、JiraやConfluence、Googleドキュメント、Slackなど社内情報を横断的に検索できる「Google Agentspace」は、情報収集の強力な武器になっています。
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minimo事業部内での文化醸成:
事業部内では、Notion上に「AIポータル」や「プロンプトライブラリDB」を整備し、メンバーがいつでも最新のAI活用ノウハウにアクセスできる環境を用意しています。また、「AI雑談ランチ会」などを通じて、ナレッジ共有を活発に行っています。
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AI専門の相談窓口:
新しいツールの導入や活用方法に迷った際は、社内向けに設けられたAI専門の相談窓口にいつでも質問できます。法務的な観点からのアドバイスも受けられるため、安心してAI活用を推進できる環境が整っています。
現場の声から見るAI活用:事業部アンケート結果
これらの取り組みの成果を測るため、先日、事業部内でAI活用に関するアンケートを実施しました。その結果から、現場のリアルな活用状況が見えてきました。
浸透するAI活用と確かな効率化効果
- 回答者の半数以上が週に数回以上AIを利用しており、AIが特別なツールではなく、日常業務のツールとして浸透していることが分かりました。
- 利用ツールとしてはChatGPT、Notion AI、GitHub Copilotがトップ3となり、職種を問わず広く使われています。
- 「コーディング支援」や「情報収集」はもちろん、「壁打ち・アイデア出し」や「文章生成・校正」など、思考のパートナーとしての活用も進んでいます。
- 何より、多くのメンバーが「業務が大幅に効率化された」「効率化された」と実感しており、「ドキュメント作成時間が1/3に」「コーディング速度が30%向上した」といった具体的な声も多数寄せられました。
見えてきた課題とネクストアクション
一方で、「プロンプト設計の難しさ」や「出力の正確性への懸念」といった課題も浮き彫りになりました。
こうした声を受け、今後は「初心者向けのAI勉強会」の開催や、チームの垣根を越えてノウハウを共有できるための計画を進めています。現場の課題に真摯に向き合い、事業部全体のAIリテラシーをさらに底上げしていくことが、次の目標です。
まとめと今後の展望
minimoでは、サービス価値の向上と生産性の向上の両輪で、AI活用を推進しています。全社的なサポート体制のもと、現場主導で様々な試行錯誤を繰り返しながら、AIを使いこなす文化が着実に根付いてきています。
今後もAIを最大限に活用し、minimoユーザーにとっても、私たち働くメンバーにとっても、より良いサービスと環境を追求していきます。
この記事で、minimoのAIに対する取り組みを感じ取っていただけたら幸いです。
最後に
minimoでは、サービス開発に一緒に挑戦してくれる仲間を募集しています!ご興味のある方は、ぜひ採用ページをご覧ください。
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