Typescript satisfiesの活用シーン
はじめに
現場の styleguide に記載されている Typescript のsatisfies
演算子について、普段のコーディングで使うものの、その違いや利点を十分に把握できていませんでした。
この記事では、satisfies
演算子が通常の型注釈とどう異なるのか、どのようなシーンで有効なのかを実例を交えて紹介してみます。
satifies について
まず、satisfies
とか何なのかを簡単に説明します。
satisfies
は TypeScript 4.9 で追加された演算子です。
式 satisfies 型
のようにして使います。
型注釈との違いとして、
- 型注釈は、型を明示的に上書きするのに対し、
-
satisfies
は、型推論結果を保ったまま(つまり完全に上書きをせずに)、型付けをします。
これはどういうことか以下、例で示します。
type RGB = [red: number, green: number, blue: number];
interface Color {
red: RGB | string;
green: RGB | string;
blue: RGB | string;
}
// 1. 型注釈を使用
const customColor1: Color = {
red: [255, 0, 0],
green: "#00ff00",
blue: "#0000ff",
};
// NG
const r1 = customColor1.green.toUpperCase();
// error: プロパティ 'toUpperCase' は型 'string | RGB' に存在しません。
// プロパティ 'toUpperCase' は型 'RGB' に存在しません
// 2. satifiesを使用
const customColor2 = {
red: [255, 0, 0],
green: "#00ff00",
blue: "#0000ff",
} satisfies Color;
// OK
const r2 = customColor2.green.toUpperCase();
-
の型注釈では green が
string | RGB
と上書きされて、型推論結果が失われます。
そのため、string にのみ使えるtoUpperCase
が使えません。 -
一方、
satisfies
では型推論が保たれます。
green プロパティの実際の値は string 型なので、その型推論が残り、toUpperCase
が使えます。
かつ、satifsfies は型注釈と同様、オブジェクトのキーの過不足がチェックされるため、型安全性は変わらず担保されます。
活用方法
テストでの活用
テストで使うモックデータでは、実際に入れる値は決まっています。
それにもかかわらず、コード上では実際に扱うデータを想定して型付けされているため、少し冗長なコードを書く必要があります。
例えば、以下の関数をテストしたいとします。(Jest による単体テスト)
const sampleFunc = (userName: string) => {
return userName;
};
以下 User 型を用いたモックデータuser1
を利用する場合、
sampleFunc は undefined を期待していないため、型アノテーションでモックデータを定義すると、
関数の引数に 非 null アサーション(!
)をつける必要があります。
type User = {
id: number;
name?: string;
};
// モックデータ
const user1: User = {
id: 1,
name: "John",
};
const sampleFunc = (userName: string) => {
return userName;
};
// NG
expect(sampleFunc(user1.name)).toStrictEqual(user1.name);
// error: 型 'string | undefined' の引数を型 'string' のパラメーターに割り当てることはできません。
// 型 'undefined' を型 'string' に割り当てることはできません
// そのため、非nullアサーションをつける必要がある
expect(sampleFunc(user1.name!)).toStrictEqual(user1.name);
そこで、satisfies
を使うと、非 null アサーションをつける必要がなくなります。
type User = {
id: number;
name?: string;
};
// モックデータ
const user2 = {
id: 1,
name: "John",
} satisfies User;
// 非nullアサーションを使う必要がない
expect(sampleFunc(user2.name)).toStrictEqual(user2.name);
なぜこれができるのかというと、satisfies
には
- 型注釈と同様の型付けの効果(式が型にマッチするかのチェック)により型安全性を担保する
- かつ、実際に定義したオブジェクトの型推論結果を保つことができることによって、柔軟性を損なわない
という性質があるからです。
as const と組み合わせた定数の export
例えばconstant.ts
みたいなファイルを作り、そこで定数を定義して export するケースがあると思います。
その際、定数定義にas const
とsatisfies
を組み合わせると型安全性が向上します。
-
satisfies
が、型のキー過不足をチェックする -
as const
が、値の widening を防止する
補足: as const について
as const
は複数の作用を持ちますが、as const が付けられた式に登場するリテラルを「変更できないもの」として扱う機能 と理解すれば良いです。
また、widening とは、簡単に言うと型が大きくなる挙動のことです。これは型安全性の観点では、できるだけ抑制したい挙動です。
そこで、as const
がこの widening を防止できます。これにより変数が変更されないことが保証できます。
// 普通の変数定義
const names1 = ["makoto", "John", "Taro"];
// 推論結果: string[]型 → リテラル型ではない
// as constによる変数定義
const names2 = ["makoto", "John", "Taro"] as const;
// 推論結果: readonly ["makoto", "John", "Taro"]型 → wideningしないリテラル型になっている
satisfies と as const の組み合わせ
配列の定数定義で組み合わせた例です。
colors から型を抽出した MyColor type の推論結果は string[]ではなく、リテラル型になっています。
(もし、satisfies ではなく型注釈を用いた場合は、当然 string[]になってしまいます)
export const colors = ["red", "blue", "green"] as const satisfies string[];
// import先
type MyColor = (typeof colors)[number];
// 推論結果: "red" | "blue" | "green"
詳しくは、こちらの記事がとてもわかりやすいのでご参考下さい。
まとめ
Typescript では、変数が特定のプロパティだけを持つことを保証してコードを堅牢にするために、型注釈が利用されます。
一方それは、型推論がより具体的な型を導き出す可能性があるのにも関わらず、一般的な型で上書きしてしまうことになります。
型推論の柔軟性を維持しつつ、型安全性を担保したいシーンで、satisfies の利用を検討してみると良いと思いました。
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