徹底解説!FASTを支える 「価値」「原則」「柱」とは?
1. はじめに
この記事では、FASTを支える「価値」「原則」「柱」について解説します。
この記事を書こうと思ったきっかけは、FASTガイドであまりこの「価値」「原則」「柱」について言及されていないためです。また、スクラムの「価値基準」や「三本柱」と比較して数も多いため、単純にひとつずつ覚えることも難しいと感じています。私がこれらを復習したいというのも1つの理由です。
そのため、この記事は私なりの解釈がメインであり、公式でこう定義されているよ、という解説記事ではありません。
2. FAST とは
FAST(Fluid Adaptive Scaling Technology または Fluid Scaling Technology)は、人々が仕事を中心に自己組織化する方法です。今回の記事ではFASTそのものの解説は割愛しますので、詳しく知りたい方は以下を参考にしてください。
3. FASTを支える「価値」「原則」「柱」
私は、FASTはそもそもの構造や仕組みが最低限しか存在しないフレームワークであるため、この「価値」「原則」「柱」を正しく理解することの重要度が非常に高いと考えています。
ということで、早速解説に進みます。FASTの「価値」「原則」「柱」は以下の通りにガイドで定義されています。
英語版のFASTガイドでは以下のように定義されています。
英語版
日本語版のFASTガイドでは以下のように定義されています。
日本語版
2025年7月時点において、公式から提示されている情報は、ガイドに書かれているこの内容のみです。書いてある言葉自体はなんとなく分かりますが、実際にどういう行動につなげていけばよいのかというレベルで深く理解するには少し言葉が足りないかもしれません。しかし、私はFASTの公式ページを眺めていて、実はこの「価値」「原則」「柱」について補足するような記述をたくさん発見しました。これら公式ページの記載と、私の経験と、他で仕入れた知識をベースに今回の記事では解説を行っていきます。
個別の解説に入る前に、これらの関係性について少しだけ考えてみます。当然ながら、これらは独立した概念ではなく、お互いに補完しあう依存関係にあると考えています。そして、これらを正しく理解し、日々の行動につなげていくことがFASTを成功させるための第一歩となるはずです。
公式見解などは見つけられなかったのですが、個人的に、これはXPにおける「価値」「原則」「プラクティス」と同じ関係性なのではないかと推測しています。「価値」「原則」は同じで「柱」が「プラクティス」と読み替えれるのではないでしょうか。
「柱」が具体的なFAST推進のための手段や仕組みとして存在し、その上で「原則」が人々の行動を導くための考え方として存在し、最終的に「価値」が個人や組織のレベルで実現されるという関係にあるような気がしています。
4. FASTの価値
まずは「価値」について解説します。それぞれの価値を以下の3つの切り口で整理してみます。
- 概要
- なぜ大切なのか
- 注意したいこと
これらの価値の意味、なぜFASTがこれらを価値として掲げているのか、そして誤解や進め方を間違えないためのTipsのようなものを提供できればと思います。
4.1. 自律性 (Autonomy)
4.1.1. 概要
- 個人やチームが自らの仕事の進め方、「誰が、何を、いつ、どのように」 行うかについて、自分自身で決定する裁量を持つこと
4.1.2. なぜ大切なのか?
- チームが自らの仕事の進め方を自己管理できるようになるため
- 困難な問題に対して、チームが創造的な解決策を見出すことができるようになるため
4.1.3. 注意したいこと
- 自律というのは、好き勝手に動くことではない
- 目的や集合知を欠いた自律性は、依存性やボトルネックにつながる
- 他者との協業を避け、自己完結的な行動をすることは正しい自律ではない
4.2. 目的の共有 (Shared Purpose)
4.2.1. 概要
- コレクティブ全体が、共通の目的とミッションを明確に持ち、それに向けて一丸となること
4.2.2. なぜ大切なのか?
- プロダクトの状態や現在の状況について共通の理解を持ち、全員が同じ方向に進むことで、チームはまとまりのある組織へと変革され、組織全体の集中力と一貫性が向上するため
- 各メンバーが自身の役割や活動が、組織全体や顧客にとってどのような価値を持つのかを理解しやすくなるため
- 納得感のある「目的」は、ハイパフォーマンスを可能にする内発的動機づけの基盤となる
4.2.3. 注意したいこと
- 目的とミッションは常に可視化しておき、透明化を保つことが必要
- 目的やミッションの達成に向けた具体的な行動まで制限するべきではない
- 目的やミッションに共感できていなければ、自律はいつの間にか自分勝手へと変容する
4.3. 熟達 (Mastery)
4.3.1. 概要
- 個人が自身のスキルや能力を継続的に向上させ、専門性を深めること
4.3.2. なぜ大切なのか?
