はじめに
【情報数学】にてこの記事の目的について読んで頂けると幸いです。
線形代数のスクラップ
表現行列
線形写像f \colon V \rightarrow Wについて、[\bm{v}_1,\bm{v}_2,\dots,\bm{v}_n]をVの基底、[\bm{w}_1,\bm{w}_2,\dots,\bm{w}_m]をWの基\\底とする。
f(\bm{v}_i)=\sum_{j}{a_{ij}\bm{w}_j}\quad (a_{ij}\in{\mathbb{K}})\\
によって得られる(a_{ij})\in{M(m,n)}を表現行列という。
並べると次のように表示したものになります
[f(\bm{v}_1),f(\bm{v}_2),\dots,f(\bm{v}_n)]
=[\bm{w}_1,\bm{w}_2,\dots,\bm{w}_m]
\begin{pmatrix}
a_{11} & a_{12} & \dots & a_{1n} \cr
a_{21} & a_{22} & \dots & a_{2n} \cr
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \cr
a_{m1} & a_{m2} & \dots & a_{mn}
\end{pmatrix}\\
これは一意的に定まりません。異なる基底では異なる表現行列が得られます。
表現行列と座標の関係
定義を眺めていても表現行列が何者なのかはわかりません。そこでやや唐突ですが座標との関係を考察していきます。
任意の\bm{v}\in{V}の座標について次のような計算を考えます。
\begin{aligned}
f(\bm{v}_{})
&=f(x_1\bm{v}_1+x_2\bm{v}_2+\dots+x_n\bm{v}_n)\\
&=[f(\bm{v}_1),f(\bm{v}_2),\dots,f(\bm{v}_n)]
\begin{pmatrix}
x_1\\
x_2\\
\vdots\\
x_n\\
\end{pmatrix}\\
&=[\bm{w}_1,\bm{w}_2,\dots,\bm{w}_m]
\begin{pmatrix}
a_{11} & a_{12} & \dots & a_{1n} \cr
a_{21} & a_{22} & \dots & a_{2n} \cr
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \cr
a_{m1} & a_{m2} & \dots & a_{mn}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
x_1\\
x_2\\
\vdots\\
x_n\\
\end{pmatrix}\\
&=[\bm{w}_1,\bm{w}_2,\dots,\bm{w}_m]A \bm{x}_{}\\
\end{aligned}
一方、
\begin{aligned}
f(\bm{v}_{})
&=y_1\bm{w}_1+y_2\bm{w}_2+\dots+y_m\bm{w}_m\\
&=[\bm{w}_1,\bm{w}_2,\dots,\bm{w}_m]
\begin{pmatrix}
y_1\\
y_2\\
\vdots\\
y_m\\
\end{pmatrix}\\
&=[\bm{w}_1,\bm{w}_2,\dots,\bm{w}_m]\bm{y}_{}
\end{aligned}
となるので線形結合の一意性により
が成立します。
結局、表現行列とは線形写像fの行列表示です。
標準基底間の表現行列
線形写像 f \colon V \rightarrow Wを表す行列をAとすると、VとWの標準基底に関する表現行列\\はAである。
標準基底の場合は線形写像を表す行列そのものが表現行列になります。
基底の変換行列
[\bm{v}_1,\bm{v}_2,\dots,\bm{v}_n]と[\bm{v'}_1,\bm{v'}_2,\dots,\bm{v'}_n]を共にVの基底とする。このとき\\\
[\bm{v'}_1,\bm{v'}_2,\dots,\bm{v'}_n]=[\bm{v}_1,\bm{v}_2,\dots,\bm{v}_n]P\\
を満たす行列Pを基底の変換行列という。
そのまんま基底の変換則を行列で表示しただけです。
ここで、先の表現行列と同様の手段で座標を比べて表示すると
\bm{x'}_{}=P^{-1}\bm{x}_{}
という関係になります。(当たり前ですが、次元が潰れていないので基底の変換行列Pは正則です。)
基底の変換則とは対応が逆になっていることに注意しましょう。
これについては
テンソルの成分表示。20分で分かる表現行列
を参考にするといいと思います。
基底の変換行列と表現行列の関係
\begin{aligned}
&P:[\bm{v'}_1,\bm{v'}_2,\dots,\bm{v'}_n]=[\bm{v}_1,\bm{v}_2,\dots,\bm{v}_n]P\\
&Q:[\bm{w'}_1,\bm{w'}_2,\dots,\bm{w'}_m]=[\bm{w}_1,\bm{w}_2,\dots,\bm{w}_m]Q\\
&B:[\bm{v'}_1,\bm{v'}_2,\dots,\bm{v'}_n]と[\bm{w'}_1,\bm{w'}_2,\dots,\bm{w'}_m]に関する線形写像fの表現行列\\
&A:[\bm{v}_1,\bm{v}_2,\dots,\bm{v}_n]と[\bm{w}_1,\bm{w}_2,\dots,\bm{w}_m]に関する線形写像fの表現行列\\
\end{aligned}\\
について次が成立する。\\
B=Q^{-1}AP
基底を取り替えたときの新しい表現行列は基底の変換行列によって定まるということです。
証明を追うより図で対応を考えたほうがわかりやすいでしょう。
基底の変換行列とは~定義と性質をわかりやすく~
でわかりやすく図解されています。
よくみるやつ
f \colon V \rightarrow Vのとき\\
B=P^{-1}AP
実際によく使う形はこれです。
また、このときAとBを共役といいます。何をもって共役なのかというと
\begin{aligned}
&\operatorname{tr}{A}=\operatorname{tr}{B}\\
&\det{A}=\det{B}
\end{aligned}
が成立します。
ようするに、行列式とトレースは表現行列(線形空間の間の関係)に固有の値だということです。
ちょっぴり鳥肌もんです。
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