Reactの状態を理解して適切にHooksを利用する
Reactと状態は切っても切れない関係です。なぜなら、Reactは状態に基づいて画面を更新するコンポーネントベースのUIライブラリだからです🤝🏻
そんなReactの状態を管理・操作しやすくしてくれているのが、React 16.8から登場したフックです。それゆえ、フックを正しく利用するにあたってReactの状態の理解は非常に重要であり、Reactの状態の理解があやふやだと、予期せぬ挙動やバグのもとになりかねません。
今回の記事では、Reactの状態を理解しながら適切な箇所で適切なHooksを選択していくプロセスを再確認できた!自信を持ってReactをコントロールできるようになりそう!と言えることをゴールとしています🎉
今回使用した即席匿名メモアプリのコードベースです。
サークルでは、コミットに沿って説明をしていきました。(あくまで即席なので細かいこと気にしながら作ってませんorz)

【序章】フックとレンダーとコミットとstate
そもそもフックとは何なのでしょうか?👀
Reactの公式ドキュメントにはきちんと明文化されています。
React では、useState やその他の use で始まる関数はフック (Hook) と呼ばれます。
フックは、React がレンダーされている間のみ利用可能な特別な関数です。フックを使うことで、さまざまな React の機能に「接続 (hook into)」して使用することができます。
Learn React - はじめてのフック
では、ここでいうレンダーされている間とはどの期間を指すものなのでしょうか?🤔
レンダーとコミット
まず、「レンダーされている間」を捉えるために、コンポーネントが画面表示されるまでのプロセスを理解したいです。
コンポーネントはライフサイクル(マウント→アップデート→アンマウント)の最初のステップである「マウント」がなされる前に、まずReactによってレンダーされてコミットされる必要があります。

出典 - Learn React
レンダーとは、コンポーネントが画面表示される際に必要なプロセスの一つであり、コンポーネントがReactアプリから呼び出されることです。
コンポーネントが呼び出される(レンダーがトリガーされる)原因は大きく2つあります。
- コンポーネントの初回レンダー(ReactはRootコンポーネントを呼び出す)
- コンポーネントまたはその祖先のset関数によるstateの更新(Reactはset関数が使用されたコンポーネントを呼び出す)
画面に表示(ブラウザレンダリング)される前に、レンダーによって表示・更新するコンポーネントを決めているということですね!
更新されるコンポーネントが決まったら、Reactは実際にDOMを更新する必要があります。これをReactではコミットと呼んでいます。
Reactは呼び出し(レンダー)に差異があった場合にのみ、DOMを変更してコミットしています。(Hydration)
その後、コミットフェーズで行われたDOMの変更をブラウザレンダリングします。(同時にマウントされ、コンポーネントのライフサイクルがスタートします)
したがって、「レンダーされている間」は一般的には「レンダーがトリガーされてからコミットされるまでの間」ということができ、具体的には「set関数が呼び出されてからDOMが構築されるまでの間」が当てはまります。
つまり、フックは「レンダーがトリガーされてからコミットされるまでの間」にだけ利用可能な関数ということになります!
レンダーとstate
レンダーはset関数によりトリガーされることから、どうやらレンダー間で情報を記憶しておく必要がありそうです🤔
さもなければ、前回レンダー時の情報に依らないコンポーネントが生成されてしまいます。
そこで、stateというレンダー間でコンポーネントの情報を記憶しておく手段が登場します。stateはいわばコンポーネント自身が持つメモリのような存在です。
以下の図のように、set関数がトリガーとなって、新しいstateを持ったコンポーネントがレンダーされます。
こうして情報の上書きはされずに再レンダーがトリガーされて新たなstateを持ったコンポーネントが出来上がるような振る舞いなので、Reactではこれをコンポーネントのスナップショットを撮ると表現しています。📸

引用 - Learn React - state 更新後の再レンダー
こうして生成されるstateを利用して、そのJSX内のprops、イベントハンドラ、ローカル変数などが計算されます。
これからフックについてお話ししていきますが、「レンダー」に関して(🤔?)となったときは、この章に戻ってきてみてください🌻
【序章】フックの全体像
stateはReactを理解する上で最も理解しておきたい機能(自分調べ)ですが、フックはstateを含むその他のReactの機能をさらに使いやすくしてくれます。
そんなフックオールスターズをまとめると以下のようになります。(2024年1月末現在stableで提供されているもの)

こんなにたくさんいらっしゃったんですね!✨
今回は、このフックオールスターズから選抜メンバーとして以下のフックを匿名メモアプリに招き入れました。
useEffectuseStateuseReduceruseContext-
useMemo・useCallback・memo(API) useRef
早速、メンバーの特長を見ていきましょう🤸🏻
useEffectで初期データをフェッチしよう
📝該当Commit - feat: useEffectを用いた初期データフェッチ
