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AzureVM まわりの Backup / DR 選択肢の整理

2023/10/26に公開

はじめに

Azure Backup や Azure Site Recovery を用いて 仮想マシン を保護できますが、これらのサービスには似たような名前も多く、「この場合にはどのソリューションでバックアップを取ると良いの??」という相談を頂くことが多かったので、いったんのおススメを整理しておきました。
Azure Files と Azure NetApp Files の場合についても、同様に整理しておきました。

記載した以外にも選択肢はもちろんありますが、基本的にはそれぞれの保護対象リソースに対して最もオススメとなるもの1つに絞って記載をしています。

Backup の 情報整理

Azure VM の場合

基本的には Azure VM Backup での保護がオススメです。
ただし、マネージド ディスクの共有 をしている場合には、Azure VM Backup で丸ごとの保護ができません。
共有ディスクを除外してのVMバックアップが必要になり、別途、共有ディスクのみ Azure Disk Backup での保護が必要になります。

保護対象 主要 Backup 手法 バックアップ頻度 RPO バックアップ所要時間 保存先
Windows OS Azure VM Backup Azure VM 拡張機能を使用したバックアップポリシーの場合、最短4 時間ごと 4 時間 増分データが 200GB 以下である場合、24時間 以内 バックアップは 同一リージョン内 Recovery Services コンテナー(RSV) へ保存。RSV自体をGRS構成とすることが可能。
Linux OS Azure VM Backup Azure VM 拡張機能を使用したバックアップポリシーの場合、最短4 時間ごと 4 時間 増分データが 200GB 以下である場合、24時間 以内 バックアップは 同一リージョン内 Recovery Services コンテナー(RSV) へ保存。RSV自体をGRS構成とすることが可能。
マネージド ディスクの共有」 を利用するVM Azure Disk Backup バックアップポリシーに従って、最短1 時間ごと 1 時間 公開情報はないが、非常に高速(検証 参考値: 1 TB を数秒) 同一リージョン内 の指定リソースグループ に 増分スナップショットリソースを作成する形で保存。

共有ディスクの保護をスクリプト化した例が、以下で公開されています。

https://zenn.dev/microsoft/articles/backup-shared-disk

Azure Files / NetApp Files の場合

保護対象 主要 Backup 手法 バックアップ頻度 RPO バックアップ所要時間 保存先
Standard SMB ファイル共有(LRS/ZRS/GRS/GZRS) Azure Files Backup Azure Backup を使用して、Enhanced バックアップポリシーに従って、4 時間ごと 4 時間 公開情報はないが、非常に高速(検証 参考値:100万ファイル、1 TB で、1秒未満) 同一ストレージアカウント内にスナップショットの形式で保存。
Premium SMB ファイル共有 (LRS/ZRS) Azure Files Backup Azure Backup を使用して、Enhanced バックアップポリシーに従って、4 時間ごと 4 時間 公開情報はないが、非常に高速(検証 参考値:100万ファイル、1 TB で、1秒未満) 同一ストレージアカウント内にスナップショットの形式で保存。
Premium NFS ファイル共有 (LRS/ZRS) Linux VM マウントした上で rsync 等で別NFSファイル共有へのコピ― Linux VM で rsync を実行する頻度による N/A N/A 別のストレージアカウント内にファイルの形式で保存。
NetApp Files SMB / NFS ボリューム Azure NetApp Files snapshots スナップショット ポリシー に従って、最短1時間/毎日/毎週/毎月から選択 N/A ボリュームのサイズとボリュームでのアクティビティのレベルに関係なく、スナップショットの作成は数秒 同一 Azure NetApp 内に、スナップショットの形式で保存。

なお、Azure Files の Premium NFS ファイル共有のスナップショット機能がパブリックプレビュー中です。
また、Azure Netapp Files のバックアップ機能もパブリックプレビュー中です。

保護対象 主要 Backup 手法 バックアップ頻度 RPO バックアップ所要時間 保存先
Premium NFS ファイル共有 (LRS/ZRS) NFS Snapshots (Public Preview) Azure PowerShell または Azure CLI を使用してスナップショットを作成する頻度による N/A N/A 同一ストレージアカウント内にスナップショットの形式で保存。
NetApp Files SMB / NFS ボリューム Azure NetApp Files バックアップ バックアップポリシーに従って、最短毎日/毎週/毎月から選択 N/A ポリシー ベース: バックアップ対象のボリュームのサイズに応じて、バックグラウンドで数時間にわたってバックアップを実行 同一リージョン内のストレージアカウントにスナップショットの形式で保存。

