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「アジャイルリーダーシップ」と必要なコンピテンシー開発実践について

2022/12/13に公開

はじめに

こんにちは、ログラスでエンジニアリングマネージャーをしている勝丸(@shin1988)です。
本記事は株式会社ログラス Advent Calendar 2022の13日目の記事になります。

昨日は@zaki___yama2023年にVisual Regression Testingを始めるならどんな選択肢があるか の話でした。

私は最近読んだ「アジャイルリーダーシップ」という本の紹介をします。
https://www.amazon.co.jp/アジャイルリーダーシップ-変化に適応するアジャイルな組織をつくる-Zuzana-Šochová/dp/4320124936

そもそもなぜこの本を紹介しようと思ったかですが、今年の8月からEMとして活動していて、色々チャレンジをしている中で自分にピッタリ刺さったので学習メモがてら残せればと思っています。また、この本に書かれていることが、ちょうど今ログラスでやっていることそのものだと思えたのでアドベントカレンダーとして記事にしようと思いました。
また、この記事では本の内容の紹介とログラスで今力を入れていることを紹介できればと思います。

本書のまとめ

まず、この本のまとめからいきます。アジャイル組織とそこで発揮されるリーダーシップに関して書かれています。もう少し詳しく見ていくと1〜3章では「アジャイルとは何か、なぜ必要か」が解説されていて、以後の章では、アジャイル組織が持つべき能力の話やリーダーが持つべき素質とその発揮の方法などが書かれています。

更に自分に刺さったポイントを踏まえつつ、本書の内容を深堀りしていければと思います。幾つかキーワードを抜き出しながら、内容を紹介していきます。

なぜアジャイルが必要か?

本書ではなぜアジャイルが必要か?という問いに「VUCAの時代に生きているから」と答えています。
VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の略で、要するに非常に複雑で曖昧で周りの環境が変わりやすい世界という意味です。
つまり短いサイクルで、価値検証をして、方向修正をするというループを回していくこと、アジャイルな状態な組織をどうやって作っていくのかが重要になってきたと主張しています。

アジャイル組織とは?

本書では組織を年代を追って区切り分別しています。

  • 組織1.0(1970年代)
    • ピラミッド型組織で指揮統制、官僚主義、標準化に基づく。リソースに注目し、各個人は明確に定義された役割と責任を持つ組織。
  • 組織2.0(1990年代-)
    • プロセス主義、分析主義が進み、サイロ化した組織。
  • 組織3.0(現在)
    • アジャイル組織。変動性や不確実性に対し、恐れずに対応できる曖昧性を味方につける組織。

区切り方は非常に恣意的なものを感じますが、VUCAが進み、今までの組織構造では上手く行かなくなってきたので何かを変えなければいけないというポイントは同意出来ます。そして外部環境の変化に適応的に対応していくアジャイルな状態の組織を目指すべきであるという主張も納得しました。
この辺まで読んで、現在所属しているログラスが向かおうとしている方向性にかなり近いのではないかと思い始めました。

本記事はリーダーシップとメンタルモデルについての記事なのでこの辺の組織については、弊社のいとひろが書いた記事がありますので参照ください。

https://zenn.dev/loglass/articles/52a7f350441684

アジャイル組織に必要なアジャイルリーダーシップ

ではアジャイル組織を作るために、本書はアジャイルリーダーが必要だと主張しています。
アジャイルリーダーに求められることは、「周りを巻き込み、周りの人のリーダーシップへの道のりを支援することである」としています。一般の人がイメージするいわゆる「リーダーシップ」とは少しイメージが違うかもしれませんが、アジャイルリーダーシップのメンタルモデルとして幾つか紹介されています。

アジャイルリーダーシップのメンタルモデル

サーヴァントリーダーシップ

  • 人の成長を助け、ビジョンを持ち、日々のタスクや短期的な目標にとどまらない。
  • 聞き上手で、共感力があり、システムと自分の能力や限界を認識し、良好な人間関係と文化に注力し、説得力が有り、コミュニティを作り、多様性を受け入れる。

リーダーとリーダー

  • リーダーシップとは主導権を握るではなく、周りに主導権を与える存在であるべき。フォロワーを鍛えるのではなくリーダーを生み出すことであるべきである。
  • リーダーとフォロワーという関係性を作り物事を進めていくのではなく、リーダーは周りに主導権を与えていくことで、新しいリーダーを作るという存在であるべきである。
  • 最終的にはリーダーとフォロワーが生まれるのではなく、リーダーともう1人の新しいリーダーが生まれる状態を目指していくべきである。

2つは相反する概念ではなく、非常に近い表現になっています。本書の著者はサーヴァント(奴隷)という表現はどうしても上下関係をイメージしてしまうので、「リーダーとリーダー」のメンタルモデルのほうが好みだと書いていました。