useEffectはReactでは避難ハッチと呼ばれるフックに該当します。
「避難ハッチ」とは、React の外、つまり外部システムに接続するためのReactの機能です。React 外のシステムに対して制御や同期を必要とする場合に使用することが期待されます。
(e.g; レンダリング時にwebsocketサーバと接続を確立,初期データを取得など)
さらに、useEffectはイベントではなくレンダー自体によって引き起こされるアクションのためにあるということもできます。なぜなら、useEffectの発火条件である依存配列の差分チェックはレンダー毎に行われるからです。
そんなuseEffectを使用して初期メモデータをフェッチしましょう!🏄🏻
useEffectの基本的な使用方法に関する説明は他の記事に譲りますが、初期データフェッチということでuseEffectの第二引数である依存配列には何もリアクティブな値を入れていません。
「依存配列が空=レンダリングの前後で比較するものがない=最初しか実行されない」ということを利用して初期データフェッチを行うためです。
(※didInitは開発モードで2回レンダリングが起こることへの対応です)
これで初期メモデータを取得して表示できるようになりました!
useStateでレンダー間でstateを管理しよう
📝該当Commit - feat: イベントハンドラ内でのstateの更新&cud
さて、現状はメモのRead結果をUIに反映することしかできません。Create, Update, Delete結果もUIに反映できるようにしたいです。
画面を更新するためには、レンダーをトリガーしますが、前のスナップショットの結果を記憶しつつ次のスナップショットを撮らねばなりません。
そこで、useStateを使用してレンダー間でstateを共有しつつ、コンポーネントのレンダーをトリガーしてUIを更新しましょう!
詳細の実装と説明
まず、メモの表示を行うMemoListPresenterにmemos stateとmemos set関数を渡します。MemoListPresenterがmemos stateを読み、set関数でレンダーをトリガーしてスナップショットを撮ることができるようにするためです。
function MemoListContainer() {
const [memos, setMemos] = useState<Memo[]>([]);
useEffect(() => {
if (didInit) return;
const fetchData = async () => {
const response = await fetch(
`${import.meta.env.VITE_API_BASE_URL}/memos`
);
const data = await response.json();
return data;
};
// ✅ fetchData()はアプリケーションの初期化時に一度だけ実行される
fetchData()
.then((memos: Memo[]) => setMemos(memos))
.catch(console.error);
didInit = true;
}, []);
- return <MemoListPresenter />;
+ return <MemoListPresenter memos={memos} setMemos={setMemos} />;
}
MemoListPresenterのhandleAddMemoでは、バックエンドとのデータ更新処理を行い、その結果を渡されたset関数を用いて再レンダーをトリガーすることでフロントエンドUIに反映しています。同ファイルのhandleUpdateMemoState, handleUpdateMemoTitle, handleDeleteMemoでも同じ手順のことをやっています。
これで、メモのCRUD処理の結果をUIと同期させることができました!🫶🏻
useReducerでstateを一元管理しよう
📝該当Commit - refactor: useReducerでリファクタ
アプリケーションがもっと大きく複雑なものであった場合を考えてみましょう。
同様のstate更新ロジックがアプリケーション全体で散見されることが考えられます。
そんな時、useReducerを使用してstate更新ロジックを一点に集約させることができます。
useReducerを使用するメリットとしては以下のようなものがあります。
- 「どう更新するのか」(ロジック)をReducerに、「何が起きたのか」(アクション)をイベントハンドラに書くことで、コンポーネントが更新の内部処理を知らなくてもよくなる
- stateがどこで誤ってセットされたのか・どのロジックに問題があるのかが特定しやすくなる:デバッガブル
- reducer自体はコンポーネントに依存しない純関数のため,テストしやすくなる:テスタブル
え、そもそもreducerって?👂🏻
一度は「わからん」てなって調べたことがある組み込みメソッドから着想を得ます
const arr = [1, 2, 3, 4, 5];
const sum = arr.reduce((result, currentNumber) => result + currentNumber);
- reduce() 操作: 配列を受け取り、多くの値をreduceして1 つの値に「まとめる」ことができるもの
- reduceに渡している関数が「reducer」
そんなuseReducerを使ってuseStateで書かれたコードをリファクタリングしていきましょう!
