AzureVM まわりの Backup / DR 選択肢の整理
はじめに
Azure Backup や Azure Site Recovery を用いて 仮想マシン を保護できますが、これらのサービスには似たような名前も多く、「この場合にはどのソリューションでバックアップを取ると良いの??」という相談を頂くことが多かったので、いったんのおススメを整理しておきました。
Azure Files と Azure NetApp Files の場合についても、同様に整理しておきました。
記載した以外にも選択肢はもちろんありますが、基本的にはそれぞれの保護対象リソースに対して最もオススメとなるもの1つに絞って記載をしています。
Backup の 情報整理
Azure VM の場合
基本的には Azure VM Backup での保護がオススメです。
ただし、マネージド ディスクの共有 をしている場合には、Azure VM Backup で丸ごとの保護ができません。
共有ディスクを除外してのVMバックアップが必要になり、別途、共有ディスクのみ Azure Disk Backup での保護が必要になります。
保護対象 | 主要 Backup 手法 | バックアップ頻度 | RPO | バックアップ所要時間 | 保存先 |
---|---|---|---|---|---|
Windows OS | Azure VM Backup | Azure VM 拡張機能を使用したバックアップポリシーの場合、最短4 時間ごと | 4 時間 | 増分データが 200GB 以下である場合、24時間 以内 | バックアップは 同一リージョン内 Recovery Services コンテナー(RSV) へ保存。RSV自体をGRS構成とすることが可能。 |
Linux OS | Azure VM Backup | Azure VM 拡張機能を使用したバックアップポリシーの場合、最短4 時間ごと | 4 時間 | 増分データが 200GB 以下である場合、24時間 以内 | バックアップは 同一リージョン内 Recovery Services コンテナー(RSV) へ保存。RSV自体をGRS構成とすることが可能。 |
「マネージド ディスクの共有」 を利用するVM | Azure Disk Backup | バックアップポリシーに従って、最短1 時間ごと | 1 時間 | 公開情報はないが、非常に高速(検証 参考値: 1 TB を数秒) | 同一リージョン内 の指定リソースグループ に 増分スナップショットリソースを作成する形で保存。 |
共有ディスクの保護をスクリプト化した例が、以下で公開されています。
Azure Files / NetApp Files の場合
保護対象 | 主要 Backup 手法 | バックアップ頻度 | RPO | バックアップ所要時間 | 保存先 |
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Standard SMB ファイル共有(LRS/ZRS/GRS/GZRS) | Azure Files Backup | Azure Backup を使用して、Enhanced バックアップポリシーに従って、4 時間ごと | 4 時間 | 公開情報はないが、非常に高速(検証 参考値:100万ファイル、1 TB で、1秒未満) | 同一ストレージアカウント内にスナップショットの形式で保存。 |
Premium SMB ファイル共有 (LRS/ZRS) | Azure Files Backup | Azure Backup を使用して、Enhanced バックアップポリシーに従って、4 時間ごと | 4 時間 | 公開情報はないが、非常に高速(検証 参考値:100万ファイル、1 TB で、1秒未満) | 同一ストレージアカウント内にスナップショットの形式で保存。 |
Premium NFS ファイル共有 (LRS/ZRS) | Linux VM マウントした上で rsync 等で別NFSファイル共有へのコピ― | Linux VM で rsync を実行する頻度による | N/A | N/A | 別のストレージアカウント内にファイルの形式で保存。 |
NetApp Files SMB / NFS ボリューム | Azure NetApp Files snapshots | スナップショット ポリシー に従って、最短1時間/毎日/毎週/毎月から選択 | N/A | ボリュームのサイズとボリュームでのアクティビティのレベルに関係なく、スナップショットの作成は数秒 | 同一 Azure NetApp 内に、スナップショットの形式で保存。 |
なお、Azure Files の Premium NFS ファイル共有のスナップショット機能がパブリックプレビュー中です。
また、Azure Netapp Files のバックアップ機能もパブリックプレビュー中です。
保護対象 | 主要 Backup 手法 | バックアップ頻度 | RPO | バックアップ所要時間 | 保存先 |
---|---|---|---|---|---|
Premium NFS ファイル共有 (LRS/ZRS) | NFS Snapshots (Public Preview) | Azure PowerShell または Azure CLI を使用してスナップショットを作成する頻度による | N/A | N/A | 同一ストレージアカウント内にスナップショットの形式で保存。 |
NetApp Files SMB / NFS ボリューム | Azure NetApp Files バックアップ | バックアップポリシーに従って、最短毎日/毎週/毎月から選択 | N/A | ポリシー ベース: バックアップ対象のボリュームのサイズに応じて、バックグラウンドで数時間にわたってバックアップを実行 | 同一リージョン内のストレージアカウントにスナップショットの形式で保存。 |
Disaster Recovery の情報整理
Azure VM の場合
保護対象 | 主要 DR 手法 | レプリケーション頻度 | RPO | 保存先 |
---|---|---|---|---|
