アトピー性皮膚炎のエンジニアを支える技術
xxを支える技術シリーズに触発されまして、アウトプットの練習も兼ねて初Zennを書いてみました。
特に「痔のエンジニアを支える技術」の冒頭に記載のあったすぐに死ぬわけではないがQOLに結構な支障をきたす慢性の疾患を抱えたエンジニアであり、幼少から30年以上アトピー患者である自分の知見を共有したいと思いました。
アトピー性皮膚炎とは
かゆみのある湿疹が、慢性的に良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。全国的に患者数は年々増えているようです。これまで勤めた企業の同僚にも何名かアトピーの方はいらっしゃいました。この疾患は重症度に個人差があり、治療方針についても確実な方法が定まっておらず、患者自身が医師の指示に従いつつ各々で改善のための生活習慣を模索していくしかないのが現状です。
自分は小学生の頃は中等症から重度の範囲でしたが、現在は軽症から中等症の間くらいです。おそらく一生アトピーと付き合っていくことになると思います。
ステロイドバッシングの歴史
一昔前、行きすぎた報道によるステロイドへのバッシングがあり、バッシングの直後、2000年にアトピー性皮膚炎治療ガイドラインが公表され、標準治療としてステロイド外用薬の重要性が示されました。私は容量・用法を守って正しく使えば問題ないと思っている立場です。
エンジニア業との向き合い方
では、アトピーを持つエンジニアはどのように仕事に向き合うのがQOLの向上に繋がるか、自分の体験から書いてみます。ハードというより、ソフトで解決する話になりますが。
働き方、生活習慣
上司やチームメンバーに自分の症状を共有しておく
アトピーは重症でない限り突然休むことはない疾患ではありますが、悪化するとパフォーマンスが落ちる疾患でなので、悪化時は回復のために休む必要があります。
上司やメンバーに自分の疾患を共有しておき、いざというときにタスクをお願いできる体制を整えておくと自分が動けない時に安心です。
規則正しい生活を送る
皮膚を回復させ、日々のパフォーマンスを保つためには規則正しい生活を送り、入浴後の保湿タイムや睡眠が十分に取れることが重要なので、長期的に勤める企業を探す場合は慢性的な長時間残業、定期的または頻発する夜間対応、強いストレスを避けられる働き方を探すことをお勧めします。高負荷の業務についてしまうと、働き始めは良くても疲労が蓄積してきてアトピー悪化、QOLが下がり、パフォーマンスが出ず、ということになりかねません。スキルアップのためなどどうしても高負荷になる場合は、「xxのスキルを身につけるまで」など区切りをつける方向でキャリアを検討してみてください。
栄養価を考え、アレルゲンを避けた食事を選択する
栄養が偏った食事もアトピー悪化の原因です。栄養士さんのレシピを元に自炊するのが一番お勧めなのですが、自炊の時間が取れない、料理が苦手、出先で食べる場合は油っこくない野菜中心のヘルシーな料理を選び、砂糖を使った甘いものも多量に食べないようにしたほうが良いです。食品アレルギーを持っている方は何をどのような状態で(例:生か加熱か)食べると悪化するかを自分の中で覚えておいてください。
デスク周りは毎日掃除する
落屑(皮膚がフケのようにボロボロはがれ落ちること)がキーボードの間や机の周りに溜まったのを放置するのは衛生的に良くないですし目にすると自分も精神的にも参るので、1日1回は掃除をお勧めします。キーボードにはエアダスターが便利です。
爪は伸ばさず、清潔に
週2回は切り、尖らないようにやすりで整えています。ネイルアートはしないです。
生活用品
衣服の色は黒を避ける
落屑が目立ってしまいクライアントに不快感を与えてしまうのを避けるため、暗い色は避けます。私はダークグレー以上の明るさを選んでいます。
下着・パジャマは綿素材一択
おしゃれより実用性です。通気性を良くするため、肌に直接触れる衣類は全て綿100%もしくは綿混素材を選択することをお勧めします。私は下着・パジャマなど肌に直接触れる衣類は全て無印良品で揃えています。そして、店頭で手触りを確かめてから購入します。 たとえばこちらのインナーはボートネックのニットの中に着てちくちくする箇所が患部に直接触れないようにしています。
スキンケア
肌荒れしている箇所と落ち着いている箇所でケアの方法を変えています。ステロイドは炎症を抑えますが、皮膚を薄くしたり体毛が濃くなったり抵抗力が落ち細菌に感染しやすくなる副作用があるので、漫然と使用せず、炎症が抑えられている時は保湿のみにします。
-荒れている時
処方のステロイド+処方の保湿クリーム
-落ち着いている時
化粧水+オイル+処方の保湿クリーム
化粧水はキュレルのディープモイスチャースプレーと頭皮保湿ローションを使用しています。
頭皮保湿ローションは昨年末から使い始めたのですが、ドライヤーの前に頭皮に塗布すると乾燥しなくなり落屑の頻度も減りましたのでリピート購入しています。店頭には基本売ってないのでネットで購入しています。化粧水の後は保湿ローションではなくオイルを塗っているのですが、今はナチュラルオーケストラのホホバオイルを使っています。2、3滴で顔全体に伸びるので、値段の割にコスパは良いです。
ただし、少し刺激があるので、患部が荒れている箇所は大島椿を塗っています。唇にはリリップキュアを塗っています。どんなリップクリームを塗っても水疱ができてしまうので、ネットで評判の良かったこちらを使用したところあっていたようです。ガサガサの唇がこれのおかげで保湿できています。ドラッグストアならもう少し安く購入できます。
