新卒アーキテクトの楽しさと苦悩(メンター編)
はじめに
新卒でクラウド ソリューション アーキテクトとして働き始めてそろそろ 2 年が経とうとしているメンティー(メンタリングを受ける側)が感じている楽しさと苦悩について、下記のような記事を書きました。
そこで、入社時から彼のメンターである私からは、アンサーソング的な記事を以下の目的で書きます。
- 今後のキャリアを考えるための補助線として、メンターが考えたことを補足する
- 所属企業でのインターン募集への応募を考えている学生諸子に対して、どういう人がいるのかを認識してもらう
- メンター自身の気づきの棚卸
私の記事もまた、所属企業を代表する意見ではありません。N=1 の狭い世界でのお話なので、そういう人もいるかもしれないというおとぎ話程度に考えてください。
筆者について
メンター側も少し背景情報を記載しておきますが、詳細は LinkedIn をご確認いただくことにしたいと思います。
属性
所属:日本マイクロソフト株式会社(2024/2 執筆時点)
職種:クラウド ソリューション アーキテクト
業務内容:Azure を活用した Data & AI 関連ソリューションの設計・運用支援
略歴
2003/4 某社で社会人デビュー、リーダー的な立場を経て管理職を経験
2012/8 日本マイクロソフトへ転職、一般社員に戻る、一貫してポスト セールスのサポート的な業務に従事
ざっくりとした業務内容:
カスタマー サクセス部門のポスト セールス エンジニア。
MS製品、サービスをご利用いただいているお客様に対して、スキルアップ、オンボーディング支援、概念実証支援、プロジェクト伴走型の支援などの万のことを支援。
何を考えどう取り組んだのか
前提として
皆さんは、外資にまだドライだとか数字に厳しいとかいう認識をお持ちかもしれません。ある意味では正しい部分はあるのですが、新卒採用で入社した場合、数字で詰められるというような事はありません。また、数字が絶対というわけでもありません。
また、実際にはここでは語りつくせないような紆余曲折がありましたが、その辺は大幅に端折っています。そんな綺麗ごとばかりな訳ないでしょ的なご意見はその通りです。
1年目の振り返り
では、1年目を振り返ってみましょう。
ゴール設定
最初は私がゴールイメージを引きました。スライド5枚くらい書いたような記憶がありますが、端的にまとめると以下のような項目に対して、上から落ちてきた数字をベースに容赦なくゴールを置きました。
- 12か月間の稼働目標(どのくらいの時間をお客様対応に充てることが求められているのか)
- 社内プロセスでキャッチアップしてほしいこと
- 技術的にキャッチアップしてほしいこと
- 直近1か月のふるまい
当然といえば当然なのですが、これを作る前に二人でどうなりたいかは事前に話しました。
ちなみに、これをマネージャーに見せたところ、到達したらかっこいいけど、そんな無理して盛らなくても(超意訳)と言われました。
ゴール設定してよかった?
素直によかったなと思えたのは、設定された数字がどの程度の難易度を持っているかの想定がし易くなった点です。定量的な目標値もそうですが、定性的にどうなってほしいかもブレークダウンしておくと、さらに難易度が考えやすいです。
二人ともが難易度を現実感をもって理解できる事は重要だと思います。メンターの知見が多いことに起因する「メンター側のできる」と「メンティー側のできる」の不一致を防ぎ、お互いに期待値があった状態で進めることができたのではないかと思います。
メンタリング スタンス
メンタリングの会(つまり、私との 1on1 の時間)はメンティーのためのものであることは割と説明をしたつもりです。どうしてもお互いの属性上、指導だったりコーチングっぽくはなってしまうのですが、できるだけ、自分がいま困っていることを持ってきてほしいと思っていました。
ただし、それだけではどうしようもない部分(知らないから困りようがない事柄)については、こちらから話を振るようにしていました。特に、社内のリズムや最低限やっておいた方がいい事柄についてはこちらから情報を渡していました。
で、うまくできた?
時期的に、どうしてもコーチっぽさが抜けませんでした。いやいや、それメンタリングとしてどうよ?と思われていた可能性は否定しません。しかし、「社内で1年過ごさないとわからないこと」について不安に思われるよりは、多少大変に見えてもいいかと思って、できるだけ社内プロセスや、それに向けた対処方法を伝えられたのは立ち上げ促進の観点で非常に良かったのでは?と思っています。
2年目の振り返り
次は2年目です。
ゴール設定
メンティーが非常に優秀なので、これはできておいた方がいいだろう的な目標は割とクリアしていたと記憶しています。来年、新卒の後輩が入ってきたときに、2年生風を吹かせることができるようにとはっぱをかけた日々も懐かしいです。ということで、2年目はそのロールの社員が達成すべき通常の目標をそのまま使用しています。
メンタリング スタンス
目標の達成状況の追跡と、課題がある場合のリカバリーはマネージャーと考えてもらい、実際にどう進めていくとよさそうか?を相談に乗る感じです。また、1年目の終わりからは、案件相談、技術相談が増えてきたと思いますので、それにできるだけ答えるという場にしています。
案件相談、技術相談に関しては、質問そのものに答えることに加えて「どのようにその案件をとらえておくとよくて、そのために何をすればいいのか」を説明しているケースが多いと思います。
で、うまくいってる?
どうでしょうね?案1か案2がありそうなのですがどっちがよいと思いますか?と調べて来てくれた案件相談であっても、どうしてお客さんはそれが知りたいの?みたいに返しているので、質問している方からすると「ちょっとそれはないのでは・・・」と思っているかもしれません。
しかしながら、技術的に正しい答えを返すことだけが目標ではなく、技術的に正しい答えも返せるけどお客さんと一緒に適切と思える選択をできるようになって欲しいと思って話すのですよね。
もし次があるならどうする?
ここまでの振り返りと、メンティー本人の棚卸を踏まえて、次の機会があればどうするかを考えてみたいと思います。メンターもメンティーも人間ですし、どこまで再現性があるかはわからないですけどね。
一人のプロであることが求められることを共有する
マイクロソフトでは、誰もがプロとしてふるまうことが求められていると私は理解しています。この点は、できるだけ早く伝えようと思いました。一人で頑張れと突き放したい訳ではありません。お金を払ってもらって課題を解決する以上、あなた自身はその課題に対してリーダーシップを発揮して取り組む必要があることを理解してほしいからです。自分で全部を解決できなくて大丈夫です。あなたがリーダーとなって、解決を手伝ってくれる人を探し、その人たちから必要な支援を得て課題を解決するんですということが早めに分かっていれば何かが変わるかもしれません。
正解ではなく最適化
お客様の課題は往々にして一つの正解があるわけではないと思います。(正解があるものもありますけどね!)
ソリューションというものは、基本的には何かのトレードオフが存在しています。お客さんが困っているのは、そのトレードオフを理解し、どこに落としどころを付ければ最適といえそうなのかが悩ましいという点です。
唯一絶対の回答を与えられる存在ではなく、信頼できるアドバイザーとしてお客様の状況を最適化し続ける存在になることを到達したいエンジニア像として共有できればよいのかなと思います。
さいごに
さて、いかがだったでしょうか。こういうことを考えている人間がいるんだなぁと思って読んでいただけたのなら幸いです。
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