ITエンジニアの心理的安全性はどのような段階を経て高くなるか考えた
はじめに
昨今、心理的安全性を高くしていこうということが会社組織運営のトレンドであるように思います。
かくいう私の職場でも「心理的安全性の高いチームを目指す」というような目標が決められ、それに沿って個人の目標を立てることになりました。
それに際しまして『心理的安全性のつくりかた「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える』という書籍を読みましたので、その書籍の内容をふまえつつ、自分の推察などを織り交ぜ、「心理的安全性の高いチームを目指すために個人が出来ることは何か?」を考察してみたいと思います。
心理的安全性はなぜ求められるのか
端的に言うと、ビジネスを取り巻く環境が変わったからです。
ビジネスを取り巻く状況は刻々と変わる時代になりました。そのような時代に適応するには、組織やチームが日々変化を感じ、工夫・挑戦し失敗や実践から学べる必要があります。
そのためには率直な対話が必要と考えられており、率直な対話がしやすい環境のことを”心理的安全性が高い”環境であると定義されているように私には思えました。
つまり(推察になりますが)所属組織が「心理的安全性を高めたい」と言う場合は、おそらく市場に対しての敏捷性を高めたいと思っていたり、課題感を感じているということが伺い知れます。
心理的安全性の高い環境は具体的にはどういう環境なのか
探索・挑戦し、そのための対話がしやすい環境(=心理的安全性の高い環境)とは、具体的にどういう環境なのか?というのが気になりますね。書籍から引用してみます。
ハーバード大学教授のエイミー・C・エドモンドソンは、1999年に「チームの心理的安全性」という概念を打ち立てました。これまで8000回以上引用されたその論文の中で、「チームの心理的安全性とは、チームの中で対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念のこと1」だと定義しました。[1]
エドモンドソン教授は、大きく四つのカテゴリ「無知」「無能」「邪魔」「否定的」だと思われるリスクを、対人関係のリスクとして整理しています。[2]
つまり、上記の対人間関係のリスクをとっても大丈夫だと思える環境だ、と考えるのが一つの分かりやすい指針に思えます。
ITエンジニアの心理的安全性
では、ITエンジニアの心理的安全性はどう高めていけばいいでしょうか?
上述の「対人関係のリスク」は以下のとおりですが、
- 無知だと思われるリスク
- 無能だと思われるリスク
- 邪魔だと思われるリスク
- 否定的だと思われるリスク
これらとどう折り合いをつけていけばいいでしょうか?
正直なところ、ITエンジニアはそれぞれの対人リスクに関して自力でなんとかしているのが現状だと思います。
というのも、すべての対人関係リスクについて実力でどうとでもできてしまうのがITエンジニアだからです。
- 無知だと思われるリスクをとらなくても済むように、技術的な知識を増やす
- 無能だと思われるリスクをとらなくても済むように、ミスをしない仕組みづくりをする
- 邪魔だと思われないようになんでもできるようになる
- 本当にクリティカルなこと以外は否定せず、それが要因で細かい問題が起きても実装力でなんとかする
というように、実力で対人関係リスクを解決してしまっている方も多いのではないでしょうか。
ですが、これが初めからできる人はなかなかいません。
対人リスクをとってもよいと思えるほどの実力は、努力と経験によって到達する高みであり、そこに到達するまでは心理的な安全性を欠く状態になります。
ここで私が提案したいのが、心理的安全性の段階的な上昇です。
みんな大好き四象限にしました。
- A: 一番ビジネス的に価値があるメンバー。スキルが高く、心理的安全性も高いので率直な対話が出来る。
- B: スキルがあるため貢献はするが、心理的安全性が低いため消極的。スキルを能動的に発揮せず、受動的。
- C: スキル面は発展途上だが、業務に必要なことを質問したり、ミスを隠蔽せずオープン。
- D: スキル面が発展途上かつ、対人リスクを恐れている。
こう分析すると、各々の段階において、注意を払うべき箇所が異なることが分かると思います。
- B: スキルはあるので、対人リスクはとれる素地はあるはず。能動的に行動したら評価されるなどの行動へのインセンティブが必要そう。
- C: スキルを伸ばすことが優先。スキルを伸ばす過程で心理的安全性が損なわれないよう注意が必要。
- D: 心理的安全性の向上を優先。「無知」「無能」と思われない環境が必要。(スキルの向上はその後でも良い)
このように段階的に「C → A」だったり「D → C」だったり「B → A」のように段階的に移行していき、出来るだけ多くの人がAの段階であることを目指すのが良いのではないかと思います。
結論
心理的安全性を求めるがあまり、ともすれば「ヌルいチーム」になりかねない危険性があるように思います。
心理的安全なチームというのは、外交的であることでも、アットホームな職場のことでも、単に結束したチームのことでも、すぐに妥協する「ヌルい」職場のことでもありません。[3]
ですが、「ヌルいチーム」を忌避していると、心理的安全性はなかなか上がっていかない現状もあります。
そのため、今現在自分や他のメンバーがどの状況に居て、どのようなサポートを必要とするか?というのを考えながら接していくのが、心理的安全性向上へのアプローチとして比較的明瞭なのではないでしょうか。
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