詳細の実装と説明
useStateの代わりにuseReducerを使用します。もともとhandleAddMemo内に書かれていたstateの更新ロジックは見当たらず、代わりにdispatch({ type: "add", payload: addedMemo });が追加されています。
重要なstate更新ロジックはというと、memosReducerという関数の中にあります。memosReducer自体はフックではなく、memosというstateと{type: actionNameToDetermineWhichReduceLogicToUse; payload: objectToBeUsedInTheReduceLogic}という形式のactionの二つの引数を持つ関数です。この関数はtypeの種別によって異なる処理をし、処理の内容が先ほどあったstate更新ロジックと同様のものになっています。
このmemosReducer関数をuseReducerの第一引数、初期stateを第二引数に渡すことで、[memoのstate, stateに対する処理をのトリガーとなるdispatch]を返すことができるようになりました。
これで、コンポーネント内でアクションtypeがaddの処理をしたいときはdispatch({ type: "add", payload: addedMemo });とすれば良くなりました。
コンポーネントからuseStateが消えて、state管理のロジックがReducerに移譲されました。
今回はコンポーネント数も少なく、小規模なアプリケーションなのでuseReducerを使用する複雑性や実装コストの方が増しますが、大規模なアプリであった場合は前向きに検討したいstateの扱い方ですね🌟
useContextで広範囲のstateを管理しよう
📝該当Commit - feat: contextでテーマを変更
今度はdark/lightモードの切り替えを行えるようにしたいです。🌚🌝
useContextは以下の場合を解決してくれるフックです。
- props を多数の中間コンポーネントを経由して渡さないといけない場合
- アプリ内の多くのコンポーネントが同じ情報を必要とする場合
- props の受け渡しによってコードが冗長になる場合(=prop drilling)
テーマのstateはアプリケーション全体に及ぶため、useContextが効果を発揮できると考えられます。
Contextが使用されている具体例としては、
- Reduxなどの状態管理ライブラリ
- アカウント情報の保持
- React Routerなどルーティング
などが有名です。
Context(提供されるstateの実体(の定義))とProvider(提供する親)を用意することでuseContextは使用可能となり、Context,Providerの関係を使用するとCompound Componentsパターンを達成することができます。
(Compound Componentsパターンをフックで実現しようとした結果useContextが生まれた、の方が正しいかもしれません)- React Hooks: Compound Components
早速、useContextを使用してアプリのテーマ変更を行えるようにしていきましょう!
詳細の実装と説明
まず、Contextを定義・作成します。
作成したContextのProviderコンポーネントを作成します。Providerに実際のContextの値であるthemeとsetThemeをvalueとして詰めます。
Contextが必要な子コンポーネントが全て含まれる直近の親コンポーネント(ここではアプリのRootコンポーネント)を作成したProviderでラップします。
すると、アプリのRootコンポーネント以下に含まれるコンポーネントではuseContextが使用可能になります。今回はuseContextにエラーハンドリングを付与したuseThemeContextカスタムフックとして利用できるようにします。
子コンポーネントから、useThemeContextでContextに詰められている値にアクセスして、テーマを制御できるようになります。
アプリケーションがダークモードに対応しました!✨
(※後続Commit - refactor: ReducerをContextに詰める ではreducerをContextに詰めることで、さらに規模の大きなアプリケーションになったときにstateが管理しやすくなるようにしています。簡易的な自作Reduxの感覚です。)
useMemo・useCallback・(memo API)で最適化しよう
次に、メモリストにフィルター機能をつけて、❤️(marked)、🩶(unmarked)、🧹(全表示)でメモの出しわけをできるようにします。
詳細に入る前に、useMemo・useCallback・(memo API)を一言でまとめておきます。
目的語が大事です。
-
useMemo- 重たい関数の計算結果・値・JSXをキャッシュするためのフック
-
useCallback- 関数をキャッシュするためのフック
-
memoとよく使う
-
memo- コンポーネントをキャッシュするためのAPI
useMemoを使って値をキャッシュする
useMemoは値のキャッシュをしてくれる、言い換えるとレンダー前後でuseMemo依存配列の値に差異がない場合に値の再計算をスキップしてくれるフックです。
まず、最適化の恩恵をわかりやすくするために、以下のバグを仕込みます。この改悪により、🧹(全表示)するときに1秒間の遅延が発生するようになってしまいました。