顔については、ステロイドを塗り続けてしまうと皮膚が薄くなってしまうので、ステロイドを使用しなくても良くなった箇所には、モイゼルト軟膏を塗っています。昨年6月に出たばかりの軟膏です。かかりつけ医にお願いして処方してもらいました。
化粧品
顔にアトピーが出てしまって治療している方はそもそも化粧をしなくて済む生活習慣に変更することをお勧めします。 化粧はどうしても刺激になり治療の妨げになってしまうので、、、私の場合、外出時は塗った時にしみない日焼け止めとサンバイザー、たまにリップで過ごしており、フルメイクが必要になるシーンは1ヶ月にあるかないかの頻度です。化粧が必要になったときのために、メルカリで開封済みを買ってはパッチテストを繰り返しましたが、今は下地、ファンデーション、チーク、アイブロウ、アイライナー、コンシーラーはほぼ全てエトヴォスに落ち着きました。リップだけオンリーミネラルです。エトヴォスもオンリーミネラルもクレンジングなし、お湯と石けんで落ちるので肌への負担が少ないです。
エトヴォスはドラッグストアのコスメよりは少し高いので試すのは躊躇する、、、という方はこういったスターターキットから入るのがお勧めです。店頭や他のECサイトならブラシと下地とファンデのみのよりシンプルなセットもあります。
新しい化粧水やファンデーションを試す時は少量を目立たないところ(マスクで隠れるところ)で試して1日様子を見ることを強くお勧めします。 以前試供品としていただいたパールの入ったリキッドタイプの化粧下地を塗ったところ、良くなっていたのに真っ赤に腫れあがってしまい元の状態に戻るのに2週間ほどかかりました。 その時は顔用ステロイドと保湿を欠かさず根気良く塗って戻しました。
自分の現在、今後
現在離職中で、4ヶ月ほど無職なので就職することも考えていたのですが、就職活動するうちに、時間で縛られる働き方が自分のQOL重視の考えとミスマッチであると感じてきているので、負荷を調整しやすくするためフリーランスで一旦働くことを検討しはじめています。業務SEの時のスキルと、コーダーのスキルを両方活かせていけたらと思っています。
おわりに
幼少から10代の頃は両親が与えるものや医師の指示に従っていたところがあり閉塞感を感じていましたが、エンジニアとして働くことで、治療方針や生活習慣に関して、自分でも調べて、自分に合うものを見つけ出していく力がついたと思います。 アトピーで悩んでいるエンジニアの方々の参考に少しでもなれば幸いです。
続編
こちらです。
Discussion
あいさつ
アトピー性皮膚炎を持つ情報系の大学生です.
僕は小学生高学年ほどから始まり高校生の時は特にひどいアトピーに襲われました.
しかし今はデュピクセントという注射を二週間に1回打ってかなり改善しています.
デュピクセント
デュピクセントを使用される患者さんへ
デュピクセントは注射タイプのお薬です.
2,3回ほど病院で打つと自宅に数本持ち帰り自己注射できるようになります.
初回の2回の注射と,2回目の1回の注射は病院でしてもらい,そこから自宅で注射を打つようになります.
この注射は非常に高価で保険適用(3割負担)でも1本17000円くらいします.
アドバイス
病院に行った時,一度に6本まで持ち帰りができます.なるべく多くもらうようにすると高額医療費制度の上限に引っ掛かってくれるようになります.
僕の場合は上限が57000円くらいなので(17000*6)+診察-57000=約50000円分が無料になります.
自己注射は人によって痛みが違います.看護師さん曰く筋肉量が多いと痛むようです.
自分はめちゃめちゃ痛む方ですが,打ちどころがいいとあまり痛くない場合があります.
おわりに
多くのお金と注射の痛みはありますが,痒みはかなり抑えられます.
僕はデュピクセントの存在を知って即飛びつきました.
今までの生活を変えてくれるなら,いくらでも払うし痛みも耐えられます.
この薬は効果がかなり早くて僕は2,3日で痒みが減少したと感じられるようになり,1ヶ月後には「朝起きて爪に黒いのがたくさん挟まってる」とか「お風呂入ると全身痒くなる」とかがなくなりました.
僕にとっては「お金と痛みで人権を手に入れた」と考えているくらい必須です.
今は2週間に1回デュピクセント+食後の痒み止め飲み薬+お風呂後に顔に非ステロイド軟膏(記事にあるモイゼルト軟膏)を使用しています.
アトピーをどうしても治したい人にはおすすめです.
コメントありがとうございます。
デュピクセントの処方についてはかかりつけ医に相談したのですが、重い症状の方優先とのことで、私は許可されませんでした。
色々病院も探してみたのですが、症状が中等度以上で、強いランクのステロイドを使っても効果ない方が優先のようです。
いつか使用してみたいですね。
お大事にしてください。
記事拝見しました!執筆おつかれさまです。
アトピーではないのですが、敏感肌なのでリップクリームの情報うれしいです。
とても参考になりました。
私はこちらのリップクリームを家族で愛用しています。
このコメントを読んだ方のお体に合うかわかりませんが記載しておきます。
素敵な記事の発信ありがとうございます。自分も子供の頃から重度のアトピーに悩み長袖シャツの中で血だらけになっていました…社会人になって試行錯誤を重ねようやく落ち着いてきたので、それぞれの情報にすごく共感しました!特に「下着・パジャマは綿素材一択」!
ここにない中で自分が効果があったものだと以下の3つです。
完治はなかなか難しい病気ですが、寛解状態をできるだけ長くできるようにお互いがんばりましょう!