- チームメンバー間で相互に学習が促進され、相乗効果でスキルを向上させることができるようになるため
- 単に与えられたタスクをこなすだけでなく、自己の成長を追求するという内発的動機づけの一環でもある
- 熟達は、モチベーションを高める重要な要素の一つにもなりうる
4.3.3. 注意したいこと
- 古い知識や従来のやり方に固執することではない
- 変化の速い時代には、古い考え方を捨て、学び直し、日々成長し続けるアンラーニングが重要
4.4. 協働 (Collaboration)
4.4.1. 概要
- チームメンバーが互いに積極的に協力し合い、情報を共有し、連携して仕事を進めること
4.4.2. なぜ大切なのか?
- 協業は、分割して解決した問題の再統合の活動であり、完全な問題解決に不可欠
- メンバー間のコミュニケーションが密になり、知識やスキルが共有され、迅速かつ実用的な意思決定が可能になるため
- チーム間の依存関係が、コミュニケーションや集合知、そして最善の判断を通じて自己管理され、解消されていくため
4.4.3. 注意したいこと
- 他者との協業と他者への依存を混同せず、自律的に動きながら協業することが必要
- 健全な衝突は協業のために避けて通れないと、覚悟を持つことが必要
- 心理的安全性が高まると情報共有が進み、むしろ健全な衝突が起こりやすくなるとされている
4.5. 自己組織化 (Self-organization)
4.5.1. 概要
- 共通の目的とミッションを明確に持ったコレクティブが、自分たちの意思でチームを形成し、活動の進め方を決定していくこと
4.5.2. なぜ大切なのか?
- チームがまとまりのある組織へと変革され、集団としての機能不全を解消するため
- 予測不可能な顧客要求に対応できる環境を作り、迅速で実用的な意思決定を可能にするため
- 共通の目的とミッションを明確に持ったコレクティブが、自分たちの意思でチームを形成し、活動の進め方を決定していくことで、組織全体の自律性を高めるため
4.5.3. 注意したいこと
- 自己組織化は放任主義ではなく、共通の目的とミッションに基づいた意図的な組織化である
- Value Cycleの中で実施されるFASTミーティングにおいて、コレクティブメンバーは自律的にチームを形成する必要がある
- オープンスペーステクノロジーを参考にしており、スチュワードがタスクを提案し、メンバーが自ら参加したいタスクを選んでチームを構成する
4.6. 自己管理 (Self-management)
4.6.1. 概要
- 自分たちで作業、役割、進め方、問題の解決方法などを自律的に決定すること
4.6.2. なぜ大切なのか?
- チームが自ら計画を調整し、迅速な意思決定を促進することで、他の会議の必要性を最小限に抑えるため
- それぞれのチームが自分たちに最適なプロセスを取ることで、コンテキストスイッチを減らし、チームの生産性を向上させるため
- メンバーはコレクティブアグリーメントに沿っていれば、作業方法を自由に決めることができるため
4.6.3. 注意したいこと
- 自己管理は無秩序ではなく、コレクティブアグリーメントに基づいた責任ある自律性である
- 依存関係にあるチーム同士は、コミュニケーション、集合知、最善の判断を通じて、自ら依存関係を解消する必要がある
- モビリティの法則により、メンバーは状況に応じて自由にチームを移動できるが、これは組織全体の利益を考慮した判断である必要がある
4.7. ナチュラルリーダーシップ (Natural leadership)
4.7.1. 概要
- 特定の役職や権限を持つ人だけがリーダーシップを発揮するという考え方とは異なり、誰もが自然にリーダーとしての役割を担う場面がある
4.7.2. なぜ大切なのか?
