遊技機2Dデザイナー歴17年のノウハウをブログに書いてみた(2回目
お世話になっております。
株式会社マトリックス ゲーム事業部 デザイン一課 の遠藤です。
遊技機開発にて2Dデザインをメイン業務として担当しております。
遊技機2Dデザインに興味を持って欲しいという想いからこの仕事の魅力とノウハウをブログにまとめてます!
前回は遊技機2Dデザイナーってどんな仕事?をテーマに書いてみましたが
今回は遊技機デザインをする上での注意点や、技術的な面をご紹介していきます。
ちょっと長いですが最後まで見て貰えると嬉しいです。
遊技機における色の意味
遊技機における色は「当たり」「はずれ」の期待度にかかわる重要な意味を持ちます。
下の図のような順で「色」に【期待度】があります。※機種によって多少違ったりします。
パチンコでしたら保留の色で大当たりの期待度を示唆したり
パチスロであればアイコンの色で小役をナビしたりと
「色」で遊技機で俗に言う「熱さ」を示すものになります。
演出の意図する期待感を理解した上でデザイン、配色する必要があります。
特に「金」や「虹」といった強い色は、使いどころを理解した上で配色しないとなりません
「虹」は大当りと言うのが通説なので使って良い場面は限られるため注意が必要です!
パチスロにおける色の意味
パチスロには「色ナビ」と呼ばれる小役の成立を示唆する色を使った演出があります。
図柄を直接表示はせずに、シンボルやエフェクトの色で対応する小役を示唆する事が多くあります。
【色ナビ、Wナビ】
色ナビの一例として、キャラクターの衣装が小役に対応した色になるものがあります。
Wナビと言われる色違いのナビが同時に出現、どちらが揃うか? といった演出もあります。
データを作る注意点として演出内で色が変化したり、複数の期待度バリエーションを作成しますので
素材は基本的に色変えが容易な状態で作成します。(グラデーションマップ、レイヤーカンプで管理)
配色の注意点としまして原色に近い色を選ぶのとハイライトに白を避けた方が良いかと思います。
また、色変化の他「激アツ柄」を素材に入れるケースが存在し、その柄は機種によって異なります。
期待度を示唆する色
パチンコ、パチスロ共通ですが連続演出のタイトル色で大当りの期待度を表します。
色ナビと作りは同じなのですが、演出の使いどころが異なると違った意味になります。
白<赤<金(柄)と段階がありパターンを量産しやすいレイヤー構造を意識しておくと良いです。
近い色の注意点
【赤について】
赤に関しては、彩度や明度よりも「いかに赤く見えるか」を優先させると良いです。
必要に応じて明度をおとしたり、あえて中間色の黄色を使わないなど臨機応変に対応します。
【A】
黄色を使いすぎて橙色に寄ってしまい、赤く見えなくなるので「チャンスアップの赤」「赤ナビ」としては避けた方が良いかと思います。
ただ、チャンス系演出の少し熱さを表現したい配色としてはGOODです!
【B】
OK頂ける事が多いですがフチの色や背景の色、または使う場面(色ナビ等)によっては
オレンジを削除する必要があるかもしれません
【C】
「赤」として問題無いと思います! が、メーカーや使うシーンによっては「白っぽい色もNG」
「完全に赤一色」などの場合もあるので注意が必要です。
その場合はベースをR:255 G:0 B:0で明度でコントラスト差を付けると良いです。
【黄色と金について】
黄色と金は混同されやすいので注意が必要です!
特にグラデーションは配色次第でどちらとも捉えられますし、黄色にハイライトを入れて
光らせると金に見えてしまいます。特に黄色の発光エフェクトはご注意ください!!
