iOS 26 で 追加された SMS フィルタリングの仕組みと対策
はじめに
みなさん、こんにちは。KDDI ウェブコミュニケーションズで CPaaS のエバンジェリストをしている高橋です。
この記事では、iOS のバージョン 26 で追加された SMS フィルタリングの仕組みと、SMS 配信事業者が取りうる対策について解説をします。
なお、本記事は 2025 年 12 月時点の情報に基づいています。
本記事の対象となる読者
- Vonage の SMS 配信事業を行っている方、もしくはこれから行う予定の方
Vonage とは

Vonage(ボネージ)は、米国ニュージャージー州に本社を置く、CPaaS(Communication Platform as a Service)企業です。
もともとは VoIP(Voice over IP)企業としてスタートしましたが、いくつかの企業買収を行うことで、コミュニケーションサービス全般をサポートすることができる企業に発展しました。現在はスウェーデンの大手通信機器会社エリクソンの傘下に入っています。
2024年2月14日より、株式会社KDDIウェブコミュニケーションズ(以後、KWC)が Vonage の再販事業を開始することとなりました。
KWC経由でアカウントを開設する場合、Vonage で直接開設したアカウントとは一部仕様が異なります。(※提供する機能面において違いはありません)
iOS 26で追加された SMS フィルタリングとは
Apple 社が 2025 年 9 月 15 日にリリースした iOS 26 により、メッセージアプリにおける「不明な差出人」フィルタの挙動が強化されました。
これにより、連絡先に登録されていない番号や、これまでにやり取りのない送信者から届いた SMS は、通常のスレッドとは別の受信ボックスへ自動的に振り分けられます。
また、本バージョンではユーザー設定に応じて通知抑制やバッジ非表示がより明確に機能するようになっています。
これらの設定は「設定 > メッセージ > 不明な差出人」にまとめられており、オンにした場合、不明な差出人からの SMS は通知されないケースがあります。
なお、iOS のメッセージフィルタリングは、Apple が公開しているプライバシー仕様の通り、スマホ内で処理されます。メッセージ内容が Apple のサーバーに送信されることはなく、スパム検知やフィルタリングに関連する処理もすべてスマホ内で完結します。
この設計により、迷惑 SMS 対策とユーザーのプライバシー保護を両立させています。
また、ワンタイムパスワード(確認コード)など一部のメッセージは iOS により特別扱いされ、通知や UI 上の処理が一般メッセージとは異なる動作となる場合があります。
Apple 社がこの機能を導入した背景としては、世界的に SMS を悪用したフィッシング(いわゆる「スミッシング」)の増加が挙げられます。
日本のケースでいうと、フィッシング対策協議会が公開している一次資料では、2024 年のフィッシング報告件数は 1,719,208 件と過去最多を更新しました(フィッシング対策協議会「フィッシングレポート 2024」[1])。
中でも、SMS 経由の不審リンクを含む事例が全体で高い割合を占めており、モバイル端末上のメッセージフィルタリングの重要性は年々高まっています。
ユーザーの設定状況ごとの挙動
ではここからは、ユーザーの設定状況に応じた挙動を説明していきます。
フィルタリングの設定は、iOS の設定 > アプリ > メッセージ の中に、不明な差出人という項目で設定ができます。
メッセージアプリからも上記設定項目を確認できます。

デフォルトの設定は、上記のようになっており、迷惑メッセージをフィルタ(iOS 18 で追加された機能)のみがオンになっています。
iOS 26 で追加されたのは、不明な差出人をスクリーニングの方で、デフォルトではオフになっています。
テストはいくつかのパターンで行います。
送信元として、文字列(Alphanumeric Sender Id)と、電話番号の2つを検証します。
文字列は海外経由での送信時を想定しています。電話番号は、双方向 SMS を含む、国内直収サービス利用を想定しています。
メッセージには以下の2パターンを利用します。
- 「お待たせいたしました。お客様の順番が来ましたので受付までお越しください。」(一般的な文章)
- 「確認コード: 1234 確認コードの有効期限は 10 分間です。」(確認コード)
1. スクリーニングをオフにしている場合(デフォルトの挙動)
| 送信元 | メッセージ | 通知の有無 | アイコンバッジ | 仕訳先 |
|---|---|---|---|---|
| 文字列 | 一般的な文章 | 通知されます | 表示されます | メッセージ |
| 文字列 | 確認コード | 通知されます | 表示されます | メッセージ |
| 電話番号 | 一般的な文章 | 通知されます | 表示されます | メッセージ |
| 電話番号 | 確認コード | 通知されます | 表示されます | メッセージ |
デフォルトの状態では、従来の SMS の届き方とまったく同じで、どのようなケースにおいても SMS は正常に配信されます。
メッセージが格納されるのは、すべてメッセージフォルダになります。
2. スクリーニングをオン、通知を許可を全てに設定した場合
では次に、不明な差出人をスクリーニングをオンにしてみましょう。