- 社員一人ひとりが当事者意識を持ちリーダーシップを発揮することで、組織全体の自律性を高めるため
- 状況や内容に応じて異なる人間がリーダーシップを発揮して、特定のリーダーに依存しない組織を作り出すため
- FASTミーティングのマーケットプレイスにおいて、チームスチュワードは自ら立候補し、作業のピッチを行うことで、自発的なリーダーシップが発露されるため
4.7.3. 注意したいこと
- ナチュラルリーダーシップは権威主義ではなく、影響力と専門性に基づいた自然な指導力である
- リーダーシップは固定的な役割ではなく、状況に応じて変化する動的なものとして捉える必要がある
- なんらかの課題が発生した際に、専門知識や情熱を持ったメンバーがその場で中心となり、チームを導いていくことが重要
5. FASTの原則
次に「原則」について解説します。原則は以下の3つの切り口で整理してみました。
- 概要
- 具体的な実践方法
- 期待する効果
これらの原則を守り実践することが価値の実現への第一歩となります。価値との結びつきをイメージしながら読むと理解が一層捗ると思います。
5.1. 正しいことをせよ (Do the right thing)
5.1.1. 概要
- 単に与えられたタスクをこなすだけでなく、組織全体、顧客、そして社会にとって真に価値のある行動を選択し、実行すること
- 品質と倫理的な責任を内包する原則
5.1.2. 具体的な実践方法
- FASTでは、プロダクトの状態や現在の状況について共通の理解を得ることを重視し、組織全体の集中力と一貫性を向上させる
- 無理に全体最適をはかろうとせず、各自の判断で正しいと感じることに取り組む
5.1.3. 期待する効果
- 各自の個別最適な判断が合わさることで、全体最適な判断となる
5.2. T字型であれ (Be T-shaped)
5.2.1. 概要
- 特定の専門分野に深く精通しつつ、他の関連分野にも幅広い知識とスキルを持つ人材のこと
- クロスファンクショナルなチームを構築し、知識とスキルの共有を促進する上で不可欠
5.2.2. 具体的な実践方法
- 専門分野を深掘りしつつ、他分野の知識も積極的に習得する
- 流動的なチーム編成と協業に積極的に参加する
5.2.3. 期待する効果
- 「流動的なチーミング(Fluid Teaming)」と「ネットワーク型組織(Network Organization)」を可能にし、労働力を最も必要とされる場所に柔軟に配置できる
- 個人が専門性を持ちつつも多角的な視点と柔軟な対応力を身につけ、組織全体の適応性とイノベーション能力を高める
5.3. チームプレイヤーであれ (Be a Team Player)
5.3.1. 概要
- 個々のメンバーが自身の専門性だけでなく、チーム全体の目標達成に貢献し、相互に協力し合う姿勢
- 「協働(Collaboration)」 というFASTの価値とも密接に結びついている
5.3.2. 具体的な実践方法
- コレクティブは共通の目的のもとに集まり、一丸となって仕事に取り組む
- FASTミーティングでの 「同期(Synchronize)」は、プロダクトの状態や現在の状況について共通の理解を得ることで、チーム間の連携を強化する
- コレクティブアグリーメントは、コレクティブがどのように共に行動し、意思決定や紛争解決を行うかを記述した生きた文書であり、チームプレイの基盤となる
5.3.3. 期待する効果
- コミュニケーションと協力を改善し、組織全体の集中力と一貫性を向上させる
- メンバーが 「自分は一体何をしたらいいか」 と悩む状況を解決し、共通の理解のもとで効果的に協働できるようになる
- 「心理的安全性」 の高い環境を築き、チーム学習とパフォーマンスの向上を促す
5.4. 経験を分かち合い、学び合え (Mentor and be mentored)
5.4.1. 概要
- 組織内の知識、スキル、経験を積極的に共有し、互いに教え、教えられることで、コレクティブ全体の能力と適応性を高める継続的な学習の姿勢
- 「熟達(Mastery)」 というFASTの価値の実現にも寄与する
5.4.2. 具体的な実践方法
- FASTミーティングの 「同期(Synchronize)」ステップでは、コレクティブ全体が学びと進捗を共有し、プロダクトの状態と現在の状況について共通の理解を得る
- チームは、作業を通じて 「私たちが行うべき作業を発見するのは、実際に作業を行っているときだ」(Woody Zuillの言葉)という経験主義的なアプローチを重視する
5.4.3. 期待する効果
- 組織全体の知識基盤を強化し、個々のメンバーの成長だけでなく、チームとしての集合知を高める
- 新たな課題や予期せぬ変化に対して、迅速かつ効果的に適応する能力を向上させる
