【Gemini Canvas】小 1 娘の漢検対策に「恐怖の漢字鬼ごっこ」を爆速開発したら効果てきめんだった話
株式会社 MBK Digital 執行役員 CTO の岩尾です。
本記事は Google Developer Experts Advent Calendar 2025 の 3 日目の記事としてお届けします。
小 1 の漢検、親の本音は「こいつ大丈夫か?」
うちの小学校 1 年生の娘は、来年 2 月に 漢字検定 10 級 を受ける予定です。
日頃の学習状況を横で見ていると、正直なところ 9 割の親御さんはこう思うのではないでしょうか。
「……こいつ、大丈夫か?」と。
我が家も例にもれず、なかなかカオスです。
- 問題集は買ったけど、やったりやらなかったり(基本、親が言わないとやらない)。
- 自主的に復習をすることはほぼゼロ。
- 一度覚えたはずの漢字も、数日経つときれいさっぱり忘れている。
紙の問題集だけで定着させるのは、現代っ子にはなかなかハードです。
昨年は英検で AI 活用を試した
実は昨年、長女の英検の勉強をテーマにこんな記事を書きました。
この時は「生成 AI に問題作成や解説を手伝ってもらう」というアプローチでした。親がつきっきりで教える代わりに、AI を壁打ち相手や家庭教師として使う。このスタイルがしっくりきたので、今年の漢検も同じ方向で攻めることにしました。
今年は Gemini Canvas がある
今年は Gemini が劇的に進化しており、特に Canvas 機能が実用段階に入っています。
そこで今回は、「子供の漢字検定 10 級対策用に、Gemini Canvas だけで漢字ゲームをつくる」 というテーマでやってみました。
作ったゲーム:「恐怖の漢字鬼ごっこ」
まずは完成品をご覧ください。
タイトルは、子どもと相談して決めました。
『恐怖の漢字鬼ごっこ』
▼ 恐怖の漢字鬼ごっこをプレイする(デモ URL)
ゲームの仕様
- 舞台:夜の森。プレイヤー(🏃)はひたすら逃走します。
- ルール:背後から鬼(👹)が迫ってきます。画面下の「漢字の読み」4 択クイズに正解すると距離が離れ、間違えると転倒して距離が縮まります。
- 演出:鬼が近づくと画面がグリッチし、心拍音がドクドク鳴り響くホラー仕様。
- クリア条件:10 問正解で生還(クリア)。捕まるとゲームオーバー。
これを Gemini Canvas との対話だけで作りました。
開発プロセス:小 1 を巻き込んだアジャイル開発
Gemini Canvas のすごいところは、「コードを書く」というより「仕様を話す」感覚でアプリが作れる点です。
- Canvas を開く
- 「小 1 漢検 10 級の読み問題を出すランゲームを作って」と指示
(対象の漢字はこちらから抽出) - プレビューを見ながら「もっと怖くして」「文字を大きくして」と調整
ベースは数分で完成しましたが、ここからが本番です。小 1 の娘(ユーザー) にテストプレイをさせたところ、初期版にはいくつか課題がありました。
失敗談 1:難易度調整のミス
娘が大喜びでプレイし始めた直後です。
娘:「パパ、これむずかしすぎる!すぐ死ぬ!」
大人が「ゲームとして面白いバランス」で作ると、小 1 の処理速度では即死ゲーになっていました。
そこで、Canvas を開いたまま娘の横で修正します。
私(Gemini に入力):「鬼の基本スピードを今の 0.6 倍 に落として。あと、正解した時の加速ボーナスを増やして」
これで「ギリギリ逃げ切れる」バランスに落ち着きました。
失敗談 2:例文に未習漢字が混入
次に起きたのが出題内容の問題です。
娘:「この漢字、学校でまだ習ってないよ」
確認してみると、出題対象の漢字自体は 10 級(小 1)範囲なのですが、例文の方に小 2 以降で習う漢字が混ざっていました。(例:「強い力」のようなケース)
これでは読めません。
私(Gemini に入力):「問題リストの JSON を修正して。例文に使われている漢字も、すべて小学 1 年生で習うものだけに限定して作り直せる?」
このように、「親子の会話」をそのまま「プロンプト」として投げる だけで、即座にアプリが改善されていく体験は非常に快適でした。
運用ルール:「紙ドリル → ゲーム」のセット運転
ゲームを作って終わりではありません。学習効果を高めるために、以下の運用ルールを設けました。
-
まずは紙のドリル
学校や塾の宿題、市販のドリルで「書き取り」をやります。ここはアナログです。 -
ご褒美としてのゲーム
その日の書き取りが終わったら、「今日の分の漢字ゲームをやっていいよ」と解禁します。 -
間違えたら紙に戻る
ゲームで間違えた漢字は、もう一度紙のノートに書かせます。
狙い
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「書く(インプット)」と「読む(アウトプット)」の分離
ゲームでは「書き」は諦め、「読み」と「意味の瞬発力」に特化させました。 -
モチベーション管理
「ゲームやりたいからドリルやる」という動機づけになります。
実際の効果:紙よりも圧倒的に集中する
効果は予想以上でした。
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集中力が続く
紙のドリルだと 5 分で「疲れたー」と言い出す娘が、このゲームだと普通に 20 分くらい没頭しています。「悔しい!もう一回!」とリトライを繰り返すうちに、自然と漢字の読みを反復していました。 -
長女(小 4)への波及
横で見ていた長女が「いいなー、私のも作ってよ(漢検 7 級)」と言ってきました。
Canvas なら学習データの JSON を差し替えるだけで済むので、長女版もその場ですぐに作ってあげることができました。
Tips:飽きたら捨てればいい
この開発スタイルで一番重要なのは、「飽きたら別のゲームを作れば良いと割り切る」 ことです。
以前なら、子供のためにアプリを作ると「せっかく作ったんだから使い倒してほしい」という親のエゴが出がちでした。しかし、Gemini Canvas なら新しいゲームを作るコストは極めて低いです。
- 鬼ごっこに飽きたら、次は「シューティング」にする。
- 漢字に飽きたら、「計算ドリル」にする。
「1 個の完璧な教材」を目指すより、「たくさんのまあまあ楽しい教材」を使い捨てる。
このスタンスの方が、親も子も気楽に続けられます。
まとめ
小 1 の漢検勉強、親の本音はだいたい「こいつ大丈夫か?」ですが、生成 AI を活用して子どもが楽しく学べる環境を作ることで、その不安が解消されました。
- 紙のドリルだけだと定着が遅い → ゲームで反復回数を増やす。
- 市販のアプリだと痒いところに手が届かない → 我が子専用にチューニングする。
もし同じように、お子さんの学習サポートに悩んでいるお父さん・お母さんがいたら、「Gemini Canvas で我が子専用ゲームを作る」 という選択肢、けっこう楽しいのでおすすめです。
明日の Google Developer Experts Advent Calendar もお楽しみに!
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