こちらをオンにすると、その下に通知を許可の項目が表示されます。
通知を許可をタップすると、さらに以下のような設定画面が表示されます。
デフォルトでは、どちらの設定もオンになっています。

この状態で SMS を送信すると以下のようになります。
| 送信元 | メッセージ | 通知の有無 | アイコンバッジ | 仕訳先 |
|---|---|---|---|---|
| 文字列 | 一般的な文章 | 通知されます | 表示されます | 不明な差出人 |
| 文字列 | 確認コード | 通知されます | 表示されます | 不明な差出人 |
| 電話番号 | 一般的な文章 | 通知されます | 表示されます | 不明な差出人 |
| 電話番号 | 確認コード | 通知されます | 表示されます | 不明な差出人 |
先ほどとの違いとしては、メッセージの仕訳先が「不明な差出人」になっている点です。
ただし、通知も届きますので、実影響はほとんどないと考えて問題ありません。
3. 通知を許可の確認コードだけをオンにした場合

SMS で迷惑メッセージを受け取る頻度の高いユーザーは、この設定にしているケースが多いと思います。
この状態で SMS を送信すると以下のようになります。
| 送信元 | メッセージ | 通知の有無 | アイコンバッジ | 仕訳先 |
|---|---|---|---|---|
| 文字列 | 一般的な文章 | 通知されません | 表示されません | 不明な差出人 |
| 文字列 | 確認コード | 通知されます | 表示されます | 不明な差出人 |
| 電話番号 | 一般的な文章 | 通知されません | 表示されません | 不明な差出人 |
| 電話番号 | パターンB | 通知されます | 表示されます | 不明な差出人 |
ワンタイムパスワード(確認コード)を送信するような内容であれば通知もアイコンバッジも表示されますが、それ以外のメッセージでは通知やアイコンバッジが表示されません。
番号表示をしているケース(国内直収サービス利用時)でも同じ状態になりますので、ワンタイムパスワード利用以外で SMS 送信を行っている事業者には大きな影響があります。
4. 通知を許可をすべてオフにした場合

この状態で SMS を送信すると以下のようになります。
| 送信元 | メッセージ | 通知の有無 | アイコンバッジ | 仕訳先 |
|---|---|---|---|---|
| 文字列 | 一般的な文章 | 通知されません | 表示されません | 不明な差出人 |
| 文字列 | 確認コード | 通知されません | 表示されません | 不明な差出人 |
| 電話番号 | 一般的な文章 | 通知されません | 表示されません | 不明な差出人 |
| 電話番号 | 確認コード | 通知されません | 表示されません | 不明な差出人 |
残念ながら、この設定にされてしまうと、すべてのケースで通知もアイコンバッジも表示されなくなります。
SMS 配信事業者の対応
ここまで見てきた通り、iOS 26 で追加された SMS フィルタリングの仕組みにより、ユーザーの設定次第では SMS が正常に通知されない可能性があります。
それでは、SMS 配信事業者はどうすればいいでしょうか。
対策1. 既知としてマークしてもらう
1つ目の対策としては、不明な差出人としてマークされたメッセージを、既知としてマークしてもらうことです。

たとえば、SMS の送信元文字列に自社ブランド名を利用したうえで1通ユーザーにSMSを送信します。
その後、ユーザーに対して、既知としてマークしてもらう作業を依頼しておくことで、以降の同送信元のメッセージで通知が届くようになります。
対策2. 双方向 SMS を使って、ユーザーから最初のメッセージを送信してもらう
対策1では、ユーザーに対して、既知としてマークしてもらう作業を依頼する必要があります。
しかし、双方向 SMS を使って、ユーザーから最初のメッセージを送信してもらうことで、既知としてマークしてもらう作業を依頼する必要がありません。
これはいわゆるオプトインと呼ばれる仕組みです。
ただし、双方向 SMS はコストがかかりますので、導入する場合にはコスト面を考慮する必要があります。
双方向 SMS にご興味のある方は、ぜひ弊社の営業担当までお問い合わせください。
まとめ
今回は、iOS 26 で追加された SMS フィルタリングの仕組みと、SMS 配信事業者が取りうる対策について解説しました。
ユーザーの設定状況によっては、SMS が正常に通知されない可能性があります。特に「不明な差出人をスクリーニング」をオンにし、「通知を許可」の設定を制限している場合、ワンタイムパスワード以外のメッセージは通知されなくなります。
そのため、SMS 配信事業者としては、先に挙げたいずれかの対策を検討する必要があります。
Vonage の SMS サービスや双方向 SMS についてご興味のある方は、ぜひ弊社の営業担当までお問い合わせください。
-
フィッシング対策協議会「フィッシングレポート 2024」 ↩︎
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