🐛改悪Commit - chore: 人為的に全てのメモを表示する時に遅延させる
このコミットをuseMemoを使って改善していきます。
以下のように、filterMemos()をuseMemoでラップすることで、ある条件下においてfilterMemos()の計算結果をキャッシュすることができます。「ある条件」とは、useMemo第二引数の依存配列を指しています。この場合、依存配列内のfilter, memosの少なくとも一方にレンダリング間で差異があった場合にのみ、filterMemos()関数の返す値は「前回のレンダリング時と異なる」とマークされ、filterMemos()は再計算されます。言い換えると、filter, memos以外の値しかンダリング間で変化がなかった場合は、キャッシュされたfilterMemos()の結果が使用され、filterMemos()は再計算されません。
📝改善Commit - feat: useMemoによってthemeの切り替えでは遅延は起こらなくなった

これで、少なくともテーマ変更時(theme state変更時)に遅延が起こるということは無くなりました!👏🏻
useCallbackを使って関数をキャッシュする
useCallbackは関数のキャッシュをしてくれる、言い換えるとレンダー前後でuseCallback依存配列の値に差異がない場合に関数の再生成をスキップしてくれるフックです。
memoを使ってコンポーネントをキャッシュする
memoはフックではなくAPIの部類なのですが、コンポーネントの最適化の際に必要なAPIです。memoを使用すると、propsが変更されていないコンポーネントの再レンダーをスキップすることができます。
以上のuseCallbackとmemoAPIをセットで使用すると、関数propsを含むコンポーネントの最適化を図れます。
🎏 FYI:関数の再生成とuseCallbackの使用意義
そもそもどうして関数のキャッシュをする必要があるのか?
関数propsを含むコンポーネントの最適化でuseCallbackを使用する意義を求めるとき、そもそもどうして関数のキャッシュをする必要があるのか?という疑問がフツフツと湧いてきます。
以下のように関数が配置されている場合、一見、再レンダーがあっても関数は変化しないように思えます。
export default function Example() {
const handleAction = () => {
console.log("Action");
};
return <SomeChildComponent action={handleAction} />;
}
しかし、useEffectの依存配列の差分検知の仕組みを紐解くと、関数はレンダリングのたびに再生成されることがわかってきます。
useEffect依存配列の差分検知では、内部的にはObject.is()を用いています。
実は、このObject.is()ではレンダリングのたびに再生成されるObjectやSymbolの比較は期待通りに行うことができず、関数も例外ではありません。
したがって、実際は関数はレンダリングのたびに再生成されるもので、レンダリング前後では別の関数になってしまいます。
そうして変更があった関数をmemoが使用されたコンポーネントにpropsとして渡すとき、memoが使用されたコンポーネントは「あ、関数propsに変更があった」と検知してしまい、コンポーネントの再レンダリングをしてしまうことになります。
useCallbackとmemoの関係を理解したところで、以下のバグを改善していきましょう!❤️🔥
以下のコミットでは、レンダーの度に0.5秒間の遅延が発生するMechaOsoiListItemを仕込みました。改悪により、メモのレンダーに本質的には関係ないテーマの変更でも遅延が発生することがわかります。

🐛改悪Commit - chore: 人為的にメモを表示するときに遅延させる
useCallbackとmemoを用いてMechaOsoiListItemコンポーネントの最適化をします。
まず、MechaOsoiListItemをmemo()でラップします。これによりMechaOsoiListItemに渡るpropsが変更されない限りはMechaOsoiListItemは再レンダーされなくなります。
次に、MechaOsoiListItemに渡る関数propsをuseCallbackを用いてキャッシュします。

📝改善Commit - feat: useCallbackとmemoによってコンポーネントのメモ化(useCallback使用部分)
📝改善Commit - feat: useCallbackとmemoによってコンポーネントのメモ化(memo使用部分)
これで、少なくともテーマ変更時(theme state変更時)に遅延が起こるということは無くなりました!👏🏻
useRefでUIに関係ない値をレンダー間で保持しよう
refはコンポーネントがレンダリングプロセスとは別に持っている「隠し箱」のようなものです。{current: value}のオブジェクト形式で存在しています。
よく、値を保持できるという観点でuseStateと比較されることがありますが、決定的な相違点はレンダリングをトリガーすることができるか否かです。
| useState | useRef | |
|---|---|---|
| 値を格納できる | ⭕ : state
|
⭕ : {current: value}
|
| 再レンダリング | ⭕ : set関数を使用する為 | ❌ : 変数のように直に値を書き換える為 |
