ジョージア工科大学のコンピュータサイエンス修士課程に進学します
アメリカの州立大学、Georgia Institute of Technology (以下ジョージア工科大学)が提供しているコンピュータサイエンスの修士課程オンラインコース、通称 OMSCS (Online Master of Science in Computer Science) に合格しました。今年2022年の秋から授業が始まります。
なぜジョージア工科大学にしたのか、出願にあたってどのような準備をしたか、などをまとめます。また、僕が出願準備をする際に参考にさせていただいた多くのエントリを適宜紹介していきます。
コンピュータサイエンスの学び直しに興味のある方の参考になれば幸いです。
なぜジョージア工科大学なのか?
周りの95%は大学院に進学するような環境にいながら学部卒で就職することを選び、ソフトウェアエンジニアとして働くこと3年。コンピュータサイエンスについて学びたいという気持ちは強まる一方でした。
幸いなことに、学び直したいと思う人に対しての門戸は開かれています。学位が不要ならオンライン学習プラットフォームで一流大学の講義を受けることができるし、学位が欲しいという場合も国内外に選択肢があります。学位をとる場合、通常通りキャンパスに通うのか、オンラインコースにするのか、というさらなる選択肢があります。
このように多くの選択肢がある中で、僕は「学位欲しい」「海外」「オンライン」を選びました。
学位欲しい
「学位が欲しい」と思ったのは、学位があることで有利に事が進む場面に出くわすことが今後あるだろうと考えたからです。
国内ではさほど学歴は重要でないという印象がありますが、例えばアメリカの就労ビザを取る必要に迫られたとき、学士よりも修士のほうが有利に選考が進む、というメリットはよく耳にします。今後の人生の可能性を広げるため、修士号を取りたいと考えました。
あとは単純なところで、学士号しかもっていないことに対するコンプレックスがあったというのも理由の1つです。修士号、かっこいい。
海外
国内でいうと JAIST などが社会人大学院として有名です。フルタイムで働きながら勉強・研究に励まれている方もいらっしゃいます:
では、なぜ自分は海外を選んだのか?に関してですが、これは自分が志向するキャリアパスが理由の1つです。僕は将来的に日本にとどまらずグローバルに活躍できるソフトウェア開発者になりたいと思っています。そのためには、純粋な技術力の向上と同じくらい、「英語環境に浸る」ことも重要だと感じています。英語で学び、英語でアウトプットし、英語で世界中の優秀な人たちとコミュニケーションをとる。そのような環境に触れ、自分を慣らしていくためには、海外(英語圏)の学校を選ぶのが手っ取り早いと考えました。
事細かに調べたわけではないのですが、一応アメリカ以外の英語圏の国も調べてみた上で、以下のような理由からアメリカの大学院にターゲットを絞りました。
- 日本語での情報量が多い(先人が多い)
- コンピュータサイエンス領域での大学ランキングが全般的に高い(順位は後述)
- アメリカの大学院の修士号(に限った話かは不明)は "research-based" と "course-based" の2つがあり、前者は日本の修士課程と同様に研究をして論文を書くことが求められるのに対し、後者は講義、試験を受けて単位をとることで卒業ができる。自分は研究をしたいという気持ちはあまりなかった
国内の大学院に関しては、以下のエントリに非常によくまとめられています:
オンライン
MBA留学している方に話を伺う機会があり、そこでオフラインかオンラインか迷っているということを伝えると、「断然オフラインがおすすめ」という回答をいただきました。オフラインで得られる人脈が何よりも宝だから、という理由でした。
一方、日本からオンラインで通っていらっしゃる方にお話を伺うと、学費が安い、日本の仕事を続けられる、家族と過ごせる、などの理由でした。
どちらのご意見も合理的で、どちらにすべきか非常に悩みました。オフラインの高い学費も、その後ペイできるだろうし、「英語に浸る」ということを重視するのであれば、オフラインのほうが良いのは明らかです。
