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新卒アーキテクトの楽しさと苦悩

2024/02/06に公開
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はじめに

新卒でクラウド ソリューション アーキテクトとして働き始めてそろそろ 2 年が経とうとしている筆者が感じている楽しさと苦悩について、下記の目的で書きました。

  • 今後のキャリアを考えるためにこれまでを整理すること。
  • 今後のキャリアの想像がつかないので、これを読んで頂いた社会人の方々にアドバイスを頂くこと。 (アーキテクトの経験を活かせること、他に面白そうなこと、など)
  • 所属企業でクラウド ソリューション アーキテクト (CSA) のインターン募集が始まったので、職種を悩まれている学生の一助になること。

所属企業を代表する意見ではないですし、本記事に結論はありません。
「新卒アーキテクトで良かったか?」の答えは定年するまで分かりません。

筆者について

背景情報として、私自信について簡単に書きます。
同じ会社でも担当技術領域によって求められるスキルや業務は多少異なるので、「こういうことやってる人の意見か」と思って頂く目的です。

名前:石井 峻(いしい しゅん)
所属:日本マイクロソフト株式会社
職種:クラウド ソリューション アーキテクト
業務内容:Data & AI 関連ソリューションの設計・運用支援

※入社当時はカスタマーエンジニアというロール名でした。Google Cloud のカスタマーエンジニアは確かプリセールスなので、少し異なると思います。

略歴:
2016/4 青山学院大学の情報系学部に入学。Hello World! は C 言語で大学 1 年生。
2020頃 ヤフー、サイバー、SAP、AWS、MS などのインターンを経験。
2022/3 同大学の修士課程を修了。
2022/4 日本マイクロソフトに入社。
2022/6~2023/3 IPA の未踏事業も並行。

趣味のサッカー歴 (記事に関係ない):
高校は日大藤沢で全国高校サッカー選手権に出場して第 3 位。
一瞬入った選抜で三苫とチームメイトだったのが自慢。
大学は青山学院大学の体育会サッカー部に進むが大した結果は出ず、上田綺世と戦うもスーパーゴールを決められ敗北、学部卒業とともにサッカー人生は引退。
今もたまにサッカーやフットサルをしているので、誘ってください。

アーキテクトの仕事

私の場合はポストセールス側の仕事です。
既に弊社製品を使っていて、サポートをご契約いただいていて、さらにアドオンでプロアクティブ サービスという支援メニューをご契約いただいたお客様の案件に入ります。
内容は様々ありますが、私が最近行っている仕事のテーマをいくつか列挙します。

  • データ分析パイプラインのパフォチュー
  • 様々なシステムの RAG の設計
  • 自然言語で SQL 探索できるアプリの設計
  • データベースの PaaS 化
  • データベースのパフォチュー
  • O/R マッパーのパフォーマンス最適化に向けたトレーニング
  • BI レポート開発・運用・ガバナンス設計

私は新卒の中ではおそらく幅広めなタイプで、Data / Analytics / BI / AI のキーワードで開発現場の支援~組織・運用体制の整備まで様々やっています。

社内の評価基準は企業に応じて様々ですが、担当技術領域の製品利用 (消費) 量や、案件に入っている稼働時間などがあります。

楽しさ

まずは楽しいこと。
気づくまでに 1 年以上かかったこともあります。

多種多様な案件に入れる

人によりますが、年間の案件数を確認すると 40 件を超えていました。
お客様からの依頼があってアーキテクトがアサインされる仕組みですが、その期間は 1 日~年間と様々です。
そしてこのほとんどすべてが新しい内容です。
新しい技術に触れ、様々な業界、業務プロセス、考え方などを知ることができるのはとても面白いです。

単純作業や繰り返し作業がゼロ

実際に入った案件も本当に多種多様で、「こういうことならこうですね」と端的に済む仕事はなかったです。
全てが新しく正解が無く、その中で技術的な仕組みや組織の背景から最適なソリューションを考えて伝えるというのは、常に新しいことにチャレンジしていて飽きがきません。

一生学べる

生成 AI に代表されるように、マニュアルやテンプレートを作って利用しようとしたときには時代遅れだったりします。
そんな中で、アーキテクトは常に最新情報を持っていて、技術仕様以上のノウハウを提供することが求められます。
少し大げさな例ですが、OpenAI が新しいモデルを発表した次の日には「あれって現場で使えるんですかね?」という問いに価値を提供することが求められます。
技術や業界に関する基礎知識を吸収し、必要に応じて手を動かし、ソリューションを考えて伝えるのは大変ですが、学びが好きな人にとっては面白いです。

技術を語れる

自分の好きなものや得意なこと、試行錯誤・実践して新たに分かったことなどを語るのはとても楽しいです。
同僚もそんな人が多かったりするので、日頃の会話も楽しいです。
単にテクニカルな会話が楽しいこともあれば、新しいことや難しいことを分かりやすく伝えることに楽しみを感じることもあります。

感謝してもらえるときがある

ほとんどの案件では、何かお困りごとや悩みを抱えたお客様からの依頼から始まります。
フワッとした設計の相談かもしれませんし、パフォーマンス劣化やシステム停止で炎上している現場かもしれません。
共通するのはそこにリアルな課題があるということで、その課題を先頭に立って解決できるのは嬉しいです。
そして実際に課題を持っていたお客様から「ありがとうございます」「おかげさまで」と言われたときは達成感がすごいですし、自信にも繋がります。

