年末に(私が)読みたい! 要件定義のおすすめ書籍ズ23冊
これはなに
どうも、レバテック開発部のもりたです。
この記事は「レバテック開発部 Advent Calendar 2024」の 2 日目の記事です!
昨日の記事は、seoink さんの「TS ユーザーが初見の Haskell を写経して型への認識をすこし改めた記録」でした。学びのワクワク感が詰まっててよかったぜ...!!
アドベントカレンダー2日目の本記事では、年末に(もりたが)読みたいな〜と思っている要件定義関連の書籍を23冊紹介します。要件定義の書籍ってイマイチ抽象的だったり、自分の知りたい情報とずれている気がして読むのが難しいですよね。もりたはず〜〜〜〜っとそうだったんですが、最近読み方が分かってきました。それが嬉しいので、要件定義関連書籍の読み方に悩める諸氏に向けて、要件定義の主要な論点を明示した上で書籍を紹介していきます。
扱う領域と扱わない領域
では具体的に、今回ご紹介する/紹介しないのは以下の領域です。
- 扱う領域
- やさしい要件定義
- 企画
- 業務プロセス
- データモデリング
- UI/機能
- 非機能要件
- プロジェクトマネジメントの概要
- コミュニケーション
- その他
- 扱わない領域
- プロジェクトマネジメントの詳細なもの
- toCプロダクト向けのもの。リーンとかそういうやつ(よくわかってない)
要件定義の論点マッピング
前回の書評記事ではロードマップにしてましたが、今回はマインドマップ風にしてみました。
どこから読んでも良いと思いますが、初めて手に取るのであればおすすめは中心の「やさしい要件定義」の書籍群です。その中のどれかひとつを読んだ上で、より上流のことに興味があれば「企画」「業務プロセス」、要件定義の具体的なところが知りたければ「データモデリング」「UI/機能」「非機能要件」、要件定義のコントロールについて気になれば「プロジェクトマネジメントの概要」「コミュニケーション」、ちょっと読むのに疲れちゃった人は「その他」をおすすめします。
読みたい書籍ズ
1. やさしい要件定義
まずはやさしい要件定義の書籍たちです。
要件定義わかんないな、となったとき真っ先に気になるのが顧客の要望をどんな機能にすればよいのか? という点だと思います。ここでは要求を機能化するまでを扱った書籍をふたつ、そしてより上流のテーマを扱った書籍を一冊ご紹介します。
1-1. 『はじめよう! 要件定義 ~ビギナーからベテランまで』
まず紹介したいのはこの書籍です。要件定義について初めて学ぶときつらいのが、要件定義はとにかく範囲が広く、網羅的に掴もうとすると抽象的だったり興味がない範囲までおさえる必要が出てきたりする点です。その点この書籍は、要件定義における機能要件に論点をしぼり、どのように整理していくのかを解説してくれているため理解しやすいです。
ボリュームがコンパクトなところも嬉しいポイント。シリーズものでプロセス定義、システム設計もあり、そちらもおすすめです。
1-2. 『だまし絵を描かないための-- 要件定義のセオリー』
いまのところ読んで一番良かった書籍です。3回くらい読み返しています。
要件定義の書籍ってその扱う範囲が広いために、たんなる知識や作成するドキュメント・工程の羅列になりがちで、なぜそのドキュメントを作るのか? だったりそれら工程の関係性については内容が薄いことも多いです。
本書は扱う範囲の広さをある程度維持しながら、なぜなのか? だったりお互いの関係性を押さえた解説がなされています。なにか概論的な要件定義の書籍を読んで、分かったような分からんような気持ちになっている方はぜひこの書籍で納得体験をしてほしいな〜と思います。
なお、schooに動画講義もあるので、そちらを見るのも良いと思います。
1-3. 『システムを作らせる技術 エンジニアではないあなたへ』
要件定義をやっていると非エンジニアのメンバーに対して情報をもらいにいくことが多くなりがちです。もりたも事業のメンバーにひたすら質問をする人間だったんですが、ある時ふと、自分は事業をやっているメンバーが必要とする情報を提供できているのか? と疑問に思いました。この書籍は要件定義より上流の、企画フェーズから扱われており、タイトルの通り非エンジニアがプロジェクトをどう見ているのかというのがよくわかります。内容も平易で読みやすいので、エンジニア以外との協業だったりより上流のことを学びたい人はぜひおすすめします。
2. 企画
要件定義の概要がわかったところで、気になってくるのがより上流の工程だと思います。
ここでは企画やIT戦略策定といった経営に近いところを扱った書籍を3冊ご紹介します。
2-1. 『リーダーが育つ変革プロジェクトの教科書』
『システムを作らせる技術 エンジニアではないあなたへ』著者である白川さんの著作で、企画、および人材育成をメインに扱っています。良いプロジェクトを産むには良い人材が必要だが、良い人材を産むための良いプロジェクトがない——というジレンマに直面している人のための書籍です。書籍の軸足は人材育成に見えますが、「このように学ぶ」と良い、というのは同時に「この課題は解く意味がある」ということでもあります。私たちが頭を悩ませるべきなのはどこなのか? という疑問に答える一冊になっています。
3-2. 『業務改革の教科書: 成功率9割のプロが教える全ノウハウ』