Disaster Recovery の情報整理

Azure VM の場合

保護対象 主要 DR 手法 レプリケーション頻度 RPO 保存先
Windows OS Azure Site Recovery (Azure-to-Azure) 随時 (ただし、VM あたり 最大 100 MB/秒のチャーン (データ変更率) まで) クラッシュ整合性 5 分、アプリケーション整合性 15 分 異なるリージョンの Recovery Services コンテナー(RSV) へ保存。RSV は GRS構成が必須。
Linux OS Azure Site Recovery (Azure-to-Azure) 随時 (ただし、VM あたり 最大 100 MB/秒のチャーン (データ変更率) まで) クラッシュ整合性 5 分 異なるリージョンの Recovery Services コンテナー(RSV) へ保存。RSV は GRS構成が必須。
マネージド ディスクの共有」 を利用するVM マネージドディスクの共有を利用する クラスタ上 (OS上) でのレプリケーション クラスタ 上 での、レプリケーションの仕組み次第 N/A 異なるリージョンの クラスター及びクラスターが利用するマネージドディスクの共有

なお、マネージド ディスクの共有 について、以下がプライベートプレビュー中です。

保護対象 主要 DR 手法 レプリケーション頻度 RPO 保存先
Windows Server 2016 以降 で「マネージド ディスクの共有」 を利用する WSFC 最大 4 ノード Azure Site Recovery - Shared Disks DR - 2023/8/3 Private Preview 随時 N/A 異なるリージョンの Recovery Services コンテナー(RSV) へ保存。RSV は GRS構成が必須。

Azure Files / NetApp Files の場合

Azure Files は基本的には、ストレージアカウントの冗長性として GRS を選択することで、 DR 対策をしていく方針になるかと思います。
ただし、大きなファイル共有が必要であったり、NFS を利用するために Premium ファイル共有が必要であったり等の理由により、GRS を選択できない場合、AzCopy を利用する等の作り込みが必要になってきます。
そういった場合には、Azure Files ではなく Azure NetApp Files を利用すると、大容量 や NFS といった要件に対応しつつ、ANF の CRR 機能を活用しての DR が実現できます。

  • 基本
保護対象 主要 DR 手法 レプリケーション頻度 RPO 保存先
Standard SMB ファイル共有(GRS) GRS 随時 15 分 同一ストレージアカウント内のデータを別リージョンデータセンタでも保持
NetApp Files SMB / NFS ボリューム Azure NetApp Files cross-region-replication (CRR) レプリケーション スケジュール(10分ごと/毎時間/毎日から) 設定した頻度 レプリケーション スケジュールが 10 分の場合、 RPO は 20 分未満(SLAはない) 異なるリージョンの Azure NetApp Files へ保存。レプリケーション先は通常 Read Only の形。
  • 大きなファイル共有 や Premium ファイル共有 の場合
保護対象 主要 DR 手法 レプリケーション頻度 RPO 保存先
Standard SMB ファイル共有(LRS/ZRS) - 大きなファイル共有 AzCopy で 別ストレージアカウントへ、ストレージアカウント間でコピー AzCopy を実行する頻度による N/A 別のストレージアカウント内にファイルの形式で保存。
Premium SMB ファイル共有(LRS/ZRS) AzCopy で 別ストレージアカウントへ、ストレージアカウント間でコピー AzCopy を実行する頻度による N/A 別のストレージアカウント内にファイルの形式で保存。
Premium NFS ファイル共有(LRS/ZRS) Linux VM マウントした上で rsync 等で別NFSファイル共有へのコピー Linux VM で rsync を実行する頻度による N/A 別のストレージアカウント内にファイルの形式で保存。

なお、大きなファイル共有 の GRS がパブリックプレビュー中です。

保護対象 主要 DR 手法 レプリケーション頻度 RPO 保存先
Standard SMB ファイル共有(GRS/GZRS) - 大きなファイル共有 GRS パブリックプレビュー - 2023/05/24 随時 15 分 同一ストレージアカウント内のデータを別リージョンデータセンタでも保持

https://zenn.dev/microsoft/articles/largefileshare-grs

別途 azcopy などで作り込んだ場合について、以前検証した結果はこちら
https://zenn.dev/microsoft/articles/azcopy-testspeed

  • Azure NetApp Files
保護対象 主要 DR 手法 レプリケーション頻度 RPO 保存先
NetApp Files SMB / NFS ボリューム Azure NetApp Files cross-region-replication (CRR) レプリケーション スケジュール(10分ごと/毎時間/毎日から) 設定した頻度 レプリケーション スケジュールが 10 分の場合、 RPO は 20 分未満(SLAはない) 異なるリージョンの Azure NetApp Files へ保存。レプリケーション先は通常 Read Only の形。

参考URL

https://jpabrs-scem.github.io/blog/AzureBackupGeneral/DR_ASR_or_VMBackup/

https://jpabrs-scem.github.io/blog/AzureBackupGeneral/RSV_BV/

https://jpabrs-scem.github.io/blog/AzureBackupGeneral/Backup_RecoveryTIme/

https://azure.microsoft.com/ja-jp/blog/back-up-linux-virtual-machines-running-mission-critical-workloads/

その他

Active Directory の場合や、SQL Server の場合など個別の場合も後で追記したい。

https://jpwinsup.github.io/blog/2023/04/24/ActiveDirectory/PromotionAndDemotion/backup-and-restore/

https://jpabrs-scem.github.io/blog/AzureVMBackup/NVA_backup/

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