アジャイルでは自己組織化というキーワードが度々話題になります。自己組織化とは「チームとして最適な方法を自ら判断し行動している状態」であるとすると、上下関係に基づいた関係は自己組織化を目指す上で邪魔になるので、アジャイル界隈では上のようなリーダーシップのメンタルモデルが好ましいのだと理解しました。

個人的な話なのですが、自分は従来型のリーダーシップを持つリーダーではなく、チームメンバーを支援してチームを上手く行かせようと考えるタイプのリーダーでした。当時は周りから求められているリーダー像と自分の間に乖離があると思っていたのですが、サーヴァントリーダーシップという言葉に出会ったときに、そういうリーダーシップもあるのかと感動したことを、この本を読んでいて思い出しました。リーダーシップは幾つかの類型があるので、それらを学習してみて、周りとのすり合わせを行うとスムーズに物事が進むかもしれません。

アジャイルリーダーシップはリーダーシップを周りに共有していくモデルなので、心理的安全性が重要になります。心理的安全性を支えるには組織の透明性が重要で、現在私が働いているログラスでは、組織の透明性に非常に気をつけており、それは以下の記事に非常によくまとまっているのでよければご覧ください。
https://note.com/uramot/n/ne01d297cc2d7

アジャイルリーダーが発揮するべきコンピテンシー

以上で、アジャイル組織を作るためにアジャイルリーダーと発揮するべきアジャイルリーダーシップが重要であるということを見てきました。本書ではアジャイルリーダーが発揮するべきコンピテンシーについても説明されています。

アジャイルリーダーが発揮すべきコンピテンシー

  • ビジョン
  • モチベーション
  • フィードバック
  • コーチング
  • ファシリテーション
  • 私、周りの人、システムを変化させる
  • 意思決定
  • コラボレーション

それぞれ重要であることは理解できるのですが、本書でそれぞれ詳細に書かれているわけでは有りません。推測ですが、これら1つ1つが専門分野であり、全てを詳細に書くのは分量的に無理でかつそれらはこの本で書くべきではないと判断したのだと思います。

偶然ですがこれらのコンピテンシーを伸ばそうと、すでにログラスで行っているものがあり、それらの紹介をします。

コーチングへの取り組み

アジャイルリーダーが発揮すべきコンピテンシーの中にコーチングという項目があります。ログラスでも今コーチングに力を入れています。背景としては、ありがたいことにこの1年ほどで社員が増え、チームが増えたことで、技術的な課題だけではなく組織的な課題が顕在化してきました。システム開発はつまるところ人間同士の営みであり、チームの成功、事業の成功、会社の成功のために、人間というファジーなものの関係性を改善する必要があると考えました。

コーチングを開発組織でどう実践していくのか?

チームビルディングの一環でチーム行動指針を策定している
弊社ではチームビルディングの一環として、チーム組成時や期の変わったタイミングでどういうチームにしたいのか行動指針を決めるという取り組みを始めました。最初はチームの最初の関係性構築だと思っていたのですが、行動指針を通して自分たちの行動をふりかえることができるということに気づき続けています。

実際に自分のチームであった例なのですが、決めた行動指針を守れているか?という議論から、もっとチームをこうしていきたいや今の目標値では行動指針に合わないので目標をもっと高くしようという会話に繋がりました。
この手法はDTA(Designing Team Alliance: 意図的な協働関係の構築)と呼ばれており、コーチングを推進してくれている弊社松岡の記事の記事が詳しいので参照ください。
https://note.com/majackyy/n/ne4bcbd2957a2

個人で受けるコーチング費用を福利厚生として、半額補助する
自分も個人でコーチングを隔週で受けています。内容は「自分の業務についての会話を通して、自分が新たに気づきを得る」と「長期的な個人目標の管理とふりかえり」をしています。
その費用の半額を会社負担で補助してもらっています。これは社員であれば誰でも利用することができ、自己研鑽の機会として利用しています。

フィードバックを支えるFeed forwardというバリュー

ログラスではFeed forwardというバリューを作り実践することで、社内でフィードバックを与え合う文化を醸成しています。またフィードバックとは、与えるという一面性に注目しがちですが、素直に受け取り咀嚼する行為も重要と捉えており、上記のような表現にしています。もちろん咀嚼した上で反論することもバリュー発揮の一部です。

本書でもフィードバックについて書かれており、「フィードバックを与えることはフィードバックフローの一部に過ぎず、フィードバックを受け取ることのほうがより重要です」と指摘されています。

https://www.wantedly.com/companies/loglass/post_articles/333320

最後に

本記事ではアジャイルリーダーシップという本を読んで、アジャイルリーダーシップがなぜ必要なのかを紹介しました。この記事では紹介が中心になってしまったので、もっと具体的な話はぜひ本書を手にとって読んでみてください。本書の特徴として、現在の状態を測るワークや、コンピテンシーをどう伸ばしていくのかワークがありそれらを通して実践できるようになっています。

引き続き、Loglass Advent Calendarをよろしくお願いします。
https://qiita.com/advent-calendar/2022/loglass

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