しかし最終的にはオンラインコースを選択しました。これはいろいろ考えた末の結論ではありますが、一番大きな理由は「海外に留学するという勇気がなかった」ことです。ここは自分の弱さを感じるところですが、あまりに急激に環境を変えてしまうことへの恐怖感、抵抗感が勝った形です。
ちなみに、ジョージア工科大学OMSCSでは、オンラインコースとオフラインコースで授与される学位は完全に同一になります。(他の大学がどうなのかは未調査)
最後の絞り込み
「学位欲しい」「海外(アメリカ)」「オンライン」まで決めた時点で、出願先候補として残ったのが以下の3校でした。
(順位はコンピュータサイエンス分野に絞ったときのものです)
大学名 | USNews | Times Higher Education |
---|---|---|
ジョージア工科大学 | 6位 | 21位 |
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校 | 5位 | 20位 |
テキサス大学オースティン校 | 9位 | 35位 |
(参考)東京大学 | N/A | 38位 |
これらの3校も含めたさまざまな候補について、要点がまとめられたエントリがあります:
各校、GPAやTOEFLの点数、CS関連学部卒か?など、さまざまな出願要件があるので、それらをくまなくチェックし比較していきます。僕の場合は、
- 学部のGPAがあまり良くはない(しかも、公式の成績表にGPAの記載がなかったので正確な値がわからず苦労した……)
- 一応CSに近い分野の学士号をもっている
- 学費は安いほうがうれしい
- 大学院で学びたいのは、ナウいデータサイエンスや機械学習寄りの領域ではなく、昔ながらのコンピュータサイエンスの領域
といった状況でした。TOEFLは出願校を決める段階では一度も受けていなかったので、「受けたい学校が決まったら、そこに必要な点数を必死で取る」という考えでした。
上記のうち、最終的な出願校決定に最も大きな影響を与えたのは、最後の項目です。オンラインコースは歴史が浅いからか、開講されている授業が少ないというケースもあり、自分が学びたい内容を学べるのかをあらかじめ確認しておくのが賢明です。
オンラインで受講できる授業は、大学の公式サイトを探せば以下のように見つかるはずです。
学費の圧倒的な安さ、授業の豊富さ、申し分のない教育実績に惹かれ、ジョージア工科大学の単願でいくことを決めました。
出願の準備
出願には多くの準備が必要ですが、特に時間と労力のかかる作業は以下の3つだと思います。
- 推薦状の執筆依頼
- 志望動機書を書く
- 出願要件を満たすようにTOEFLの点数を取る
これらについて簡単に振り返っていきます。
なお、以下のサイトでは非常に事細かにこれらの作業体験がまとめられています。おすすめです。
推薦状の執筆依頼
OMSCSでは出願にあたって3通の推薦状が必要です。少なくとも1通はアカデミアのものであることが要求されています。
僕は、現職の上司、前職の上司、学部時代の研究室の教授の3名に依頼しました。快く引き受けてくださり本当に感謝です。
大学の出願要項のページに、どのような内容の推薦状が評価されるのかというのが説明されているので、それに従った内容を執筆していただけるよう、推薦者の方々とは密に連絡を取り合いました。
一般的な推薦状のフォーマットや作法などが分からなかったため、Graduate Admissions Essays という本を参考にしました。エッセー対策がメインの本ですが、最後の方に推薦状の書き方とサンプルも掲載されており、推薦状のマナーのようなものを押さえることができました。
志望動機書を書く
こちらでも Graduate Admissions Essays が参考になりました。実際に使われたエッセーが大量に載っており、それらを読むことで、エッセーで使える便利でクールな言い回しをストックすることができます。
また、こちらも推薦状と同様、どのような内容を書くべきかが示されていたので、その指示から逸れないよう簡潔に書くことを意識しました。
出願要件を満たすようにTOEFLの点数を取る
ジョージア工科大学OMSCSでは、TOEFLの点数として「合計90点以上」かつ「各セクション19点以上」が必要になります。