こちらも白川さんの著作。業務改革プロジェクトの立ち上げ期に焦点をあて、施策を立てて実行にうつる直前までを書いています。
企画の立て方や現状の調査、よい施策の出し方がメインではありますが、決裁や対抗勢力との向き合い方にもそれぞれ章を割いており、とことん現実的な目線から業務改革を扱っているのがよいなと思いました。
2-2. 『システム構築の大前提―― ITアーキテクチャのセオリー』
企業のビジネスのあり方を出発点にITアーキテクチャを考える、エンタープライズアーキテクチャについて扱った書籍です。
企画という言葉から連想するもののど真ん中ではないですが、企画をするときの土台にあたるIT戦略立案について書かれています。若干饒舌すぎる語り口で面白いです。
3. 業務プロセス
続いては業務プロセスです。ここではビジネスプロセスの基礎を学べる一冊と、とりあえず身につけたい業務フローチャートの書き方本をご紹介します。
3-1. 『ビジネスプロセスの教科書 第2版: 共感とデジタルが導く新時代のビジネスアーキテクチャ』
ビジネスプロセス、およびその管理方法の基本が学べる書籍です。
普段わたしたちがシステムを通して見ているビジネスプロセスがどんな構造になっているのかという基礎知識から、どのように変革していくのかまで書かれています。ビジネスモデルやKPIなど、知っておきたいけどイマイチ手を出せてないんだよな…という点にも触れられます。
好評をもって第二版となっているのも信頼できるポイント。出版年も2022年と新しく、現代的な考え方が読んでいて頭に入ってきやすかったです。
3-2. 『誰でもわかる!業務フローチャートのつくり方』
フローチャートって初めて書くときはちょっと戸惑いますよね。本書は図多め、文字デカめ、ページ数少なめでフローチャートの書き方をサクッと解説してくれる書籍です。とりあえずさっと読んで仕事での選択肢を増やしたい人向けに選書してみました。
4. データモデリング
いちばん楽しいところ、データモデリングです。
DBの記事ではあんまり紹介できなかったんですが、エンタープライズ向けのデータモデルサンプルがたくさん載っている書籍と、よりシステム設計に近くめちゃくちゃ評判の良い一冊をご紹介します。
4-1. 『システム開発・刷新のための データモデル大全』
エンタープライズによくあるシステムのあるある実装みたいなものを載せた辞書的な一冊です。この書籍で基礎的なパターンを押さえて議論のとっかかりにしてみる、などの使い方ができそうです。また、他人のモデリング例が延々載っているので、めちゃ楽しいです。
4-2. 『データモデリングでドメインを駆動する──分散/疎結合な基幹系システムに向けて』
こちらの書籍、各所でめっちゃいいとの声を聞いています。ググってもらえれば評判の理由はどんだけでもわかると思うのですが、業務システム全体を活動のシステムと経営管理のシステムに分割してデータモデリングしようというものです。
5. UI/機能
続いてはUI/機能です。要求から要件に落とし込み、さらに詳細を詰めるところで参考になりそうな書籍をそれぞれ一冊ずつ選んでいます。
5-1. 『UIデザインの教科書[新版] マルチデバイス時代のインターフェース』
業務システムでどこまで求められるかというのは議論の余地があると思いますが、土台として一冊デザインの書籍も選んでおきました。
またオールタイムベストとして『ノンデザイナーズデザインブック』もおすすめです。こちらは社内でプレゼンするときなどにも使える、とりあえずみんなが読んでいい鉄板書籍です。
5-2. 『システム設計のセオリー --ユーザー要求を正しく実装へつなぐ』
『だまし絵を描かないための-- 要件定義のセオリー』の著者である赤さんが書いた書籍です。
良い書籍って目次が綺麗なんですけど、この書籍も目次が綺麗です。『だまし絵〜〜』で要件定義の要素として書かれていたプロセス・データ・機能という主要な概念をここでも引き継ぎつつ、より詳細な設計までを扱っています。
なお要件定義でどこまでやるか? というのがUI/機能についての大きな論点だと思うのですが、やるとしても外部設計的な箇所までなのかなと考えています。その観点では『初めての設計をやり抜くための本』にも一部扱った箇所があったので、こっちにも軽く目を通そうかなと思っています。
6. 非機能要件
非機能要件の種類についてはIPAの『非機能要求グレード』のページを見ていただくのがいいかなと思うのですが、その求められた非機能要求をどのレイヤーで要件化するか? という手段の情報も大切です。代表的なところとしてソフトウェアアーキテクチャとDBのレイヤー、そしてSREの書籍をご紹介します。
6-1. 『ソフトウェアアーキテクチャの基礎 ―エンジニアリングに基づく体系的アプローチ』
この書籍ではソフトウェアアーキテクチャにおける非機能要件の実現方針が扱われています。歴史的なアーキテクチャの一覧とその星取表という形で非機能要件が説明されています。自分は非機能要件ってなんなの? という段階でこの書籍を読んだのですが、初めて非機能要件というものに納得できました。エンジニアとして新しい観点を得られる良い書籍だと思います。
6-2. 『失敗から学ぶRDBの正しい歩き方』
こちらはDBレイヤーのお話。データベース設計の書籍なんですが、よくある失敗事例の意図とそれによってどんな非機能要件が失われているのかというトレードオフについて書かれています。
