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【情報数学】線形代数.数ベクトル

2021/12/04に公開

はじめに

【情報数学】にてこの記事の目的について読んで頂けると幸いです.

線形代数のスクラップ

具体的な線形空間

線形空間というのは所詮ただ性質を羅列しただけの公理です.
なにか具体的な「数」を持っていなくてもその公理さえ満たしていればそこに存在しています.
数学的にはこういう抽象的な存在は嬉しいことかもしれませんが,このままでは埒が明かないので具体的なものを考えます.

n次元数ベクトル

定義

\begin{aligned} &a_1,a_2,\dotsm,a_n\in{\mathbb{R}}に対して, \bm{v}\stackrel{def}{=} \begin{pmatrix} a_1\\ a_2\\ \vdots\\ a_n \end{pmatrix}\\ \end{aligned}

早い話が実数を縦に並べたものです.

体でなく実数で考えていきます.

演算法則

\begin{aligned} &a_1,a_2,\dotsm,a_n,b_1,b_2,\dotsm,b_n,k\in\mathbb{R}に対し\\ &\begin{aligned} &(1)\quad \bm{a}+\bm{b}= \begin{pmatrix} a_1\\ a_2\\ \vdots\\ a_n \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} b_1\\ b_2\\ \vdots\\ b_n\\ \end{pmatrix} \stackrel{def}{=} \begin{pmatrix} a_1+b_1\\ a_2+b_2\\ \vdots\\ a_n+b_n \end{pmatrix}\\ &(2)\quad k\bm{a}= k \begin{pmatrix} a_1\\ a_2\\ \vdots\\ a_n \end{pmatrix} \stackrel{def}{=} \begin{pmatrix} ka_1\\ ka_2\\ \vdots\\ ka_n \end{pmatrix} \end{aligned}\\ \end{aligned}

ふーんって感じですが,この演算法則を定めたことで線形空間の公理を満たす存在になりました.

n次元数ベクトル空間

定義

n次元数ベクトルの集合全体をn次元数ベクトル空間という.

これは\mathbb{R}^nと一致します.

  • \mathbb{R}^nとは?

実数の集合n個の直積という意味で,ようするに実数をn個ペアにしてますって意味です.
\mathbb{R}^3,つまり三次元空間のn次元への拡張だと思えばいいです.

標準基底

定義

\begin{aligned} &\mathbb{R}^nの次のような基底ベクトルを標準基底という.\\ &\left\{\bm{e}_1= \begin{pmatrix} 1\\ 0\\ \vdots\\ 0 \end{pmatrix} , \bm{e}_2= \begin{pmatrix} 0\\ 1\\ \vdots\\ 0 \end{pmatrix} , \dotsm , \bm{e}_n= \begin{pmatrix} 0\\ 0\\ \vdots\\ 1 \end{pmatrix} \right\}\\ \end{aligned}

基底ベクトルの要件を満たすベクトルの組みは無数に存在しますが,標準基底は基底ベクトルの中でも特別扱いやすいものです.

基底ベクトルの考察

基底の役目

標準基底は空間に座標を与えてくれます.
\mathbb{R}^3で次のような計算を考えます.

\begin{aligned} &\bm{e}_1,\bm{e}_2,\bm{e}_3を\mathbb{R}^3上の標準基底とすると\\ &\bm{v}= \begin{pmatrix} 2\\ 3\\ 6 \end{pmatrix} = 2\bm{e}_1 + 3\bm{e}_2 + 6\bm{e}_3 \end{aligned}

ただの数字の羅列が標準基底を用いて\bm{e}_1が2つ,\bm{e}_2が3つ,\bm{e}_3が6つ,
というふうに表せることがわかります.これはつまり空間座標で(2,3,6)の地点を表しているわけです.
標準基底というのは座標の目盛,基準です.
ここで基底ベクトルの定義[1]を思い出すと,その定義の意味がわかります.

  1. その基底ベクトルによる座標の表し方は唯一である.
  2. 線形空間の全てのベクトルを表示できる.

ごく自然な要求ですね.

座標の表示

基底の役目を物理学的な表現で説明すると単位です.今回は標準基底を用いているためにベクトルの成分と座標が一致していますが,例えば1cm=10mmという計算は右辺と左辺が一致しているにも関わらずメモリの値が違います.
便宜上次のような計算を考えると1次元のベクトルとして2通りの表示ができてしまいます.

\begin{aligned} &\bm{e}=(cm),\bm{e'}=(mm)とすると,\\ &\bm{v}=(1)\cdot(cm)=(10)\cdot(mm) \end{aligned}

つまりベクトルは基底ありきの存在で、絶対的な存在ではありません.あたり前ですが違う単位同士を足すこともできません.
線形代数は基底ベクトルこそが重要な存在で,基底ベクトルの性質にこそ興味があります.

脚注
  1. 線形代数.線形空間 ↩︎

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