新チームで違和感を感じ、インセプションデッキを作った話
はじめに
こんにちは!レバテック開発部の宮下です。
最近、私がジョインしたチームで、チームビルディングの一環としてインセプションデッキを作成しました。
この記事では、インセプションデッキの作成プロセスやその成果についてご紹介します!
そもそもインセプションデッキとは
インセプションデッキとは、プロジェクトの全体像(目的、背景、優先順位、方向性等)を端的に伝えるためのドキュメントです。ThoughtWorks 社の Robin Gibson 氏によって考案され、その後、アジャイルサムライの著者 Jonathan Rasmusson 氏 によって広く認知されるようになりました。
インセプションデッキとは、10個の質問に答えていくことでプロジェクトの"Why"や"How"を明確にしてくれるものです。
また、本記事で扱う『インセプションデッキ』は、特定のプロジェクトに焦点を当てたものではなく、チーム(組織)に焦点を当てたものになります。
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プロジェクトインセプションデッキ
- 特定のプロジェクトに焦点を当て、その成功に必要な要素を明確にするためのもの
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組織インセプションデッキ
- 組織全体の戦略や文化を明示し、全体の方向性や価値観を共有するためのもの
インセプションデッキを作った背景
新しくチームにジョインした私は、2週間ほど経過したあたりで違和感を感じました。
それは、チームの存在意義や価値、方針、ゴールが不明確であることが原因でした。
メンバーと話し合うと、以下のような状況が背景にありました。
- 元々別のプロジェクトに注力しており、新プロジェクトに移行したばかりだった
- リーダー的メンバーの退職
- 中途入社の新しいメンバー(自分)の加入
- チームのビジョンがもともと不明確だった
状況をまとめるとメンバーの再編成やプロジェクトの移行期で、チーム全員がふわっとしていてどこを目指すべきか分からない状態でした。そこで、インセプションデッキの作成を決定しました。
インセプションデッキを作る
インセプションデッキには10個の質問が含まれていますが、すべてに回答するには時間がかかりすぎるため、チームで話し合い、特に意見の食い違いが多そうであった6つの質問に絞ることにしました。
- 我われはなぜここにいるのか
- エレベーターピッチを作る
- やらないことリストを作る
- ご近所さんを探せ
- トレードオフスライダー
- 何がどれだけ必要なのか
インセプションデッキの雛形は、以下のサイトにあるものを使用しています。
インセプションデッキ作りを始めて、話してみると認識の相違がでるわでるわで..ビックリでしたね。笑
また、このような状態ではチームの一体感も生まれないし、ミスコミュニケーションも生じるよな..と腑に落ちました。
実際にできたインセプションデッキ
Miroなどを使うことも可能ですが、文字ベースで今回はやってみました!
インセプションデッキを作る過程で苦労したこと
時間とリソースの制約
インセプションデッキの作成には時間がかかる..。
プロジェクトのスケジュールとのバランスを取るのがやはり難しいと感じました。
私のチームの場合、既にプロジェクトが始まっていたため、全てのタスクを中止してインセプションデッキ作成に専念することなどはできず、プロジェクトの進行と並行して作業を進めました。
その結果、作成には約2週間を要しました。また、今回私のチームでは6つの質問に絞りましたが、約10時間かかりました。チームは5人いたので工数にすると50時間ですね。更に、インセプションデッキの作成を主導する方は、準備や予習に5〜10時間程度かかると思います。(有識者ならもっと少なくなります)
そこで、時間なるべくかけないようにするために大事なのは下記の3つだと感じました。
- 取捨選択
- チームにとって本当に必要な項目や質問を絞り込み、デッキの内容が過剰にならないようにします。時間がない場合は2~3項目だけに絞って、最小構成で始めてみるのも良いと思います。私のチームの今回6個に絞りましたが十分効果は感じています!
- 事前準備
- インセプションデッキの作成を主導する方は、必要な知識を持っておかないとメンバーからの質問に答えられず、ぐだぐだになってしまいます(これは私自身の経験です..)
- 適切なフォーマット
- ネットでフォーマットを検索すると、さまざまにカスタマイズされたものが出てきます。自分たちが答えやすいフォーマットを選ぶことが重要です。フォーマットの選び方によって、作業の効率が変わると感じました。
インセプションデッキを作り終えて感じた効果
①ビジョンと目標の明確化
全員がプロジェクトの目的やチームの存在意義を共有できるようになり、同じ方向を向いて取り組むことができました!
また、チーム全員がプロジェクトのビジョンと目標を理解し、同じ目標に向かって取り組むことで、モチベーションが高まり、一体感も強化されました。
例えば、チームで扱うタスクを決める際に、「我々はなぜここにいるのか」や「やらないことリスト」を参考にすることで、タスクがプロジェクトの目標にどれほど貢献するかを判断することができました。これにより、「このタスクは自分達の目標には関連しないよね」といった会話が生まれ、プロジェクトにとって本当に重要なことに優先的に集中できるようになりました。
②ミスコミュニケーションや意思決定コスト削減
プロジェクトやチームに関する重要な情報をインセプションデッキにまとめることで、全員が共通の情報を基に議論でき、判断に迷った際にはデッキを参照することができました。
例えば、タスクを進める際に品質と期日で意見が分かれた場合でも、トレードオフスライダーで「品質優先」と決めていたため、スムーズに解決することができました。このように、インセプションデッキのおかげで、決定が一貫性を持ち、プロジェクトが円滑に進行する場面が何度もありました。
その中でも、特に以下の3つが大きく役に立ったと感じました!
- 我われはなぜここにいるのか
- ご近所さんを探せ
- トレードオフスライダー
インセプションデッキのメンテナンスについて
インセプションデッキは、プロジェクトの初期段階で作成する重要なドキュメントです。
しかし、プロジェクトが進行して行くなかで変化に応じてインセプションデッキを定期的にメンテナンスする必要があると感じています。
変化とは具体的には下記を指します。
- 人: ステークホルダーやチームメンバーの変化
- ビジネス: ビジネスニーズや目標の変化
- 技術: 技術的な要件や制約の変化
私のプロジェクトでは”人”の部分で最近変化があったため、「ご近所さんを探せ」や「何がどれだけ必要か」について、メンテナンスしないとな〜と感じています。
そのため、自チームではインセプションデッキのメンテナンスを3ヶ月ごと(四半期ごと)に行う予定です。これにより、プロジェクトの進行に合わせて最新の情報を維持し、チーム全体が一貫した理解を持てると考えています。
さいごに
最初にきちんと背骨通しておかないとチームやプロジェクトは迷走しがちです。「なんでこのプロジェクトやっているんだろ..」「このチームはなんで必要なんだろう..」なんてことをメンバーが段々と感じてきてしまうこともあるでしょう。
そこで、チームやプロジェクトが迷走しないために、最初に目的や方向性を明確にすることが重要です!
特に既存プロダクトのプロジェクトでは、時間がかかってしまうためインセプションデッキの作成が省略されがちですが、時間をかける価値が十二分にあると感じています!!インセプションデッキにより、課題解決の目的が明確になり、チーム全員の目標認識も統一されるため、プロジェクトの進行がスムーズになります💪
ぜひ一度、インセプションデッキを作成してみてはいかがでしょうか👀?
この記事が読者の方のチームやプロジェクトにも有益となることを願っています。
お読みいただき、ありがとうございました!!
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