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『多様性の科学』を読んで考える、理想のエンジニアリングチーム

2023/12/05に公開

『多様性の科学』 の読書の記録とあわせて、本を読んで考えた、理想のエンジニアリングチームについて書いてみます。
ここでの理想のエンジニアリングチームとは、エンジニアリングによってビジネスの利益を最大化するチーム、とします。

書くこと、書かないこと

多様性と一口に言っても様々な多様性がありますが、この本において主に取り上げら得れているのは認知的多様性です。
一方で、他の種類の多様性(例えば、人種や性別など)や、具体的なチームビルディングの手法については、この記事では触れていません。

認知的多様性とは何か、なぜ重要か

認知的多様性とは、人が持つ視点や考え方の違いを指します。

本書では 4 x 100mリレーのような単純な課題であれば、ウサイン・ボルトが4人いる画一的なチームが最速になりますが、複雑な課題に対処するときは、単純に優れた能力を持つ人を集めるよりも、認知的多様性を持つようにチームメンバーを構成することがより正しい結論を導きやすいと主張しています。

この主張の背景には以下のような実験結果があります。

A. 多様な人材で構成されたグループ
B. 画一的な人材で構成されたグループ
で課題を解く実験。

Aのほうが議論を進めるのが難しく、結論への自信も少ない。
Bは逆に議論は容易で、結論への自信も大きい。

しかしこのとき、
Bの正答率が54%だったのに対し、Aの正答率は75%だった。

議論を進めるのが難しいのは容易に想像できますが、結論への自信にも影響すること、そして正しい結論を導きやすいことは興味深い結果です。

本書を読み始めて早々にこの実験の記述があり、「おおっ」と思ったので思わず内容をXにポストしました。
あわよくばフォローしてほしいのでXの投稿も貼っておきます。
もちろんフォロバします。

https://x.com/marty_ojiya/status/1730751818689556632?s=20

認知的多様性から見たチームメンバー構成の種類

前述のような認知的多様性という側面で見たチーム構成についての表現として、本の中には3種類の集団が出てきます。
それは無知な集団、賢い集団、多様性はあるが無知な集団です。

無知な集団

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|            |
| ⚪︎⚪︎       |
|⚪︎⚪︎⚪︎      |
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上の図は、本にも登場した図を、記号で書き直したものです。お察しの通りわかりにくくなっています。雰囲気が伝われば十分です。
外枠が専門的な知識の枠組みを、⚪︎はチームメンバーを表しています。
この図では、チームメンバーが同じ範囲に集まっていることから、彼らが同じ視点や考え方を持っていることを意味します。

「無知な集団」とは知識はありますが、物事の見方や考え方が同じような人材で構成された集団です。このタイプのチームは効率的に動くことができますが、新しい視点やアイデアが生まれにくい傾向があります。

賢い集団

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|   ⚪︎    ⚪︎ |
|      ⚪︎    |
|  ⚪︎    ⚪︎  |
-------------

この図では、チームメンバーが点在していることから、彼らが異なる視点や考え方を持っていることを意味します。

「賢い集団」とは知識があり、物事の見方や考え方が異なる人材で構成された集団です。このタイプのチームは議論が活発になり、多角的な視点から問題を考えることができます。

多様性はあるが無知な集団

  ⚪︎    ⚪︎
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|           |
|      ⚪︎   |
|           |
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  ⚪︎    ⚪

この図でも、チームメンバーが点在していますが、専門的な知識の枠組みをはみ出してしまっているメンバーがいます。

「多様性はあるが無知な集団」物事の見方や考え方が異なるが、肝心な知識がない集団です。このタイプのチームは新しい視点を持つことはできますが、その視点が正しい知識に基づいていないため、誤った結論を導く可能性があります。

理想のエンジニアリングチームのメンバー構成

この記事においての理想のエンジニアリングチームとは、エンジニアリングによってビジネスの利益を最大化するチームです。
複雑な課題に立ち向かっているので、ここまで読んでいただいていればお分かりの通り、賢い集団が理想的なのは言うまでもありません。
ミミズだってオケラだってアメンボだってわかります。