6. FASTの柱
それでは最後に「柱」について解説します。柱は以下の切り口で整理してみました。
- 概要
- FASTとの関連性
- 推奨される行動
「原則」に従いながら、これらの考え方や仕組みを使ったり、参考にしながらオリジナルの何かを生み出すことで「価値」の実現へと近づくはずです。
6.1. 複雑適応系 (Complex Adaptive Systems)
6.1.1. 概要
- 複雑適応系とは、多様で相互に連結された要素から構成され、変化する能力と経験から学ぶ「適応的」な性質を持つ特殊な複雑系
- システムの複雑で創発的な巨視的特性に焦点を当てており、秩序が自然に発生し、システムの履歴は不可逆であり、将来は予測不能であることが多いとされる
6.1.2. FASTとの関連性
- FASTは、イノベーションが最も起こりやすい混沌と複雑性の境界に位置するとされている
- 流動的なチーミングと連携することで、純粋な複雑適応システムを形成する
6.1.3. 推奨される行動
- 予測不可能な変化を受け入れ、それに柔軟に対応する姿勢を持つ
- 問題解決において、原因を探るだけでなく、多様な要素の相互関連性を全体的に捉える 「システム思考」 を実践する
- 固定された計画に固執せず、状況の変化に応じて自律的に行動や構造を調整することを促す
6.2. オープンスペーステクノロジー (Open Space Technology)
6.2.1. 概要
- 参加者の主体性を尊重しながら、オープンな対話を通じて行動計画を創造するワークショップの手法
- リーダーがコントロールするのではなく、参加者自身が議論したいテーマを提案し、興味のある人が集まって意見を出し合う
6.2.2. FASTとの関連性
- FASTミーティングの第3部は、このオープンスペーステクノロジーにインスパイアされている
- FASTの 「モビリティの法則」 もオープンスペーステクノロジーに由来している
6.2.3. 推奨される行動
- マーケットプレイスにおいて、自ら解決したい仕事のテーマを提案し、その仕事に興味を持つ仲間を募り、チームを自己組織化する
- 役職や肩書に関係なく、誰もが当事者として積極的に意見を出し、チームに貢献する意識を持つ
- 「モビリティの法則」に基づき、必要に応じてチームを柔軟に切り替え、最も価値を生み出せる場所で貢献する
- 予期せぬ出来事や結果も起こるべくして起きたと受け入れ、それらから学びを得る姿勢を持つ
6.3. Y理論によるガバナンス (Theory Y Governance)
6.3.1. 概要
- 人間は本質的に仕事を楽しむことができ、自己実現を通じて積極的に仕事に取り組むと捉える考え方
6.3.2. FASTとの関連性
- 内発的動機づけを活用することで、従業員のエンゲージメントを高め、離職率を低下させるとされており(と公式は語っている)、これはY理論の考え方と完全に一致する
- 自己組織化を「不可避」にし、形骸化したアジャイルになる問題を解決しようとする姿勢も、Y理論の考え方を組織運営に取り入れていることを示している
6.3.3. 推奨される行動
- メンバーは、指示を待つのではなく、自らの意思で仕事を選び、その進め方を自己管理する
- チームは、内発的動機づけ(自律性、熟達、目的)を重視し、個人の成長と組織目標への貢献を結びつける
- 従業員の自主性を尊重し、目標設定や業務プロセスに従業員が共同で関わることを促す
6.4. リーンスタートアップ (Lean Startup)
6.4.1. 概要
- 「検証された学習」や「迅速な実験」を中核とするプロダクト開発手法
- 最小限の製品(MVP)を市場に投入し、顧客からのフィードバックを素早く取り入れて改善を繰り返すことで、ムダを省きながら効果的なプロダクトを生み出すことを目指す
6.4.2. FASTとの関連性
- FASTはプロダクト中心のアジャイルメソッドであり、プロダクト主導型組織やベンチャーに理想的であると説明されている
- 特に、FASTはプロダクトディスカバリーとデリバリーの両方に対応する初のアジャイル手法であると強調されている
6.4.3. 推奨される行動
- プロダクトマネージャーは、プロダクトの価値と有用性を高める方法を提案し、方向性を指し示す
- FASTミーティングを通じて、プロダクトの状態と現在の状況について共通の理解を頻繁に同期し、適応する
- 無駄を削減し、本質に集中するリーン思考に基づき、プロダクトの価値を高める活動に注力する
6.5. 流動的なチーミング (Fluid Teaming)
流動的なチーミングについて詳しく知りたい方はこちらも合わせてお読みください。
6.5.1. 概要