再レンダリングを行わないということは、画面の更新を行わないということですので、useRefではUIとは関係のない・UIには反映されない値を保持するために使用するのが適切です。
UIには反映されない値の代表として、
- DOM要素
- timerID
などが挙げられます。
今回はrefを使用してtimerIDを管理し、タイマー機能を追加してみます。⏳
まず、正常な挙動をしないタイマーのコミットです。startボタンを押せば押すほどタイマーが生成され、カウントダウンが早くなります。

🐛バグCommit - chore: 複数のタイマーが同時に起動してしまうコンポーネント(startを押すほどカウントダウンが早くなる)
useRefで生成したrefを使用してtimerIDを管理し、正常にタイマー機能を動作させましょう!🏋🏻

📝改善Commit - feat: 正常タイマー:常に一つのタイマーしか存在しない
これで、タイマー機能が追加され、デモアプリケーションが完成しました🎉
まとめ
Reactの状態の重要性について理解したのち、広く浅くHooksに触れました。
今回は、あくまでReact純正のHooksに主眼を置いていたのでサードパーティ製のライブラリ等には触れませんでしたが、こうした複雑なReactの状態を少ない手順で管理しやすくしたいときに、サードパーティ製のライブラリの使用は有効です。
ライブラリの内部では、今回理解を深めていったフックたちがふんだんに使用されているため、使用されているフックを予測したり仕組みを知りたい時にも、フック理解の効果が発揮されます。
どんな技術に触れるときも、一つひとつ基本を着実に理解しながら発展させていくプロセスを大切にしたいです🧚🏻
おまけ - 避けたいuseEffectの使用方法
今回のメモアプリでは❤️(marked)、🩶(unmarked)、🧹(全表示)でメモの出しわけができるフィルター機能を追加しました。その際に、フィルターされるメモをどのように管理するのかを考えます。
以下のfilterMemos関数に着目すると、setFilteredMemosで再レンダーをトリガーしてfilteredMemosstateを変更することで、メモの出しわけを行なっています。memosのstate変更はCRUD処理のイベントハンドラからも行われるため、memosの値が更新されたときにfilteredMemosの値が更新されるようにするため、以下ではuseEffectを使用してメモの変更を反映しています。
しかし、この書き方だと、handleAddMemoでmemoを追加したときにmemos stateを更新するためのdispatchによるレンダリングと、memos stateが変わったときにfilteredMemosを更新するために発火するuseEffect内のsetFilteredMemosにより2回のレンダリングが行われてしまいます。
メモを追加するだけでレンダリングが2回起こるということは、特別な理由がない限り避けたい方法です。
避けたいパターン
export function MemoListPresenter() {
const ref = useRef<HTMLInputElement>(null);
const { memos, asyncDispatch } = useMemosContext();
const [filteredMemos, setFilteredMemos] = useState<Memo[]>(memos);
const { theme } = useThemeContext();
// 🤔よくあるパターン
// レンダリングを効率的に活かせていない
// handle...によるレンダリングが発生するたびに、
// useEffectによるレンダリングも発生する
useEffect(() => {
setFilteredMemos(memos);
}, [memos]);
async function handleAddMemo(title: Memo["title"]) {
asyncDispatch(
// add apiを叩く
...
dispatch({ type: "add", payload: addedMemo });
}
);
}
function filterMemos(which: "marked" | "unmarked" | "all") {
if (which === "marked") {
setFilteredMemos(memos.filter((memo) => memo.marked));
} else if (which === "unmarked") {
setFilteredMemos(memos.filter((memo) => !memo.marked));
} else {
return setFilteredMemos(memos);
}
}
return (
<main className="flex flex-col justify-center items-center gap-5">
...
<div className="flex justify-end">
<Button icon={"❤️"} onClick={() => filterMemos("marked")} />
<Button icon={"🩶"} onClick={() => filterMemos("unmarked")} />
<Button icon={"🧹"} onClick={() => filterMemos("all")} />
</div>
...
{filteredMemos.map((memo) => {
return (
<ListItem
key={memo.id}
...