よって理想のエンジニアリングチームは、適切な知識を持ち物事の見方や考え方が異なる人材で構成する必要がありそうです。

重要視すべきなのはカルチャーフィットする人材ではなく、異なるバックグラウンド、経験、スキルセットを持つ人材なのかもしれません。

理想のエンジニアリングチームを構成する上では、反対意見のたくさん出る議論をする、自信を持ちにくい結論で進む、そんな勇気が試されそうです。

賢い集団を効果的に運用する

本書では、賢い集団を構成しても十分に活かしきれなかったり、認知的多様性が失われていくケースについても言及されています。
そんな状況を避けるために2つの重要な要素があるといいます。

適切な情報共有

認知的多様性のあるチームでは、各メンバーが持つ異なる視点や知識を共有することが重要です。これにより、チーム全体が利用できる知識の量と質が増え、より良い結論を導くことが可能になります。

もし適切な情報共有がなされなければ、集団の状態は多様性はあるが無知な集団に変わっていきかねません。

                    ⚪︎    ⚪︎
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|   ⚪︎    ⚪︎ |     |            |
|      ⚪︎    | -> |      ⚪︎    |
|  ⚪︎    ⚪︎  |     |            |
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                       ⚪︎    ⚪

適切なヒエラルキー

認知的多様性のあるチームでは、意見の対立が起こりやすいため、適切なヒエラルキーが必要です。

ヒエラルキーというと、強いトップダウンな指揮系統を想像してしまいがちですが、そのような権力によるヒエラルキーではなく、尊敬によるヒエラルキーであるべきだと述べられています。
尊敬によるヒエラルキーとは、チームメンバーがその人の知識や能力を尊敬し、その意見を重視する、という形のヒエラルキーです。

もしトップダウンな指揮系統を持つ、権力によるヒエラルキーだった場合、リーダー1人の認知で物事判断されるため認知的多様性は発揮されず、集団の状態は無知な集団に変わっていきかねません。

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|   ⚪︎    ⚪︎ |     |            |
|      ⚪︎    |  -> | ⚪︎⚪︎       | 
|  ⚪︎    ⚪︎  |     |⚪︎⚪︎⚪︎      |
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※表現できないので妥協していますが、本の中では、リーダーの⚪︎に他の⚪︎が包含されているような図になっています。

理想のエンジニアリングチームの開発スタイル

認知的多様性、適切な共有、適切なヒエラルキーということから、僕がイメージしたものはアジャイルでした。
Bing AI, Chat GPT, Google bird それぞれに、認知的多様性を持ち、適切な共有、適切なヒエラルキーをを実践するエンジニアリングチームが採用する開発スタイルが何になりそうか聞いたところ以下の2つはどのGenerative AI でも回答として生成されました。

  • アジャイル開発
  • DevOps

僕はこれらについての知識が浅すぎるので、この記事で書くのはこれらが一例として挙がったという事実にとどめて、理解を深めつつ実践しながらよりよい運用を試行錯誤していこうと思います。

まとめ

反省しています。

理想のエンジニアリングチーム、というとてつもなく大きく、曖昧で、正解のない題材について考えてみましたが、大半が 多様性の科学 の内容の紹介になってしまいました。
ただ、せっかく書いたので公開しないのも惜しいので公開します。

3行でまとめるとこんな感じでしょうか。

  • 複雑な課題に立ち向かうチームは、認知的多様性を持つことが重要である
  • 反対意見のたくさん出る議論、自信を持ちにくい結論、はそうでないときよりも正しい結果になる場合が多い
  • チームの認知的多様性を損なわないために、適切な共有と尊敬によるヒエラルキーをつくる

まとめですら本の要約になっていて、さすがに何をしているんだという気持ちですが、読んでくださった方の一助となれば幸いです。

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