お給料が高い

所属企業や人によるのは言うまでもありませんが、同世代のサラリーマンの中ではかなりの高給取りです。
他社からのオファーの相場も 1000~1500 万円くらいかな?といった感覚です。
新卒時でも、サインオンボーナス込みで 1000 万円を超えるオファーがあったりします。
お金はあればあるだけ嬉しいですが、少なくても生きていけます。
扶養家族がいないうちは「必要になったら転職すれば良いか」くらいの軽い気持ちも時には大事だと思います。
ただ、それなりの高給を維持して早期に転職するのはかなり難しいようです。

苦悩

正直 1 年目は苦悩だらけでした。
だからこそ成長できたこともあれば、考え方ややり方を変えて改善できることもあります。

ノウハウを売る仕事なのにノウハウが無い

アーキテクトは、これまでのシステム開発や運用のノウハウを売る仕事です。
それも、いわゆるエンタープライズと言われる大企業で開発されたり使われたりするシステムになります。
私も情報工学を学び、エンジニアインターンもそれなりに経験した方なのですが、入社した時点ではどうあがいても経験値ゼロでした。

しかし我々アーキテクトに求められるのはドキュメントを見て分かる技術仕様ではなく、開発・運用時のノウハウで、「知るわけねーよ!」と思いながら必死に勉強して、想像して、手を動かして、人の話を聞いて、考えていました。

マニュアル、やり方なんてものは無い

もちろん事務的なオペレーションまわりは決まり事やプロセスがありますが、ソリューションを考えて提供するうえではマニュアルは存在しません。
何度か前述した通り、各案件ごとのシナリオに沿って、製品仕様以上のノウハウを提供する必要があります。

そもそも業務やシステムがすべて同じであるわけがないですし、正解があるならばお金を払ってアーキテクトを呼ばないと思います。

(新卒にとっては) 単価が高すぎる

所属企業やお客様との契約形態により様々ですが、時間換算すると 1 時間数万円からになったりします。これは始めに断っておきますが、その道のノウハウを持った経験者、言うなれば新卒以外のアーキテクトが必要な時にだけプロジェクトに入ってくれることを考えると、雇用するより格安です。

しかし新卒にとっては悩みの種どころか木を超えて森です。コンサルのようにグレードがあるわけではなく、1 年目でも 20 年目の人と同じ時間単価で、同じ価値をお客様に提供する必要があります。
このプレッシャーは半端ないですし、19 年の差を補うための相当な努力が必要です。

そのプレッシャーを感じて死ぬほど頑張るのも良いですが、お客様はあくまでも企業に対してお金を払っています。
その案件にアサインされるのは 1 年目の人かもしれませんが、きっと似たような案件で成功や失敗をしてきたベテラン勢がいます。
チームや会社として価値を提供すれば良いですし、むしろその方が Win-Win です。

難しすぎる

IT 担当者やエンジニアが困っているのが案件のスタートです。
しかもその製品やシステムを何十年触っていて、「絶対俺より詳しいじゃん...」ということはよくあります。
それはもう仕方がないので、自分に提供できる価値を見極めることが大切です。

おそらくそれなりにベテランになったとしても、難しい課題だからこそアーキテクトがアサインされるわけで、難しいという感覚は残るのではないかと思います。

期待値が高すぎる

これは大手クラウドベンダーならではかもしれませんが、「XXX 会社のスーパーエンジニア」として案件に入ります。
そうでないパターンやそう思っていない方ももちろんいらっしゃると思いますが、実際にそう紹介されて入る案件も多々あり、スーパーエンジニアを演じながら悩み苦しみ必死に頑張ってスーパーエンジニアが誕生します。

その期待は時に力になりますし、自分を大きく成長させてくれますが、必要以上にプレッシャーを感じる必要はありません。
前述のように、チームや会社として価値を提供できれば何も問題ないです。

なぜ選んだか?

未踏事業にチャレンジしていたように、私はプロダクト開発が好きです。
ただ色々な企業でインターンをして気づいたのは、好きなものを好きなように作るのが好きなんだなーということです。
であるならそれは趣味にして、好きな技術や自分の知識経験を活かして目の前の人の課題を解決できたら、ちょっと幸せじゃないか?社会人ちょっと辛くても頑張れるんじゃないか?と思った次第です。

新卒アーキテクトで社会人を始めてみて想像以上にコードを書く機会が少なかったり、大変なことやギャップは色々ありました。
一方で、多種多様な案件、尽きない勉強、周囲からの期待など想像していなかったけど結構良いなーと思うことがあり、今を楽しめている気はします。

さいごに

記事に書けないようなことを聞きたい学生の皆様、TwitterLinkedIn までご連絡ください。

本記事を読んで、「新卒アーキテクトってこんなところ強みかも?」「こういうロールも楽しいかも?」と思った方、コメントやご連絡を頂ければ幸いです。

Discussion

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面白い記事でした!どのようにキャッチアップや勉強をしているのか気になります!