- 流動的なチーミングは、人々が仕事を中心に自己組織化する「スケーラブルな」方法であるFASTの核となる要素の一つ
- FASTは、静的なチーム編成ではなく流動的なチーミングを推奨する初のアジャイルメソッド
6.5.2. FASTとの関連性
- 「Team of teams」というアプローチでアジャイルのスケーリング課題を解決する
- 限定された知識リソースの共有を容易にし、知識とスキルの共有を促進し、労働力を必要な場所に柔軟に配置することを可能にする
6.5.3. 推奨される行動
- マーケットプレイスを通じて、仕事の必要性に応じて自律的にチームを形成し、解体することを日常的に行う
- メンバーは、自身のスキルや興味、組織の優先順位に基づいて、自ら参加するプロジェクトやチームを選択する
- チーム間の知識やスキルの共有を積極的に行い、特定の個人やチームに知識がサイロ化するのを防ぐ
- 限定されたリソースを最も必要な場所に柔軟に配置するために、チーム間の垣根を越えた協力を促進する
6.6. ダンバー数 (Dunbar's Number)
6.6.1. 概要
- 人間が安定した社会関係を維持できる人数の認知的な限界を示す概念
6.6.2. FASTとの関連性
- FASTでは、コレクティブが単一のチームから始まり、必要に応じてサブチームに分割されることで、規模が拡大してもこの原則を維持しようとする
6.6.3. 推奨される行動
- チーム編成において、効率的なコミュニケーションと連携が可能な人数を基本とする
- コレクティブが大規模になった場合、自己組織化によってサブチームに分割することを検討し、各チームの規模を適切に保つ
- 規模が拡大しても、メンバー間の直接的で活発なコミュニケーションを促し、伝言ゲームのような非効率を避ける
- 各チームが独立して、しかし連携を保ちながら作業を進められるように、日々の情報共有を密にする
6.7. ネットワーク型組織 (Network Organization Structures)
6.7.1. 概要
- ネットワーク型組織構造は、中央集権的なリーダーを持たず、チームメンバーがフラットな立場でアイデアを出し合いながら仕事に取り組む組織形態
6.7.2. FASTとの関連性
- スケーリングの課題を解決するために 「Team of teams」 というアプローチを採用
- 静的なチーム編成やサイロ化された指揮系統ではなく、ネットワーク型組織モデルと流動的なチーミングを活用する
6.7.3. 推奨される行動
- 階層や役職に縛られず、フラットな関係性で自由に意見交換を行う
- 部門間の壁(サイロ)を越えた情報共有と協業を積極的に行い、全体最適を意識した行動を取る
- リーダーやマネージャーを介さず、直接、意思決定者や必要な関係者とコミュニケーションを取り、迅速な意思決定を促進する
- 各メンバーが高い責任感と自律性を持ち、組織全体への貢献を意識して行動する
- 権限による強制ではなく、相互理解と価値の共有に基づいて協力関係を築くよう努める
7. まとめ
以上になります。数が多くて大変だったと思いますが、最後までお読みいただきありがとうございました。
フレームワークとして用意されている構造や仕組みが少ないということには、 「それに "適応" するだけでは足りなくて "生成" していく必要があるんだよ」 と、そういうメッセージも込められているんじゃないかと勝手に推測しています。その 生成 においても、考える際のベースになってくるのは 「価値」「原則」「柱」 だと思っています。これらの思想を正しく理解したうえで独自に進化をさせていくのが、FASTを成功させて良いプロダクト開発につなげていくための道なのではと最近はよく考えます。
そして、スクラムやLeSSなどの他のフレームワークに比べると、この可変領域が多いことはFASTの1つの特徴だと思っていて、それらをうまく使いこなし、我々にとって最適な "FAST" を "生成" し続けていきたいなと思います。
FASTの真の価値は、完璧な形で導入することではなく、組織の状況に応じて柔軟に進化させていくことにあるのではないかと、そう思います。
もっと詳しく話したい方はこちらから!
この記事を読んで、もっとFASTについて詳しく話したいなと思ってくれたそこのあなた、ぜひPittaからカジュアル面談の申込みお待ちしています!
大規模アジャイルのフレームワーク、FASTについてなんでも話しましょう! というテーマで、FASTに関する疑問や雑談など、なんでも気軽にお話しできます。1年間FASTを最前線で実践してきた経験を包み隠さずお話しますので、気軽にお申し込みください!
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