はじめに
記事の目的は下記リンクへ移植しました.
https://zenn.dev/leaf/articles/191acef64823fa
線形写像
K上の線形空間V,Wと写像f:V→Wについて(1)∀x∈V,y∈W,f(x+y)=f(x)+f(y)(2)∀x∈V,k∈K,kf(x)=f(kx)を満たすとき、写像fを線形写像という。また、これを線形性という。
つぎのように言い換えることもできます。
∀x∈V,y∈W,k,l∈K,f(kx+ly)=kf(x)+lf(y)
核と像
線形写像f:V→Wに対してkerf=def{x∈V∣f(x)=0}imf=def{y∈W∣∃x∈V,f(x)=y}また、これらは部分空間である。
核というのは、Vの内、変換後に零ベクトルになってしまうものの集合です。像はそのままの意味で変換先の集合です。
核は一見してその役目を見出しにくいですが非常に重要な概念です。
解空間
行列Aを線形写像としてTAと表記することにすると、kerTAは斉次連立一次方程式Ax=0の解の集合であり、これを解空間という。
kerfの定義からしてそのまんまなんですけどね。
線形写像による階数の定義
階数を階段行列のところで定義しましたが、階数は像によって定義できます。
rankf=defdimimf
線形写像は全て行列で表現可能なので、線形写像を用いた階数の定義も当然可能です。
dimimfはfで変換したら次元が(基底の数が)何になるのかというのを表しており、これは行列における階数と意味が同じです
また、A=(a1,a2,…,an)による標準基底の行き先はa1,a2,…,anですから、dim⟨a1,a2,…,an⟩こそが像の次元です。
つまり、線形独立な列ベクトルの個数こそがrankAであり、像の次元なのです。
結局、
A=(a1,a2,…,an)∈M(n×n)について(1)Aが正則(2)rankA=n(3)Aを行基本変形するとInになる(4)n元連立一次方程式Ax=bが唯一の解をもつ(5)n元斉次連立一次方程式Ax=0が自明な解をも(6)detA=0(7)a1,a2,…,anが線形独立
これが最終的な同値表現の一覧ということになります。
次元定理
線形写像f:V→Wについてdimkerf+rankf=dimV
証明
e1,e2,…,ekをkerfの基底とする。まず、この基底を用いてVの基底e1,e2,…,ek,…,enが作れることを証明する。e1,e2,…,ekで表現できないek+1∈Vが存在するのでこれを用いてk+1組の線形独立なベクトルe1,e2,…,ek,vを作る。この操作を繰り返すと最終的にn組みの線形独立なベクトルe1,e2,…,ek,…,enが作れる。⟨e1,e2,…,ek,…,en⟩=VなのでVの基底e1,e2,…,ek,…,enが作れた。v=i∑aiei∈Vについてf(v)=f(a1e1+a2e2+⋯+akek+⋯+anen)=f(a1e1+a2e2+⋯+akek)+f(ak+1ek+1+⋯+anen)=0+f(ak+1ek+1+⋯+anen)=ak+1f(ek+1)+⋯+anf(en)よって、f(ek+1),…,f(en)はimfの基底であるからdim⟨f(ek+1),…,f(en)⟩=n−kdimimf=dimV−dimkerfdimkerf+rankf=dimV
dimkerfというのは零ベクトルになる次元の数、つまりなくなってしまう基底の数です。よって
(消える次元の数)+(消えなかった次元の数)=(元の次元)という当たり前のことを言っているだけです。
単射、全射、全単射
単射
写像f:V→Wについて∀x∈V,x′∈V,x=x′⇒f(x)=f(x′)
変換元が違えば変換先も違うということです。
ここまでの話を踏まえると次が言えます。
単射⇔kerf={0}
例えば平面を直線に変換するとその直線のあるベクトルに対応する平面のベクトルが複数存在することが容易の想像できます。
全射
写像f:V→Wについて∀y∈W,∃x∈V,f(x)=y
変換先の空間すべてを埋め尽くしているということです。
同値表現
全射⇔dimimf=dimW
これは
線形空間Vの部分空間をWとすると、dimW≤dimVたたし等号はW=Vのとき。
を思い出せば納得です。
全単射
変換先の空間を全て埋め尽くしており、対応が1:1になっているということです。
同型写像
線形写像f:V→Wが全単射のとき、fを同型写像といい、VとWが同型であるという。
同型というのは、本質的に構造が同じだということです。
また、次も成立します
線形空間V,Wが同型⇔dimV=dimW
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