/>
);
})}
...
</main>
);
}
🐛Commit - chore: ちょっとよくないuseEffect
その代わりに、イベントハンドラでトリガーされるレンダーを利用してfilterMemosで出力するstateを計算するようにします。
上の例のようなstateの変更に基づいて別のstateを更新するという操作は一般的には避けることができ、既存のpropsやstateからレンダー中に計算することができます。
レンダー中にfilteredMemosを計算する
export function MemoListPresenter() {
const ref = useRef<HTMLInputElement>(null);
const { memos, asyncDispatch } = useMemosContext();
+ const [filter, setFilter] = useState<"marked" | "unmarked" | "all">("all");
- const [filteredMemos, setFilteredMemos] = useState<Memo[]>(memos);
const { theme } = useThemeContext();
- useEffect(() => {
- setFilteredMemos(memos);
- }, [memos]);
async function handleAddMemo(title: Memo["title"]) {
asyncDispatch(
// add apiを叩く
...
dispatch({ type: "add", payload: addedMemo });
}
);
}
function filterMemos(which: "marked" | "unmarked" | "all") {
if (which === "marked") {
return memos.filter((memo) => memo.marked);
} else if (which === "unmarked") {
return memos.filter((memo) => !memo.marked);
} else {
return memos;
}
}
return (
<main className="flex flex-col justify-center items-center gap-5">
...
<div className="flex justify-end">
<Button icon={"❤️"} onClick={() => setFilter("marked")} />
<Button icon={"🩶"} onClick={() => setFilter("unmarked")} />
<Button icon={"🧹"} onClick={() => setFilter("all")} />
</div>
...
{/* handle...によりレンダリングがトリガーされるタイミングを利用して
filterMemosで出力するstateを計算する */}
{/* ✅ レンダリングを効率的に活かせる! */}
{filterMemos(filter).map((memo) => {
return (
<ListItem
key={memo.id}
...
/>
);
})}
...
</main>
);
}
📝改善Commit - feat: フィルタリング機能
(さらに改善✨)「filteredMemoは三項演算子やuseMemoを使用することで発火のタイミングを共有しやすくできます」
というコメントをいただいています。@honey32さん、ありがとうございます!
参考
Discussion
細かいところで失礼します
filteredTodo については、
と生の式 + 三項演算子を使って書くほうが良いと思います。
もしくは、計算結果がキャッシュされることを除いて同じ意味になりますが、useMemo を使うことが多いです。(useMemo の中はアロー関数が書けるため、三項演算子を使わなくて済むので)
filterMemos(filter)のような形でも正しく動きはしますが、上記のように生の三項演算子を使った式 or useMemo で書くことで、「filteredMemo は、filter, memo から計算できる状態である」 (この言い回しは react.dev/learn にも度々登場します)と意識することが出来て意図の共有がしやすいと思います。コメントありがとうございます!
1番目の改善提案に関しては、私の書き方をこの場合三項演算子で書いた方が良いというものですね!
2番目の改善提案にある、
useMemoを使用する意図がとても勉強になります!🙌🏻確かにフックの依存配列は発火タイミングを明示してあげることができるという働きもありました。
加筆しておきます!
少しでも学習のお役に立てたなら幸いです!
(コードのタイポ、意図の不明確な文章を少し修正しました)
メチャクチャよくまとまってますね…!
読んでる途中ですが、「useCallback 重たい関数をキャッシュするためのフック」の部分は誤りと思います。重たい関数というものがそもそもなく、レンダーごとに関数が再生成される→関数は参照が等しくないと等価とみなされないのが問題であり、「重いかどうか」は関係ないので
(後ろの「レンダー前後でuseCallback依存配列の値に差異がない場合に関数の再生成をスキップしてくれるフックです。」の説明は合ってるので、重い関数云々のとこピンポイントでのミスだと思います)
読んでいただきありがとうございます🌟
確かに、実行コスト(「重さ」)ゆえ
useCallbackを使っているのではないですね...!Profilerなどで測定した結果、著しくパフォーマンスに影響を与えているコンポーネントが関数propsを受けていた場合に、その関数定義を
useCallbackでキャッシュ&コンポーネントをmemo化してあげることでパフォーマンス改善の第一歩を踏み出せるという理解でした。「重たいコンポーネントをキャッシュしたいときに併用が考えられるフック」というイメージですが、単に「関数をキャッシュするためのフック」と修正しておきます!