【①】
黄色の例として作成しています。が、金に見えますと指摘されるかもしれないギリギリです。
わかりやすいようにグラデーションの明暗を他のサンプルと同じ位置に入れていますが
さらに黄色に寄せるのであれば下部の反射部(少し明るくなっている箇所)を取ったり
白いハイライトを消すこともあります。
コントラストを持たせるときは暗くはせずオレンジ系の色を加えて加減します。
【②】
金色か黄色か判断しにくい例として作成しています。
同じ素材で色バリエーションが存在する場合は確実に「どちらかわからないのでNG」が出ます。
この配色でOKが出る場合は、フチの色味などでフォローがされていてちゃんと金か黄色の
どちらかに見える時や、極端に小さな素材のためにグラデーションが潰れないようにしている場合などと考えられます。
【③】
金色の例として作成しています。
もっと明るい色味にする場合も多いですが、このように「白や黄色~オレンジ~暗い茶色」など
色味や明暗の幅が広く、コントラストが強いものだと遊技機の金色として視認されやすいと思います。
グラデーションの中に反射光を多用したり、フチに別の金グラデーションを使う
エフェクトを乗せるなどするとさらにそれっぽく見えると思います。
色の視認性や明度バランスについての例
文字と背景が同系色なロゴを作成する時の注意点
【良くない例】
メリハリがなく、フチは似たような明度で細かく配置されて いるため、肝心の文字の視認性が悪い。
また、背景の明度や色味と文字の明度や色味がほとんど同じため、 見づらくなってしまう
【改善例】
文字本体の視認性を上げるために、明暗のコントラストをハッキリさせる
(黒、暗い色を効果的に使う)
明→暗→明→暗とアウトラインを重ねると視認性を担保しやすくなります。
パッと見た時に「黄色」だとわかる配色にする。
オレンジや赤を使う場合はあくまでも一部分のみに入れる。
差し色を入れるとよりメインカラーを際立たせることも出来ます。
色がくすまないように、黒い影の使い方に気を付ける(黒の乗算は避ける)
とにかく彩度を下げないよう、色がくすまないように気を付ける
遊技機デザインは彩度の高いデザインを求められることが多いです。
グラデーションの注意点
【グラデーションの配色について】
【良くない例】
青と白の間に中間色が無いため、青の彩度が白で濁って汚く見えてしまう
色数が少なく単調になってしまいチープな印象を与えてしまいます。
【改善例】
青と白の間に、彩度の高い水色(やや緑の色相に寄せているもの)を入れる事で、青の色が濁らない
色に幅と階層がでて情報量が増しクオリティーアップに繋がります。
【細かすぎるグラデーションに注意】
【良くない例】
グラデーション幅が狭く、細かく入れすぎると模様のように見えてしまい視認性が下がり
かえってクオリティーを下げてしまいかねません。
引き目に見て視認性が悪くないか確認しながら配色されると良いです。
【改善例】
グラデーションの幅が「実際の金属光沢の反射」に近くなったため見やすくなり
金っぽさが「良くない例」より出ているかと思います。
更に視認性を上げるためにアウトラインに別の金を入れるなど工夫しても良いです。
【考え方】
デザインとしてグラデーションを入れることもありますが、「この面にはどこから光があたっているのか?」
を意識してグラデーションの配色を決めるとよりクオリティーアップを図れると思います。
金属光沢であればなおの事で、遊技機素材は金属光沢を強調してデザインするのがコツです。
同時に、多少嘘をついて本来であればそこは光らないよ!という箇所にハイライトを入れたりして
見栄えを重視してデザインするのもアリです!
立体感、視認性、見栄えのバランスをとって配色を決めるようにしています。
まとめ
遊技機2Dデザインブログの第2回は、遊技機においては特に重要な「色」に関してまとめてみました。
パチンコ、パチスロを打ったことのない人からすると新しい発見になったりしてますかね?
自分は普段から打つ人間なので、打ち手の目線で配色やデザインを考えて発案するようにしています!
打っている時って常に当たって欲しいと懇願しているので、何気ない「赤」とかに期待しちゃうんです
自分に都合のいいように捉えてしまうんですよ(笑 一喜一憂して打つから楽しいんですけどね
デザインする上で色の意味を理解していれば、企画の意図とズレた配色をせずにスムーズに進行
出来ると思いますので制作に興味がある方は意識してみてください。
次回予告
第3回では実際に制作したデータを元に意識した点などを交えながら、より実践的な解説が
出来ればと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
次回もどうぞよろしくお願いします!
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