6-3. 『SRE サイトリライアビリティエンジニアリング ―Googleの信頼性を支えるエンジニアリングチーム』
非機能要件といったらSREということで、代表的な書籍を一冊選びました。この書籍にこだわる必要はないですが、インフラ・運用観点での非機能要件の書籍もひとつ読んでおくと良いかなと思います。
7. プロジェクトマネジメントの概要
こちらはプロジェクトマネジメント。プロジェクトによっては要件定義そのものよりもプロジェクトマネジメントの方が大変だったりもしますよね。ここでは初めの一冊的な優しい書籍と、もう少し網羅的な内容のものをご紹介します。
7-1. 『10歳からのプロジェクトマネジメント: 夢・目標をかなえる力がつく! (くもんこれからの学び)』
要件定義と並んで「読んでみたものの何いってんのかわからん」となりがちなのがプロジェクトマネジメントです。本書はプロジェクトマネジメントの概要をイラスト等ふんだんに使ってうす〜く一冊にまとめた初めの一歩に最適な書籍です。しかし、扱っている内容はしっかりしているので、侮れません。
7-2. 『プロジェクトマネジメントの基本が全部わかる本 交渉・タスクマネジメント・計画立案から見積り・契約・要件定義・設計・テスト・保守改善まで』
そしてこちらがもう少し進んだ一冊。タイトルに9つの単語が並んでいるだけでプロジェクトマネジメントという分野がどれだけ混沌としているかわかりますよね。網羅的に学ぶという観点でこちらの書籍を選びました。もう一歩進んだ人向けに同じ著者が『プロジェクトマネジメントの本物の実力がつく本』という本も書いています。こちらもおすすめです。
7-3. 『いちばんやさしいアジャイル開発の教本』
8. コミュニケーション
要件定義では自分とバックグラウンドの異なる相手とコミュニケーションをとることも多いです。ここでは三冊、そういった機会に役立つ書籍をご紹介します。
8-1. 『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』
HRアワード2020の最優秀賞を受賞した書籍です。会社における課題を、既存の方法で解決できる技術的課題と、関係性の中で発生し既存の方法では解決できない適応課題に分割し、後者について書いています。一見後者って本質的な課題ではないように思えたりするんですが、要件定義のように職種と職種の間にある問題を解こうとする時、適応課題こそ仕事をする上で本質的な問題だと思うようになりました。現実の問題を解こうとする上でぴったりの書籍です。
8-2. 『ゼロから学べる! ファシリテーション超技術』
こちらはファシリテーションの書籍。要件定義をしていると、業務についてヒアリングをしたり、いろんな人の集まる会議をうまく進行させるみたいなことが増えてきます。それまでの身内ばかりいる・メンバーとして参加できる会議との違いに難しさを感じる人もいるのではないでしょうか。
ファシリテーションの書籍はよい書籍がいくつかあるので、この書籍を読んだ上でいくつか別の書籍を読んでみても良いと思います。
8-3. 『交渉のメソッド: リーダーのコア・スキル』
さらにシビアな話になってきた場合の一冊もご紹介します。自分とは利害が対立する他者との交渉をどう進めるのかを扱った書籍です。特に前提知識なく読める良い本でした。
さらにさらにシビアな交渉を強いられている方向けの書籍として『戦略的交渉入門』というのもあります。胃がキリキリしそうな内容ですが、現実にこういった交渉に立ち向かう人には(闇の魔術に対する防衛術的な意味で)良い一冊だと思います。
9. その他
最後は少し休憩したい時に読む書籍です。
9-1. 『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?』
こちらはプロジェクトマネジメントについて扱ったポピュラーサイエンス本です。内容もいいんですが扱っている事例が本当に良くて……プロジェクトをやったことがある人はこれを読んで「あるある〜〜」となること間違いなしです。面白かったので一気読みしました。
同系統だと『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』という書籍もおすすめです。こちらはポストモーテム本なんですが、語り口がめちゃくちゃ良くて面白いです。
9-2. 『エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング』
万能薬で良書。不確実性コーンやシステム思考という言葉をこの書籍経由で知った人も多いのではないでしょうか。ここ10年でエンジニア界隈に最もインパクトを与えた組織論の書籍だと思うので、ぜひ読んでみてください。面白いです。
おわりに
以上、23冊のご紹介でした。
おそらく所属している会社やポジションによって求めている要件定義関連書籍って異なってくると思うので、他にも良い書籍があればコメント等にどんどん書き込んでいただけると嬉しいです!
明日は tomo_nxn さんが投稿します! 楽しみ!
なお「レバテック開発部 Advent Calendar 2024」はこちらのページから購読できるのでぜひご購読ください!
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