ただし 公式ページには「合計100点以上」と書かれているページ もあります。100点以上を取るのが一番確実ですが、実際のところ「合計90点以上」かつ「各セクション19点以上」で合格している方が多くいらっしゃるようです。また、事務局に問い合わせたところ「合計90点以上」かつ「各セクション19点以上」であればOKという回答をもらった、という情報もあります。僕自身も、合計点が100未満の状態で出願しましたが合格しました。
今後基準が変わる可能性はありますので、心配な方は事務局に問い合わせると確実かなと思います。
スピーキングの苦手意識
僕はいわゆる「受験英語」は結構得意だったので、リーディングは割とできるほうだったのですが、リスニングとスピーキングへの苦手意識がかなりありました。(今でもまだ苦手……がんばります)
日本の英語教育を受けてきた方だと、スピーキングが苦手という方は多いのではないかと思います。TOEFLのスピーキングは特殊なので、スピーキングそのものの地力よりも「TOEFLのスピーキング」専用の対策をしたほうが短期的には点を上げやすいかもしれません。
とはいえ、英語で世界中の人とコミュニケーションをとるという最終目標を見据えると、スピーキングの地力をあげることが不可欠なのは間違いありません。このような考えのもと、オンライン英会話(DMM英会話)を始めました。
始めてから5000分くらいのレッスンを受けてきましたが、今では英語を話すことへの抵抗感はだいぶ無くなってきました。ただ、なんというか、英語で込み入った会話ができるようになったというよりは、自分の知能レベルを意図的に落として、自分が活用できるレベルの英語をやりくりすることで、25分(1レッスンの時間)をやり過ごす、みたいな感覚です。自分の意のままに英語が発言できるようにまだまだ精進が必要だなと感じているところです。
数多くのオンライン英会話サービスがありますが、どのサービスも無料体験があると思うので、いくつか試してみて自分に合うものを選ぶのがおすすめです。
試した上でDMM英会話が気に入ったという方がいらっしゃったら、ぜひ以下の友達紹介コードをご利用ください!(宣伝)
全般的なTOEFLの勉強
使った教材は主に以下の3つです。
- The Official Guide 過去問
- TOEFLテスト英単語3800 単語帳。本ではなくmikanというアプリを使っていました。Rank4には手をつけませんでした。
- TOEFL iBTテスト必修フレーズ100 スピーキングやライティングで使えるフレーズ集。汎用性の高い表現がたくさんあり非常に役立ちました。
苦手なセクションを重点的に勉強しました。TOEFLは問題の性質上、リスニングが極めて重要なので、リスニングに勉強時間の多くの割合を費やしました。スピーキング、ライティングもリスニングが絡んでくる問題が多いため(講義を聴いたあとそれを要約する、とか)リスニングを制すればTOEFLを制したも同然です。
まずは1回受けてみる
僕自身はTOEFLを計3回受験し、3回目に取得した98点(Reading: 28, Listening: 24, Speaking: 20, Writing: 26)で出願しました。この3回の受験を経て感じたのは、「まず1回、受けてみる」のが大事だということです。
最初の受験は会場の雰囲気に飲まれてしまって、実力を発揮しきれないと思います。有名な "I live in Tokyo, I live in Tokyo..." の念仏や、ライティングで使うキーボードの打ちづらさなどなど、厄介な要素がたくさんあります。
この雰囲気に少しでも慣れるため、そして、現在の自分の英語力と、目標点との差を把握して、学習計画を精度良く組み上げるためにも、TOEFLが必要だと分かった時点でまずは1回受験してみるのがおすすめです。
ただ、今は円安(執筆時点では 1ドル130.84円)なので、TOEFLの受験料 $245 (約32,000円) が非常に重たいというのがあり難しいところです。高すぎる。。。
出願体験記リンク集
最後に、僕が参考にさせていただいた出願体験記へのリンクを貼って終わります。ジョージア工科大学以外のものもあります。
どれもとても参考になるというのはもちろん、モチベーションも掻き立てられるのでおすすめです!
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