Windows OS | Azure Site Recovery (Azure-to-Azure) | 随時 (ただし、VM あたり 最大 100 MB/秒のチャーン (データ変更率) まで) | クラッシュ整合性 5 分、アプリケーション整合性 15 分 | 異なるリージョンの Recovery Services コンテナー(RSV) へ保存。RSV は GRS構成が必須。 |
Linux OS | Azure Site Recovery (Azure-to-Azure) | 随時 (ただし、VM あたり 最大 100 MB/秒のチャーン (データ変更率) まで) | クラッシュ整合性 5 分 | 異なるリージョンの Recovery Services コンテナー(RSV) へ保存。RSV は GRS構成が必須。 |
「マネージド ディスクの共有」 を利用するVM | マネージドディスクの共有を利用する クラスタ上 (OS上) でのレプリケーション | クラスタ 上 での、レプリケーションの仕組み次第 | N/A | 異なるリージョンの クラスター及びクラスターが利用するマネージドディスクの共有 |
なお、マネージド ディスクの共有 について、以下がプライベートプレビュー中です。
保護対象 | 主要 DR 手法 | レプリケーション頻度 | RPO | 保存先 |
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Windows Server 2016 以降 で「マネージド ディスクの共有」 を利用する WSFC 最大 4 ノード | Azure Site Recovery - Shared Disks DR - 2023/8/3 Private Preview | 随時 | N/A | 異なるリージョンの Recovery Services コンテナー(RSV) へ保存。RSV は GRS構成が必須。 |
Azure Files / NetApp Files の場合
Azure Files は基本的には、ストレージアカウントの冗長性として GRS を選択することで、 DR 対策をしていく方針になるかと思います。
ただし、大きなファイル共有が必要であったり、NFS を利用するために Premium ファイル共有が必要であったり等の理由により、GRS を選択できない場合、AzCopy を利用する等の作り込みが必要になってきます。
そういった場合には、Azure Files ではなく Azure NetApp Files を利用すると、大容量 や NFS といった要件に対応しつつ、ANF の CRR 機能を活用しての DR が実現できます。
- 基本
保護対象 | 主要 DR 手法 | レプリケーション頻度 | RPO | 保存先 |
---|---|---|---|---|
Standard SMB ファイル共有(GRS) | GRS | 随時 | 15 分 | 同一ストレージアカウント内のデータを別リージョンデータセンタでも保持 |
NetApp Files SMB / NFS ボリューム | Azure NetApp Files cross-region-replication (CRR) | レプリケーション スケジュール(10分ごと/毎時間/毎日から) 設定した頻度 | レプリケーション スケジュールが 10 分の場合、 RPO は 20 分未満(SLAはない) | 異なるリージョンの Azure NetApp Files へ保存。レプリケーション先は通常 Read Only の形。 |
- 大きなファイル共有 や Premium ファイル共有 の場合
保護対象 | 主要 DR 手法 | レプリケーション頻度 | RPO | 保存先 |
---|---|---|---|---|
Standard SMB ファイル共有(LRS/ZRS) - 大きなファイル共有 | AzCopy で 別ストレージアカウントへ、ストレージアカウント間でコピー | AzCopy を実行する頻度による | N/A | 別のストレージアカウント内にファイルの形式で保存。 |
Premium SMB ファイル共有(LRS/ZRS) | AzCopy で 別ストレージアカウントへ、ストレージアカウント間でコピー | AzCopy を実行する頻度による | N/A | 別のストレージアカウント内にファイルの形式で保存。 |
Premium NFS ファイル共有(LRS/ZRS) | Linux VM マウントした上で rsync 等で別NFSファイル共有へのコピー | Linux VM で rsync を実行する頻度による | N/A | 別のストレージアカウント内にファイルの形式で保存。 |
なお、大きなファイル共有 の GRS がパブリックプレビュー中です。
保護対象 | 主要 DR 手法 | レプリケーション頻度 | RPO | 保存先 |
---|---|---|---|---|
Standard SMB ファイル共有(GRS/GZRS) - 大きなファイル共有 | GRS パブリックプレビュー - 2023/05/24 | 随時 | 15 分 | 同一ストレージアカウント内のデータを別リージョンデータセンタでも保持 |
別途 azcopy などで作り込んだ場合について、以前検証した結果はこちら
- Azure NetApp Files
保護対象 | 主要 DR 手法 | レプリケーション頻度 | RPO | 保存先 |
---|---|---|---|---|
NetApp Files SMB / NFS ボリューム | Azure NetApp Files cross-region-replication (CRR) | レプリケーション スケジュール(10分ごと/毎時間/毎日から) 設定した頻度 | レプリケーション スケジュールが 10 分の場合、 RPO は 20 分未満(SLAはない) | 異なるリージョンの Azure NetApp Files へ保存。レプリケーション先は通常 Read Only の形。 |
参考URL
その他
Active Directory の場合や、SQL Server の場合など個別の場合も後で追記したい。
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